明日海りおが思う“美しい人”の条件「悪口や文句は言わない。でも、たまには愚痴をこぼしてもいい」
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明日海りお (撮影:友野雄)
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すべて見る美しい人は、見た目だけを指すのではない。深い教養に、他者への敬意、そして常に努力を絶やさぬ姿勢。内面が、揺るぎない美の礎となる。
明日海りおもまた、美しい人だ。Huluオリジナル『明日海りおのアトリエ』では板の上に立つ姿とはまた違う、素顔の明日海りおを披露。中でもハッとさせられたのが、言葉遣いの美しさだった。明日海りおは、美しい日本語を、崩さず、丁寧に話す。
「本当ですか。私、言葉が変なんですよ。いつも片言なんです(笑)」
そう照れ臭そうに謙遜して、“言葉”に込めた想いを語る。
「言葉って、相手への思いやりの表れのような気がしていて。なので大事に扱うようにはしています。自分の心の中にある気持ちを表すには、どの表現で、どの順番で話したらいいんだろうということは、すごくよく考えます。だから、こういう取材の場ではよく言葉につまっちゃって、まったく取材向きではないんですけど(笑)。でも、時間がかかってもいいから、私の本当の気持ちをいちばんふさわしい言葉でお届けできたらと思っています」
地元の静岡に訪れると、自然と涙が出ました
元宝塚歌劇団花組トップスター。そして現在は舞台だけではなく、連続テレビ小説『おちょやん』を筆頭に映像でも活躍。これだけキャリアを積んでも変わらない誠実さこそが、明日海りおの魅力かもしれない。
初の冠番組『明日海りおのアトリエ』が好評を受け、11月24日(木) よりSeason2がHuluにて独占配信開始。今度はアトリエを飛び出し、憧れの楽園・沖縄を訪れた。
「宮古島は2度ほど行ったことがあったんですけど、本島は初めてでした。沖縄の音楽ってやっぱり独特で、歌声や踊りに宿る血潮みたいなものを肌で感じられた経験は、これから私が舞台に立つときに思い出せたらいいなと思いましたし、琉球ガラスや古酒など独自の文化を伝承していこうというみなさんの郷土愛にふれて、私も温かい気持ちになりました」
さらに、自身の故郷である静岡もめぐった。
「自分が通っていたバレエ教室や、当時立っていた劇場を久しぶりに訪ねました。宝塚時代のことを取材していただくことはたくさんあるんですけど、意外と子どもの頃のことってこういう機会がないともう思い出せなくなっていたので、とってもいいチョイスをしていただいたなと思います」
中学3年で宝塚を受験。難関を乗り越え、2001年、宝塚音楽学校に入学した。若くして地元を離れ、兵庫・宝塚で寮生活を送ってきた明日海りおにとって、故郷は、まだ何者でもない、夢見る少女としての日々を過ごした場所だ。
「入寮するために準備をしたこととか、昨日のことのように覚えているつもりだったんですけど、いろいろ忘れていることもあって。懐かしい人や景色に出会うたびに、あの頃の思い出が甦ってきて、自然と涙が出てきましたね。あと静岡はわさびの生産地としても有名で、採れたてのわさびを食べさせてもらったんですよ。私、なぜか採れたてだから味もまろやかなんじゃないかという謎の思い込みがあって、結構豪快に食べちゃったんです。でも、やっぱりわさびはわさびなので、すごいツーンときちゃって、そっちの涙もありました(笑)」
いつでも軌道修正できると思えばアップデートも怖くない
『明日海りおのアトリエ』Season2は“アップデート”がコンセプト。変化の激しい時代だからこそ、日々アップデートしていくことは大人にとっても重要なテーマだ。
「私の場合は体が仕事道具なので、年齢と共に体も変化していくし、日々アップデートしていかないと、どんどん衰えていくのを実感しています。だからしっかり運動をして鍛えるのはとても大切なこと。それに、体だけじゃなく、感性も子どもの頃のようにひとつの刺激に対して、いろんな種類の感情を呼び起こせるような自分でいたいなということは常に意識していますね」
だけど、成功体験を積み、価値観の確立した大人にとって、自分の生き方や考え方を更新していくことは、そう容易いことではない。
