生田絵梨花「前進するために、今の自分に必要なこと」 『映画かいけつゾロリ』で声優に本格挑戦
映画
インタビュー
生田絵梨花 撮影:本多晃子
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12月9日(金)から劇場公開される『映画かいけつゾロリ ラララ♪スターたんじょう』で、生田絵梨花が声優に本格挑戦する。
ゾロリがスターのたまごをプロデュースするという、冒険活劇と音楽エンタテインメントの要素がミックスされた本作で、生田は物語の鍵を握るキャラクター・ヒポポを熱演。劇中では歌声も披露しており、彼女の魅力が余すところなく活かされた、見どころの多い役柄だ。
昨年末に乃木坂46を卒業し、今年から新たな道を歩み始めた生田。この作品での経験は彼女にどんな学びを与えたのだろう。
一緒にいて心地いいのは、いろんな痛みを経験してきた人
──生田さんは子供の頃から『かいけつゾロリ』に慣れ親しんできたそうですね。
生田 はい、ずっと読んでいました。自分の生活の中に普通に存在していた作品で、当時は楽しみの一部でした。
──今回、劇場版新作への出演が決まったときは、率直にどう感じましたか?
生田 まさかこういう形で関われるとは思っていなかったですし、しかも歌手を目指す女の子の役なので歌もやらせてもらえるということは、すごいご縁ですよね。
──台本を読んで、ストーリーはどう思いましたか?
生田 本当に単純な言葉を使うと、「とても良いお話!」って思いました(笑)。あまりに良いストーリーで、マネージャーさんにも伝えたほどです。
自分に自信がない、コンプレックスを抱いているような女の子が仲間たちと修行したり、励ましてもらってスターダムを目指していくというストーリーで、冒険のワクワク感もありますし。あと、この物語にはステージに立つ人じゃなくても共感できるような感情とか言葉も散りばめられているので、そこもいろんな人に響くんじゃないかと思いました。
──僕も台本を拝見しましたが、子供だけじゃなくて大人もハッとする言葉や場面がたくさんありますよね。
生田 そうですね。特に「コンプレックスだと思う部分が魅力なんだよ」というメッセージは、まさに性別や世代問わずいろんな人に届くものだと思いましたし。
──生田さんが演じるヒポポは、ご自身の目から見てどんなところが魅力的でしたか?
生田 弱い子なんだけど、人の気持ちに寄り添えるとか、誰かのことを照らせる力を持っていて、そういうところは彼女の魅力ですし、弱さだけではなく本人も気づいていないくらいの強さも備わっている子だなと思います。
──ご自身と重なる部分はいかがですか?
生田 私に限らず、誰しも重なる部分があるんじゃないかなと思います。自信満々になんでもやれる人って、実はあまりいないじゃないですか。
そういう意味では、何事にも鈍感な人って羨ましいなと思うことがあるんですけど、私自身が一緒にいて心地いいとか素敵だなと思う人って、いろんな痛みを経験してきた人なんです。ヒポポちゃんはまさにそういう子で、私も少しでも誰かにとってそういう存在になれたらいいなと思いました。
ヒポポちゃんが可愛く魅力的に見えるように心がけました
──なるほど。アフレコに関しても聞かせてください。生田さんがここまでアフレコに挑戦することは、ほぼ初めてですよね。
生田 はい。すごく楽しかったですよ。もちろん難しさもありましたけど、その場でいろいろなトライができる作業でもあったので、自分でも「ああ私、こんな声が出せるんだ」とかいろいろ試せましたし、収録現場にも全体に生き生きとした空気が流れていました。
──収録は他の声優さんと一緒に?
生田 今回はひとりだったんですよ。でも、他の声優の皆さんの声がすでに当ててあったので、それにすごく引っ張ってもらいました。
──ヒポポの声はどのようなイメージで作っていきましたか?
生田 実は「そんなに作り込まずに、等身大の感じでいいですよ」と言われていたので、そんなにガチガチに作り込んで臨んだわけではないんですけど、でもヒポポちゃんが可愛く魅力的に見えるようには心がけました。
あとは、自分が「こういう声を出そう」と絵を見ながら入れたので、ヒポポの表情とか目の中とか、本当にくまなく絵を見て、そこに当てた声がこんな声でしたっていう感じかな。
音響監督の三間さんもあまり表面の声のことを言わない方だったんですよ。そこで、例えば「今、ヒポポはこういう行動を取ろうとしている」とか「セリフにはこう書いてあるけど、こういう思いを持っているんじゃないか」とか、すごく的確な要素をシェアしてくださって、新鮮にできていたところもあります。
──序盤の自信なさげなヒポポと、後半からどんどん自信をつけていくヒポポと、その変化も絵に合わせて自然な形で演じられた?
生田 そうですね。まずは一度いろいろチャレンジしてみて、その後に「もうちょっとこうしてみようか?」とか「このパターンもやってみようか」とか言ってもらえたので、その言葉を信頼してトライしてみて、あとはよかったものをセレクトしてもらう形でした。
山寺宏一(ゾロリ役)の歌声や声に引っ張ってもらいました
──今回はヒポポとして劇中歌も披露しています。ヒポポとしての歌は、特にどういったことを意識しましたか?
