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いま、ドキュメンタリーがアツい! TBS DOCS特集①

“登山界のアカデミー賞”に輝く世界的クライマー、
その驚愕の足跡を追う!

『人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版』

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国内外でドキュメンタリーへの注目が集まっている昨今。中でも、TBSが新たに立ち上げたブランド“TBS DOCS”は、開局以来ドキュメンタリーの制作に注力してきた同局ならではの視点や取材体制、幅広いテーマなどが高い評価を集めており、この秋~冬には珠玉の3作品が次々と劇場公開される。「ぴあ」では、このTBS DOCS作品の連続特集を実施! その第1弾が、誰もが驚くであろう世界的登山家の挑戦に肉薄した『人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版』だ!

死と隣り合わせた標高8000メートル超の世界で
山野井泰史はなにを見たのか?

世界の巨壁に次々に挑戦し、前人未踏の記録を叩き出してきた我が国が誇る世界的クライマー・山野井泰史。『人生クライマー 山野井泰と垂直の世界 完全版』は、登山家の憧れの存在でもある彼の偉業と生き様に、TBS報道局に所属し、自らもヒマラヤ登山の経験があるジャーナリストの武石浩明が肉迫した渾身のドキュメンタリーだ。

映画は山野井がヒマラヤ最後の課題と言われ、未だ誰も登頂に成功していないマカルー西壁に単独で挑む1996年の〈究極の挑戦〉と下山を余儀なくされた厳しい現実を、貴重な未公開ソロ登攀映像で映し出しいく。

さらに2002年のギャチュンカン登頂後の壮絶なサバイバル、奥多摩山中で熊に襲われたアクシデントにも本人や妻・妙子、関係者の証言などで振り返りながら、あの挑戦から25年経った山野井の現在も見つめる。

果たして、死と隣り合わせた標高8000メートル超の極限の挑戦の先で世界屈指の名クライマーはなにを見たのか? 多くの命が失われたデスゾーンからなぜ彼は生還できたのか? そして、大きな代償を負いながらも、山野井が今もなお“垂直の壁”に挑み続ける理由とは? その真実を伝える本作の見どころを紹介していきます。

極限の世界に生きる伝説のクライマー
山野井泰史のココがスゴイ!

①<単独><無酸素><未踏ルート>にこだわる!

世界の巨壁に〈単独〉〈無酸素〉〈未踏ルート〉で登る! 危険が伴うその究極のスタイルに強いこだわりを持ち、それを実践しているのが他の登山家たちとは違う山野井泰史のスゴいところだ。

劇中の本人も「みんなで登ったときは登った気がしない。登頂したときの達成感が違う」と語っているが、世界中の名クライマーたちを弾き返してきた前人未踏のマカルー西壁に、アルパインスタイル・ソロで登る山野井の挑戦は普通の人の常識を遥かに超えたもの。

武石浩明監督も「世界でいちばん難しい“ヒマラヤ最後の課題”に山野井さんが単独で行くというのが魅力的で、だから取材を申し込んだ」と告白。その究極の挑戦のすべてが本作には記録されている。

②登山界最大の栄誉“ピオレドール生涯功労賞”をアジア人として初受賞!

山野井泰史は2021年、“登山界のアカデミー賞”と言われる「ピオレドール生涯功労賞」をアジア人として初受賞。ラインホルト・メスナー(イタリア)やダグ・スコット(イギリス)、ヴォイテク・クルティカ(ポーランド)などと並んでクライミングの歴史にその名をしっかりと刻んだ。

山岳雑誌『山と渓谷』では読者の「好きな登山家第1位」(2016年1月号)に選ばれ、今年の7月に単行本『CHRONICLE クロニクル 山野井泰史 全記録』が出版。コミック誌「ビッグコミック」では伝記漫画『アルパインクライマー-単独登攀者・山野井泰史の軌跡-』も好評連載中で、彼の偉業が再び世界の注目を集めている。「マカルー西壁」挑戦から25年。あのクライミングの意味が今解き明かされる。

③凍傷で手足の指10本を失い、熊に襲われ重傷! それでも登り続ける!

山野井泰史の人生はマカルー西壁挑戦後も凄まじい。沢木耕太郎の『凍』でも描かれた2002年のギャチュンカン登頂後には、凍傷で手足の指10本を失う。2008年には奥多摩の山中で熊に襲われ、鼻をもぎ取られそうになる重傷を負った。だが、山野井自身はそれらの大事故も乗り越え、本作でも南伊豆の岩壁に挑戦しようとする現在の山野井の姿をとらえていく。

なぜ、そこまで挑み続けるのか?「“南伊豆に誰も触れてない壁がある”って聞いたときに単純にワクワクしたんです。誰も触れてない、突破できるかどうか分からないところに挑むのはやっぱり面白いですね」と山野井は言う。「誰かのために登るなんてことは100パーセントない。初登攀の記録を今さら更新したいという気持ちもあまりないです」。

劇中で穏やかな笑顔を見せる山野井は私たちと同じ普通の人に見えるが「あれは仮の姿」と笑う。「“今年はあの山、来年はあの山に登れたらいい。人生それだけでいい”と真剣に思っている僕は、みなさんが想像できないぐらい頭がおかしいですよ。かなり発狂しています(笑)」。

