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なぜ『ブラックパンサー』は“歴史”に残る映画になったのか?

『アイアンマン』、『アベンジャーズ/エンドゲーム』など数々の傑作、大ヒット作をおくりだしているマーベル・スタジオ劇場公開最新作『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』がついに公開になる。

前作はヒット作、アクション大作の枠を超える評価、興行成績を獲得し、そこで描かれるメッセージは全世界で語られ、映画のみならずさまざまな分野で旋風を巻き起こした。そしてついに登場する最新作。本作も単なる“アクション大作”にとどまらない注目を集めることになりそうだ。

1本の映画、ひとりのヒーローの登場が全世界を揺るがした!

遥か昔。宇宙から“ヴィブラニウム”と呼ばれる物質が宇宙からアフリカの地に飛来した。この物質を巡って人々は争うようになったが、王がこの地を制定。その場所は“ワカンダ”と呼ばれ、歴代の王は“ブラックパンサー”として国を守ってきた。やがて彼らはヴィブラニウムの力を駆使して驚異的な発展を遂げる最先端国家になったが、人類がヴィブラニウムを巡って争うことを避けるため、自らの姿を隠し、表向きは貧しい国として振る舞っている。

前作『ブラックパンサー』の主人公ティ・チャラはワカンダの若き王子だった。爆破テロによって命を落とした父に代わって国をおさめることになった彼は一度は王座に座るも、国を離脱した叔父の息子ウンジャダガが出現し、危機に陥る。ウンジャダカは自らを“キルモンガー”と名乗り王座を狙い、チャラは一度は生死の境を彷徨うが、復活を遂げ、ウンジャダカを倒して再び王の座についた。

その後、ティ・チャラはアイアンマン、キャプテン・アメリカらアベンジャーズのメンバーと共に強敵サノスとの戦いに参加。最終決戦でサノスをやぶり、地球にもワカンダにも平和が訪れた……はずだった。

スパイダーマン、ソー、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーなどマーベルには様々な人気キャラクターが存在し、新しい映画が公開されるたびにスクリーンデビューを果たしてきたが、マーベル・スタジオ映画史上、最も鮮烈なデビューを飾った単独出演作は2018年に公開された『ブラックパンサー』だろう。

ライアン・クーグラーが監督を手がけ、チャドウィック・ボーズマンが主演を務めた映画『ブラックパンサー』は公開された直後から驚異的なヒットを記録した。亡き父の跡を継ぐことになった主人公の苦悩、アクロバティックな格闘シーン、スパイ映画のガジェットをさらに進化させた武器や乗り物の数々、スクリーンいっぱいに広がるアフリカの大自然と美しい夕日、そして物語の核心に置かれた崇高かつ現代的なメッセージ……映画で描かれるありとあらゆる側面について観客は語り、議論が交わされ、その範囲は映画ファンだけでなく政治家や作家、研究者にも広がっていった。

第91回アカデミー賞で7部門にノミネートされ作曲賞、美術賞、衣装デザイン賞の3部門を受賞。ヒーロー映画として初めて作品賞にもノミネートされる快挙を達成。
また、2018年にヒップホップ界で初めてピューリッツァー賞を受賞したヒップホップアーティスト、ケンドリック・ラマーが担当した楽曲も大ヒット。劇中に登場する胸の前で腕をクロスさせる“ワカンダ・フォーエバー”のポーズはスポーツ選手、セレブリティにまで広がり、本作が描く物語やテーマは“ヒット映画”の枠を超えたものとして注目を集めた。

そして2022年。マーベル・スタジオのトップ、ケヴィン・ファイギは「ワカンダのレガシーを繋いでいく。そしてストーリーはリスペクトと希望に満ちたものになる」と宣言。待望の最新作が登場することになった。

若き王のいなくなったワカンダに訪れた最大の危機

最新作の最大のポイントは、これまで主人公ティ・チャラを演じてきた名優チャドウィック・ボーズマンが2020年に病でこの世を去ってしまったことだ。そして、間もなく公開になる『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』でも王ティ・チャラがこの世を去った状況が描かれる。

ティ・チャラの妹で発明家でもあるシュリは兄を失い、表向きは毅然と振る舞っているが愛する兄がいなくなってしまったことをまだ完全に受けいられずにいる。

チャラの母ラモンダは、愛する夫を爆破テロで失い、さらに息子までもがこの世を去ったことで深い哀しみの中にいる。どんな時も慈悲深く、国と国民を愛する気持ちを忘れない彼女は若き王の去った後のワカンダを率いているが、その心中を完全に知る者はまだ誰もいない。

そんな折、ある出来事が起こり、世界中の視線がワカンダに注がれる大事件が勃発する。彼らは愛する国を守るためにどう振る舞うのか? 彼らが迫られる“決断”とは?