「私も変化が怖かったり、新しいものに対して自分に合っているのかな、それを受け入れることで自分らしさが変わっちゃうんじゃないかなと怖気づいたり、そもそも自分らしさって何だろうと迷宮入りすることはよくあります(笑)。でも、自分の感性を瑞々しく保つには、チャレンジは欠かせない。だから、とりあえず試してみる精神を持つことは大事だと思います。やってみて自分に合ってないなと思ったら元の場所まで引き戻せばいいだけ。いつでも軌道修正できるという心の余裕を持っておけば、アップデートすることも少しは怖くなくなる気がします」
できる努力は何でもする。だけど、努力で自分を縛りすぎない
できるなら、美しくありたいと思う。それは、単に見た目だけじゃない。心が美しくあれば、どんな自分でも認めて受け入れられる、そんな気がするからだ。凛としているのに圧はなく、柔らかい風のような空気をまとった明日海りお。彼女の内面からにじみ出る美しさを支えているものはなんだろうか。
「悪口だったり文句だったり、マイナスな言葉は言わないようにしています。たとえば、疲れたときも、しんどいって口にしたら余計にしんどくなるじゃないですか。それに、私が疲れたと言うことで周りに気を遣わせてしまう。周りに気を遣わせたことで、今度は私もそれを負担に感じて、負のループに陥っちゃう。だから、マイナスなことはなるべく発しないように、というのはずっと意識していることです」
そうたおやかに微笑みながら、少し茶目っ気のある表情を覗かせて、「でも」と続ける。
「あんまりそうやって自分を厳しく律し続けるのも考えものですよね(笑)。特に宝塚を退団したあとは、ちょろっと弱音を出しちゃった方がうまくいくこともあるんだと考えるようになりました。だから疲れたときは、愚痴をこぼしてもいいと思います。ただし、ただ『しんどかった』で終わるのではなく、『でもそれもやりがいだよね』と明るく励まし合える相手であること。そうやって自分の気持ちをポジティブな方向に持っていける人との関係を築くことも、内面を美しく保つ上では大切ですよね」
何事もストイックすぎなくていい。それは、どうやら外見を磨く上でも同じようだ。
「お水をたくさん飲むとか、野菜をいっぱい食べるとか、油分を摂りすぎないとか、お砂糖はなるべく摂らないようにするとか、1日1回は必ず汗をかくようにするとか、人からいいと言われたことはすべてやるようにしています。その上で、あんまり縛られすぎないこと。縛られすぎると、あれができてない、これができないってどんどん陰気になっちゃうので。あんまり厳しくなりすぎず、自分を理想に近づける努力はしつつ、たまにはチートデーを設けてもいいなぐらいの余裕を持つようにしています」
自分を過度に追い込まないこと。肩肘を張りすぎないこと。そうやって自分を愛でる心のゆとりが、明日海りおから醸し出る、すっと背筋が伸びているのに、どこかまろやかな美しさの秘密なのかもしれない。
「最近効果を実感しているのは、お白湯ですね。温かいものを飲むだけで、体がポカポカしますし、腸が動き出す。1〜2週間続けただけで、体がすっきりして、むくまなくなりました。しかも、お湯を沸かすだけなので手間もかかりませんしね。朝、猫のご飯をやる前にカチッとするだけ(笑)。お白湯を始めたことで、冬だけじゃなく、夏でも体がこんなに冷えていたんだなって実感しました」
そう話しながら、「お白湯と言うと、女優さんとかモデルさんがみんな『お白湯を飲んでます』って言っているイメージがあって、『本当に?』ってちょっと疑っていたんですけど(笑)」と笑う。どこまでも気取ったところのない人だ。
決して自分を飾ったりはしない。だけど、できる努力は怠らない。そんな無理をしない向上心が、明日海りおをさらに美しく輝かせる。
取材・文:横川良明 撮影:友野雄
ヘアメイク:山下景子
スタイリスト:大沼こずえ(eleven.)
衣装協力/アクセサリー全て/ファンエンパイヤ(TEL:03-6418-7933)
ワンピース、パンプス※スタイリスト私物
ぴあアプリでは明日海りおさんのアプリ限定カット&アプリ読者に向けたインタビューをご覧いただけます。ぴあアプリをダウンロードすると、この記事内に掲載されています。
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