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連続ドラマＷ-３０『ヒル』
（2022年3月～放送・配信）

赤楚衛二・坂口健太郎が笑顔を封印！
若手俳優陣の躍動にも注目の復讐サスペンス

家主が留守にしている間に、こっそり上がり込んで生活する人々がいたら……。痕跡を残さず、金品にも手をつけず、シャワーやベッドを束の間使用して去っていく。さながら、他生物に寄生するヒルのごとく──。そんなゾッとする物語が展開する『ヒル』。今井大輔の同名マンガを実写ドラマ化した本作は、シーズン1でクレイジーなヒルの男・ヨビ（栁俊太郎）にハメられた青年・四宮勇気（赤楚衛二）の受難、シーズン2で伝説のヒル・カラ（坂口健太郎）の孤独な復讐劇を描いていく。

ヒルという不気味な存在を皮切りに格差社会の闇や貧困ビジネスにも言及しつつ、さまざまなヒルたちの思惑が絡み合うサスペンス、謎の殺人鬼“仮面の男”をめぐるミステリー、アンダーグラウンドの住人であるヒル同士のバトルアクションまで盛り込まれたエンタメ仕様。

加えて特筆すべきは、若手俳優陣の躍動だ。共に爽やかな好青年の印象が強い赤楚衛二・坂口健太郎が笑顔を封印し、シリアスなムードに終始。赤楚は泥臭く、坂口はシャープな戦闘シーンでも魅せる。栁俊太郎・板垣瑞生のヒール（悪役）っぷりも強烈で、各々の引き出しを堪能できる1作と言えるだろう。（SYO）

連続ドラマＷ-３０『青野くんに触りたいから死にたい』
（2022年3月～放送・配信）

王道胸キュン＆ホラーの新感覚ストーリー
佐藤勝利が主演を務める究極の恋の物語

交通事故で死んでしまった高校生の青野が幽霊となって恋人の優里の元に現れるが、彼の姿は優里にしか見えず、その身体に触れることもできない……。まさに“死さえ分かつことができない究極の恋”の物語が展開する。

と、あらすじを見ると、王道の“胸キュンラブストーリー”に思えるが、ここに突如、ガチモードの“ホラー”をぶち込んでくるところが新鮮。しかも外部の悪霊や呪いに立ち向かうのではなく、青野の存在そのものがホラー（＝恐怖）というのも面白い。

佐藤勝利（Sexy Zone）が普段は優しいが時折ブラックな人格に変貌する幽霊・青野を見事に演じており、髙橋ひかるもただ受け身ではない、ちょっぴり不思議ちゃん（劇中で登場人物のひとりから“メンヘラ”と言われる）なヒロインを好演。このふたりに神尾楓珠、里々佳が演じる同級生のふたりを加えた4人の熱くコミカルな関係性、距離感も心地よい。

今後、一番手を演じることが増えるであろう神尾の“主人公の親友でヒロインを優しく支える”ポジションを楽しめる貴重な機会かも。（黒豆直樹）

連続ドラマＷ-３０『今どきの若いモンは』
（2022年4月～放送・配信）

石沢課長（反町隆史）に会いたくなる!?
仕事終わりに1話ずつ見たいショートドラマ

「今どきの若いモンは」と上司が口にするとネガティブな言葉が続きそうなもの。しかし、反町隆史演じる（かっこいい）石沢課長は、今どきの若いモンは「ハイテクに強くていいな」「意外と不器用だな」「でも頑張っているな」などと、部下たちにフラットな視線を向けていく。

そんな石沢課長に会えるだけでも1話約8分、全22話が至福に感じられるが、応援せずにはいられないド根性系の新入社員・麦田（福原遥）から隣部署の厳格だが実はキュートな恵比寿課長（藤井隆）まで、登場人物たちがとにかく愛おしくチャーミング。基本的には麦田に寄り添った成長ドラマになっているが、それぞれの立場の悩み、もがき、ちょっとした喜びなどをギュギュッと軽快に描いているのがいい。

楽しみ方としては、仕事を終えた1日の終わりに1話ずつ大切に観進めるのがおすすめ。ただし、お仕事ドラマとしての学びを自らの日常に活かすというよりは、石沢課長の下で麦田たちと一緒に働きたくなってしまうかもしれないが。（渡邉ひかる）

連続ドラマＷ-３０『異世界居酒屋「のぶ」Season2～魔女と大司教編～』
（2022年5月～放送・配信）

京都の居酒屋が“異世界”にあったら…？
レパートリー＆飯テロ要素がパワーアップした第2弾

京都の商店街にあった居酒屋「のぶ」の入口は、なぜか中世ヨーロッパ風の異世界（だけど、これまたなぜか皆日本語話者）へ。その世界・アイテーリアでは、日本の居酒屋ではおなじみの庶民的な料理はこれまで存在せず、一気に大繁盛。おまけに“トリアエズナマ”ことキンキンに冷えた生ビールも大流行!?

