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ジェームズ・キャメロン監督が語る『アバター』最新作 にこめた未来への警鐘、若い世代へのメッセージ

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ジェームズ・キャメロン監督

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社会現象を巻き起こした『アバター』(2009)の続編にあたるファン待望の『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』 がついに日本上陸。プロモーションツアーの一環として、10年8カ月ぶりの来日を果たしたジェームズ・キャメロン監督が取材に応じ、本作にこめたメッセージや“おすすめ”の鑑賞法、さらに現在の映画界への思いを語りつくしてくれた。

――前作『アバター』から13年。当初からシリーズ化の構想があったと思いますが、当時思い描いていたイメージと、ついに完成した『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の間にどのような変化がありますか?

まず質問にお答えすると「まったくない」だね。本作が伝えようとしているテーマは、今まさに現実世界に訴えたいことに重なっているんだ。第一に挙げたいのは、家族というテーマ。過去と未来をつなぎ、ときには問題が生じることもあるが、そこから強い絆が生まれる。非常に普遍的な概念だといえる。そして、環境破壊が進む中で、サステナビリティにも触れることで、この映画を作る意味は一層深まった。これらのテーマは、自分自身がずっと以前から取り組んでいたことでもあるからね。

――社会現象を巻き起こした『アバター』の続編です。プレッシャーはありましたか?

少し傲慢に聞こえるかもしれないが、『アバター』と同規模の成功を収めることができるか考えることもあった。それでも、『アバター』製作の経験は、素晴らしいものだったし、チャレンジする価値はあると思ったんだ。新たなキャラクターを生み出すため、さまざまなリサーチをしたし、水中でのパフォーマンスキャプチャーについても研究を重ねた。実際に製作がスタートしたのは、2017年9月のこと。だから、完成までに5年以上の歳月がかかった。パンデミックの影響で、約半年間何も出来ない期間もあったんだ。

――すでに第3弾、第4弾の撮影が一部スタートしているとも聞きました。

今のところ、全5部作を製作するプランが組まれている。以前から『スター・ウォーズ』のようにシリーズ化したいと思っていたし、技術面でもストーリーテリングでも、まだまだ、多くのことにチャレンジした気持ちがあるからね。今はAIも研究しているよ。マーベル作品みたいに、タイトルを量産できるとは思っていないが、5部作に加えて、スピンオフ的な作品も作れたらいいね。まずは次回作(第3弾)を完成させることが先決だと思っているよ。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』

――最も推奨する鑑賞フォーマットはどれですか?

配信を待たず、まずは劇場で観てほしい。『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は劇場の大スクリーンで観ることを想定して製作されているからね。きっと、映画館で鑑賞すると、何か見逃したものがないか気になって、もう一度観たくなるはずだ。細かな海の魚たちとかをね。2D、3Dの選択は、それぞれ好みもあるだろうけど、そうだな、私が推奨するのはドルビービジョン、IMAX レーザーだと言っておこうかな。

――『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』では、主人公たちが故郷である神聖な森を追われ、海の部族に身を寄せる姿が描かれています。その過程で、家族の絆が試される場面もありますね。

パンドラの神聖な森はネイティリが育った故郷であり、ジェイクが自分の家として受け入れた場所。移り住む海は、美しく魅力的だが、彼らにとっては居心地が悪く、馴染むには何かと苦労するんだ。情緒不安定に陥るネイティリの一面も描かれる。けれど、世界中にはさまざまな理由で、自分が生まれた場所、住み慣れた場所から離れている人もたくさんいると思う。何か問題もあるんだろうが、やはり「離れたくない」「つながっていたい」という気持ちは誰しもあるはずで、その点は多くの観客に共感してもらえるんじゃないかと思っている。家族の縁というものは、切っても切れないものだからね。

――ジェイクと次男のロアクの関係性には、ある種の緊張感がありましたね。若い世代へのメッセージも込められているように感じました。

そこは脚本の段階から、非常に大切にしていた。私も子どもの頃は、周りに理解されない、周りとうまく馴染めないといった疎外感を感じていたから、ジェイクの子どもたちにはそれぞれ、投影をしている。私が青春を送った1960年代はベトナム戦争に公民権運動、冷戦もあり、自分が世界といかに関わるべきかも不安になったが、今の時代はより事態が深刻だね。

私にも5人の子どもがいるが、葛藤を抱える若い世代が『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』を観て、「200 年後の世界でも、遠く離れた星で同じようなことが起こっているんだな」「自分だけでなく、みんな同じ問題を抱えているんだな」と思ってくれるかもしれない。つまり、この映画で伝えたいことは、劇中でも「I see you.」というセリフがあるように、あなたを見てくれている人がいるということなんだ。

SF には“未来への警鐘”という意味合いが強く含まれている

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』

――キャメロン監督の作品には、未来への警鐘と、その先にある希望が描かれているように思います。

おっしゃる通り、SF には未来への警鐘という意味合いが強く含まれていると思うね。人間を守ってくれるガードレールのように、とても必要な役割だと思っていて、私にとっては将来を見据えるものでもあるんだ。有名な SF 作家のアイザック・アシモフは「SF は逃避だ」と言っていたけどね。ただ、単純に警鐘を鳴らすだけの映画は作りたくない。観客を魅了する世界を作り上げたいんだ。私にとっての希望は、観客と映画が繋がること。海の美しさを見て、感情豊かなキャラクターたちに触れることで、私たちの感情が揺さぶられ、何かを感じたら、それこそが希望なんだ。

――『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』を観る観客に、どんなことを期待しますか?

私が映画を製作し、一番気にかけるのは興行成績よりも、観客にどれだけ影響を与えられるかなんだ。映画で社会を変える、なんておこがましい期待はしていないが、少しでも変化のチャンスを与えることができればいいなと思っている。実は、前作『アバター』にインスパイアされて、熱帯雨林で働いたり、先住民の人と助け合ったり、自然環境に対して行動を起こした人たちがいるんだ。

私自身も先住民のコミュニティに関わっている世界中の人から「ここに来て私たちに何かしてください」「光を照らすようなものを作ってください」といった声を受け取った。『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』を公開するまでに時間がかかったのは、2~3 年ほど、先住民のための活動を手伝っていたからなんだ。おかげで、私のやるべきことは映画、そして『アバター』シリーズを作ることだと気づくことができたんだ。

――最後に、配信の台頭やコロナ禍などを経て、大きな変化と直面した映画業界について、それを牽引し続けるキャメロン監督の私見をうかがえますか?

思うに、映画に関わっている誰もが、世界中で同じ課題に直面していると思う。映画と一言に言っても、劇場公開するのか、その後に配信なのか、いきなり配信なのか。大きな決断を突きつけられる。パンデミックの影響で、配信が急成長したが、同時に劇場がおざなりになってしまった。今こそ、映画制作や劇場配給に関わる人たちを大事にしなければいけないと思う。作品の多様性も重要だ。『アバター』や『トップ・ガン:マーベリック』、そしてマーベルのような作品でなければ、経済的に成り立たないのか? その意味では『アバター』だって、私が思い描くようにシリーズ化できるのか不透明だからね。

確かに映画市場は縮小しており、我々は真の意味で、過渡期にいると思うね。私はある意味、化石というか、恐竜なんだよ(笑)。それでも、なんとか映画監督として仕事をしている。もしも、いつか配信作品しか撮れないと言われたら、不本意だが、時代の流れに合わせてやっていくしかないと思ってはいるんだ。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
12月16日(金) 全国劇場公開
(C)2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

取材・文・写真:内田涼

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