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東京ドキュメンタリー映画祭2022予告解禁、各コンペのプログラマーよりコメントも

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東京ドキュメンタリー映画祭2022のチラシビジュアル。

東京ドキュメンタリー映画祭2022より、予告編と各コンペティション部門のプログラマーのコメントが到着した。

短編、長編、人類学・民俗映像といったコンペティション部門の作品を上映する本映画祭。独自の文化が色濃く残るパプアニューギニアに関連した作品が特集としてスクリーンにかけられる。

長編部門のプログラマー・澤山恵次は、ラインナップの傾向について「国際的社会問題を紐解く鍵となり得たり、コロナ禍以降の人とどう向き合っていくかの方向性を考える機会となる作品群となっております」とつづった。短編部門のプログラマー・佐藤寛朗、人類学・民俗映像部門のプログラマーである金子遊のコメントは下記の通り。

東京ドキュメンタリー映画祭2022は、12月10日から23日まで東京・K's cinemaにて開催される。なお今年は開催期間が約2週間に拡大された。

澤山恵次(長編部門 プログラマー)コメント

今回のプログラミングをする際に念頭に置いたこと

一方的な描写でないか、埋もれている事実・歴史を広く知らしめたい作品であるかを確認しながら映画館で観たいと思う作品を候補に挙げます。
また、既に公開済みの作品でも今観るべき東京都内で上映機会が少なかった場合は対象としています。
選考中に一般公開が決まり、泣く泣く上映を断念した作品もあります。

今年のラインナップの傾向

国際的社会問題を紐解く鍵となり得たり、コロナ禍以降の人とどう向き合っていくかの方向性を考える機会となる作品群となっております。

中でも注目を浴びそうな作品とその理由

「標的」
慰安婦に関するスクープ記事を捏造とバッシングされた新聞記者の記録です。バッシングの中心人物の1人であった安倍晋三氏が殺害されてからの東京都内での初上映となります。

「霧が晴れるとき」
忘れられた戦争と言われたアッツ島・キスカ島での戦いについての映画です。日本・アメリカ・アリュート人それぞれの遺族が織りなす感動的な秘話です。私の好きな映画に「太平洋奇跡の作戦 キスカ」がありますが、更にこんな奇跡があったのか!となりました。当時アリューシャン列島に従軍していたドナルド・キーンが存命だったらと思わずにはいられません。

読者へのメッセージ

これまでも映画を観ることがきっかけで興味を持った出来事がたくさんありましたが、映画祭に関わるようになって益々その範囲が広がりました。還暦近くになっても知らないままだったことがこんなにもあるのかと毎年驚いております。毎日絶妙な組み合わせとなっておりますので、まずはお得な3回券で1日過ごしてみては如何でしょうか?

佐藤寛朗(短編部門 プログラマー)コメント

今回のプログラミングをする際に念頭に置いたこと

短編の場合は、実験映像やアートに近いものからテレビドキュメンタリーまで、様々な表現領域があります。それをテーマ別に括ることで、ドキュメンタリーの多様性や可能性が広がる見え方になるように工夫しています。とはいえ、数分の作品でも選考の際議論になるのは「ドキュメンタリーとしてみれるかどうか」なので、作品の奥にあるドキュメンタリー表現の“核”とは何かを、いつも考えさせられます。

今年のラインナップの傾向

よくドキュメンタリーは“関係性の表現”と言われるのですが、その意味では取材対象と真摯に向き合い、どう描けば相手の特質をスクリーンの向こう側にいるお客様に届けられるのかをよく考えた、ドキュメンタリーとして“真面目な”作品が今年は多い気がします。それが、テーマを強調したり、人間関係を深めたりすることとは一段異なる“映像表現”として展開されるところが、ドキュメンタリーの奥深さだと思いますね。

