青銅器ブーム到来の予感!? 予備知識なしで楽しめる入門編的展覧会『不変/普遍の造形—住友コレクション中国青銅器名品選—』開催中
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《虎卣》 殷後期(前11世紀)
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すべて見る世界屈指とも言われる住友コレクションの中国青銅器を一堂に紹介する『不変/普遍の造形—住友コレクション中国青銅器名品選—』が1月14日(土) に開幕した。泉屋博古館東京リニューアルオープン記念展の第4弾として開催される同展では、通常は京都の泉屋博古館(本館)に収蔵されている青銅器の名品の数々が展示されている。
今から約3000年前、殷や周といった王朝が栄えた古代中国において発達した青銅器文化。中国青銅器というと、難解なイメージを持ってしまいがちだが、同展では、青銅器の種類や用途、文様やモチーフ、金文(銘文)、鑑賞の歴史といった切り口の章立てで、わかりやすい解説文付きで展示されており、青銅器についての予備知識がない人でも楽しめるよう工夫が施されている。
第1章「神々の宴へようこそ」で注目するのは、青銅器の種類、用途について。殷周青銅器の最大の特徴は、神々に捧げるまつりのための器が発達したこと。特に最も重視されていた祖先神をもてなす器を作るために、当時貴重だった青銅が惜しげもなく使われたという。ここでは、酒やハーブの煮汁を入れる「卣(ゆう)」、穀物を盛る器「敦(たい)」、酒を温める器「爵(しゃく)」など、種類・用途別に紹介。これらはすべて鋳造の技術で制作されたものだというが、住友コレクションの青銅器を代表する作品ともいえる《虎卣(こゆう)》をはじめ、いずれもその細工や文様の細やかさ、造形の複雑さに驚かされる。同展を担当した学芸員の山本堯さんは「これだけ複雑な形でありながらただの飾りではなく、高度な機能性を持っている。そこが青銅器のおもしろいところではないかなと思います」と語る。
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第2章は「文様モチーフの謎」。青銅器の表面を飾る文様やモチーフにはどのような意味が込められているのか。ここでは「二面性」「キメラ」をキーワードに読み解いていく。
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例えば、フクロウやミミズクの類を指す「鴟鴞(しきょう)」は、中国青銅器にはよく見られるモチーフだが、古代中国では不吉な鳥とされていた。また、同じように青銅器によく見られる文様・饕餮(とうてつ)は、邪悪で貪欲な獣のことで、どちらも決してめでたい意のものではない。「人間にとって危険な存在であるからこそ、邪を払ってくれる聖なる存在にもなりうる。吉にも凶にもなる、そういう二面性が青銅器のモチーフや文様におけるひとつの特徴になっています」と山本さん。「おそらく当時の人たちは動物たちの特徴をよく観察し、組み合わせて想像上のモチーフを作り上げていた。“キメラ”としての姿も青銅器の聖なる性格にもつながっているのだと思います」
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青銅器の形や文様を見た後は、その内側にも注目したい。第3章「古代からのメッセージー金文」では器の内側に鋳込まれた金文について取り上げている。現在使用されている漢字の祖先にあたる文字、金文で器に記されている内容は、王から褒美をもらったことや、いくさで手柄を挙げたことなどさまざま。当時の人たちがどのような思いで青銅器を鋳造したのか伺い知ることができる貴重な歴史資料だ。展示会場では釈文、現代語訳をつけて丁寧に解説されている。
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最終章となる第4章は「中国青銅器鑑賞の歴史」。明治から大正にかけて、多くの中国青銅器が日本にもたらされたが、住友家の15代当主、住友春翠は、煎茶の床飾りとして使用するために青銅器を購入し、これをきっかけに住友の青銅器コレクションが形成されていったという。本章では、宋代に殷周青銅器を模して造られた「倣古銅器」の展示や、煎茶会での展示の再現などから、中国青銅器の鑑賞の歴史と日本文化との関わりについて紐解いていく。
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なお、現在、港区内で中国古代青銅器を所蔵・展示している3館(根津美術館・松岡美術館・泉屋博古館東京)をめぐるデジタルスタンプラリーを開催中。3箇所のスポットを巡り、スタンプをすべて獲得すると、3D ARフォトフレーム「「おでかけしきょうそん」をプレゼント。ぜひトライしてみよう。
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