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『鉄道と美術の150年』東京ステーションギャラリーで開幕 浮世絵から現代アートまで150点で鉄道と美術の歴史をたどる

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2022年は、日本で初の鉄道が新橋〜桜木町間に開業してから150年になる年。この節目を記念し、東京ステーションギャラリーで10月8日(土)より『鉄道と美術の150年』が開催されている。150年の間に発展を遂げた鉄道、および美術の歴史を振り返る展覧会だ。2023年1月9日(月・祝)までの開催となる。


今から150年前の明治5年(1872年)は、新橋―桜木町間にかけて鉄道が開業した年。と同時に「美術」という言葉が日本で初めて使われた年でもあるという。同展は、この150年にちなみ、鉄道にまつわる作品を150件紹介し、さまざまな視点から鉄道と美術の関係を明らかにするものだ。「幕末の鉄道絵画」、「拡張する鉄道」、「東京駅ビフォー&アフター」、「美術に見る終戦直後の鉄道の様相」など、様々な独自の切り口でピックアップし、そして時系列で紹介してく。

左:横尾忠則《終りの美学》1966年 個人蔵(京都国立近代美術館寄託) 右:《ディスカバー・ジャパン no.4》1971年 鉄道博物館蔵

歌川芳虎《鉄道開業新橋夜景図》は、鉄道開業式当日の「新橋ステーション(新橋駅)」の夜の様子を描いた浮世絵。歌川広重(三代)《東京汐留鉄道御開業祭礼図》は、開業式の模様を描いた物。開業式には明治天皇のほか、政府高官、外国の講師、在日外交官、お雇い外国人らが参加した。一般市民も鉄道沿線に集まり、大変な賑わいを見せていたという。

左:歌川芳虎《鉄道開業新橋夜景図》1872年 鉄道博物館蔵 右:歌川広重(三代)《東京汐留鉄道御開業祭礼図》1872年 鉄道博物館蔵

《蒸気運転絵》は勝海舟が参内して鉄道の説明を行った際、宮中から支給された紙に揮毫したものだという。だれもかれもが150年前、鉄道に夢中だったのだ。

中央:勝海舟《蒸気運転絵》1872年 鉄道博物館蔵

印象派の画家、クロード・モネが駅や鉄道を絵のモチーフにしたように、日本の洋画家たちも駅や鉄道、線路をこぞって描いた。小絲源太郎《屋根の都》は上野の山から見た浅草方面の情景。画面の奥には朝もやにまぎれて凌雲閣(浅草十二階)がぼんやりと描かれている。

左:小絲源太郎《屋根の都》1911年 東京藝術大学蔵 中:近藤浩一路《京橋》1910年 東京藝術大学蔵 右:鹿子木孟郎《津の停車場(春子)》1898年 三重県立美術館蔵
左:小林猶治郎《タイトル不詳》1928年 板橋区立美術館蔵 右:佐藤哲三《赤帽平山氏》1929-30年 宮城県美術館蔵

鉄道が開業し、美術の世界も著しく発展、多様化していく。鉄道をモチーフにした美術作品も、単なる風景画にとどまらなくなっていく。谷中安規は、蒸気機関車をモチーフに、幻想的な世界を作り出していった。

左:谷中安規《幻想集 6.空》1933年 東京国立近代美術館 右:谷中安規《作品2 夜四題のうち街の本(渋谷)》1933年 京都国立近代美術館蔵

また、表現手法も多様化する。笹本恒子は米軍に接収された列車で働く女性車掌を、林忠彦は復員した兵士の姿を捉え、ユージン・スミスは日立製作所での電車の製造風景を皮切りに、稼働する駅や車両、風景をカメラに収めた。

左:林忠彦《復員(品川駅)〈カストリ時代〉より》1946年 東京都写真美術館 右:笹本恒子《米軍専用車》〈昭和・あの時・あの人〉より 1946年 東京都写真美術館蔵
W.ユージン・スミス〈日立〉より 1961年 東京都写真美術館蔵

また、駅や電車そのものが芸術作品の「現場」となることもあった。村井督待は、高松次郎、中西夏之、窪田登、村田記一らが山手線の車内や駅構内で行ったパフォーマンス「山手線事件」の記録を撮影した。

村井督待《「山手線フェスティバル」ドキュメンタリー写真》 1962年(プリント1998年) 東京ステーションギャラリー蔵

駅や鉄道は、社会を反映する場にもなる。田中佐一郎は戦後の引き上げ列車の情景を、佐藤照雄は戦後約10年にわたり、上野駅構内での生活を余儀なくされた人々の眠る姿を描き続けた。炭鉱で働き、その暮らしを記録していた山本作兵衛は、石炭輸送のため開通した鉄道のため廃業を余儀なくされた船頭(舟頭)の姿を描き、中村宏は理想に燃え、待遇改善を勝ち取ろうとする国鉄マンを誇張なく描いている。

左:田中佐一郎《三人掛け(引き上げ列車)》1947年 板橋区立美術館蔵  右:佐藤照雄〈地下道の眠り〉1947年-56年 東京都現代美術館蔵
左:山本作兵衛《舟頭と陸蒸気》(コロタイプ複製)1965年 田川市石炭歴史・博物館蔵 右 :中村宏《国鉄品川》1955年 浜松市美術館蔵

21世紀に入っても、鉄道や駅は美術と密接に関わり続けている。本城直季《new tokyo station》の手前に置かれた作品はアーティスト集団Chim↑Pom(当時)の《LEVEL7 feat.『明日の神話』》だ。2011年の5月にChim↑Pomは渋谷駅構内に掲げられている岡本太郎《明日の神話》の作品の横に、本作をゲリラ的に設置。大きな騒動となった。

左:本城直季《new tokyo station》2012 東京ステーションギャラリー蔵 手前:Chim↑Pom《LEVEL7 feat.『明日の神話』》2011 岡本太郎記念館蔵

鉄道や駅、それをとりまく社会を幅広く扱った展覧会だが、会場となる東京ステーションギャラリーもまた重要文化財でもある東京駅舎内にあり、当時のままに残されたレンガ造りの壁面なども残されている。150年の歴史をたっぷりと楽しんでみよう。


取材・文:浦島茂世

【開催情報】
『鉄道と美術の150年』
10月8日(土)~2023年1月9日(月・祝)、東京ステーションギャラリーにて開催
https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202210_150th.html

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