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岸井ゆきのがボクシング通して“体を研ぎ澄ませた”主演作「ケイコ」完成披露

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「ケイコ 目を澄ませて」完成披露試写会の様子。左から三宅唱、岸井ゆきの、三浦友和。

「ケイコ 目を澄ませて」の完成披露試写会が本日11月7日に東京・スペースFS汐留で行われ、キャストの岸井ゆきの、三浦友和、監督を務めた三宅唱が登壇した。

生まれつき難聴を持つ元プロボクサー・小笠原恵子の自伝「負けないで!」を原案に、東京下町のジムで練習を続けるケイコの毎日と、ボクシングを続けることへの迷いを描いた本作。岸井がケイコ、三浦がケイコが通うジムの会長を演じている。第72回ベルリン国際映画祭のエンカウンターズ部門をはじめ、世界21の映画祭に正式出品された。

ボクシングのトレーニングや手話の習得の必要性など、最初はケイコ役に不安も大きかったという岸井。監督がまだ決まっていない段階で主演のオファーを受けたそうで「プロデューサーとの二人ぼっちから、監督やスタッフが決まって、どんどん仲間が増えて心強くなっていった。練習には監督も一緒に参加してくださって、その中でネガティブな気持ちはまったく無くなって前向きに取り組んでいくことができました」と振り返る。

ボクシング監修を務めたのは、本作にも出演している俳優の松浦慎一郎。岸井は三宅、松浦とともに3カ月に及ぶボクシングの練習に臨んだ。台本は練習をする中でどんどん変更されていったそうで、岸井は「台本をいただいてから、どんな人間なんだろう?と考えることが多いと思うんですが、この映画は練習が始まってから台本ができていった。先入観がない状態でトレーニングが始まって、その中でケイコが形成されていきました」と明かした。

岸井と初共演の三浦が「クランクインの日に彼女をジムの中で見たとき、プロボクサーとして仕上がっていたんですよ。ボクシング映画は撮り方でごまかすこともあるんですが、それがまったくない。引きの画で長く(カメラを)回しても大丈夫な力量。そのケイコがいたので、自分は『ただ見守っていればいいんだ』と思ったぐらいです。だから本当に楽でした。意思の疎通が暗黙のうちにできる状態でした」と回想し、岸井を見やって「あなたの努力のおかげです」とたたえる場面も。現場では周囲に気を使う余裕がなかったという岸井は「もうケイコに埋没している状態で、本来だったら、友和さんが来たら『挨拶に行かなきゃ』となるんですけど、動けない。でも、そういうことを許してくださる。最初からケイコと会長の関係でいてくださって、共演シーンじゃなくてもジムの現場で見守ってくださっていた。本当に稀有な経験をさせていただきました」と言葉を返した。

ろう者を描くにあたり、書籍や映像資料、取材などを通してリサーチを重ねた三宅。東京都聴覚障害者連盟や手話あいらんどの協力者、手話通訳者、本作に出演したろう者の俳優である山口由紀、長井恵里らと対話を重ねたという。「手話表現だけでなく、手話をしていないときの姿、生き方。どうやって朝起きるんですか?早起きしたいときはどうするんですか?といったところから始めて、さまざまなことを教えていただきました。自分が考えていることについても議論を重ねて。撮影現場にも来てくださった。本当に心強い方々と映画を作れて幸せでした」と感謝を伝えた。

最後に「人生の岐路」を問われた岸井は、本作を挙げ「ずっと好きで追い求めてきた『映画』に少し近付けた気がしました。でも、ずっと追い続けなきゃいけないものなんだとも思い知らされました。この映画を通じて今までとは違う景色を見ることができた」と回答。また「この映画は、今この時代で生きること、人と共存すること、生まれ持った体で、性別で、境遇で生きること、そしてボクシングを通して、体を研ぎ澄ませて生きている人間の話です。ぜひスクリーンで16mmフィルムの景色を堪能していただきたいです」と呼びかけ、イベントを締めくくった。

「ケイコ 目を澄ませて」は12月16日より東京・テアトル新宿ほか全国でロードショー。バリアフリー上映も予定されている。

(c)2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINÉMAS