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「月影番外地」4度目のタッグ 木野花×福原充則初対談「木野さんは、勝手に自家発電して爆発している」

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「月影番外地」第7弾公演『暮らしなずむばかりで』演出の木野花と脚本の福原充則

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劇団☆新感線の高田聖子が手がけるユニット「月影番外地」の第7弾。今回も演出に木野花、さらに脚本に7年ぶり、4度目となる福原充則を迎え、新作『暮らしなずむばかりで』を上演する。そこで稽古開始から1週間ほどが経過した現場で、木野と福原の初となる対談が実現。月影での創作について、福原戯曲の魅力について、パワフルな木野演出について、ふたりにたっぷり語り合ってもらった。

木野のこだわりは福原の台詞をバシッと観客に刺すこと

――月影番外地と福原さんのタッグは、今回でもう4度目になります。

木野 最初の『くじけまみれ』が2012年、当時福原さんはまだ37歳。私的には結構若い人と芝居をする感覚があったので、「果たしてついていけるかな?」という心配はありました。でも幸いなことに福原さんが唐(十郎)さんやアングラの影響を受けていて、私はもろそういう世代。だからそこを足掛かりに出来たのは良かったですね。ただ話の展開の速さや笑いのセンスに関しては、いつも必死に食らいついている、挑戦している感じはあります。

福原 脚本だけ担当の場合、一生懸命書くっていう点ではどのカンパニーも同じなんですけど、たまに本気度が嚙み合わないなと感じる時もあるんですよね。「完成度は高いけど少し物足りない……」と思うこともあって。でも本気度みたいなもので作品を計るとしたら、木野さんの場合、「参りました」みたいな気分になるというか……(笑)。

木野 なにそれ?(笑)

福原 いやつまり、台本に書いてある熱量よりも、芝居の方が熱を帯びている。作家としてそれはやっぱり楽しいというか、ワクワクしますよね。

“五十路の逆噴火物語”と題された本作は、同じアパートに住む能見(高田聖子)と庄司(松村武)、アパートの大家・逆巻(宍戸美和公)という50代の3人と、森戸宏明、田村健太郎、信川清順演じる周辺の人々との物語。

――演出家としては、福原戯曲を立ち上げる難しさをどんなところに感じていますか?

木野 笑いですね。福原さんのホンって面白いから、ついそっちに引っ張られちゃうことも多いと思うんです。コント仕立てでやろうと思えばやれちゃうし、そういうのが得意な役者さんがいたらなおさら。でも逆に言えば、掘ろうと思えば掘り起こせる台詞もたくさんあって、私はそれを素通りすることが出来ない。とことん深堀して、観客にバシッと刺したい、届けたいっていうのが私のこだわりかな。で、なおかつ笑いもちゃんと拾って、取りこぼさないように欲張っていきたい。そこは役者さんに助けてもらっている部分が大きいですね。

70過ぎても気力衰えず、来た仕事はどんどん背負い投げ

――今回の新作では、知り合って間もない50代の男女の、不器用で少し変わった友情が描かれていきます。こういった題材を選ばれた理由は?

福原 なんでだったかな……。ひとつ覚えているのは、つげ義春と大島弓子を同時にやろうっていう(笑)。

木野 私の大好きな漫画家ね。

福原 そうそう、そんなところからスタートして……。ただ僕はいつも今自分が切実に思っていることを書く作家なので、月影の場合、それをその都度、(高田)聖子さんに置き換えて書いているってことだと思うんですよね。あと今回で言えば、コロナのことがひとつ大きかったかもしれないです。今、ひとりぼっちの人はどう思っているのかなとか、劇場に来られなくなっちゃった人は今なにやっているのかなとか。そんなことを取っかかりに、寂しい人たちが出会うって話になっていったんだと思います。

木野 台本を読んだ時、私もコロナのことは考えました。コロナによっていとも簡単に生活が破綻してしまう。そういった状況を身近に感じた時、この際仕切り直しするのもありなのかもしれないなと。50代という人生の後半に差しかかった時期に、ゼロ出発する。私なんかはね、わりと「すれば?」って思っちゃうタイプなんですよ。というのも私、70過ぎても全然気力が衰えなくて。年相応なんて言っていられないほど仕事もいただきますし、それこそ来た仕事はどんどん背負い投げする感じでむかってますけど。

福原 ハハハ! 木野さん、年々パワフルになっていますもんね。

木野 なんでしょうね。70にもなったら相応の落ち着きが出るのかと思っていたら、逆流している感じ。もちろん体は相当老いていますけど、気持ちは落ちない。特に芝居はね。だったらもう気持ちのままにやっていこうって、居直っている感じです(笑)。芝居終わった後の疲労度は年々増してますけどね。

福原 木野さんのいいところは、ちゃんと自分の泉からそのパワーを出しているところですよね。なんかパワーがあっても周りに迷惑をかけている、単に周りから吸い取っているだけの人もいますけど。その点木野さんは、勝手に自家発電して爆発している、未来のエネルギーみたいな(笑)。

木野 いや、でも私ひとりじゃ無理なのよ。福原さんがいたり、聖子がいたり、いろんな人たちと一緒に作っていく。だから自家発電というより、みんなと回す発電所みたいなものがもう出来上がっているんだと思います。わからないことがあれば、私からもどんどん聞きますし。で、みんなからアイデアをもらって、「だったらこれもあるんじゃない?」みたいな感じで相乗効果が生まれていく。特に月影は、もうずっと同じ人たちと一緒にやってきていますからね。みんなものすごく頼もしいですよ。

『暮らしなずむばかりで』稽古風景
『暮らしなずむばかりで』稽古風景

――さらに今回で言えば、松村武さんなど新しい顔ぶれが加わるのも月影らしさのひとつですね。

木野 そうです、そうです。もちろん新しい人ともやりたいですから。今回の庄司(高田聖子演じる主人公・能見の隣室に住むサラリーマン風の男)という役は、松村さんがやるっていうのがミソで、あんまり役作りがいらないというか、いるだけで庄司の匂いが漂う感じがいいんですよね。

福原 ほかのキャストもまた、ひとりとして個性が被っていないですよね。

木野 うん、面白いと思いますよ。まだ稽古は始まったばかりで手探り状態ですけど、イケると確信しています。

福原 僕からすると、恐ろしいほどのスピードで(稽古が)進んでいると思いますけどね(笑)。

木野 「稽古初日からラストスパート!」っていうのが合言葉なんです。このホンが持っている可能性を、余すところなくお客さんに見せたい。そんな欲が年々深くなっていて。そうするともう、のんきなことなんて言っていられないのよ!

福原 ハハハ!

取材・文=野上瑠美子

<公演情報>
月影番外地 第7弾『暮らしなずむばかりで』

2023年1月18日(水)〜29日(日) 下北沢ザ・スズナリ

作:福原充則
演出:木野花
出演:高田聖子 / 宍戸美和公 / 森戸宏明 / 信川清順 / 田村健太郎 / 松村武

■チケット料金
全席指定:6,000円(前売り / 当日共)

チケットはこちら:
https://w.pia.jp/t/tsukikage/

問合せ:サンライズプロモーション東京
0570-00-3337(全日12:00〜15:00)

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