板垣李光人が考える“愛”「愛とは、求め合わないこと」
インタビュー
板垣李光人 撮影:奥田耕平
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すべて見る突然姿を消した元恋人との偶然の再会。しかし、8年ぶりに目の前に現れた彼は聴力を失っていた――。
今や地上波の連ドラでは希少となった「本格ラブストーリー」として話題を集めている木曜劇場『silent』。主人公・青羽紬を演じるのは、川口春奈。さらに高校時代の恋人・佐倉想に目黒蓮という最旬キャストが、この温かくも切ないラブストーリーに深みと彩りを加えている。
その中で、板垣李光人が演じるのは、紬の弟・青羽光。姉を支える弟に扮する板垣は、ドラマの中で描かれる愛をどんなふうに見つめているのだろうか。
自分が想と同じ立場でも同じ選択をすると思う
――紬をめぐり、想と湊斗という2人の男性が登場します。板垣さんはどちら推しですか。
光としても湊斗推しだし、必然的に湊斗推しになりましたね。やっぱりどれだけ湊斗と一緒にいても、紬の心のどこかには想がいる。理由もわからないままフラれてしまった分、そうなる紬の気持ちもわからなくはないんですけど、どうしても湊斗が可哀相に思えちゃって。つい湊斗に感情移入してしまいますね。
――切ないラブストーリーでありながら、キュンとする描写も多いですよね。板垣さんがキュンとなったシーンはどこですか。
1話の最初の方で紬と湊斗がベッドで「雨、すごいね」って話すシーンがあるじゃないですか。あそこはすごく素敵な雰囲気だなと思いました。
――そこでもやっぱり湊斗とのシーンを挙げるんですね(笑)。
確かに(笑)。でも、本当、個人的にすごく好きなシーンでした。
――湊斗を演じる鈴鹿さんとは現場ではどんな感じですか。
以前、『ホリミヤ』というドラマで共演して。でも一緒のシーンはなくて、一度挨拶させていただいただいたんですけど、それも本当に一瞬で。今回はそれ以来になりますが、鈴鹿さんは湊斗と同じく主成分優しさみたいな感じの方です。何て言うんだろう、すごい丸っとした、球体のような……。
――わかります。角がないですよね。
そうなんです。僕自身、あまり現場でわちゃわちゃしているタイプではないので、鈴鹿さんと2人一緒のときは本当にゆったりした空気が流れています。
――なるほど。共通の趣味を見つけて盛り上がるとかではなく。
ではないですね。本当にこれ20代かな? っていうくらいスローな空気が流れています(笑)。
――想は、自分の耳が聞こえなくなることを紬に隠したまま別れを告げます。もし板垣さんが想と同じ立場だったらどうすると思いますか。
伝えないということが、そのときの想の優しさだったとは思うんですよね。でも、自分が第三者ということもあって、どうしても俯瞰で見ちゃうところがあって。そうするとやっぱりそれって自分への優しさなんじゃないかな、ちゃんと紬のことを考えられているかと言うとそうじゃないところもあるんじゃないかなとは思ってしまいますね。と言いながらも、もしも自分が同じ状況になったら、やっぱり混乱するだろうし。結局は想と同じ選択をしちゃうんじゃないかなと思います。
役者には手厚いファンサービスもない。それでも応援してくださるファンのみなさんの気持ちは愛だと思う
――大きな質問になっちゃうんですけども、本作はラブストーリーということで、板垣さんにとって愛とはどんなものかを聞いてみたいです。
(考えて)うーん……。求め合うものではないのかな、とは思います。
――どういう意味でしょうか。深掘りしたいです。
相手にこうしてほしいと求めるものが生まれてしまうと、それは愛じゃないのかなと。どちらかと言うと、それは恋に近くて。愛ってもっと解脱した状態みたいな。相手に見返りを求めないのが、愛なのかなって。
――板垣さんが愛を感じる瞬間はどんなときでしょうか。
自分のことを応援してくださるみなさんですね。役者って、アーティストの方のようにライブもないですし、すごく手厚いファンサービスもない。それでもずっと応援してくださるとか、好きでいてくださるというのは愛だなと思います。
――ファンのみなさんの応援の声が、板垣さんの力になっていると。
何か作品が放送されたときに、お手紙やメッセージをいただくと、その作品をやって良かったと思いますし。また次の作品を届けることへの活力になります。
――では、愛することと愛されること、どちらをより求めるタイプですか。
愛される方ですかね。楽しいですけど、愛する方も。でもずっと自分ばかりが愛していると、一方通行に感じてしまうので。どっちかと言ったら愛される方が落ち着きます。
誰かを愛する以上、絶対誰かしらは傷つくんだろうと思う
――板垣さんはラブストーリーって好きですか?