生田 ヒポポは自信がないところからだんだん成長していって、最終的には大勢の人が聴いてくれるステージで歌う女の子になるので、その歌声にも成長の過程を乗せられるように意識しながら歌いました。
──複数の楽曲を歌っているそうですが、お気に入りの1曲を挙げるとすると?
生田 やっぱり『自信満々よ』かな。ヒポポの強さ、弱さの両方が感じられる曲で、私も歌詞にすごく励まされます。それに、大人の私にもあらためて気づきが多い曲なんです。
──作品の対象が子供たちかもしれませんが、そういう対象にも分かりやすい言葉で歌われているからこそ、シンプルに響くものもあるでしょうし。
生田 うんうん、そうなんです。(原作者の)原ゆたか先生も子供に引っかかるようなフックのある言葉を選びつつも、大人だったり自分自身にも共感できるようなことを考えているとおっしゃっていましたし、私もその言葉に共感しつつ、原先生の気持ちを背負いながら歌いました。
──劇中歌の中にはゾロリ役の山寺宏一さんとのデュエットもあるそうですが、山寺さんとはお会いできましたか?
生田 実はレコーディングも別々で、まだお会いできていないんです。
──では、山寺さんの歌を聴きつつ、そこに生田さんがご自身の歌を重ねていったと。レコーディングでふたりの歌が重なり合う感覚というのは、いかがでしたか?
生田 山寺さんの歌声もそうだし、セリフの声も本当にゾロリがその場で生きているようにしか思えなくて。なので、ヒポポとしても声優ほぼ初挑戦の私としても、胸を借りて引っ張っていただきました。
──ご自身のセリフや他のキャラクターのセリフで、特に印象に残った言葉はありますか?
生田 歌詞になってしまうんですけど、さっきの『自信満々よ』のサビに「思い切り蹴飛ばして 逆さにすればいい」というフレーズが出てくるんですけど、すごくいい表現だなと思って(笑)。
ヒポポちゃんは他の人より弱さを感じていたり、うまくできないとか思っているけど、それを自分の勇気で蹴飛ばすことができれば、普通の人が蹴飛ばしたものよりもさらに深さとか飛距離が出せるんです。そこに私もすごく勇気づけられますし、それによって負の感情も大切で必要な要素なんだなと思わせてもらいました。
──劇場で聴くのを楽しみにしていますね。公開を楽しみにしている読者の方に向けて、メッセージをいただけますか?
生田 まずは、本当に曲がどれもいいので、それを楽しみにしてもらいたいなと思います。それにゾロリ、イシシ、ノシシ、ビートをはじめ、いろんなキャラクターたちが個性豊かで、みんなが一緒になってヒポポのスターダムを応援してくれるストーリーなので、観た人も一緒に応援しつつ、でも観ている人たち自身もゾロリたちに応援されて頑張れるような、そんな作品になっているんじゃないかと思います。
勇気の一歩が踏み出しやすくなった1年。来年の抱負は?
──生田さんの2022年の活動についてもお話を聞かせてください。昨年末のグループ卒業後、今年は俳優業のみならず歌手活動や音楽番組のMC、アニメ声優など多彩な活動を続けてきました。ここまでの手応えはいかがですか?
生田 まだ1年経っていないとは思えないぐらい、たくさんの経験をさせてもらいましたし、すごく濃密な1年だったと思います。もともと未知の領域に進むことって誰しも不安だと思いますし、私自身すごく緊張しいなんですけど、「えいっ! やってみよう!」っていう勢いというか(笑)。いろんな場面において、勇気の一歩が踏み出しやすくなった1年でもありました。
──それはひとりになった分、誰かを頼るのではなく「自分が頑張らなくちゃ」という使命感みたいなものもあったのでしょうか?
生田 結局自分が心を閉ざしてしまうと、もうどうにもならないじゃないですか。だから自分はなるべくオープンな状態で、なにに対しても「教えてください! 助けてください! 学ばせていただきます!」みたいな(笑)、そういうスタンスが今の自分には必要であり、前進できる方法なのかなと思っているんです。
──それが1年、たゆまなく歩んでこられた要因だったと。
生田 あと、自分がやっていることって意外と客観的には見れないけど、その一方で周りからは「最近すごく活躍しているね」とか「忙しそうだね、頑張っているね」と言ってもらえることが増えたので、それでまた「うれしいな、もっと頑張ろう」と思えたのもあります。
──来年もいろいろ控えていると思いますが、最後に2023年の抱負を聞かせてください。
生田 まだまだ自分が知らないことや経験していないことがたくさんあるんです。そんな中、今年は自分が「すごいな」と思う人たちとの出会いがたくさんあった1年だったので、そういう経験をちゃんと自分の引き出しに丁寧に保存して、必要な場面でちゃんと引き出して使えるようにどんどんなっていけたらいいなと思います。
『映画かいけつゾロリ ラララ♪スターたんじょう』
12月9日(金)公開
(C)2022 原ゆたか/ポプラ社, 映画かいけつゾロリ製作委員会
取材・文:西廣智一
撮影:本多晃子
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