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デビュー30周年の節目のオリジナル・アルバム完成!ウルフルズ『楽しいお仕事愛好会』メンバー全曲解説!

音楽

インタビュー

ぴあ

ウルフルズ

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今から30年前の1992年、東芝EMIからメジャーデビューを果たしたロックバンド・ウルフルズ。この30年間でウルフルズが発表した楽曲は「数百以上」と言われ、中でもヒット曲・代表曲・名曲といった重要楽曲は、昨年から今年にかけてリリースされた3枚のセルフカバーアルバム『ウル盤』『フル盤』『ズ盤』に最新音源が収録されている。この3枚もぜひ聴いてほしいが、これに続く30周年という節目に相応しい約3年ぶりのフルオリジナルのアルバムが完成した。その名は『楽しいお仕事愛好会』。

ロックバンドらしからぬタイトルに一瞬「え?」となる人もいるかもしれない。しかし、前述の通り「ウルフルズらしいポップで聴きやすい音楽」に少しでも触れたことがある人なら、誰でも好きになるはずだろう楽曲ばかり12曲が収録されている。今回はこの『楽しいお仕事愛好会』に収録されている各楽曲をメンバーに解説してもらった。同時に、超ベテランバンドの域になりつつも常に「音楽の楽しさ」を忘れない彼らの思いについても語ってもらった。

[現メンバー]トータス松本(Vo&Gt)、ジョンB(Ba)、サンコンJr.(Ds)

ウルフルズは、一体何をしようと思って続けてきたか

トータス松本(Vo&Gt)

――アルバムタイトルの『楽しいお仕事愛好会』はアルバム3曲目に収録された楽曲から採用されたそうですが、まずロックバンドなのに「仕事」と言い切るところがウルフルズらしくて潔いですね。

トータス ん? どういうこと?

――いや、ロックバンド、アーティストと言われる人たちは、自分たちの活動を「仕事」とは言わずに「表現」というような言い方をすることが多いので。

トータス そういうことね。『ウル盤』『フル盤』『ズ盤』で過去の曲のセルフカバーアルバムをやってみて改めて思ったのは、「ウルフルズ一体、何をしようと思ってここまで続けてきたのか」ってことやったんよ。
そこはやっぱり「楽しいお仕事」を求めて続けてきたんやろうなと思って。自分らが関わる仕事をまず楽しくしたいし、ユーモアたっぷりに大好きな音楽を表現していきたかったんよね。振り返ってみて、そういうことに改めて気づいた。どの時代もウルフルズなりの音楽の愛し方、表現の仕方はかなり貫いてやってきたなぁっていう。そういうウルフルズが求めてきたこと、やってきたことを表したタイトルの曲をまず作ろうと思って。それで『楽しいお仕事愛好会』ができたんよ。

サンコン 『ウル盤』『フル盤』『ズ盤』でセルフカバーをやってると、その時代ごとの思い出を振り返るやん。例えば、伊藤銀次さん(プロデューサー)とか子安次郎さん(元ディレクター)とやっていたときのこととかね。それら各時代を振り返ってみると、いつもウルフルズは「仕事」な感じの作業やった。
「仕事」って聞くと、なんか辛そうな響きがあるけど、そういうことではなくて、今思うと、楽しい思い出ばっかりの「仕事」やったんよね。そこは松本くんが言ったように、おれらはいつも「仕事を楽しくしよう」「面白いことをしよう」っていう思いが前提にあったからこそやと思うけど。だからこそ「仕事」ってワードが自然に出てきたんちゃうかな。

ジョンB おれ個人的にはそもそも「アーティスト」「表現」って言われるほうが、いまだにちょっと歯がゆいというか恥ずかしい感じもある(笑)。だからこそ「仕事」っていうほうがしっくりくるのかもね。

01「ツーベーコーベー」
ロックンロールの理屈の要らない楽しさをそのまま表現した曲

――そんなウルフルズのスピリッツが詰まった『楽しいお仕事愛好会』ですが、ここからはアルバムの収録曲について解説していただきます。まずは1曲目「ツーベーコーベー」。ウルフルズらしいボトルネック奏法の入ったロックンロールサウンド。楽しい曲ですね。

トータス やっぱり特技のボトルネックは入れておかなアカンと思ったね(笑)。でも、ぶっちゃけそれ以外は特にあんまり考え込んで作った曲ではないんやけどね。

――歌詞にある〈言う前に飛べ 空中でひと休み〉とか、これまでのウルフルズにはあまりなかった幻想的な印象も受けましたが。

ジョンB(Ba)

ジョンB それはおれも思った。サウンド自体は松本くん得意のロックンロールやけど、この歌詞とか曲の展開も新鮮やった。なんか浮遊感がある新鮮なロックンロールっていう感じで、演奏してて気持ちいいねん、この曲。

トータス せやから「気持ち良さ」とか「楽しさ」を優先させた曲かも。歌詞を通して、「こういうことをおれは言いたい」とか「こういうことを表現しよう」みたいな、「一生懸命全力で何かを言おう」とする時代はおれの中でもう終わったんよね。
むしろ、ロックンロールって理屈とか必要なくて、あの音楽が鳴るだけで踊れるし楽しいやん。そういう楽しいところに今のおれらが自然といった感じ。それが「ツーベーコーベー」かも。歌詞でも〈ロックバンドはつべこべ言わないの〉って歌ってるし(笑)。楽しい曲になってると思う。

02「よんでコールミー」
何十年後かの「バンザイ」にも聴こえる(?)「コロナ禍のふたり」の歌

――続いて「よんでコールミー」。爽やかな心地良い曲で、歌詞の世界から「何十年か後の「バンザイ」のふたりって、今こんな感じになっているのかな」と思いました。

トータス それは新しい解釈かも。そう感じてくれたんやとしたらうれしいね。もうネタバラシせんとこ(笑)。

――あれ、全然違いましたか?

トータス ほんまの話をすると、「コロナ禍での恋愛」を描いたんよね。だから、〈デリバリーおいしそう〉〈約束なんかしなくたって会えるさ〉みたいな言い方をしてるんよ。

サンコン イントロも入りやすい、ポップで良い曲よね。最初はこのイントロちゃうかってんけど、結果的に今のバージョンになって良かったと思う。すごい好き、この曲。

ジョンB 爽やかでいい曲です。

サンコンJr.(Ds)

03「楽しいお仕事愛好会」
『ズ盤』制作中の思いが反映された「ウルフルズのこれから」を感じさせる曲

――続いて「楽しいお仕事愛好会」。冒頭でも触れたアルバムタイトル曲ですけど、出だしは『みんなのうた』でもかかりそうな無垢な感じで、「30年バンド」というベテラン感とか重みをあえて排除した、ウルフルズらしいオシャレな表現だと思いました。それでいて後半では、過去の代表曲のタイトル名を繋ぎつつ連呼して、ここでちょっとウルっとくるという。

ジョンB この曲は松本くんのデモを聴いたときに「絶対アルバムの核になる曲やろうな」と思った。30年やってきたことの集大成でもあるけど、同時に「これからもまだまだ元気にやっていこう」っていう感じもあるからね。

トータス 『ウル盤』『フル盤』『ズ盤』は、行き当たりばったりで作ったところもあってんけど、『ズ盤』をやっているときに「これで普通に着地したら、なんかこぢんまりとするなぁ」と思ったんよ。なんとなく「ウルフルズと言えば、この30曲ですよ」と言い切って終わりというような感じで。それだけで終わる感じは絶対イヤやったから、「これからのウルフルズも感じさせるものがないとアカンやろう」と思ってて。それでできたのがこの曲やってん。

――「同好会」ではなく「愛好会」。この理由は何かあったんですか?

