吉沢亮が福田組で見せた“ぶっ飛んだ芝居”の裏側 『ブラックナイトパレード』撮影現場レポート
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『ブラックナイトパレード』撮影現場の様子
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クリスマスコメディ映画『ブラックナイトパレード』が公開中だ。福田雄一監督が、原作を手がけた漫画家・中村光とドラマ『聖☆おにいさん』以来のタッグを組み、クリスマスを裏で運営するサンタの世界を描く。
主演は吉沢亮。映画『キングダム』やNHK大河ドラマ『青天を衝け』、『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ系)など幅広い役柄を演じてきた吉沢が、冴えないながらもクリスマスの世界で大活躍を見せる主人公を熱演。福田組ならではの個性的な共演者に囲まれた撮影の様子とは?
意外にハマリ役? 吉沢亮がザンネン男子に
中村光の同名コミックを原作とした『ブラックナイトパレード』。現在絶賛公開中ながら、サンタクロースにまつわる実在の伝説を基にクリスマスの舞台裏を描いたコメディということで、中にはもはや観るタイミングを逃してしまったと思っている方もいるのでは!?
ただ、年末に観ても正月に観ても楽しめるのが本作。なにせ、監督は『銀魂』や『今日から俺は!!』シリーズの福田雄一。そして、主演を務めているのは吉沢亮。福田組の映像作品は2018年の『銀魂2 掟は破るためにこそある』以来の参加。念願の初主演で、歴史上の偉人・渋沢栄一を演じた大河ドラマ『青天を衝け』を経ての初映画ともなるが、本作で扮したのは超激務の“ブラックサンタ”となって奮闘することになる日野三春。“受験失敗・就活失敗・彼女なし”のなにをやっても冴えないフリーターで、なんと吉沢がザンネン男子!
しかし、これが見事なまでのハマリ役。空回りしながらもツッコミは鋭いキャラクターで、その緩急ある芝居と憎めないチャーミングさは、吉沢だからなせるワザ。ひとクセもふたクセもあるサンタ仲間の橋本環奈、中川大志、渡邊圭祐との掛け合いでも楽しませてくれる。
そして、見どころのひとつともなっているのが、福田組の常連でもある名バイプレイヤーたちとのやりとりだ。ここでは、すでに映画を観ている人もまだ観ていないという人も『ブックナイトパレード』をさらに楽しむべく、その共演場面の裏側を公開! 思わず噴き出してしまわずにはいられないシーンは、はてさて、どんなふうに組み立てられていたのか?
自由な芝居が炸裂! やはり“憧れの人”はすごかった
まず、『ブラックナイトパレード』のストーリー。どこからも内定をもらえないまま、コンビニでのバイト生活も3年が過ぎた三春。今日も今日とてクリスマスイブの夜だというのに働いていて、さらにはいい加減な同僚のせいで自分は悪くないのに店長に注意されてしまう始末。
実はその同僚こそ、後にサンタ仲間として再会することになる中川演じる田中皇帝(カイザー)。ムシャクシャして屋台で一杯引っかける三春だったが、そこで出会った謎の男から「内定だ!」と告げられて、目を覚ますとなんと北極! そのうえ、奇妙な会社・サンタクロースハウスに入社させられて……。
このバイト先のコンビニ・ポーソン練間北口店の店長・吉川輝を演じているのは、福田組と言えばこの人の佐藤二朗。実は製作報告会などでも語られているとおり、佐藤は吉沢にとって憧れの人! 「自由なお芝居を見てきて、“こういうお芝居ができる人になりたい!”と思いました」と語っている目標の俳優で、そんな佐藤との本格的な共演が本作では実現した。
深夜のコンビニで、ひとり愚痴りながらポップのレイアウト変更をしている三春。そこに店長が現れて、廃棄の商品に関して三春に注意するというやりとりで、ここで吉沢が羨望する佐藤の自由な芝居がまさに炸裂していた。