山野井を突き動かしているのは、彼自身も止められない溢れ続ける欲求なのかもしれない。

自身もクライマーの武石浩明監督だからできた
執念の密着と超レアな映像の数々

本作が山野井の究極の挑戦に密着し、その素顔に迫ることができたのは、監督が自身もクライマーの武石浩明だったからだ。

「武石さんは山の記録や僕について高いレベルで知っていた。僕がなにを求めているのか、ということも熟知していた」と山野井が振り返る。その信頼関係があったからこそ、日本にいるときは「マカルー西壁を制覇できるのは世界中を見回しても俺しかいない!」と目を輝かせていた山野井の表情が、登頂の日が近づくに連れて緊張を帯びていく生々しいさまもくっきり。

「沢木さんも丸山直樹さんも山野井さんのことを書いているけれど、マカルー西壁のことは空白状態です。でも、私たちはそのすべてを見ていたし、撮っていた。あの失敗は価値のあるものだと思ったし、“ソロ”が本来のスタイルの山野井さんの人生を描く上では絶対に外せないと思ったんです」と武石監督。

「山野井さん以降も世界の名だたるクライマーたちがマカルー西壁に挑戦して全員弾き返されているだけに、あれから四半世紀経った今、何度も逆境を跳ね返して登り続ける山野井さんの姿を振り返ることに意味があると確信したんです」

そう、本作は極限に挑み続ける登山家の魂に、彼の“生”に魅せられたひとりのジャーナリストが迫った執念の記録。その全貌が『TBSドキュメンタリー映画祭2022』で上映されたバージョンに9分の新規映像を加えて再編集した、“完全版”となって映画館のスクリーンに映し出されるのだ。

Check!

『エヴェレスト 神々の山嶺』に主演もした岡田准一が入魂のナレーション

夢枕獏の山岳小説を映画化した『エヴェレスト 神々の山嶺』(16)の主演を務め、自身もクライマーの俳優・岡田准一が本作のナレーションを担当している点にも注目したい。

“語り手”としてドキュメンタリーに初参加した岡田は、「僕自身山好きでクライマーは憧れの存在。なかでも山野井さんは、混じり気のない眩しい存在で、その純度の高い生き方には美しさを感じます。日本が誇る、知ってもらいたい日本人のひとりです」と言う。

「本編中にはヒマラヤで行方不明になった知人の姿も映っていて、言葉に詰まってしまう瞬間もありました。極限に挑むクライマーの“魂の震え”を感じ、勇気がもらえるドキュメンタリーです」。

そんな岡田について、山野井も「岡田さんと対談した沢木耕太郎さんが“山野井くんみたいだったよ”と言ったのを覚えています」と述懐。「どこが似ていたのか分からないけれど(笑)、今回のナレーションはとてもよかったですね」。

Review
常人には理解できない精神構造
だからこそ輝く孤高のクライマー

ドキュメンタリーは面白い。そこには劇映画やドラマでは決して表現できない“本物”の人生や事象、人間の本質が浮かび上がるからだ。

自分は登山家ではないし、山登りを趣味にしているわけでもないので、本作を観るまで山野井泰史さんのことは知らなかった。けれど、誰も登頂に成功していない前人未踏の巨壁に挑んだ日本人がいたと知って俄然興味が沸いたし、本作でしか見られない、山野井さんがマカルー西壁に挑戦している実際の映像を観たときはとにかく圧倒された。

しかし、それ以上に興味深かったのは山野井さんの生き様だ。狂っている。けれど、山のことを語っているときの顔は本当にイキイキしていて、山が心底好きだということがそれだけで分かった。

手足の指を失って、身体が不自由になったいまも次なる“垂直の壁”に挑もうとしている現在の山野井さんの精神構造はなかなか理解できない。それが本人にしか分からない“山野井泰史”という孤高のクライマー。母親も奥さんもその挑戦を止めなかったから、彼はいまも輝き続けているのだ。(映画ライター:イソガイマサト)

Check!

テレビでは伝えきれない真実をドキュメンタリー映画として発信する“TBS DOCS”

TBSは1955年の開局以来ドキュメンタリーを制作、放送し続けてきたが、2021年11月、歴史的な事件やいま起きている出来事、市井の人々の日常を追い続け、テレビでは伝えきれない真実や声なき心の声をドキュメンタリー映画として世の中に発進する新ブランド“TBS DOCS”(海外ではドキュメンタリーのことを“ドックス”と呼ぶ)を設立した。

『人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版』も元々は深夜のドキュメンタリー番組の放送から。今春開催の『TBSドキュメンタリー映画祭2022』で上映された映画版が好評を受け、この度《完全版》として、“TBS DOCS”作品の1本となった。

今後も、TBSテレビ特派員にして、YouTubeでも注目される「ボーン・上田記念国際記者賞」受賞の須賀川拓が戦争の真実に斬り込む『戦場記者』(12月16日公開)をはじめ、観る者の心を震わす衝撃のドキュメンタリー映画が続々待機中。“TBS DOCS”から目が離せない!

■TBS DOCS 公式サイト

『人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版』

11月25日(金)より公開
https://jinsei-climber.jp/

Text:イソガイマサト