前作に続いて、シュリ、ラモンダや、ティ・チャラの恋人でスゴ腕のエージェントでもあるナキア、ワカンダの国王親衛隊“ドーラ・ミラージュ”の隊長オコエらレギュラーメンバーが揃って再登場する。それぞれのキャラクターがワカンダ最大の危機に直面し、それぞれの祖国への想い、亡きティ・チャラへの想いが明らかになる。

また新キャラクターも登場する。

すでに公開されている予告編で少しだけ姿を見せる謎の男ネイモア。彼は本作の最重要キャラクターになりそうだ。予告編では彼は海の中につくられたと思われる巨大な王座と共に登場しており、彼は海の帝国の王だという。ワカンダにとって彼が敵なのか? それとも協力者なのかは定かではない。

また、若くして圧倒的な頭脳を誇り、シュリと同じく発明に情熱を注ぐ女性リリ・ウィリアムズも新登場する。彼女の出現が本作のドラマにどのような影響を与えるのかは未知数だが、いくつかの資料では彼女は“アイアンハート”とも呼ばれており、すでに彼女を主人公したドラマシリーズがディズニープラスで配信されることも決定している。

なお、本作はマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の“フェーズ4”の最後を飾る作品。本作のプロデューサーを務めるネイト・ムーアは本作には「MCUの次のフェーズの構成要素となる新しいキャラクターたちが登場する」と語っており、今後のマーベル・スタジオ映画を楽しむ上でも本作は絶対にハズすことのできないものになりそうだ。

観れば観るほど“深く”楽しめる。本作が現代社会になげかけるメッセージ

本作の舞台はアフリカにある架空の国“ワカンダ”が舞台だが、そこで描かれるドラマやメッセージは現代を生きる私たちと密接にリンクするものだ。

前作では、ひとりの若者が苦難に立ち向かい王になるまでのドラマを主軸にしながら、その過程で周囲からその存在を隠して発展を遂げてきた自分たちの国ワカンダのあり方について主人公ティ・チャラが悩む場面が描かれた。自分たちだけが良ければいいのだろうか? 自分たちが歴史を積み重ねていく中で置いてきてしまったもの、見捨てたり、見て見ぬフリをしたものはなかっただろうか? このティ・チャラの問いかけは、まさに現代の世界中の人々に投げかけられたものだ。

豪快なアクション、美しい映像、先の読めないドキドキするドラマの背後に“いまを生きる”私たちへのメッセージが潜んでいる。だからこそ、日ごろはヒーロー映画をたくさん観ない人々をも魅了し、幅広い層から支持を集めることができる。これこそが『ブラックパンサー』シリーズの大きな魅力のひとつだ。

そして最新作でも“問いかけ”は続く。プロデューサーのネイト・ムーアは「ティ・チャラを亡くしてしまった世界で前進を続けようとするワカンダのストーリーを語る上で、彼に触れたすべての人々にとって彼の喪失が意味するものは何なのかを探究することは、もはや必然でした」と語る。

様々な困難や争い、生活していく中での問題、世界情勢の不安定さに不安を感じていない人はいないのではないだろうか。そんな時は誰だって自分たちを率いてくれる強力なリーダーがほしい。なんなら、強いリーダーが“一発解決”してくれることを望んでいる。

しかし、本作では“リーダーがいなくなった世界で、私たちはどのように危機に立ち向かうのか?”が描かれる。愛する兄を失ったシュリは、哀しみの中を彷徨いながら、それでもワカンダに迫る脅威に立ち向かうことになる。その時、彼女を動かすものは何なのか? どんな想いが彼女を支えているのか? 最新作をじっくり観ていくことで本作はより“深い映画”として心に響くことになるだろう。

そして、劇中ではシュリはひとりではない。彼女を支える仲間がいる。母ラモンダがいて、仲間がいて、ワカンダの外にも彼女の想いを受け取る人々がいる。

「ラモンダとシュリの関係性を掘り下げられるということに私たちはとても心を躍らせました。1作目の映画では、父と息子の人間関係が多く描かれています……主人公も敵対者も、それぞれの父の死を乗り越えて前進しなければなりませんでした。一方で今回の映画は、母性をモチーフにした作品だと言うことができるでしょう。母親というものは、得てして、困難な状況の中でさえも母親でい続けなければならないものなのです」とライアン・クーグラー監督は説明する。

『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』はアクション超大作であり、マーベル・スタジオ映画の未来を左右する1作であり、現代社会にメッセージを投げかける重要作であり、そして何よりも“母と娘”のドラマを描く深い人間ドラマになる。

公開まで、その内容がヴェールに包まれている本作だが、公開後も、劇場で繰り返し観ることで自分でヴェールをはがし、新たな発見をし、1度観ただけでは気づかなかったメッセージが新たに発見できる。そんな深みのある映画になりそうだ。

『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』
11月11日(金) 全国劇場にて公開
(C)Marvel Studios 2022

『ブラックパンサー』
ディズニープラスで配信中
(C)2022 MARVEL