台本では、あまりに大きな声の三春のひとり言に店長が驚きながら登場して、手にしていた廃棄の商品のクリスマスケーキを出すという流れだが、段取りでまず佐藤は三春の声に驚いて思わずケーキを落とすという芝居を披露。「とっさに思いついてやろうと思ったんですけど、本番ではやりません」と笑う佐藤に、「全然ありでいいよ」と福田。結局それはやめた佐藤だったが、「“あ~~~っ”て声を出してみようかな」と提案して、福田も「それやりましょう!」と芝居が固まっていく。
しばし、アドリブと思われがちな佐藤の芝居。しかし、ケーキを落として見せたのも台本の「びっくりした!」のセリフあってのリアクションで、提案した「あ~~~っ」も「ため息」というト書きあってのアイデア。ただ、ここからが自由な佐藤の本領発揮で、テストを重ねる中でいつしかため息が喘ぎ声に!? 福田の「今の良かったです。もっとあえぎ声で(笑)」のオーダーに、佐藤も「ナニやらせんのよ!(笑)」と返しながらも、思いっきり「あ~~~っ」。
たまらないのは吉沢で、佐藤の芝居に肩を震わせながらも大笑い。しまいには佐藤自身も思いのほか高い声となってしまった自分の「あ~~~っ」に笑い出し、「ごめん! 前のに引っ張られちゃうんだよ……って誰に言い訳してるんだ!!(笑)」とひとりツッコミを繰り出して、さながら佐藤二朗オンステージ。
このシーンについて製作報告会でも、「いきなり変な声を普通に出していて。シーンとして面白くしようという思いを感じながらも、僕をどうにか笑わせようとする感じに耐えられなくて、ずっと目を合わせられなかったです(笑)」と語っていた吉沢。やはり憧れの人はすごかった!?
ムロツヨシも思わず笑った吉沢亮のハイテンション芝居
さて、福田組の“雷神”の異名も持つ佐藤だが、それに相対して“風神”と称されているのがムロツヨシ。今回、そのムロとも吉沢は共演! と言われて、ムロの姿と名前はなかったはずと思ってしまう人もいるのでは?
北極まで連れて来られて、サンタクロースハウスで働くはめになった三春。橋本演じる北条志乃と渡邊演じる古平鉄平に案内されて、各部署を見て回るが、そこで出会うのが大きな帽子を全身にすっぽりかぶったような姿の“帽子さん”。妖精ということながら、まるで着ぐるみを被っているような見た目で、その帽子から伸びる素肌の手には体毛が生えていて、ドスが利いた声からしても中年オヤジそのもの!
この帽子さんを演じているのが、ほかならぬムロツヨシ。帽子さんに乱暴に導かれるまま、三春は悪い子に与えるがっかりなプレゼントを探るシミュレーター装置を付けさせられ、子供になりきってバーチャルでがっかりな経験をさせられることになる。三春の苦難は続くという展開ながら、吉沢自身はかなり楽しんでいた様子。それというのも、ここは三春が役どころに入り込んでしまい、態度も話し方も子供になってしまっているというシーン。
吉沢が子供らしく……と言うよりも、大人らしく誇張した子供をまるでコントのように演じていて、かわいらしいやら恐ろしいやら面白いやら。「ママ~」と甲高く叫ぶところでは「メメ~」の発音と発生になっていて、さながらロバート秋山が扮した天才子役の上杉みちくん!? 吉沢のハイテンションでぶっ飛んだ芝居には、ムロも思わず笑ってしまっていた。
吉沢はじめ、他キャスト含めて見たことのない表情や演技が目一杯詰まっているうえに、笑わされるだけではなく、グッとくるドラマやエピソードも展開される『ブラックナイトパレード』。年越しイベントや特番のような遊び心と華やかさ、おせち料理やお年玉のような豪華さと贅沢さもあって、これからの時期にもぴったりな作品だ。
クリスマスを楽しく過ごした人も、そうでない人も、本作でまったく別世界のクリスマスをもう一度味わってみるのも一興。いや、吉沢亮はすごい! この冬、あらためてその魅力にも気づかされるはずだ。
取材・文:渡辺水央
『ブラックナイトパレード』
公開中
©︎2022「ブラックナイトパレード」製作委員会 ©︎中村光/集英社
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