【柚香光インタビュー】宝塚歌劇の代表作のひとつ『うたかたの恋』、30年ぶりに大劇場の舞台で上演!
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柚香光
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すべて見る2023年1月、宝塚大劇場の幕開きを飾るのは、花組公演『うたかたの恋』、『ENCHANTEMENT(アンシャントマン)-華麗なる香水(パルファン)-』。1983年に初演され、今年で40年を迎える『うたかたの恋』は、皇太子ルドルフと男爵令嬢マリーの悲恋を描いた究極の愛の物語。宝塚歌劇で繰り返し上演されてきた代表作のひとつで、大劇場での上演は30年ぶりとなる。本公演にかける思いや時代を超えて愛される本作の魅力など、花組トップスター・柚香光に話を聞いた。
先入観をなくして、丁寧に作っていきたい
全国ツアーなどでたびたび再演されてきた宝塚歌劇の代表作のひとつ『うたかたの恋』。大劇場での上演の話を受け、「驚きと共に、ワクワクしました」とトップスター・柚香光は話す。「最初にお聞きしたときは、“大劇場で『うたかたの恋』をやるんだ!”と、驚きました。宝塚歌劇の名作中の名作で、王子様が登場する作品といえば『うたかたの恋』を想像される方も多いのではと思います。大階段のプロローグとかもあるのかなとワクワクしました」。
本作の主人公は、ミュージカル『エリザベート』にも登場する皇太子ルドルフ。19世紀のオーストリアで実際に起きたルドルフと男爵令嬢マリーの悲恋を、柴田侑宏がドラマチックに描き上げた。今回の潤色・演出は小柳奈穂子。柚香は2014年に『エリザベート』でルドルフを演じている。「9年前もルドルフという人にすごく魅力を感じて、心惹かれていたのですが、今回改めて向き合うと、“皇太子とは”、“軍人とは”というものを一から考え、作り直さなければと感じました。ルドルフは、足りないものや渇望しているものが本当に多くある人物。何が一番、彼が戦っているものなのか、芯として持つべきものなのかを、台本と向き合い、史実を勉強しながら丁寧に探っていきたいです」。役作りで大事にしているのは、先入観をなくすこと、とも。「あまりにも名作なので、“この役はこうだよね”と、どうしても先入観が働いてしまう。それをなるべくなくして、柴田先生が最初に思い描かれたものを追求していくことが、大事にしている課題のひとつです」。
今回の公演では舞台装置と衣裳が変わり、そして新たな楽曲も数曲増えるという。「はっきり変わったと分かるのは、舞台装置とお衣裳だと思います。楽曲は、基本的には今までの名曲をすべて使っていて、振付も同じ。ただ、新しい楽曲が入ることによって、印象が変わるところがあったり、人物の深みを感じられたりしますので、皆さまにどれくらい変化を感じていただけるか、楽しみです。セリフも大きな変更があるわけではありませんが、細かなセリフの付け加えであったり、前後の入れ替えであったり、より物語の奥行きを感じていただけるのではと思います」。
見どころ満載、荘厳華麗なレヴュー
時代を超えて愛される名作。その魅力を「脚本の素晴らしさ」と話す。「人間の複雑な影響のし合い方、人が人に惹かれていく過程の描かれ方がロマンチックであり、リアリティもあって。人間の弱さ、醜さ、脆さ、強さ、そして欲。いろんなものが美しさの中に凝縮されているところが本当に素晴らしいと思います。あとは、一度聴いたら耳から離れない印象的なセリフの数々、そして、脳裏に焼き付くような名曲たちは、素晴らしいパワーがあると感じます」。
白の軍服姿でも魅せる本作。軍人としての着こなしにも注目だ。「華美というよりは、史実に近い軍服。お衣裳の力を借りながら演じられるのではと思います。でも、少しでも気を抜くと軍人ではないラインになってしまう。軍人として鍛えられた体形に見えるよう、舞台上にいる間は常に意識して立っていたいです」。皇太子としての佇まいにもこだわり抜いて演じる。「圧倒的な教育、圧倒的な制約の中で日常を過ごしている人。その立居振る舞いは、徹底的に作り上げる必要があると感じています。彼がどれだけ憔悴しようと、泥酔しようと、普通の人とはまったく違うと思うので、抜かりなく作っていかなければと思っています」。
野口幸作が作・演出を手掛ける第2幕は、「香水」をテーマにした荘厳華麗なレヴュー。「プロローグで全員が居並んだときから、喜んでいただけるのではと。ロマンチックで夢々しくて、とても華やかで、清潔感もあって、ご覧いただいた皆さまにいいお正月だなと思っていただけるのではと思います。その後、ニューヨークの街で、私がフレッド・アステア風のハットとスーツを着て、マリリン・モンロー風の星風まどかと出会う。その場面もすごく小粋で遊び心があって、踊っていても、この場面に出会えて良かったと感じます。舞台装置も野口先生がこだわって作っていらして、その装置を見たみんなから歓声があがるような、本当にキュートな場面なので、楽しみにしていただきたいと思います。あと、野口先生が“花組男役の代表的なナンバーにしたい”と作ってくださった場面もありますので、色濃く丁寧に作っていきたいです。さらに私が好きな場面は、荒廃した地球のような場所に生命が芽生えていくシーン。音楽が本当に壮大で、身体を目いっぱい使って踊るようなナンバーで、振付の難易度も高いのですが、ずっと踊っていたいくらい身体が喜んでいるのを感じます」。
公演は1月1日からスタート。一年の幕開きに舞台に立てる喜びと、2023年に向けて自身の想いを語る。「元旦から舞台に立たせていただけるのは、襟を正すような気持ち。今年も精一杯務めるぞと、気合いが入ります。2022年も充実した日々を過ごさせていただきましたが、2023年も舞台に捧げたい。人とのご縁、作品とのご縁、役とのご縁、お客様とのご縁を大事に、1日1日を大事に過ごしていきたいと思います」。
取材・文:黒石悦子
<公演情報>
宝塚歌劇団花組
ミュージカル・ロマン『うたかたの恋』/
タカラヅカ・スペクタキュラー『ENCHANTEMENT(アンシャントマン) -華麗なる香水(パルファン)-』
【兵庫公演】
2023年1月1日(日・祝)〜1月30日(月)
会場:宝塚大劇場
【東京公演】
2023年2月18日(土)〜3月19日(日)
会場:東京宝塚劇場
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