各短編プログラムの紹介

まずは「高校生たちのエモーション」と名づけられた、部活に打ち込む高校生を描いたプログラムですかね。2作品とも顧問の先生を含めた青春群像劇なのですが、従来のスポ根や感動物語とは少し違った側面が見えてきて、新鮮でした。
「看取りの時間」や「男の履歴書」のプログラムでは、身近な人々の“死”が描かれます。命の限りに直面した時、残された人々が何を思い、どう動くのか...。普遍的なテーマでありながら、作品ごとの個性が際立ちます。
「小さき声の抵抗」や「地域に生きる」では、アイヌや沖縄、福島、鳥取の限界集落、川崎市の郊外...とそれぞれ事情は異なりますが、地域に根を張り生きることの意味がくっきりと見えてきますし、「切りひらく女性たち」では、多様性を叫ばずとも、ユニバーサルな生き方は肩肘はらずに実践できるんだ、と教えてもらえる気がします。
歴史のうねりの中で、忘れてはならない問題に目を向けた「戦禍の爪あと」や、アートがあることが、文字通り人間の明日の活力に繋がると実感できる「アートのある暮らし」の作品群からも、学べることが多いです。
長編「Paper City/ペーパー・シティ」と併映される「『遺言』~呉服店二代目が七十六年、思い続けること~」は、人は渾身のメッセージに触れた時にどう受け止めてあげられるのかを、迷いながらも一緒に考えられる作品だと思います。

読者へのメッセージ

短編部門では、様々なテーマを様々な見せ方で捉えた21本の作品を紹介していきますが、SDGsや多様性、ジェンダーなど昨今話題に上がる課題の多くは今回上映される作品に含まれており、そういった問題を考えたければ、まずは劇場に足を運んで、実際にみてみることをおすすめします。目の前の問題に七転八倒しながらも、それぞれの方法で記録に残した作家たちの奮闘を、ぜひスクリーンで一緒に味わってみてくださいね。

金子遊(人類学・民俗映像部門 プログラマー)コメント

今回のプログラミングをする際に念頭に置いたこと

人類学・民俗映像部門はコンペですので、予備審査員の方々と「スクリーン上映に堪える内容と質」を基準に選考しています。偶然ではありますが、日本、沖縄、イタリア、バリ島、エチオピア、タンザニア、ウズベキスタンなど、世界各地域の民族文化をバランス良く紹介できることになりました。
短編集はいつもネーミングに迷いますが、エチオピアの吟遊詩人、タンザニアの呪術師、ウズベキスタンの交霊術の3本になったため、躊躇することなく「シャーマンと芸能者」というエッジの効いたタイトルを付けました。

今年のラインナップの傾向

人類学・民俗映像部門では、学術的で記録的な作品が多いと思われがちですが、今年は非常にユニークでクリエイティブな作品が集まりました。
日本における神楽の放下芸を追った「それでも獅子は旅を続ける」の監督は民族音楽学の専門家ですし、琉球舞踊や三線の文化伝承を記録した「ウムイ『芸能の村』」の監督は沖縄在住のスイス人で、そのスタイルは観察的です。シチリア島の複数の祝祭を見せる「ミステリーズ」はダイレクト・シネマの手法を突きつめて、一切の言葉を排した実験的な民族誌の試みとなっています。

中でも注目を浴びそうな作品とその理由

TDFFでは、人類学関係の特集にお客さんがよく入る傾向があります。今年は、牛山純一がプロデュースした「すばらしい世界旅行」で活躍した、ディレクターの市岡康子さんを審査員にお迎えします。
そこで「特集 パプアニューギニア」と名付け、市岡さんがニューギニア島で撮った「クラ - 西太平洋の遠洋航海者」「ギサロ」「裸族最後の大酋長」の3本と、現代のパプアニューギニアの森林の危機を描く「森からの声」をプログラムしました。
どれも普段見れない作品なので、見逃さないようにお願いします。なかでも、ダニ族の酋長の語りと再現映像で描く「裸族最後の大酋長」は、記録と虚構を混ぜ合わせた珍しい手法の作品で、シネフィルにもおすすめします。

読者へのメッセージ

当映画祭では、映画館のスクリーンでもサブスクでも見られる機会の少ない作品を集めています。5年目になり、映画ファンの期待にこたえられる質と量になってきました。今年は上映期間が2週間に拡大し、大分見やすくなりましたので、ぜひ足をお運びください。

東京ドキュメンタリー映画祭2022

2022年12月10日(土)~23日(金)東京都 K's cinema
料金:1500円 / 小学生、中学生、シニア 1000円

長編部門コンペティション

長編1 東京大空襲

「Paper City/ペーパー・シティ」(監督:エイドリアン・フランシス)
「『遺言』~呉服店二代目が七十六年、思い続けること~」(監督:清水亮司)

長編2

「標的」(監督:西嶋真司)

長編3

「そしてイスラの土となる~日系キューバ移民の記録」(監督:鈴木伊織)