トータス 確かにこれは迷ってん。「同好会」やとなんか足りひんのよね。「誰でも気軽に参加していいんですよ、この会は」みたいな軽い感じがして。でも、「愛好会」になると一歩踏み込んだ感じというか、そこに入ろうとする人も「この会、ホンマに入って大丈夫かな。『違う』となったときにヤメられるかな」みたいな緊張感がある(笑)。それで「愛好会」のほうにしたんよね。

――でも、ファンクラブツアーは「楽しいお仕事『同好会』」になっていましたよね。

トータス せやからファンクラブのほうは間口を広げたっていう。「みんな気軽に来ていいんですよ」みたいな感じやね(笑)。でも、確かにおれらなりのオシャレな感じが出た曲やと思う。確かに経験を重ねてきてはいるけど、そのことで「ウルフルズの人生訓」みたいなことを歌ってるわけちゃうからね。

04「踊れ」
ジョンB&サンコンの進化したコーラスが活きるダンスナンバー

――続いて「踊れ」。冒頭は『トコトンで行こう!』的な、ネガティブな思考を揶揄する歌詞ですけど、でも、その落としどころとして「踊れ」と促すのが痛快で面白いですね。

トータス この曲は黒田(ジョンB)とサンコンのコーラスがいいよね。「そぉれ、そぉれ」って言いまくるっていう。ダビングしてるときもすごい楽しかったよ。

サンコン コーラスが入るまではもうちょっと真面目な印象の曲やってんけど、ちょうど良い温度感になったよね。

トータス ウルフルズって、昔の曲は「コーラス録るぞ」と言っても、たいして練習もせずに「サクッと録れたらOK」みたいな感じやったんよ。でも、それって考えてみたらメンバーにしたらかわいそうなことよね。
おれは何テイクも何テイクも歌いこなせるところまで歌いきって録音してんのにさ、他のメンバーが歌うコーラスは「いいじゃん、いいじゃん。OK、OK!」みたいにぞんざいなんよね。

一同 爆笑

トータス メンバーに失礼やろっていう(笑)。特にヒドいのが「そら」でさ。〈ラーラー、ララー〉っていうコーラスがもうヒドい。最近聴き直して「よくこれでOKになってるな」ってビックリしたもん。
昔のウルフルズには知らん間にそういう「暑苦しくて一生懸命歌うメインボーカルと、コーラスの脱力感のギャップこそがウルフルズだ」みたいな変なルールがあったみたい。でも、今はエンジニアの中村(督)さんっていう人がメチャメチャ黒田とサンコンを鍛えてくれてて。結構厳しくあれこれディレクションしてくれるんよね。「今ちょっと低かったから、もう1回」みたいな感じで。

サンコン やっぱり音楽やからさ、当たり前やけど、きちんとやりたいよね。

ジョンB ただ、やっぱり難しいのは難しい(笑)。おれよりサンコンのほうが高い声が出るから、おれは低いほうのコーラスをやったりするねんけど、いつも緊張してうまくできひんところもある。でも、これからどんどんやっていきたいと思います。チャレンジを続けます。

05「きみんちのイヌ」
一番のノベルティソング。会えなくなった人の「イヌ」には今も会いたい

――続いて「きみんちのイヌ」。GSを基調にした切ない歌ですけど、冗談か冗談でないのかわからない感じですね。

トータス 今回のアルバムの中では一番のノベルティソング。やっぱり30年もバンドを続けてるとさ、ある時期濃厚な時間を過ごしてたのに、なんかの瞬間にモメたり、関係が薄まってしまった関係者がいっぱいおるねん。そういう人たちに対して今おれが思うことを曲にしてみたっていう。

――「本人に会いたい」とは直接言えないから、その口実として「イヌに会いたい」という感じですかね。

トータス そういうこともあるやろうし、本当に「イヌだけに会いたい」っていう場合もあるかもしれない。友達がホンマにそんなこと言ってたからね。「元カノには会いたくないけど、ふたりで飼ってたイヌにはマジで会いたい……」って。おれにはそういう経験がないけどさ、なんとなく「なるほどその感じはわかるなぁ」っていう。そういう曲やね。

