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ぴあ 総合TOP > 今月のお笑い 8本目 ウエストランド井口と作家飯塚が語る「2022年12月のお笑い、どうだった?」

今月のお笑い 8本目 ウエストランド井口と作家飯塚が語る「2022年12月のお笑い、どうだった?」

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ウエストランド井口と作家飯塚の「今月のお笑い」。

ウエストランド井口と構成作家・飯塚大悟が、毎月のお笑い界の出来事を勝手に振り返る連載「今月のお笑い」。12月は<「M-1グランプリ2022」優勝はウエストランド>というあまりにもうれしいニュースが舞い込み、12月27日開催の当連載発イベント「ライブ!!今月のお笑い」も大いに盛り上がった。

今回の記事はイベントで語られた内容と、終演後に行った追加取材をもとに構成。追加取材の場には楽屋に来ていた、ウエストランドと同期のラブレターズも加わり、ランジャタイやモグライダーの活躍から勢いづいている“他事務所連合軍”として2023年以降の抱負を述べている。

構成 / 狩野有理 ヘッダーイラスト / 清野とおる

「アナザーストーリー」密着VS井口

──井口さん、「M-1グランプリ」優勝おめでとうございます!(名前入りビールを贈呈)

井口 ありがとうございます。2本目ってあるんですね(笑)。

※編集部注:前回の取材時には決勝進出を祝して名前入りビールを贈呈している。

──書いてある文字を読んでください。「True Champion」です!

井口 トゥルーチャンピオン……?

飯塚 前回は優勝前の願掛け的な「チャンピオン」だったけど、今回は本当にチャンピオンになったから。

井口 ああーなるほど。すみません、ありがとうございます! 「優勝だ」って言ってくれたのはこの連載が最初ですからね。大半の人が「まさか本当に優勝するとは」と思っているんでしょうけど。

飯塚 優勝したら、僕のところにもたくさん「おめでとう」LINEが来た。

井口 いろんなスタッフさんに「飯塚も喜んでたぞ」って言われます。

飯塚 みんな、「信じてなくてごめんね」みたいな感じだった(笑)。「前から言ってたけど本当だったんだ」って。

──ではいつものように12月のお笑いを振り返っていきましょう。

飯塚 これはもう「M-1」からじゃないですか?

井口 昨日「アナザーストーリー」(ABCテレビ)の放送もありましたからね。

飯塚 「アナザーストーリー」が好きで毎年観てて、ミルクボーイの年は駒場さんが家族の喜ぶ動画を見て号泣する姿で泣いたんだよ。僕はそういうので泣きたい人なのに、今年はちょっと井口くんのせいで台無しだよ(笑)。

井口 (笑)。決勝が決まってから、もっと言えば予選からカメラに密着されているんですけど、優勝した瞬間、担当のスタッフさんが変わるんですよ。バラエティじゃなくてドキュメンタリーのスタッフさんに。あとあと別の現場で、「どうでした? “マムシのA(スタッフの名前)”の密着は」って聞かれて。すごい異名を持つような人だった。

飯塚 マムシ取材だ。

井口 家にいる時間が3時間くらいしかなくて、もうそこで寝るしかないっていうのに、ずっと帰らないんですよ! 人質に捕らえられて、こっちが眠くなって意識が朦朧として「あぁ……相方に感謝してます……」って言うまで帰らない。僕も非協力的だったわけじゃないんですよ? で、結局主に流れていたのは2年前の僕っていう(笑)。

飯塚 河本くんの結婚式の映像も使ってたね。相方への思いを言ってる映像を使いたかったのかな。

井口 なんで感謝とか相方への思いを言わなきゃいけないんでしょうね? 「言わなかった」では終わらせてくれない。YouTubeの「アナザーアナザーストーリー」は僕としてはすごいよかったですよ。ずっとしゃべってる僕を撮ってくれていて。「アナザーストーリー」もそれでいいんじゃないかと思うんですけどね。あれが井口なんだから。さや香・新山くんの「俺たちが一番おもしろい」の場面をあの画角で撮っているのとかも、すごく面白かったですし。

飯塚 決勝後の「M-1」関連配信でさや香の2人が「楽屋の井口さんがうるさかった」と言っていたけど、盛り上げてくれているという意味だと思っていたんだよ。そしたら「アナザーアナザーストーリー」で新山さんがイヤホンして完全にシャットアウトしてたから、本当に嫌だったんだろうなと思った(笑)。

井口 大阪の人は僕のうるささに面食らっていましたね。そのせいでフォームを崩してしまったのかも。「アナザーストーリー」の最後、僕が親に電話していたじゃないですか。それを見て「結局電話するんかーい」って言ってる人がいましたけど、あんなもんめちゃくちゃお願いされてるに決まってるだろ!

飯塚 マムシとはどんな感じだったの?

井口 まずは家に来て、にらみ合いの時間です(笑)。でも別に僕も拒否はしないので、「電話してください」と言われたらします。で、電話したらしたで「アナザーストーリー」だと知った親がスイッチ入れだしちゃって。「さや香が優勝だと思ったけどな」「ふざけんなよ!」みたいな会話もしたんですけどね。僕が泣きそうになっていたと言っている人もいるみたいですけど、皆目見当違い! なんでネタであれだけ言ってるのにわかんないんだよ。僕が「泣かない」って言ってるんだから、「あいつ泣くかなあ~」じゃないんだよ。なんで信じないんだよ、僕の言葉を! 1ミリも泣きそうになかったです。

──カメラがないところではご家族に電話しなかったんですか?

井口 してないです。LINEが来てたんで、スタンプで返しておきました。

飯塚 お母さんとの会話、ずっと敬語だったね。すごい変な電話だった(笑)。

井口 撮られていたらあんな感じですよ。

──岡山弁も出していませんでしたね。

井口 方言とかも大っ嫌いなんで。田舎にすり寄るのが嫌い。

飯塚 ナレーションもインパクトがあったよね。「井口は生活のすべてを毒舌に捧げた」。

井口 捧げてないわ! あと「仕事も彼女も諦めた」って、僕は1回も言ってない!