2020年5月に放映された第1シーズンの大好評を受けてのシーズン2。飯テロ的なグルメ要素と京都の居酒屋が異世界にあったら、というファンタジー、それに異世界の物語ながら現代社会に直結する人間ドラマが展開する。

シーズン2は、グルメパートもドラマパートもパワーアップ。まずグルメパートは、のぶで提供される創作料理のレパートリーがアップしたばかりか、あったかほっこりのしずる感や咀嚼音にもこだわり、飯テロ要素が増強された。そしてドラマパートは、魔女狩りをベースにした物語で、マイノリティへの偏見と差別に対するメッセージも感じられるものに。これが見事なバランスで描かれており、続きをすぐに観たくなるシリーズになっている。

簡単レシピの居酒屋デザートを紹介する『異世界居酒屋「のぶ」〜しのぶとエーファの秘密の極上スイーツ編〜』もWOWOWオンデマンドであわせて楽しみたい。（よしひろまさみち）

連続ドラマＷ-３０『椅子』
（2022年5月～放送・配信）

又吉直樹が「椅子×女性の人生」を描く
自由で“よく分からない”異色のオムニバス

無類の椅子好きとしても知られる又吉直樹がオリジナルで脚本を書き下ろした、椅子と女性の人生を重ねて描く異色のオムニバスドラマ『椅子』。1話につき1脚の椅子が登場し、吉岡里帆・モトーラ世理奈・石橋菜津美・黒木華の4名が2話ずつ全く異なる主人公を演じている。

各話で登場する椅子はNo.14（ミヒャエル・トーネット）、ラシェーズ（チャールズ＆レイ・イームズ）、Y-チェア （ハンス・J・ウェグナー）といった名作の数々。60脚ほどの候補から選ばれただけあり、その存在感は圧倒的だ。それらの椅子を又吉はどのように物語へと落とし込んだのか──ビジュアルや歴史から紐解いていったという、各話ごとの異なるアプローチにも注目だ。

第3話『海へ』に主人公が“ラムネを肘に置いてから食べる”という描写が出てくるが、こういった登場人物たちの“意味が分からない”行動も『椅子』ではしばしば見られる。「自分が分かっていない感情になるようなものを描こうと心がけていた」と又吉は語るが、そういった描写を「何これ？　意味が分からないな」とスルーするのか、「そういえば自分も、他人には説明がつかないようなことを無意識にやっていることがあるな」とふと立ち止まるのか、それすらも観る者に委ねられ、表現とはかくも自由なんだとあらためて気づかされる。（とみたまい）

連続ドラマＷ-３０『ダブル』
（2022年6月～放送・配信）

“ふたりでひとつ”だった男たちのぶつかり合いとすれ違い
演劇界のバックステージものとしての面白さも味わえる

突然、天命を受けたように演劇に魅せられた多家良と、彼の才能に気づいて世に出すことにすべてを捧げる劇団員の友仁。身の回りのことからセリフ覚えまで面倒を見る友仁はどんなときも多家良のすぐそばに影のように寄り添っていて、よもやこれは『ファイト・クラブ』の変奏曲なのか？と思わせる場面もある。けれども多家良が俳優として頭角を見せ始めると、ふたりの物語は大きく、奇妙にうねっていくのだ。才能を持つ者とその才能に焦がれる者の葛藤、共依存からの脱却、そしてふたりでひとつの“ダブル”だった彼らが感情をぶつけ合い、やがてすれ違う瞬間を、中川和博監督は丹念にすくい取っていく。

稀有なきらめきを持つ俳優・多家良という難役を千葉雄大、嫉妬を隠し持つ友仁を永山絢斗。多家良を信じ、守り抜こうとするマネージャー役を桜庭ななみが演じ、3人のケミストリーが物語を盛り上げる。BL的な香りを漂わせる多家良と友仁の関係性には切なさもあるが、その先に描かれる演劇人としての志はひたすらに熱い。

「誰の入れ知恵だ？」と多家良を追い詰める大物監督や「相手になるな。相手を思え」と言う演出家の指導によって多家良が自立していくプロセスが劇中劇と重ね合わせて描かれており、バックステージものの面白さも存分に味わえる作品だ。（細谷美香）

連続ドラマＷ-３０『オカルトの森へようこそ』
（2022年7月～放送・配信）

“怖いけど笑える”唯一無二のホラー作品
予想の斜め上をいく怒涛の展開にも注目！

映画『貞子vs伽椰子』、『不能犯』などで知られる白石晃士監督が、得意のホラージャンルにモキュメンタリー要素＆POV（ポイント・オブ・ビュー＝主観視点）を加えて撮り下ろしたオリジナル作。 ホラーと言えばもちろんホラーではあるが、次々に襲ってくる恐怖現象と振り切った個性的なキャラクターたちのおかげで、“怖いけど笑える”（逆に言えばホラーが苦手な人でも見やすい）唯一無二の作品となっている。