06「アイズ」
「年を取ってもシンプルで明るい歌を歌いたい」トータス理想形のダンスナンバー

――続いて「アイズ」。この曲のイントロのドラムの低音が最高で。聴く人を踊らせる感じの音ですよね。

サンコン それ、誰かにも言われたな。イントロのドラムの録り方をあえて昔風の、大太鼓っぽいドゥンドゥンっていう音で録ったら、すごい良い感じになった。良い曲よね、これも。

――性格が良い曲だと思いました。なんか歌詞の内容がウブというか。良い意味で素直な思いをひねりなく歌ってるような。

トータス 〈考えてる事おんなじだといいな〉とか、確かに性格は良いよね。でも、だとするとすごい理想的な曲ができたってことかも。
チャック・ベリーがもう随分なジジイになってるのに、ずっとハイスクールのこととか、キャデラックがどうしたとか、そんな歌ばっかり楽しそうに歌っててさ。ジジイになって、人生経験も豊富になってるはずなのに「人生とは何か」みたいなことはいっさい歌わずに、昔からの楽しい歌をずっと歌ってるっていう。そういう姿を見て「あぁ、こういう姿ってカッコ良いな。憧れるな」って思ってたからね。せやから「アイズ」でそれができているのだとしたら、すごい理想的な感じかもしれへんね。

ジョンB この曲はグルーヴの持っていき方も気持ち良いしね。サンコンのドラムと合わせて演奏すると、すごい気持ち良い。松本くんの歌詞の感じとピッタリ合ったダンスナンバーやと思う。

07「サンシャインじゃない?」
ビデオのシャレの評価はさておき、コロナ禍以前に書かれたオシャレなサウンド

――続いて「サンシャインじゃない?」。この曲もイントロからテンションが上がりますね。

トータス サンシャインが上がっていくようなイントロね。おれも好き。めちゃオシャレでカッコ良いよね。

ジョンB 全体的に音もいいオシャレな曲なんやけど、ただひとつだけ残念やったのは……ミュージック・ビデオがあの感じやからさ。

一同 爆笑

トータス あのビデオを撮ったのが2020年の3月くらいやったんよ。ちょうど本格的なコロナ禍が始まる寸前で、まだ仕事の現場ではみんなマスクとかもしてなかったくらいやった。
そういう時期に「オモロいビデオ撮ろうや」って始めた曲なんやけど、世の中がどんどんシビアになっていった時期で。どうも、あのシャレの出どころが宙ぶらりんになったというか、着地しにくい感じになってもうたんよね。コロナ禍さえなければ、「またウルフルズ変なことやってるよ」ってことでもっと面白がってもらえたと思うんやけどね。

――じゃあ、曲を作ったときには、「コロナ禍での過ごし方」を歌おうとしたわけではなかったという?

トータス そうそう。「しんどいを楽しもう」っていう歌詞やからと思うけど、よく「コロナ禍での応援歌」みたいな感じで捉えられるけどね。曲はカッコ良いよね。これも好き。


08「コミコミ」
30年数年ぶりのサンコンのボーカル曲。アルバムのジングル的なナンバー

――続いてサンコンさんがボーカルをとった「コミコミ」。ウルフルズは、アマチュア時代に自主制作の『ウルフリィ』というカセットテープを複数リリースしていて、その中には、トータスさん以外のメンバーがボーカルを取る曲もありました。それ以来となるサンコンさんボーカル曲ですね。

サンコン 松本くんが書いてくれて「これサンコンが歌ったら面白いと思う」って言われて。聴いてみたら「うわ、メッチャいい曲やん」と思ってさ。「そういや昔おれがボーカルを取る曲もあったな。今やったらまたオモロいかも」ってことでやってみました。

トータス 「サンコンが歌う」ってことを想定して書いたんやけど、不思議と「自分で歌う曲」よりもずっと作りやすかった。それと、こういう尺が長くない曲がアルバムに入ってると、ジングル的になって楽しくなるし、いいよね。

