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【ライブレポート】『Grasshopper vol.5』bokula.×クジラ夜の街、かき鳴らす音の衝撃と唯一無二の世界観。観客を魅了した同世代2バンドの初ツーマンイベント

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『Grasshopper vol.5』9月26日@下北沢Club Que Photo by 稲垣ルリコ

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9月26日月曜日、下北沢Club Queのフロアに続々と観客が入る。bokula.とクジラ夜の街のグッズを持った多くのファンが開演を心待ちにしていた。超満員となったライブハウスを、かき鳴らす音の衝撃で揺らしたbokula.、唯一無二の世界観で包み込んだクジラ夜の街。ありそうでなかった同世代バンドの初ツーマンライブを見届けた、特別な時間だった。

bokula.

「始めます」と一言言って歌い始めたのは「体には気をつけてね、たまには思い出せよな、あばよ大泥棒」というワンフレーズ。この日の対バン相手であるクジラ夜の街への思いを込めたところで、1曲目『愛してやまない一生を.』を始める。イントロでえい(Vo/Gt)とかじ(Gt)がステージの前に乗り出し、観客を煽った。サビのシンガロングや暴れ回るギターソロ。爆発的な勢いを持った楽曲に観客は大きく盛り上がり、フロア全体で拳が突き上がる。

その後『愛わない』『HOPE』を連続で演奏し、前のめりなセットリストで会場全体を熱気で包み込む。えいがフロア全体を見渡し、観客とその熱量を共有する。『HOPE』ではかじがギターソロを完璧に弾き切り、大きな拍手が起こった。こうした勢いのある難易度の高いギター演奏もbokula.の大きな見どころである。また、自然と手拍子が起こったり、曲中で一向に拳が下がる様子がなかったりするところに、bokula.というバンドの持つ力を感じた。

えいはMCで、対バン相手のクジラ夜の街が「2001年生まれの同い年」であることを伝え、「高め合える良い距離感の友達ができてうれしい」と喜んでいる様子からも仲の良さが垣間見えた。「楽しくやりましょう!!」という一言で締めて、バッキングギターとバスドラムの音から『足りない二人』が始まる。楽曲中の手拍子を観客がタイミング良く叩き出す。全員でタイミングを合わせた一体感のあるフロアが印象にこびりつく。その次の曲、『バイマイフレンド』でも同様に、曲に合わせて手拍子が起こる。えいも頭の上で一緒に手拍子をし、「楽しんでいますか」と観客に声をかけた。

『バイマイフレンド』が終わったあと、青色の照明に包まれ、えいのアルペジオが静かに響く。先ほどの熱気とはまるで違う雰囲気である。「楽しいも嬉しいも悲しいも怒ってるも、この40分、この4人で、ライブで、あなたに向けて見せつけます」と一言断って、バラード調の曲、『いつかの事』を披露した。よく聞かせるように、大切に歌うえいを、観客がじっと見つめる。一方で、叫ぶように響くギターの音が対照的で、印象に残る一曲だった。

その後のMCで、えいはクジラ夜の街と対バンできたことに対する気持ちをそっと話し始めた。見に来てくれた観客と、対バン相手のクジラ夜の街、イベントを作ってくれた企画者に感謝を伝える。そして、「新曲やります」という一言に合わせて、「美談にしないで.」のイントロが始まった。全員が上半身を大きく振って感情的に演奏し、再びフロアを揺らす。メンバーそれぞれが強い存在感を見せつけていた。赤色の照明に変わり、えいがステージ前に乗り出して『2001』を始めた。ふじいしゅんすけさん(Dr)が大声でコーラスを加え、ラストに向けて盛り上げていく。フロントに立つ3人が自分の楽器を縦に持ち上げて、思い思いにかき鳴らす様子に、観客が拳を突き上げた。

その光景を見回したあと、『この場所で.』が始まった。気持ちを昂らせたふじいしゅんすけさんが大きな声で叫び、ライブは最高潮に達していく。「この場所で今歌ってるから会いたくなれば会いにくればいい」という歌詞でファンに気持ちを伝えた。その後、ドラムの4カウントからラストの『一瞬』を始める。タイトル通りの短い曲であるが、気持ちが最高潮に達するには十分な勢いがあった。曲が終わって「まだいける?」と問いかけたえいは、有無を言わさず大幅にテンポを上げた同曲をもう一度演奏した。マイクに全てをぶつけて歌を届けようとする様子が非常にかっこよかった。