ラブストーリーの中にもいろいろ種類があるじゃないですか。その中で言うと、それを果たしてラブストーリーと呼んでいいのかみたいなラブストーリーは好きです。単純な恋愛だけじゃなくて、人間のいろんな業が入り乱れたようなディープなラブストーリーが。
――それは、たとえば具体的な作品で言うと?
最近だと映画『流浪の月』とか。それはラブなの? どうなの? みたいな。王道のラブコメよりも、一言で言い表せない人間の感情を描いているものに惹かれます。
――では、このドラマで描かれている愛の中で最も尊く感じるのはどんなところですか。
やっぱり年月が経っても紬が想のことを忘れずに想い続けているところが尊いですね。しかも、再会して、いろいろと状況が変わっていても、紬は突き進んでいく。何があっても変わることのない一途さはすごく尊いなと感じました。
――でもそうやって一途に人を愛することで、他の誰かを傷つけることもあるのが恋愛の難しさです。
そこはもう必然なのかなとは思います。やっぱり想いが叶う人もいれば、そうでない人もいて。誰かを愛する以上、絶対誰かしらは傷つくんだろうなと思いました。
――傷ついても誰かを愛したいという気持ちはわかりますか。
僕はできるだけ傷つくことを避けたいタイプなんですよ(笑)。実際、避けて生きてきたので、どうですかね……。でも、もはやそこまでなっている状態って、ちょっと自己陶酔が入ってる気もするんですよね。確かに傷ついてはいるんだろうけど、それでも愛してる自分を好きになっているというか。可哀相な自分に酔ってそうな感じはします。
――結構冷静な視点で見てますね。
そうなんです。そういう目で見ちゃうんですよ(笑)。
――変わらない愛はあると思いますか。
それはあるんじゃないですかね。僕も、物に対してですけど、幼稚園ぐらいの頃からずっと絵とか好きですし。そういう変わらないものは絶対あると思います。
美術部での人狼ゲームが、僕の数少ないエモい思い出です
――ドラマの中でも紬と想の高校時代が淡く甘酸っぱく描かれていましたが、板垣さんの学生生活のエモい思い出といえば?
それが全然ないんですよね(笑)。本当に何にもないです。
あ、でも、中学のときに、美術部に入ってたんですけど、美術部は楽しかったですね。もちろん絵を描いたりもしてましたけど、それより顧問の先生がお茶菓子を買ってきて、先生の立てた茶を飲んで、お茶菓子を食べながら人狼(ゲーム)をするっていう会があったんですよ。それが楽しかったです。
――もはや茶道部じゃないですか(笑)。
そうなんです(笑)。一応、人狼のカードは自分たちで描いていたから美術部でしょみたいな感じで。『けいおん!!』の「放課後ティータイム」のような雰囲気で楽しかったです。
――紬と想が好きな音楽を貸し借りし合って交流を深めているのも素敵でした。板垣さんの生活において音楽はどういう位置付けですか。
ずっと聴いていますね。移動のときもだし、家でも、お風呂でも、ずっと音楽はそばにあります。
――じゃあ、仲良くなりたい人に自分の好きな音楽を貸すとしたら、何を貸しましょうか。
まずジャンルぐらいは相手に合わせるかもしれないですね。邦楽が好きそうなら、邦楽で聴いたことないものがいいかなと思うし。洋楽なら洋楽で知らなさそうなものを選びます。
――では、邦楽のオススメを教えてと言われたら?
やっぱり(椎名)林檎さんとか(東京)事変ですね。邦楽に関しては正直、林檎さんと事変ぐらいしか聴かないのでわからないっていうのもありますけど。
――じゃあ、その人が椎名林檎さんや東京事変にハマったとして、それを入口に今度は洋楽の世界に誘うなら最初の入り口は何にしましょう。
本当に洋楽に全然ふれたことがない人だったら、レディー・ガガですかね。で、ディープに行くならニッキー・ミナージュ。ニッキー・ミナージュだったら、最近新しく『スーパー・フリーキー・ガール』が出たので、まずそれを貸します。
取材・文=横川良明
撮影=奥田耕平
ヘアメイク=佐川理佳
スタイリスト=伊藤省吾(sitor)
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