サンコン 〈ホウレイ線〉ってそのまんまやけどね(笑)。でも、メッチャいい曲になったと思う。

09「黒田の子守唄」
ジョンBによるまさかの沖縄民謡調。〈ありがとうなぁ〉のセリフが頭の中でループする

――続いてジョンBさんのボーカル曲「黒田の子守唄」。まさかの沖縄民謡調ですが、ジョンBさんの朴訥とした〈ありがとうなぁ ありがとうなぁ〉っていうセリフがループして、気づくと無意識に言っていたりするほど頭に残ります。

ジョンB これも松本くんが書いてくれたんやけど、当初は漠然と「おれが歌う曲は、ちょっとひねくれた感じのロックンロールやろうな」と思ってたの。でも、いよいよデモを聴くと、松本くんが弾く三線の音が聴こえてきて。「あれ?」と思って(笑)。

一同 爆笑

トータス 三線って力のある楽器やから、耳を引っ張られるしね(笑)。

ジョンB おれ、沖縄方面にはちょっと気をつけてるところがあったんよ。怖いのよ、ちょっと。沖縄にハマると、自分自身が甘えてどんどんだらけてしまいそうで(苦笑)。ホンマは好きなんやけど、意識的に近づかんようにしとこうと思っててんけど、今回歌うことになったっていう。

トータス 今年は「沖縄本土返還50周年」やったやん。おれは三線も弾けるわけやし、沖縄っぽいのを1曲やりたかったんやけど、ただおれ自身が歌うと「ウルフルズが年齢を重ねて、民族音楽をやり始めた」みたいに真面目に捉えられそうで。そこを黒田が歌うことでうまくシャレた感じになったかなと思う。

10「グッゴー!」
ありそうでなかった数え歌。その歌詞の中には隠された秘密があった

――続いて「グッゴー!」。これまでのウルフルズに、ありそうでなかった数え歌風の曲ですね。

トータス これはダスキンのCMソングとして書いた曲。CMのプランニングの人から「『無理なくつづく』っていうワードは必須で入れてください」って言われてたんよ。要は「掃除を無理なく続けられるように」ってことやけど、「無理なくつづく」っていうワードを歌詞にするのがなかなか難しくてさ。でも、ふと思い立って、数え歌にしてリズムを跳ねた感じにしたら良くなった。 「ダスキンの社歌になるように」っていう思いもあったから〈誰かの〉〈好き〉〈運〉っていう歌い出しなんやけど、これはそれぞれが「ダ」「ス」「キ」「ン」と、ダスキンの社名にかけた大喜利にもなってる(笑)。かなり喜んでくれましたよ、ダスキンの皆さん。


11「ゾウはネズミ色」
「それが答えだ!」のアンサーソング。「答え探し」を笑って放棄(?)した意欲作

――続いて「ゾウはネズミ色」。これまでのウルフルズは「答えを探す」ような曲が何曲かありましたけど、その「答え探し」を笑って放棄したような歌詞が清々しくて。爽やかなメロディと合わせて、新しいウルフルズを予感させる心地良い曲です。

トータス この曲は映画監督の松居大悟さんから手書きの手紙をもらったのが最初の発端やった。松居さんの手紙には「自分の体験を映画にするにあたって、ウルフルズに曲を書いてほしい。この映画の中では『それが答えだ!』っていう曲がすごい重要になってる」とあって、そのアツさを受けて曲を書くことにしたんよ。
自分なりには「『それが答えだ!』のアンサーソング」にしようと思った曲で、作ってたときはすごい燃えたね。はっきりと目指すところがあるから。
タイトルも、あえてウルフルズっぽくないというか。「ガッツだぜ!!」「バンザイ~好きでよかった~」みたいなわかりやすいものはヤメて、ちょっとひねりが入った「ゾウはネズミ色」にした。

