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坂東彌十郎「感無量。全身全霊でいきたい」歌舞伎座で6年ぶりの主役に挑む

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坂東彌十郎 提供:松竹(株)

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新年を飾る歌舞伎座の「壽 初春大歌舞伎」。2023年1月2日(月) より、歌舞伎座新開場十周年と銘打ち三部制で開催される同公演より、第二部で上演される『人間万事金世中(にんげんばんじかねのよのなか)』に出演する坂東彌十郎が取材に応じた。

2023年に没後130年を迎える名作者・河竹黙阿弥による喜劇『人間万事金世中』は、明治の文明開化の新風俗を描いた「散切物(ざんぎりもの)」と呼ばれる世話狂言。いつの時代も変わらない、金に翻弄される人々の滑稽さ、軽薄さをユーモアたっぷりに描き出す。イギリスの戯曲『money』を黙阿弥が翻案したもので、登場人物の名前も英名の「ジョン・ヴェセイ」を辺見勢左衛門、「エヴリン」を恵府林之助、「クララ」をおくらとするなど、翻案劇ならではの遊び心もうかがえる一風変わった作品。

前回の上演は2004年(平成16年・大阪松竹座)まで遡り、今回19年ぶりの上演。歌舞伎座でも珍しい演目となる本作について彌十郎も「翻案ものならではの洒落で洋物っぽいところを出せれば面白い」としつつ、「“黙阿弥調”と呼ばれる独特の台詞と散切物のテンポというのが消えてしまわないようにしなければ。松緑のおじさま(二世尾上松緑)の音源を聴くとすごく軽やかで素敵なんですよね。それが上手くできれば。ただ早くやればいいというわけではなくお客様に伝わらないといけない」と語る。

本作で彌十郎が演じるのは主役のケチで強欲な辺見勢左衛門。「本当に救いようのないくらい嫌なやつなんだけど、結局最後には笑えちゃう。お客様が芝居が終わって、“初春”のお気持ちでお帰りいただけるようになれれば」。役づくりについては「第一に松緑のおじさまのイメージと、それを受け継いだ富十郎のお兄さん(五世中村富十郎)のイメージを自分の中にどう入れ込んでいくか」と思案中の様子。

『人間万事金世中』より、辺見勢左衛門に扮する坂東彌十郎イメージビジュアル 提供:松竹(株)
『人間万事金世中』辺見勢左衛門に扮する坂東彌十郎イメージビジュアル 提供:松竹(株)

共演には妻・おくら役の中村扇雀ほか気心の知れた同年代の面々が並ぶ。「僕が主役と言うより皆さんで一緒につくる芝居だと思っているので、皆さんと相談してつくりあげたい」と和やかに話すも、6年ぶりの歌舞伎座での主演ということで「感無量。全身全霊でいきたい」と気合は充分(前回は2017年「八月納涼歌舞伎」第二部にて父・初世坂東好太郎の追善『修禅寺物語』夜叉王役で主役を勤めた)。「(今回の公演が成功して)面白いね、またやりたいねとなれば、またかけられる。あくまで挑戦とチャンスをいただいて、テストされていると思って臨みます」と背筋を伸ばす。

2022年に吸収したものを一気に放出したい

2022年は大河ドラマ『鎌倉殿の13人』での好演で注目を集め、年末は大晦日放送の「第73回NHK紅白歌合戦」のゲスト審査員にも決定している。大きな飛躍となった一年を「常に前進することだけを考えていますが、今までの年よりは大きく前進できたかなと思っています。でももっともっと前進していきたい」と振り返り、「来年は2022年に吸収したものを一気に放出したい」と精力的。

また、大河ドラマをきっかけに、普段歌舞伎を観ない視聴者から「歌舞伎というものをみてみたい」というメッセージが届くこともあるとのことで、「本当に嬉しいですし、それを裏切ってはいけない」と責任を滲ませる。ただ、「歌舞伎は本当に間口が広いですから、どうしてもいきなり観たら嫌になっちゃうという演目もあると思うんです。歌舞伎を薦めるのは一番難しい」とも。「自主公演を含めてこれからどんどんやっていきたいなと思います」と今後の歌舞伎の普及についても意欲をみせる。

ちなみに勢左衛門には貧乏ゆすりをするという癖があるそうで、貧乏ゆすりをしてみせる一幕も。「強欲なのに貧乏ゆすりをする。おかみさんにも『貧乏ゆすりをするからお金がたまらない』と言われてそれでイライラして貧乏ゆすりをしたり。物語にあまり関係ないんだけど、それが自然にできたらいいなと」。ドケチだけれどどこか憎めない、彌十郎ならではの勢左衛門に期待したい。

「壽 初春大歌舞伎」は2023年1月2日(月) より27日(金) まで東京・歌舞伎座にて、三部制で上演。

<公演情報>
歌舞伎座新開場十周年「壽 初春大歌舞伎」

2023年1月2日(月・祝)~2023年1月27日(金)

第一部 11:00~
第二部 14:15~
第三部 17:45~

【休演】10日(火)・19日(木)
【貸切】第一部:6日(金)

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