飯塚 「M-1」本番中の映像だと、暫定ボックスにいる芸人さんたちがウエストランドのネタに対して「面白いな」「ウケてるな」とかじゃなくて「パッション、パッション」と言っているのが面白かった。感想が「パッション」っていいよね。

井口 優勝が決まったときにほかの芸人が喜んでくれている様子が映っていたのはよかったです。あれがあることでだいぶ違いましたね。あれを見ないと、僕が嫌われていると本当に思う人が出てくるので。心配です、みんなが詐欺に遭わないか。コンビ仲がいい、悪いとかも注目されがちで、僕らも別に仲いいけど、そんなのわざわざ言わないじゃないですか。でもそれを聞きたいとか、聞くだけで信じる人がいるでしょ? なんで1秒考えなくなっちゃったのかなあ、人って。

飯塚 これセミナーなの?(笑) 意地悪な見方かもしれないけど、みんなタクシーでテレビ朝日まで来ている中、井口くんが電車だったのは作戦なのかなって思った。「お前らタクシーで来たのかよ!」っていうやり取りからすでに始まっている感じがした。小市民の戦いが。

井口 いやいや(笑)。なんにも言われなかったので電車だっただけですけど、なんでみんなタクシーなんですかね。そういえば僕、会場入りするときに敗者復活戦のお客さんのそばを通って「どうもどうもー」ってやったんですけど、誰1人として手を振り返してくれませんでしたよ。「なんなんすか!」みたいなのも撮ったりしていたんですけど。

──そういう面白そうな大量の素材はもう世に出ないってことですよね。

井口 優勝して出ないんならもう出ないんじゃないですか?

──もったいない!

井口 僕はずっと“井口”をやってたんですけどね。

「水ダウ」松ちゃんの反応がM-1ネタの決め手に

──「M-1」本編やネタの話もしていきましょう。

飯塚 来場者の方から質問が来ています。「M-1の場でM-1イジりをすることへの葛藤はありましたか?」。

井口 その葛藤はなかったですけど、1本目の佐久間(宣行)さんの名前を出す部分は少し迷いました。ただ、あのネタを準決勝で見た人が、ご丁寧に「あのくだりは決勝では伝わらないのでやめたほうがいいですよ」って言ってきて。あんなに皆目見当違いだと言っているネタを見てまだ言ってくるって、そのメンタルあっぱれですよ! 前日に錦鯉さんと仕事が一緒だったので、ちょっとメタっぽいところがあるからどうしようか迷っているという話を隆さんにしたら、「バカか。お前なんか全員バカにしてるんだからそのまま行かないと意味ねえよ。全員バカにしてやれよ!」って言ってくれて。まさか隆さんもこんなにみんなのことバカにするネタをやるとは思ってなかったと思いますけど(笑)。

飯塚 たしかに内輪っぽいし、伝わらない可能性もあっただろうけど、それを考えてない奴に見えたのがよかったと思う。本当に思っていることをぶちまけてるリアルさがあったし、伝わる、伝わらないはさほど関係なかったんじゃないかなという気がした。

井口 感覚だとライブの雰囲気にわりと近くて、ルシファー(吉岡)さんを入れてもウケそうだったんですよ(※)。そこはさすがに申し訳ないので割愛しましたけど。実は本番が始まる前に会場のモニターを見ていたら、男のお客さんがめっちゃ多くて。そこでいけると確信しましたね。「これはウケるぞ、ホームだぞ」と。

※編集部注:最終決戦で披露したネタの「R-1グランプリ」のくだりではルシファー吉岡の名前を出すことも。優勝後の「ラヴィット!」(TBS)ではそのバージョンで披露していた。

飯塚 決勝のお客さんも「M-1サポーターズクラブ」に入っているようなお笑いファンなんだけど、審査員の反応に影響を受けちゃうのか、準決勝ではウケていても決勝だとそんなに振るわないコンビも出てくるんだよね。ウエストランドは審査員にも知られているからその強さもあったのかな。

井口 「水曜日のダウンタウン」(TBS)に出させてもらって、重い物を持っているときに(2022年11月2日放送「『小さくて重い物』と『大きくて軽い物』持っていられる時間トントン説」)、ワイプで松本人志さんが「こいつ文句多いねんな」って言ってくれていたんですよ。「あ、ちゃんとわかってくれているんだ」と思って。あの松ちゃんが僕のキャラクターを知っているんだったら決勝でやれるなと。それがけっこう決め手でしたね。長いことやっているから審査員の全員と共演したことがあるし、もっと言えば、大吉さんなんて「THE MANZAI」で戦っていますから。そう思うとほかのファイナリストに比べてズルい気もするんですけど(笑)。

──飯塚さんは「M-1」当日、観戦会をやっていたんですよね。

飯塚 ラブレターズの塚本くん、ゾフィーの上田くん、おせつときょうたのきょうたとかとウエストランド応援観戦をやっていました。最終決戦のネタが終わって、「漫才の大会として冷静に審査するとさや香だな……」みたいな空気が流れたんですけど、「冷静になるな!」「ノリで決めてくれ!」「技術とかを見るな!」と審査員を応援して(笑)。すごい盛り上がったよ。塚本くんは泣いてた。

井口 申し訳ないですよ、ほかの人が泣いて僕だけ泣かないの。

──「アナザーストーリー」では最終決戦の審査結果がめくれていくときのウエストランドの様子が映っていましたが、井口さんは驚いたようなリアクションを取っていましたね。「マジか」と。

井口 そうですね。決勝では絶対ウケたかったし、2本やりたいとは思っていましたけど、優勝するかどうかはあまり考えていなくて。もちろん今は、爆笑問題さんはじめみんなが喜んでくれて、優勝しないと見られなかった景色をたくさん見させてもらっているので、優勝して本当によかったと思っています。でもあのときは、ちゃんとウケて2位くらいになって、そこからバラエティでがんばっていこうという心づもりでいたんです。だからああいうリアクションになったんでしょうね。1本目でロングコートダディさん、さや香、男性ブランコがめちゃくちゃウケたときに、出番を待っているみんなを集めて「もう無理だぞ!」という話もしていました。「こうなったらもう無理だから、楽しくやろう!」って。

──なぜ集めるんですか? 1人で思うだけじゃなくて。

井口 え? リーダーだからですよ。ヨネダ2000なんかよくわかんないまま「はい!」って言ってましたけど(笑)。

──2本目のネタを「M-1」前にどこかでやったことはありましたか?

井口 むしろ2本目が先にできていました。「M-1にはあってR-1にはない」が最初に思いついて、それを言いたいがために作ったようなもんですから。こっちはけっこうやっていたので直前に練習すればいいやと思っていたら、楽屋で楽しくなってしゃべりすぎちゃって、ネタ合わせできなかったんですよ。それもあって僕のできがちょっとよくなかった。

飯塚 でもあの感じがよかったよ。生っぽくて。少ししどろもどろになるのが本当に怒ってる人のしゃべり方みたいだった。

井口 全然予定になかったことも言いましたからね。劇団員の部分がけっこうウケたので、どんどん付け足して。

飯塚 ジャズだね、ジャズ。

井口 様子を見ながら足したり引いたりして、もはやネタでもなんでもない(笑)。でもそれくらい余裕があったんです。ウケたいだけだったから、それができましたね。

ウエストランドの漫才を分析してみた

飯塚 ネタの“分析”をしてもいいですか? 「あるなしクイズネタのここがすごい」。

井口 おお、それはぜひ言ってください。いいことは言っていいんですから。

飯塚 まずナイツ塙さんも言っていたけど、クイズにしたことで漫才に軸ができたというのと、掛け合いになった。

井口 あいつ(河本)のセリフ量はなんならいつもより少ないのに、役割があることでそれもバレてないですからね。

飯塚 そしてフリが最短。これまでのネタだと、こういう人ってムカつくじゃないですか、こうでこうで……ってエンジンをかけるまでにストロークがいるけど、クイズならいきなりボンといけるから、それは発見だなと思いました。あと、井口くんに実害がないものにも毒が吐けるようになった。恋愛映画のこととかは、まったく言わなくていいじゃん(笑)。自分が嫌なことをされたわけでもないんだから。関係ないものにも悪態をつける仕組みは優秀だなと。まだいいですか?

井口 お願いします!

飯塚 「お花が届いたぞ」や「え? いないよ?」みたいな面白さはウエストランドの持ち味だけど、イマイチ伝わっていないお客さんもいたと思う。でもクイズの答えとしてだったら、「これでしょ」「これだよね?」って自然と連呼できるんだよね。クイズと連呼の相性がよかったんだなと思った。あと、1個のネタにいろんなテーマを入れられるし、しかも2つ同時に並べて2つともディスれるのは強いよね。ありにもなしにも同時に文句を言うっていう。

井口 ありがたいです、そんなに考えてなかったのにこれだけ言ってもらえて。

飯塚 「爆笑問題カーボーイ」(TBSラジオ)で太田さんが言っていた、審査員が芸人の性で顔を隠しながら笑うリアクションを取らなきゃいけなくなって、ウエストランドがみんなを巻き込んでネタにしてたっていうのはすごい目線の分析だよね。

井口 それはうれしかったです。言ってみれば、「爆笑レッドカーペット」(フジテレビ)手法ですよね。僕らがレッドカーペット賞をいただいたとき(※)って、審査員に話しかけたり、おかわりされて同じようなネタしてみんなにツッコんでもらったりして、「反則っぽいけどみんな笑ってるからしょうがない」みたいな感じだったので。

※編集部注:ウエストランドは「爆笑レッドカーペット」特番で2013年正月と同年春の2度、「レッドカーペット賞」を受賞している。

飯塚 「レッドカーペット」も今田耕司さんがMCだったし、なんかいろいろつながってるね。

──「キングオブコント」準決勝に出場した際に、コントなのにお客さんに話しかけちゃっていたというエピソードを以前の取材でお聞きしましたけど、「とにかくこの場を笑わせる」というずっとやり続けてきたスタイルがこの「M-1」の大舞台でも発揮されたわけですね。

飯塚 それにしても、これは「お笑いを振り返る連載」なわけだけど、ウエストランドのネタがまさに今年のお笑いを振り返っているなと思った。佐久間さんが大活躍した1年だったし、お笑いの分析とかも今すごく増えていて。

井口 これを言ったらウケるというラインって自分の感覚が頼りじゃないですか。悪口を言う範囲として「上は爆笑問題、下はかが屋まで」みたいなことを言っていた時期もあったけど、それが四千頭身になり、ダウ90000になり、と変わっていって。その感覚はライブレベルですけどずっと磨き続けてこられたと思いますね。

飯塚 松本さんも言っていたように、新しい時事ネタなんだろうね。時事ネタって爆笑さんとかナイツとか、時事ネタの免許を持っている人しかできないイメージがあるけど、あるなしクイズの中に入れればできるんだなって思った。2023、24年バージョンも作っていけそう。

井口 今回言ったのは今年しかウケないですからね。僕もたまに「愚痴の時事ネタだ」みたいなことは言っていたので、それを松本さんが言ってくれたのはうれしかったです。爆笑問題の後輩だからそう思ってくれたんだとしたら、それもうれしいですし。

──飯塚さん、ほかの組のネタはどうでしたか?

飯塚 鑑賞会のみんなは僕も含めキュウのネタにものすごいハマっていました。準決勝のネタも好きだったけど、狂ってる度合いだと決勝のネタがすごかった。だから点数が伸びなくて驚きました。さや香はすごいうまくて、正統派と言われているけどものすごく複雑なことをしているなと思います。それを正統派の自然な会話に見せながら、実は両方ともズレてる人というのを矛盾なく最後まで突き通していて。あれって構造だけ思いついても普通はできないから、やれてしまう2人の構成力と表現力がとてつもないです。

──敗者復活戦はどうでしたか?

飯塚 ななまがりとかもめんたるが好きでしたね。ダンビラムーチョもふざけていてよかったです。敗者復活戦とは違うネタですけど、オズワルドとミキの準決勝のネタも面白かった。「漫才工房」(※)のメンバーのストレッチーズとママタルトも初めての敗者復活戦でがんばっていたね。

井口 いやいやいや、めちゃくちゃ最下位でしたから。

飯塚 でもストレッチーズは最下位感があんまりない。ランジャタイが最下位になったときとは違う感じ。

井口 まあ、ジンクスで言えば最下位だったランジャタイもキュウも翌年決勝に行けたんで、もしかしたらストレッチーズが来年行けるかもしれませんからね。

※編集部注:ウエストランドが中心となり、ストレッチーズ、ママタルト、さすらいラビー、ひつじねいり、赤もみじと共に開催してきた新ネタを2本おろすマンスリーライブ。敗者復活戦に出場したストレッチーズは17位、ママタルトは16位だった。

負けても勝っても面白くなるのはウエストランド

──優勝から今日までのお仕事についても聞かせてください。先日は「ドリーム東西ネタ合戦」(TBS)収録後の打ち上げに参加されていましたね。

井口 「ドリーム東西」のあとにもう1つ仕事があって、内村(光良)さんの番組(日本テレビ「笑いダネ」)に行ってから2次会に参加させていただいたんですよ。だから、「松ちゃん、ウッチャン、松ちゃん」っていうすごい経験をしました。

飯塚 ランジャタイのネタみたい(笑)。松本さんと飲みに行くのは初めて?

井口 初めてです。

──どんなお話をされたか言える範囲で教えていただけますか?

井口 松本さんはお笑いが一番ピュアというか、清いものだとおっしゃっていました。僕も本当にその通りだと思うんですけど、もっと言うと「M-1」が一番純粋なネタ番組なのかなと思っていて。僕らは2020年に「M-1」決勝に行くまでなんのネタ番組にも出られなかったし、例えば「第7世代」とかいうくくりでも弾かれて出られなかったので。「M-1」は面白くてウケさえすれば出られて、なんなら僕らが優勝しちゃうこともあるわけですから。

──にゃんこスター・スーパー3助さんがアップした号泣動画で話題の三四郎・小宮さんやモグライダーともしげさんとお会いできたこともTwitterで報告されていました。

井口 あれは「アナザーストーリー」でやったんですよ。「いつ感情を出すんですか、あなたは?」って聞かれたので、芸人仲間に会うのが一番うれしいってことでやることになったんですけど、1秒も使われていませんでしたね。「いつもの感じでお願いします」って言われているのにともしげさんがずっとカメラ目線でしゃべっちゃうから。「井口くんは素晴らしくて……」ってストーリーテラーみたいになってました(笑)。会えたのはうれしかったですけど。

──印象に残っているお仕事は?

井口 いろいろ出させてもらいましたけど、もともと呼んでくれていた番組の「どういうつもりで呼んでたんだ問題」というのがあって(笑)。

──「大反省SP」のような企画ですね。

井口 でもうれしかったのが、パンサー向井さんが「#ふらっと」(TBSラジオ)で掛けてくれた言葉なんですけど、「負けると思って呼んでますよね?」と聞いたら、「負けても面白くなるし、勝っても面白くなるのはウエストランドだから」と言ってくださって。そういう役割ができるのはプラスというか、負ける前提で呼んでもいい奴になれているのはよかったです。

飯塚 信頼されてるってことだよね。

──「あるなしクイズネタのほかのバージョンも今後見られますか?」という質問も来ています。

井口 年末年始どこかの番組では見られると思うので、ぜひ見てほしいです。「芸人シンパイニュース」(テレビ朝日)の収録もあったんですけど、全番組の中で一番手のひら返ししてきてましたよ!(笑)

飯塚 そうなの?(笑)

井口 もともとは、僕が1人暗い部屋で今年売れた人への恨みを言い続けるっていう企画だったんです。「一応M-1があるのでそれ次第ですかね」って言ったら、「まあまあ」みたいに流されて。で、優勝決まった瞬間に「おめでとうございますぅ~」じゃないよ! そのへんの怒りもぶつけてますので見てください。

お笑いファンとも違う「ラヴィット!」ファン

──「M-1」関連の話はいったんこのへんで区切りまして、ほかに12月の話題で気になったことはありますか?

飯塚 井口くん「THE W」は見た(参考記事:天才ピアニストが「THE W」優勝会見で歓喜、ますみ「竹内さんは天才!」)?

井口 バタバタしていて見られていないんですよ。どうでした?

飯塚 去年は良くも悪くも賛否が巻き起こったけど、今年の結果は視聴者にとっても納得感があるみたい。論争がないのもちょっとさみしい気がするけど。

井口 「M-1」はどうなっても論争が起こって、終わったあとも盛り上がりますもんね。

飯塚 天才ピアニストは今年単独ライブを毎月やって、ラジオを毎日アップして、忙しいときは新幹線の中でネタ合わせしたりしているってラジオで言ってた。看護師あるあるの動画を投稿したり、医療系ネタの単独ライブを打ったり、ものすごくストイックなんだよね。ラジオを聴いていると2人の空気感がすごくいいなと思う。あと気になったのが、オリコンニュースが出している「2022年ブレイク芸人ランキング」。錦鯉、なかやまきんに君、ヒコロヒーに次いで4位がやす子さんなんだけど、やす子さんって今のお笑いシーンですごく特殊な存在だなと思っていて。見取り図、ニューヨークとか、ネタが評価されてライブをやるとファンがたくさん観に来る、みたいなことではないじゃん。

井口 たしかにそうですね。

飯塚 実はテレビにめちゃくちゃ出ているし、お試し特番に起用されていることが多い。制作陣的な発想として過酷なことを女性にやらせると「かわいそう」という見え方になってしまうけど、やす子さんって元自衛官で“耐えられるキャラ”だからけっこうハードなことにもチャレンジしてもらいやすいんだよね。それでいてヒップホップが好きとか、人としての奥行きもあって。真空ジェシカやランジャタイともまた別のところでガラパゴス的にブレイクしてる。

井口 いろんな評価のものさしは持っていたほうがいいですよね。「これに出ていれば売れている」とか、凝り固まっちゃわないで。

飯塚 「オトステ」(※)でも言っていたけど、井口くんが「ラヴィット!」(TBS)で変な感じになって叩かれるということがあったよね。観たら別に変じゃなかったんだけど。

※編集部注:「オトステ」は井口、ジグザグジギー池田、ルシファー吉岡の3人で出演しているポッドキャスト番組。audiobook.jpで配信中。

井口 「ラヴィット」自体は素晴らしい番組だと思いますけど、観ている人が「ラヴィット」を神格化しすぎている気がします。Twitterを見ているから「炎上してる」と言っているんでしょうけど、僕自身はあんなのでは誰にも何も怒られません。タイタンなので、本当にとんでもない人がいるわけですから(笑)。

飯塚 「ラヴィット」のノリが“正義”みたいな空気感を作ったのがすごいなと思う。「ラヴィット」を褒めるのがトレンドになっているというか。

井口 だからチャンスですよね。“傷つけない笑い”が流行っていたときと一緒でカウンターが効くので、「ラヴィット」のこと言うとめちゃくちゃウケるんです。でもどういうポイントであんなに好まれているんですかね?

飯塚 視聴率的な成功というより、熱狂的な視聴者が多いんだと思う。それと午前中にTwitterのトレンドに入って、午後にTVerで観られる仕組みを作ったのがすごい。お笑いファンともまた違う、「ラヴィット」ファンがいるんだと思う。

井口 さっきのものさしの話に戻りますけど、結局は自分で作ったタイムラインを見ているだけですよっていうのは「ラヴィットに出ないと!」勢には言いたいです。視野を広く持たないと詐欺とかに遭いますよ、本当。

そのほかの「12月のお笑い」

中堅以上の賞レースが始動

飯塚 「G-1グランプリ」が「崖っぷちNo.1グランプリ」に変わるみたいだね(参考記事:「G-1グランプリ」が「崖っぷちNo.1グランプリ」に改名、人生を変える大会をより意識)。みなみかわさんとスーパー3助さんの「伝家の宝刀、抜かせんなラジオ」(GERA)で聞いたら前回のことがわかると思うんだけど。

井口 けっこういろいろあったみたいで。

飯塚 今年は“崖っぷち具合”も審査対象っていう。そしてフジテレビでは東野幸治さんMCで結成16年以上が参加資格の「THE SECOND」が始まる(参考記事:結成16年以上のコンビが漫才で競う新たな賞レース始動、決勝司会は東野幸治)。

井口 すでに売れている人や師匠方が出るかもしれないですし、どうなっていくんでしょうね。「M-1」のあともずっと漫才をがんばっている人たち、三拍子さんやエルシャラカーニさんみたいな人たちが出られるような大会だったら素晴らしいですけど。

飯塚 囲碁将棋さんとか、何組かはすでに「出ます」と言っているみたい。でもまだ全然わからないね。

infoさんがギャル

飯塚 infoさんの“自我持ち問題”をこの連載(9月のお笑い)でも話したけど、10億円のinfoが、ギャルなんだよ。そういう設定なのかと思ったら本当にギャルらしくて、ツイートが「てか」で始まる。絵文字もいっぱい使っているし、途中でinfoに飽きてきたみたいで「だいぶ(info活動に)飽きてるから滞るかも」とかも書いていて。

井口 素直ですね(笑)。

飯塚 そこまで振り切っていると、その芸人のファンも「かわいい」っていう反応になるんだよね。「自我を出すな」という風潮の中、ギャルって強いんだなと思った。

「おもしろ荘」

──前回話していた「おもしろ荘」(日本テレビ)の出演メンバーが決まりました(参考記事:元祖いちごちゃん、宮武ぜんた、ナイチンゲールダンスら「おもしろ荘」出演決定)。

飯塚 ニュースが出たときにひつじねいりがトレンドに入ってた。

井口 「M-1」でも注目されていましたからね。

飯塚 オーディションで見たときはマードックが面白かった。宮下草薙を「おもしろ荘」で見たときの感じ。前も言ったみたいに、「M-1」「キングオブコント」では見られないネタをたくさん見られました。

井口 前回の記事にナイチンゲールダンスのなかるてぃんが反応していましたね。

飯塚 ナイチンゲールダンスはネタブロックと一芸のオーディションの両方に出ていて、ネタのほうで通った。やす子も「おもしろ荘」から出てきたわけだし、いろんな人のきっかけになるといいですね。

やっぱり出る、きしたかのの話

飯塚 あとこの連載で毎回言っているきしたかのの話。「クイック・ジャパン」(太田出版)の「お笑いの配信オブ・ザ・イヤー」という企画の座談会に僕も参加させてもらったんですけど、「伝説の一日」なども含めた名だたる配信を抑えてきしたかののYouTubeが1位になってた。

井口 ええー! すごいなあ。

飯塚 「お笑いアカデミー賞」(TBS)では「一部で話題賞」にノミネートされて、高野さんが何も知らされずにスタジオに連れてこられて目隠しを取ったら目の前に憧れの松本人志さんがいる、というドッキリにかけられていたんだけど、それを経験したらもう何も驚かなくなりそうだよね。

井口 僕も「笑っていいとも!」(フジテレビ)に出させてもらっていて、あの伝説の最終回を目の当たりにしちゃったから、もう何を見ても感動しないと言いますか、レジェンドがいても「まあ1人か」みたいな(笑)。マヂカルラブリーの野田さんが憧れの松本さんに会わないようにしていたという話もありますけど、僕も松本さんと飲ませていただけてうれしかったし、「やっぱりこんなに面白いんだ」って感動した反面、ぽっかり穴が空いたというか。高野がこれ以上なにで驚くんでしょうね。

飯塚 「目の前に松本さんがいる」は、目隠しサプライズのマックスではあるよね。

三四郎・小宮号泣動画の少し前の、静けさ

──優勝会見でもおっしゃっていましたけど、漫才は続けていく?

井口 会見の記事はナタリーの見出しが一番好きでしたね。「ウエストランド、M-1優勝しても嫌なことは尽きないし漫才もやめない」。流れるようにダサいこととカッコよさそうなことが繋がってるっていう。

──うわ、うれしいです。でも井口さんは「漫才なんか早くやめたい」というようなことを以前からおっしゃいますよね。テレビで売れるまではやらなきゃいけないもの、みたいな。

井口 「タイタンライブ」があるからそこに向けてネタを作っていく感じですよね。「タイタンライブ」で初おろしはちょっと怖いので、「漫才工房」はじめ、どこかで出られたらライブも出たいです。スピードワゴンさんが普通にK-PROのプレミアムライブとかに出ていて、ああいうのもカッコいいなと思いますし。

飯塚 1回やめると、次またやるのが大変だからね。

井口 やめられないんですよね。だってやるから、爆笑問題がずーっと。でも「漫才好きじゃない」みたいなことを言ったら怒る人がいるんですよ。本当にやめてる芸人もいるのに。僕はやめていないじゃないですか? 言葉だけで騙されんなよ! 絶対詐欺とかに気をつけたほうがいいですよ。

飯塚 でも、本当にこんなことになると思っていなかった。この連載が5月に始まって、そのイベントをやるとも思っていなかったし、「オールナイトニッポン」(ニッポン放送)も一緒にできるとは(参考記事:「ウエストランドのオールナイトニッポン」生放送決定)。

井口 いやー本当ですね。どれだけ売れても優勝者じゃないと出られない番組がたくさんあるので、優勝してよかったなあと思います。2位では出られなかったので。あとは、いいことを言いたいわけじゃなくて、本当に周りが喜んでくれていることが一番うれしいんですよ。爆笑問題に褒められたくてがんばってきたところもあったから、「爆笑問題カーボーイ」(TBS)で優勝を直接報告して、「あ、この人たちこんなにうれしそうにしゃべるんだ」って思いました。

飯塚 聴いてて、2人が喜んでるのが伝わってきた。

井口 「マルコポロリ!」(関西テレビ)の収録のときに、東野さんが「太田さんめちゃくちゃ喜んではったで」と言っていて、逆に太田さんからは「東野がめちゃくちゃ喜んでたぞ」と聞いたんです。うれしかったですし、お互い自分のことは言わないっていう芸人の粋な感じもなんかよかったですね。

飯塚 泣きそうになってもいいんだよ?

井口 だから、泣かないんですよ! 小宮さんが大号泣している動画があったじゃないですか。「アナザーストーリー」の密着で小宮さんに会ったときにその話になって、動画を見せてもらったんです。小宮さん、ともしげさん、鬼ヶ島アイアム野田さん、浜村凡平太さんとか、昔ながらの仲間が一緒に見てくれているんですけど、最終決戦の審査結果がめくれていく瞬間から無言なんですよ、最後までずっと。誰も言葉を発さないまま番組が終わって、しばらくしてから「優勝、したなあ」って言っているんです。僕はむしろグッときたんですが、近い関係すぎてリアリティがないとか、悔しさもあるだろうし、優勝が決まる瞬間の映像で「わー!」ってなってないのを初めて見たので、すごいリアルでした。

飯塚 泣いた?

井口 いや、泣きはしないです(笑)。

ベテランMCによる「河本太生かし選手権」の幕開け

──イベントお疲れさまでした。ご感想を伺えますか?

井口 (読者が)本当にいたんだっていうのが見えてよかったです。そしてラブレターズもいたんだ。

溜口 いました(笑)。

塚本 お邪魔してます。

──ここからはイベントにご来場いただいていたラブレターズのお二人にも参加してもらいましょう。

井口 初めて出たライブがラブレターズと一緒で、そのネタ見せをしていたのが飯塚さん。本当に同期です。さっきも溜ちゃんに「井口くんってM-1優勝する人生だったんだ」って言われましたけど、僕も意外すぎて。

塚本 「ウエストランドって優勝するんだ?」っていう(笑)。ああいうときの太くんの涙もいいよね。

飯塚 爆笑だったけどね。「泣いてるー!」って。

井口 で、翌日の朝の番組に出させてもらって、全部でネタ間違えて。漫才チャンピオンとして登場してネタができないってなんなんだよ!

飯塚 統一されてないよね。家族思い、涙もろい、でも朝の番組では女子アナに抱きつこうとする。この人どっちなの?っていう(笑)。情に厚くていい奴なのかと思ったらクレイジーなこともやるから。

溜口 何パターンもあるからな。

井口 だからすぐにいい面は剥がれていって、相当嫌われるんじゃないですか?

──そんな河本さんは今後バラエティでどうなっていくでしょうか。

飯塚 いまだにちゃんとうまく転がせた人がいないから、各ゴールデンのMCたちの腕の見せどころですよね。「太生かし選手権」。

塚本 それが始まるんですね。

溜口 新たな賞レースだ。

飯塚 ベテランMCの賞レース(笑)。

井口 ムズいぞ~?

飯塚 これまでは早めに井口くんが回収しちゃうから、深いところまで行かなかったんだよね。

塚本 その選手権が始まったらちょっと泳がせてよ。

井口 そうこうしてる間に全部がなくなる可能性あるから!

溜口 ウエストランド自体が終わっちゃう(笑)。「M-1」のエンディングで「コンビで仕事ください」って言っていたけど、そういうのを言う人だったんだね?

井口 やる気ないと思われがちだけど、さすがにこれだけ優勝前から格差あるコンビいないから、なんか思うことはあったんじゃない?

塚本 あれが第一声に出てくるってすごいよなあ。

井口 千鳥ノブさんは「情けねえ!」って言ってたよ。

溜口 自己プロデュースとかはないんだろうね。だから涙を流せるし、ああいうことも言えるし、女子アナに抱きつこうともできる(笑)。

塚本 いいんだよなー、それが。

記憶を消すほどの2020年の悔しさ

──前回飯塚さんがおっしゃっていましたけど、ここ10年くらいのお笑い史にずっとウエストランドがいて、また新しい歴史も刻みました。

井口 「オンバト」(NHK)もラブレターズと一緒に行っていたよね。

溜口 いろいろ早めに出させてもらっていると思っていたけど、今やもう劇場での最年長になってきて。

井口 今回「M-1」ファイナリストの中で僕らが最年長だったけど、「THE MANZAI」でハマカーンさんが優勝したときに「ハマ3」(フジテレビ)という優勝記念番組があって、ゲストがウエストランド、ジャルジャル、千鳥の3組だったことがあったんだよ。その頃は怖いもの知らずだったし、絶対失礼なことやってたんだろうなと思う。

──千鳥や博多華丸・大吉との「THE MANZAI」から、結成2年のヨネダ2000も参加する今回の「M-1」まで、本当に長く戦ってこられたんだなと感じます。

塚本 お笑いの歴史にずっといるんだね。

──配信をご覧の方から「井口さんに幸せになってほしい」というコメントが来ていたんですが、井口さんは何がどうなったら満足いくと思いますか? 今のところはずっと怒っていますが。

井口 8年くらい前にアンジェラ・アキさんの「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」の2014年バージョンのMVに出させてもらって、10年後の自分へメッセージを書いたんですよ。太田さんのお話とかを聞くと、すごく成功している人でも満足していないんだなって感じることが多かったので、「どうせ満足してないんだろ?」という言葉にしたんです。そこから売れもせずどんどん月日が流れて、そりゃ満足してないだろって感じでしたけど、「M-1」優勝して環境や仕事が変わっても僕は変わらないんだろうなって思いますね。

溜口 優勝してちょっとでも満たされたことはないの?

井口 うーん。でもほかの芸人だったらもっとこうだったんじゃないかとか考えると……。

塚本 それ言い出したらきりないじゃん!(笑)

井口 そうなんだけど、「これがもしランジャタイだったら……」とか(笑)。

飯塚 でも売れている人たちって誰も現状で満足してないから、満足するのは無理だと思う。ずっと満足しない人生を送るか、ある程度満足して成長が止まって、仕事が減っていっても楽しいと思うか、どっちかじゃない。

塚本 じゃあ満たされないんだろうな。

──でも2020年の悔しさは晴れました?

井口 今になって気づいたんですけど、2020年の「M-1」決勝の記憶がマジでなくて。「アナザーアナザーストーリー」で映っていたように絶対楽屋でわいわい過ごしたはずなのに、1ミリも記憶がないんです。よくよく思えばニューヨークとかもいたのに。

──楽しい楽屋のはずですね。

井口 でもニューヨークがいたことすら忘れていて。だから相当嫌な記憶だったんでしょうね。最下位を経験したマヂラブさんもおっしゃっていましたけど、日本中につまんないと思われて、「もう終わった」って思うんです。こんなにがんばってきたのに、決勝でダメだとこんなことになるんだって。そのあと番組に出てもMCさんが優しいから自虐的なボケもできないんですよね。「日本でトップ10なんだからすごいよ!」みたいな。そういうことも含めて消したい記憶だったんだと思います。それが、今回の決勝1本目で志らく師匠の98点が出たときのこれ(無邪気に喜ぶ動作)につながるわけです。

塚本 大はしゃぎしてたね。

井口 急に子供(笑)。

──優勝ももちろん素晴らしいことですけど、2本目の内容を聞いて、何より2本目がやれて本当によかったなあと思いました。これで悔しさは晴らせたんじゃないかなと。

井口 そうですね。2本目で「M-1」のことも言いたかったので。

飯塚 2本目のネタを見たときに思い出したのが、ナイツが「THE MANZAI」で「のりピー」って言って、爆笑問題が手を叩いて笑っていたことなんだよね。みんなが「言ったぞー!」と楽しんでいる感じを思い出した。国民が見ている場でこんなこと言うんだ!っていうのが痛快だった。

井口 でもよかったです、みんなが笑ってくれて。「R-1」公式も許してくれましたし。お見送り芸人しんいちさんが一番喜んでましたよ。「ZAZYとのケンカが終わりかけてたから延命した」って(笑)。次の「R-1」チャンピオンは本当に大変だと思います。

──個人的には1stラウンドでせり上がってきて、扉が開いたらもう井口さんがポーズを取っていたのがよかったです。

飯塚 ファイティングポーズよかった。余裕がある感じがして。

井口 「プシュー」と迷ったんですけど、いまいちどこにカメラがあるかわかんなかったので。で、2本目のときにみんなうまく出られていなかったじゃないですか。

飯塚 「ふらっと」でパンサー向井さんが言っていた“出囃子問題”ね。最終決戦3組で正しい出囃子のタイミングで飛び出せたのが、ウエストランドだけだったっていう。

井口 僕だけちゃんと出られて、それを「話を聞いてて真面目だった」とか言われていますけど、正直そんなに真剣には聞いていないですから。なんでしょうね、扉が開いたから出たっていうだけだと思うんですけど。だから、逆になんであいつら出なかったんだよ? 開いたら出るだろ。

塚本 でも「アナザーアナザーストーリー」で台本を読み込んでる姿を見て、さすがだなと思ったよ?

井口 ふざけてるんだよあんなの! 冗談に決まってるんだから。すぐ信じんな!

塚本 ネタであんだけ毒吐いたあとにちゃんと「ありがとうございました」って言うしね。

溜口 ウエストランドの「ありがとうございました」が一番意味わかんないよ。

井口 今回1本目は「いい加減にしろ」を言わなかったからよかったんですよ。「お前だよ!」ってなるんで。いつも散々悪口言ったあと、「いい加減にしろ。どうもありがとうございました」。何がありがてえんだよ(笑)。

溜口 「すいませんでした」だろ(笑)。

井口によって終止符が打たれた「2022年のお笑い」

──ラブレターズ的「今月のお笑い」はなんでしょう?

飯塚 「塚本ミシン(※)好調」っていうのはあるんじゃない?

※編集部注:相方のコロナ療養中にミシンを衝動買いし、実験的にリメイクに挑戦。それからYouTubeチャンネルを立ち上げ、ミシン動画を公開しているほか、芸人たちからリメイクやお直しの注文が数多く入るように。なおYouTube動画はラバーガール飛永が編集している。

塚本 わりと軌道に乗ってきて。

井口 うそ! よかったじゃん。

溜口 芸人からの注文が殺到してるんだよ。男性ブランコの浦井くんも「M-1」の打ち上げ配信で着てくれてた。

塚本 さらば青春の光の森田さんのお直しから始まって、いろんな芸人さんから言ってもらえるようになってきた。

溜口 「お前らはコント諦めてミシンとモルック(※)で売れる気か!」って冗談で言われてましたけど(笑)。

※編集部注:溜口は今年からさらば青春の光・森田らのモルックチームに参加している。世界大会にも出場し、決勝ラウンドまで進んだ。

井口 あながち冗談じゃなくなってきた(笑)。

──「今年のお笑い」で言うとどんな話題がありましたか?

溜口 6年ぶりの「キングオブコント」準決勝進出ですかね(参考記事:金の国、サスペンダーズ、スパイシーガーリック、フランスピアノ、隣人ら35組がKOC準決勝進出)。

井口 6年ぶり!?

塚本 2016年に決勝行ったきり、準決勝に行けてなかった。

溜口 「野球拳」やったきり。

井口 ジグザグジギーとか去年「キングオブコント」で話題になってましたけど、この世代がまた賞レースで行けそうな気配が出てきましたね。

飯塚 マヂラブが大宮セブンごと昇りつめようとしていたけど、その感じでウエストランドと三四郎が引っ張って、「つぶぞろい」(※)ごと売れてくれないかなあ。

※編集部注:飯塚が2011年から自主開催していたお笑いライブ。三四郎、ウエストランド、ラブレターズ、ジグザグジギー、浜口浜村、ぽ~くちょっぷらが出演していた(参考記事:“伝説のライブ”作家飯塚の「つぶぞろい」10年ぶり復活、三四郎、ウエランら集結)。1月22日(日)に東京・草月ホールで「つぶぞろい2023 ~みんな売れて大復活ライブ~」開催。

溜口 他事務所同士の多国籍軍として。

井口 番組に出たときに「つぶぞろい」の説明がムズいですよ(笑)。昔じゃ考えられなかったけど、今年は「アメトーーク!」(テレビ朝日)で「K-PROライブ芸人」もあったし、この“1980年代生まれ弱小連合軍”でがんばっていきたいですね。

溜口 ネーミング締まらないなあ(笑)。

──では最後に「今年のお笑い」の総括を。

井口 去年からランジャタイやモグライダーが活躍して、なんとなく僕らの世代に勢いが出てきた感じはしますね。その関連でたくさんテレビにも出させてもらっていましたし、それがなければ僕らの優勝もなかったと思います。今年はヤーレンズも敗者復活戦で6位まで食い込んで、第7世代が流行っていたときに肩身狭く生きてた奴らでなんとかがんばりたいです。

飯塚 ニューヨークが言っていた「芸人大ドキュメンタリー時代」の流れも井口くんが最後に終止符を打った形になって。

井口 「2022年、完」のハンコ、僕が持ってたんだっていう(笑)。みんなのいろんな楽しみを終わらせたのかもしれませんね。

飯塚 でも改めて、毎月のお笑いを振り返る連載で最後にその年の主役になるってカッコいいよ。

井口 それはもっと言われてしかるべきです!(笑)

飯塚 みなさん、ぜひたくさんつぶやいてください。

井口 「#今月のお笑い」でツイートしてくださいよ! 全部見るんで。

──ありがとうございました。そして改めておめでとうございました! 読者のみなさんにはたくさん感想をいただけたらと思います。2023年もこの連載をどうぞよろしくお願いします。

井口浩之(イグチヒロユキ)

1983年5月6日生まれ、岡山県出身。2008年、河本太(コウモトフトシ)とウエストランドを結成。2013年4月に「笑っていいとも!」(フジテレビ)のレギュラーに抜擢され、最終回まで不定期で出演した。2012年、2013年に「THE MANZAI」認定漫才師、2020年に「M-1グランプリ」ファイナリストとなる。そして2022年、「M-1グランプリ2022」優勝! 第18代王者として年末年始のテレビやラジオや雑誌に引っ張りだこ。ラジオ形式の番組「ウエストランドのぶちラジ!」をYouTubeなどで配信中。タイタン所属。

飯塚大悟(イイヅカダイゴ)

1982年4月13日生まれ、新潟県出身。テレビ、ラジオの構成作家。現在の担当番組は「ヒルナンデス!」(日本テレビ)、「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」(テレビ朝日)、「水曜日のダウンタウン」(TBS)、「トークィーンズ」(フジテレビ)、「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)など。書籍「深解釈 オールナイトニッポン~10人の放送作家から読み解くラジオの今~」(扶桑社)。かつて主催していたお笑いライブの復活版「つぶぞろい2023 ~みんな売れて大復活ライブ~」が1月22日(日)に東京・草月ホールで開催される。配信チケットはチケットぴあで販売中。

ラブレターズ

1984年12月28日生まれ、静岡県出身の塚本直毅(ツカモトナオキ)と1985年1月19日生まれ、埼玉県出身の溜口佑太朗(タメグチユウタロウ)が2009年に結成したコンビ。2011年、2014年、2016年に「キングオブコント」決勝に進出している。毎週月曜23時から自身のYouTubeチャンネルで「階段腰掛け男」をラジオ形式で生配信している。ASH&Dコーポレーション所属。