――この「ゾウはネズミ色」っていう言葉が哲学的というか、確かに意味がわからないんですよ。想像では「ゾウはピンク色でもなく、緑色でもなく、ネズミ色である。だから、自分自身も、自分の色のままで良いのだ」ってことなのかと思ってるんですけど。

トータス 解釈はいろいろあっていいと思うし、そう感じてくれたなら、それでいいと思う。なんか悩みとかいろいろあっても「ゾウはネズミ色やなぁ」って思えば、どうでも良くなる人もおるかもしれへんしね。自分なりにはすごい燃えた曲。これも大好き。

12「続けるズのテーマ」
ウルフルズ流ファンクの真骨頂。意外となかったJBインスパイアナンバー

――そして最後が「続けるズのテーマ」。ウルフルズのメンバー全員大好きなジェームス・ブラウンにインスパイアされた曲ですが、これが最後にあることで、笑いつつもこれからのウルフルズを予感させます。

トータス 強面じゃないファンク(笑)。これもCM用に作った曲やけど、当初は「ッパ」に対して賛否両論があったけど、でも黒田が「いや、なんでもかんでも『ッパ』っていうのが面白い」と言ってくれて。
確かに、「ッパ」がないと、すごい張り切ってファンクをやっているバンドみたいになるから、そこを笑いも交えて落とし込めた感じ。サンコンも「『カルビクッパ』は絶対入れてくれ」とか言って、みんなで笑いながらできた曲やね。

ジョンB なんかデビュー前のウルフルズみたいな感じのファンクよね。胡散臭いファンクというか(笑)。

トータス そうそう。ウルフルズって30年以上前から、どこか胡散臭い面白さがあったかもしれんよね。ライブハウスに観に来てくれたお客さんが帰り道で「なんか変で面白かったね、あの曲」って言ってくれていそうな。

サンコン そういうシャレが大事、ウルフルズは(笑)。

――また、この曲にはサックスとして、RCサクセションなどにも参加していた名奏者の梅津和時さんが参加しています。

トータス サンコンが梅津さんと仕事をしていたこともあってお願いしたんやけど、これがまたカッコ良いんだ。

サンコン 2回吹いてもらったけど、ファーストテイクのほうでもうOK! みたいな。梅津さん、すごいサックスプレイヤーです、ホンマに。

トータス 昔の日本のロックの曲ってさ、チェッカーズをはじめサックスソロが入ってるのも多かったけど、最近はないやん。
おれらも初めてやったけど、やっぱりサックスソロがあると、シャレた曲になるんよね。オモロいだけじゃなくてカッコ良い曲になったと思う。

『ウル盤』『フル盤』『ズ盤』も含めた4部作的アルバムになった

――ここまで『楽しいお仕事愛好会』の12曲を解説していただきましたが、通して聴くと、数多いウルフルズの作品の中でも、一番自由でリラックスしたアルバムだなと思いました。なんとなくデビュー前の無垢で楽しげなウルフルズの雰囲気にも通ずるような。

ジョンB それはおれも思った。デビュー前の無邪気な感じと「これからもがんばります」みたいな雰囲気があるよね。

サンコン メンバーとか関わる人の集中力は昔以上に研ぎ澄まされてるやん。せやから作ってるときはもちろん緊張感はあるんやけど、でも、やっているときに「あ、この感じが後々『あの頃、楽しんでやってたなぁ』って振り返る瞬間かな」と思うことはたびたびあった。楽しかったもんな、作ってるとき。

トータス やっぱり『ウル盤』『フル盤』『ズ盤』がデカかったよね。あの3枚がなくていきなり「30周年を迎えるにあたり、オリジナルアルバムを作りましょう」ってなってたら、かなり難しかったと思う。
『ウル盤』『フル盤』『ズ盤』もさ、最初はホンマに地獄やったんよ。自分が昔作った古い音源を確認し直すっていう作業が。でもやっていくうちにだんだんウルフルズの良さとか、いつの時代も間違ってなかったなってことに気づいて。そういう「ウルフルズがやってきたこと」を見直した上で、できたのが『楽しいお仕事愛好会』。今とこれからのウルフルズを表した良いアルバムになったと思う。

ジョンB 各曲ごと録音した時期はバラバラやし、ツアーもこれからやから、今時点ではどういう意味を持つアルバムになるかはわからんけどね。でも、おれ個人的には新しい道を感じるかな。「どこまで楽しめるか、これからもやっていこう」みたいなね。

トータス だから『ウル盤』『フル盤』『ズ盤』は3部作やけど、それだけじゃなくて、この『楽しいお仕事愛好会』も合わせた4部作みたいな感じでおれは思ってる。その流れで聴いてもらえたらうれしいね。

30数年、何周もグルグル回って戻ったウルフルズらしさ

トータス 音楽に関わる仕事は特にそうやと思うけど、マニアックになればなるほど楽しいんよね。実際、『楽しいお仕事愛好会』も音の録り方とか使った楽器とかで言えば、すごいマニアックなやり方なんよ。
過去のウルフルズの作品では「こういうほうがリスナーに届きやすいんちゃうか」「ここに流行りのサウンドを入れたほうが今っぽくてええんちゃうか」みたいなことを考えて音作りをすることもあった。 でも、今回のアルバムではそういうことは一切していなくて、自分らがやりたいことを追求してるんよね。でも、それでいて、しんどいサウンドになってないんよね。そこはやっぱりウルフルズで、おれらなりの音楽が進むべき正しい姿に向かってるような気がするかな。

――さっきも出たデビュー前のカセット『ウルフリィ』の自由な雰囲気を感じるのは、そういうところからくるのかもしれません。

トータス 30数年前のデビュー前のウルフルズは、「メチャクチャ売れよう」みたいな曲作りはしていなくて、そのときそのとき、自分らが思いついたこと、やりたいことをやってただけやった。そういうウルフルズを「面白い」と言ってくれる人が増えて、知らん間にお客さんに増えて人気者になることができたわけやけど、それから何周もグルグルと回って30年前のあの頃の感じに戻った感じかもしれへんね。

ジョンB なんかおれの中でもその感じがある。ウルフルズがもともと持ってた感じが、今回のアルバムでは一番出てる気がする。

トータス せっかくこんなに楽しいアルバムができたから、ツアーでもお客さんと一体感を作れたら良いよね。

ジョンB やっぱり楽しいのが一番やし、「これからもまだまだ楽しくやっていきますよ」っていうのをツアーでも見てもらえたらうれしいね。

サンコン 今の時点では、ツアーで今回のアルバムの曲と過去の曲がどう混ざるかわからへんけど、それを考えるだけでも面白い。来てくれるお客さんにも思いっきり楽しんでもらえたらいいなと思います。

Text:松田義人(deco) ライブPhoto:渡邉一生

<リリース情報>
ウルフルズ ニューアルバム『楽しいお仕事愛好会』

11月9日(水) リリース

●初回限定盤(CD+Blu-ray):5,940円(税込)
●初回限定盤(CD+DVD):5,280円(税込)
●通常盤(CD):3,300円(税込)

ウルフルズ『楽しいお仕事愛好会』初回限定盤ジャケット
ウルフルズ『楽しいお仕事愛好会』通常盤ジャケット

【CD収録内容】
01. ツーベーコーベー
02. よんでコールミー(ダスキン「衛生のダスキン」TVCM)
03. 楽しいお仕事愛好会
04. 踊れ
05. きみんちのイヌ
06. アイズ(眼鏡市場 TVCM)
07. サンシャインじゃない?(ダスキン「くらしのリズムを整えよう♪」TVCM)
08. コミコミ
09. 黒田の子守唄
10. グッゴー!(ダスキン「無理なくつづく」TVCM)
11. ゾウはネズミ色(映画『くれなずめ』主題歌)
12. 続けるズのテーマ(日本コカ・コーラ「ドラゴンブースト」TVCM)

【Blu-ray / DVD収録内容】※初回限定盤のみ
■STUDIO SESSION 『楽しいお仕事セッション会』
・ツーベーコーベー
・ゾウはネズミ色
・楽しいお仕事愛好会
・よんでコールミー
・アイズ
・タタカエブリバディ
・サンシャインじゃない?

