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【おとな向け映画ガイド】いま一番泣ける映画 大泉洋、柴咲コウ、有村架純、目黒蓮が織りなす世代を超えた奇跡の愛──『月の満ち欠け』

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イラストレーション:高松啓二

今週(11月23日〜26日)の公開映画数は22本。全国100館以上で拡大公開される作品が『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』『母性​​』『劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』の3本、中規模公開・ミニシアター系が19本です。今回は、来週、12月2日(金) に公開される『月の満ち欠け』をご紹介します。

『月の満ち欠け』

カップルの運命的な出会いを巡る、時を超えたラブストーリー。いま、一番泣かせてくれる映画です。

原作は直木賞を受賞した佐藤正午の、発行部数56万部というベストセラー小説。それを、大泉洋、有村架純、柴咲コウ、人気沸騰中の目黒蓮(Snow Man)に、田中圭、伊藤沙莉と、これ以上ない旬なキャストで映画化した。監督は、この10〜12月に『あちらにいる鬼』『母性』、そして本作の3本が立て続けて公開される、まさにのりにのる廣木隆一だ。豪華なのは、実は、それだけではない……。

主演の大泉洋は、主人公小山内の28、36、47、55歳という4つの年代を演じわける。幸せな日々が、交通事故で愛する妻・梢(柴咲コウ)と高校生の娘・瑠璃(菊池日菜子)を失うことで一変する。思い起こすと、娘にはまだ幼かった頃から不思議な行動があった。亡くなってからも、娘はある女性の生まれ変わりだという男がでてきたり……と奇妙な話がついてまわる。この小山内の家族の物語と、1980年を舞台にしたあるカップルの悲恋がパラレルに進行していく。

カップルを演じているのが有村架純と目黒蓮だ。高田馬場のレコード店でアルバイトをする大学生・三角と既婚の女性との道ならぬ恋。その女性は、お金持ちの夫(田中圭)との折り合いが悪く、ときどき名画座へ行き、大好きな映画の世界に逃げ込んでいた。ある日、たまたま雨宿りをしていた店の軒先で、ふたりは出会う。謎めいた魅力的な年上の女性。三角のひと目ぼれ、だった。名前もきかずに別れた彼女のことが忘れられず、ほんの少しの会話を手立てに、街のあちこちを探し回り、映画館の前で待ち続ける……。彼女の名前は、瑠璃。小山内の娘と全く同じだった。

ふたりの瑠璃をめぐる、異なった時代のストーリーが重なりあっていく。月の満ち欠けのように、生と死を繰り返す、「生まれ変わり」を扱ったミステリアスな物語だ。

この映画の“豪華さ”のひとつ、それは映画のセットだ。三角と瑠璃が出会い、恋に落ちる街が高田馬場という設定。時代は1980年。三角が瑠璃を待ち続ける早稲田松竹は、現在ある実際の映画館前でロケ撮影されているが、他に重要なシーンの舞台となる高田馬場駅の駅前周辺は、茨城県筑西市に巨大なオープンセットを作り、その町並みを再現した。高田馬場をよく知っている人が、セットの話を知らずに見たら、どうやって撮影したのだろうと驚くはず。CGではだせないリアル感が細部にわたって作りこまれているのだ。

時代のリアリティを醸し出すために使われた、さらに豪華なアイコンともいえるのが音楽。80年といえば、ジョン・レノンがニューヨークで凶弾に倒れた年。その秋から冬にかけて、世界中の街に流れていた彼のアルバム『ダブル・ファンタジー』のなかの一曲「Woman」が劇中曲として効果的に使われている。

原作小説は、早稲田松竹のほかに高田馬場東映パラスという映画館が登場したり、当時の映画好きにとってはニヤリとさせるワードが並ぶ。映画も、そんな目配せでいっぱいだ。雑誌『ぴあ』を読んでいた人にも刺さると思う。例えば、三角が着ているTシャツロゴも映画のタイトル、『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』。最初の日本公開名は『純愛日記』だ。ぴあアプリの「クリエイター人生」コーナーで秋吉久美子さんが“子どもの頃にハマった映画”としてあげていた。ほかにも、早稲田松竹で上映されているのが小津安二郎の『東京暮色』だったり、恋人たちの会話も、思わず微笑んでしまう内容ばかり。

瑠璃の同級生・ゆい(伊藤沙莉)が登場し、いくつかの謎が解かれていくラスト。そろそろ終盤というのに、どっと押し寄せる涙腺刺激攻撃には、こまりました。それに、恋におちた有村架純と目黒蓮が、手をつないで、神田川っぺりを走る、走る、ひたすら走るシーン。なにか、言葉にできない気持ちに突き上げられてひたすら走る姿にも、思わず涙がこみあげてくる。これが青春、という感じでした。

文=坂口英明(ぴあ編集部)

(C)2022「月の満ち欠け」製作委員会