クジラ夜の街

『幸せのかたち』と名のついたSEが流れる。それがテーマパークのエントランスにいるようなワクワクさを演出する。「みなさま、ようこそおいでくださいました。これよりクジラ夜の街を始めたいと思います」とこの日のライブの語り手となった宮崎一晴(Gt/Vo)のアナウンスが私たちを“クジラ夜の街”という世界観に連れ込む。このライブで一体何が語られるのだろう。連れ込んでくれるという非日常な世界とはどんなものだろう。

テンションを上げた1曲目は『超新星』。山本薫(Gt)のギターが効果音のような音色を発し、SFの雰囲気を催す。サビでは観客の手が上がった。曲の間奏では、テクニックを見せつける佐伯隼也(Ba)の演奏、そしてギターソロに続く。ここで山本が弾きだしたのは、bokula.の『愛してやまない一生を』のリフだった。対バン相手の歌を自分たちの曲組み込むという突然のサプライズに一本取られた気分になった。曲終わりのかき鳴らし中、宮崎のカウントでインスト曲『奔走』が始まる。疾走感と焦燥感が同時に感じられる、技巧が凝らされた曲だ。

そして、ナレーションからそのまま『幽霊船1361』に続く。観客はサビから間奏まで上げた手を下ろさなかった。再びインスト曲『詠唱』に入る。三拍子で気持ちよく揺れる音楽に合わせ、宮崎は「とあるところに魔法使いが住んでおりました」と上の方を見て曲中の主人公に思いを馳せるかのように語り始める。『ラフマジック』は表現力に満ち溢れた語りとキラキラと輝くパレードに合うようなサウンドが組み合わさった曲で、ドキドキと胸が高鳴った。

その後すぐ始まる可愛らしいピアノと共に、たくさんのお客様に演奏を見てもらえてよかったねと秦愛翔(Dr)と絡むなど、宮崎はバンドメンバーに声をかけ、楽しそうに話し始める。歓声泥棒にならないようにしなきゃね、といったところで、「あ!!泥棒といえば…!」と思い出したように語り始める。そして、「みなさま、お手を拝借!」という言葉と同時にサイレンの音が鳴り出し、観客は手を上げて左右に揺らす。みんなが楽しく踊る『あばよ大泥棒』では、ステージとフロアが一体となって、音で緻密に表現された物語を楽しむ様子が広がっていた。

大盛り上がりしたフロアを落ち着かせるように、そのままゆったりと『ロマン天動説』が始まる。各々の楽器が歌に乗せて自由な音、自由な演奏を乗せているような曲だ。フワッと残る残響感がロマンティックさを生み出した。そのあとは、悲しそうな感情を醸すインスト曲『拝啓』に乗せて、宮崎は曲を作った時の思いを丁寧に語った。「『歌姫は海で』という曲、聴いて」とぼそっとつぶやいて、泣きそうな声で歌い出す。物語を想像して心がキュッと締め付けられた。

「ここからクジラ夜の街の真骨頂をお見せします」というと宮崎はバンドメンバーの方を向いて手を大きく広げ、指揮者のように振る舞い、オーケストラが音合せを行うように楽器隊と音を重ねていく。曲のオーラがライブハウスを包み込み、クジラ夜の街の世界観でいっぱいになった。バスドラムの低音と芯のある歌声が響く『ヨエツアルカイハ1番街の時計塔』が始まる。繊細なドラムワークが散りばめられ、また、照明と曲のコンビネーションが計算されていて、聴覚的にも視覚的にも非常に美しい曲だった。

静かに終わったところに、突然パワフルで多彩なドラムがスタートする。それに合わせて自然と手拍子が起こる。インスト曲『夜間飛行』だ。「みんな飛びたいんだ!じゃあお望み叶えてあげましょう」と観客に語りかける。まだかまだかと待ち望んだ『夜間飛行少年』が始まった。佐伯と山本がステージ前方に乗り出して、楽しそうに弾く。この日一番の盛り上がりだったということは、曲が終わるまで全く下がらない腕が証明していた。

アンコールでは、「辛いことがあった時は身も心もこの曲に捧げちゃいなよ!」と言って、『Golden Night』を披露した。リズムに乗って自然と揺れる体が、この曲の心地よさを物語っていた。完成度の高いパフォーマンスに“物語る”というエンターテイメントが組み合わさった、クジラ夜の街にしかできない唯一無二のライブを、満足感たっぷりの45分間を、彼らは届けてくれたのだった。


Text by らいれいな
Photo by 稲垣ルリコ

イベント公式サイト:
https://fan.pia.jp/grasshopper/

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