■ズ盤 ザ・ムービー 『ズ盤の Zoo 版』
第1話 “ガッツだぜ!! V"
第2話 “借金大王 V"
第3話 “年齢不詳の妙な女 V"
第4話 “愛してる V"
第5話 “あそぼう V"
第6話 “歌 V"
第7話 “相愛 V"
第8話 “僕の人生の今は何章目ぐらいだろう V"
第9話 “ええねん V"
第10話 “タタカエブリバディ"

ウルフルズ『楽しいお仕事愛好会』-digest movie-

【店舗別特典】
・タワーレコード全国各店 / タワーレコード オンライン「特典『楽しいお仕事愛好会』ジャケットアートワークステッカー」
・HMV 全国各店 / HMV&BOOKS online「特典『楽しいお仕事愛好会』ジャケットアートワークステッカー」
・TSUTAYA RECORDS 全国各店 / TSUTAYA オンラインショッピング「特典『楽しいお仕事愛好会』ジャケットアートワークステッカー」
・ビクターオンラインストア「特典『楽しいお仕事愛好会』ジャケットアートワークステッカー」
・楽天ブックス「特典『楽しいお仕事愛好会』ジャケットアートワークステッカー」
・セブンネットショッピング「特典『楽しいお仕事愛好会』ジャケットアートワークステッカー」
・Amazon.co.jp「メガジャケ」

※特典は各店先着でなくなり次第終了となります。一部店舗では取り扱いのない場合がございます。
※楽天ブックス、Amazon.co.jpでは、特典つき商品のカートがアップされます。特典をご希望のお客様は特典つき商品をお買い求め下さい。

<ツアー情報>
ウルフルズ 30周年ツアー 2022-2023 ~楽しいお仕事演奏会~

■2022年
11月9日(水) 埼玉・三郷市文化会館 大ホール
OPEN17:30 / START18:30

11月13日(日) 京都・文化パルク城陽 プラムホール
OPEN17:00 / START18:00

11月16日(水) 兵庫・神戸国際会館 こくさいホール
OPEN17:30 / START18:30

12月2日(金) 千葉・君津市民文化ホール 大ホール
OPEN17:30 / START18:30

12月9日(金) 静岡・三島市民文化会館(ゆうゆうホール)大ホール
OPEN17:30 / START18:30

12月15日(木) 愛知・名古屋市公会堂
OPEN17:30 / START18:30

12月17日(土) 宮城・仙台電力ホール
OPEN17:00 / START18:00

12月21日(水) 神奈川・厚木市文化会館 大ホール
OPEN17:30 / START18:30

12月25日(日) 北海道・道新ホール
OPEN17:00 / START18:00

12月31日(土) 大阪・フェスティバルホール
OPEN17:00 / START18:00

■2023年
1月5日(木) 福岡・ももちパレス
OPEN17:30 / START18:30

1月7日(土) 富山・クロスランドおやべ メインホール
OPEN17:00 / START18:00

1月9日(月・祝) 広島・JMSアステールプラザ 大ホール
OPEN17:00 / START18:00

1月13日(金) 東京・中野サンプラザホール
OPEN17:30 / START18:30

【ゲストミュージシャン】
Gt.桜井秀俊(真心ブラザーズ) / Key.浦清英

【チケット料金】
通常席:8,000円(税込)
プレミアム席:9,000円(税込) ※各会場、前から4列目まで

※全席指定
※3歳以下入場不可、4歳以上~12歳まで保護者同伴のうえ入場可

チケット情報はこちら:
https://w.pia.jp/t/ulfuls-30th/

ツアー特設サイト:
http://www.ulfulsspecial.com/tour2022/

ウルフルズ 公式サイト:
https://www.ulfuls.com/