長編4

「アダミアニ 祈りの谷」(監督:竹岡寛俊)

長編5

「霧が晴れるとき」(監督:小川典)

長編6

「オーディナリー・ライフ」(監督:魏鵬鶴)

長編7

「マエルストロム」(監督:山岡瑞子)

長編8

「DAYS」(監督:藤本純矢、未紀)

長編9

「ポラン」(監督:中村洸太)

長編10

「カービング・ザ・ディバイン 仏師」(監督:関勇二郎)

長編11

「目の見えない白鳥さん、アートを見にいく」(監督:三好大輔、川内有緒)

短編部門コンペティション

短編1 小さき声の抵抗

「サーモンピープル ~アイヌ“先住権”を求めて~」(監督:寺田和弘)
「福島からのメッセージ ─それでも、私たちはここで生きていく─」(監督:蟹江節子)
「島がミサイル基地になるのか 若きハルサーたちの唄」(監督:湯本雅典)

短編2 戦禍の爪あと

「『望郷』──未認定中国残留孤児 郜鳳琴の物語」(監督:劉聡)
「待ちのぞむ」(監督:セ・アル・マムン)

短編3 高校生たちのエモーション

「北照ドキュメンタリー2021【誇り】」(監督:森田浩行)
「走れ!走れ走れメロス」(監督:折口慎一郎)

短編4 地域に生きる

「私はおぼえている:竹部輝夫さんと中津の記憶」(監督:波田野州平)
「不安の正体 精神障害者グループホームと地域」(監督:飯田基晴)

短編5 切りひらく女性たち

「ディンデフェロ」(監督:ヤン・イェックレ)
「NNNドキュメント'22 ともしび~今治大浜一丁目17年の記録」(監督:寺尾隆)
「メ~テレドキュメント 東京の日の丸」(監督:村瀬史憲、服部倫子)

短編6 看取りの時間

「松の樹の下で - Under the Pine Tree」(監督:国本隆史)
「火曜日のジェームズ」(監督:ディーター・デズワルデ)
「会者定離」(監督:李雄)

短編7 男の履歴書

「無理しない ケガしない 明日も仕事 ~新根室プロレス物語~」(監督:湊寛、堀威)
「暴力親父 余命4ヵ月 憎しみと愛の狭間で。」(監督:清藤裕貴)

短編8 アートのある暮らし

「ある日のアルテ」(監督:吉田孝行)
「DAY」(監督:井手内創)
「弦胡琴の呼び声」(監督:曹也傾)
「ロッツ・オブ・バーズ」(監督:福原悠介)

特別上映

特別1 暗黒舞踏の世界

「藤原 - Fujiwara」(監督:細田麿臣)
「元藤舞踏記録映画」(監督:猪鼻秀一)

特別2

「ワタシタチハニンゲンダ!」(監督:高賛侑)

特別3

「チロンヌプ カムイイオマンテ」(監督:北村皆雄)
※「チロンヌプカムイ イオマンテ」の「プ」は小文字が正式表記

特別4

「ルーペ カメラマン 瀬川順一の眼」(監督:伊勢真一)

人類学・民俗映像部門コンペティション

人類学・民俗映像1

「それでも獅子は旅を続ける~山本源太夫社中 伊勢大神楽日誌~」(監督:神野知恵、山中由里子)

人類学・民俗映像2

「ウムイ『芸能の村』」(監督:ダニエル・ロペス)

人類学・民俗映像3 祝祭のかがやき

「ミステリーズ」(監督:ダニエル・グレコ、マウロ・マゲリ)
「チュプック―イカット文様に宿る魔除けの力」(監督:TAMA MON 22―多摩美術大学文様研究プロジェクト、深津裕子)

人類学・民俗映像4 シャーマンと芸能者(人類学短編集)

「吟遊詩人 -声の饗宴-」(監督:川瀬慈)
「呪術師の治療 ─タンザニア」(監督:松永由佳)
「交霊とイスラーム:バフシの伝えるユーラシアの遺習」(監督:和崎聖日、アドハム・アシーロフ)

特集 パプアニューギニア

特集1

「クラ - 西太平洋の遠洋航海者」(監督:市岡康子)
「ギサロ」(監督:市岡康子)

特集2

「裸族最後の大酋長―石器時代から現代までを生きた男」(監督:市岡康子)

特集3

「森からの声」(監督:マルク・ドジエ、リュック・マレスコ)