ホラー映画監督の“黒石”として“白石”監督自身が出演し、堀田真由演じる主人公・市川の真横で常にカメラを構え続けるという設定がユニークかつリアル。恐怖シーンにはハイクオリティのVFXを惜しみなく投入するなど、ホラー部分に一切手を抜かないのもホラー監督としての矜持を感じる。

序盤は完全にイッてしまっている精神錯乱気味の美女から始まり、やたらと頼りになる“スーパーボランティア”の男、めちゃくちゃにすごい能力を持つイケメン霊媒師といった情報量多めのメンバーが加わり、全員で恐怖の森を旅していくことに。後半の予想の斜め上をいく怒涛の展開には、ただただ圧倒されること必至！（遠藤薫）

連続ドラマＷ-３０『ワンナイト・モーニング』
（2022年8月～放送・配信）

“お約束”のもと描かれる恋愛の多彩さが魅力
夜の魔法が心を通わせる青春群像劇

監督は『恋する寄生虫』でもそのビジュアリストぶりを発揮した柿本ケンサク。各話キーカラーに衣装や小道具を統一しているため見栄えはユニークだが、本質は等身大。「梅干しのおにぎり」や「タマゴサンド」など、各話のタイトルでもある朝食はどれも庶民的で、それらに絡めた台詞、人物描写、ストーリーの展開も実に親しみやすい。

一夜をともにした男女が朝食をともにする。このお約束のもと描かれる恋愛の多彩さと、それを演じる若手俳優の熱量と技術の高さが本作の魅力。各話に作られた涙というハードルも、演者が高い集中力で飛び越えていて清々しい。

“ワンナイト”というと体だけの関係を想起しがちだが、このドラマでは何かしらの悩みや葛藤を抱えた主人公たちが、夜の魔法にかけられてむしろ心を通わせ、一緒に朝食を食べたところからそれぞれの人生に前向きになる。恋愛の成就だけがハッピーエンドではないという視点に大賛成だ。

最終話は、全話に登場する無愛想なコンビニ店員（青木柚）が主人公。彼が無愛想になった理由に絡めて前7話が回想され、群像ラブストーリーとして鮮やかに集束する。（須永貴子）

連続ドラマＷ-３０『DORONJO／ドロンジョ』
（2022年10月～放送・配信）

誰もが知る人気キャラクター・ドロンジョ
清濁入り混じった彼女のルーツとは？

タツノコプロ創立60周年を記念して製作された本作は、正義の味方“ヤッターマン”のちょっと間抜けで憎めない敵役として人気のドロンジョのルーツに迫る物語。後のドロンジョになる主人公・泥川七音を演じるのは池田エライザだ。

七音は、非常に貧しい家庭環境のなか、自分の拳が唯一の存在価値と教え込まれ、肉体を酷使し“勝利”だけに執着している女性。アニメーションでなじみのあるドロンジョ、ボヤッキー、トンズラー3人組は徐々に関係性を築いていくが、物語序盤から七音は、“勝つこと”以外にまったく興味を見せないシリアスな展開が続く。

主演を務める池田が「令和の時代に新たにドロンジョが生まれるという解釈」と話していたが、多くの人が知るドロンジョにたどり着くまでの物語として観ると、腑に落ちる部分は多く、人間というものは決して一面的ではないということが説得力を持って表現されている。善とは何か、悪とは何か──非常に深い物語だ。（磯部正和）

連続ドラマＷ-３０『早朝始発の殺風景』
（2021年10月～放送・配信）

密室を舞台に少年少女の秘密が解き明かされる
舞台劇のような緊張感も魅力の青春ミステリー

本作はミステリーの手法で青春を描いた連作短編ドラマ。毎回、高校生同士の他愛のないやり取りから始まり、小さな違和感をきっかけに少年少女の抱える秘密が浮き上がる。

たとえば第1話は、早朝の始発電車で乗り合わせた高校生の男女が、お互いが始発に乗った理由について推理するところから始まる。一問一答のやり取りをしながら、お互いのスマホの中を見せ合い、画像やメモから相手の目的を探る駆け引きはミステリードラマとして面白く、こんな語り口で青春を描けるのかと驚いた。高校生たちの曖昧な関係性と繊細で危うい内面を見ていると、10代の揺れ動く心こそが最大のミステリーなのだと実感する。

映像作品としては、出演者が2～3人で、電車や観覧車といった閉鎖された空間でのやり取りが延々と続くため、舞台劇を観ているような緊張感があるのが魅力的。俳優陣にかかるプレッシャーは大きかったと思うが、主演の山田杏奈と奥平大兼を筆頭に、みんな好演している。（成馬零一）