【インタビュー】中谷美紀×菊池風磨 初共演のふたりが明かすドラマ『ギバーテイカー』の撮影秘話
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左から中谷美紀、菊池風磨 (C)WOWOW
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すべて見る小学6年生の教え子に、愛する娘を殺された小学校教師。12年後、両者の運命が再び交錯し……。娘の命を奪われた主人公とその娘の命を奪った猟奇殺人犯の激闘を描く本格クライムサスペンス『連続ドラマW ギバーテイカー』で、中谷美紀と菊池風磨が初共演。かたや教師から刑事に転職し、犯罪と向き合う主人公・倉澤樹(いつき)、かたや幼くして殺人に手を染めた猟奇殺人犯・貴志ルオトという難役に彼らはどう臨んだのか。共演の感想や撮影秘話などを聞く。
初めて会ったとき、すでに役として存在していた菊池
──おふたりは本作が初共演となりますね。
中谷 大変失礼ながら、私は皆さんがご存じの菊池風磨像を存じ上げなかったんです……。
菊池 全然大丈夫です。むしろ助かります(笑)。
中谷 ですが、ご出演なさっているドラマを拝見しまして。とても明るい役を演じていらしたので、ルオトとは結びつきませんでした。けれども初めてお目にかかったとき、すでに役として存在してくださっていて。普段のお姿を封印し、全く別のキャラクターとして立ってくださっていた。なので、私も倉澤としてどんどん追い詰められましたね。世界中が風磨くんに黄色い歓声を上げたとしても、私は彼をいまだに殺したいと思っています(笑)。
菊池 そう言っていただけたら本望です! 僕にとって中谷さんは、テレビや映画で見ている方。これまでは実際にお会いする機会もなかったので、背筋がめちゃめちゃ伸びました。
──おっしゃるとおり、倉澤樹と貴志ルオトは敵対関係にあります。
菊池 ルオトは樹先生に執着していて、彼女のことを考えない日はないくらい。12年前に穂乃花ちゃん(倉澤樹の娘)を殺し、医療少年院に入っていた間、樹先生への思いをいかに膨らませていたかを想像しました。最初はお母さんへの愛情みたいな気持ちだったのが、思春期を迎えて女性として好きになったりもしたでしょうし。
中谷 事件以来、隣人であり、教え子でもあったルオト少年の微笑む姿が、倉澤の中ではずっとフラッシュバックしていたと思うんです。夢にも出てきたでしょうし、食器を洗っていようが、街を歩いていようが常に頭をよぎっていたはず。12年の歳月を経て再会したときも、成人したルオトにかつての少年の姿を重ねたのではないかと。しかも、(菊池風磨とルオトの幼少期役・志水透哉の)お顔が似ているんです。唇ですとか、ちょっと微笑む姿が。
菊池 似ていましたね。
中谷 キャスティングの妙で、そこも素晴らしかったです。
──演じる上で最も苦心した点は?
中谷 倉澤が抱えている痛みは、私が到底経験したことのない痛みですから。その痛みを自分の感情とし、自然に湧き上がらせるにはどうすればいいか、やはり悩みましたね。
菊池 僕もやっぱり、自分の中に全くないものを探すのが一番苦労しました。なので、原作の漫画を読んでみたり、猟奇殺人犯が登場する映画を思い起こしてみたりもして。
──演じていて、アイドル業に支障は出ませんでしたか?
菊池 それは全然! ちゃんと切り替えられていたと思います。ルオトでいるときは静かでしたけど、撮影現場を一歩出たらいつもの僕に戻っていました。
中谷 プロなので。
菊池 いやいやいや(笑)。
中谷 お気遣いくださって、現場ではちょっと離れた場所にひとりでいらっしゃることが多かったですよね。ですが、撮影が終わった後、ある番組で全裸でのたうち回っている姿を見てしまい……。「えええ!? 私が知っている菊池風磨ではない!」と思いました(笑)。
菊池 そっちが間違っています。僕ではないです!
中谷 びっくりしちゃって。
菊池 今の僕が本物です。
中谷 引き出しがおありなんでしょうね。
菊池 いやいやいや(笑)。
“中谷さん”から樹先生に切り替わる瞬間は鳥肌もの
──中谷さんがそんな姿をご覧になったのが撮影後でよかったです(笑)。お互いの役に対する感情を高めるために、撮影中になにか取り組んでいたことはありますか?
中谷 そこが菊池風磨さんのすごいところで。彼の演技を真に受け、眼差しを見つめ、声を聞いていれば、自然と倉澤の怒りや苦しみをかき立ててくれるんです。こちらから特に無理をする必要がなかったことが、本当にありがたかったですね。
菊池 “中谷さん”から樹先生に切り替わる瞬間って、もう鳥肌もので。おかげで僕も役に入れましたし、あとはとにかく「好き」という気持ちを意識しました。偏っていますし歪んでもいますけど、ルオトは樹先生が好き。とは言え、中谷さんのことはみんな好きじゃないですか。なので特になにかをする必要もないんですが、僕のマネージャーさんが中谷さんの大ファンで(笑)。彼の愛を聞きながら自分に置き換え、「好き」をより深めていきましたね。
──身近にリサーチ対象がいたんですね。
菊池 そうなんです。このお話をいただいたときも、彼が一番喜んでいました。
中谷 ありがたいです(笑)。
菊池 役作りの完璧なパートナーでしたね。
──そのことを中谷さんはご存知でしたか?
中谷 (撮影の)最後に伺って。でも、現場を盛り上げるために言ってくださったのかと。
菊池 いやいやいや、本当のことです!
中谷 ありがとうございます。
──お互いの役に対する感情と言えば、倉澤樹が娘の遺体を発見する第1話が衝撃的です。あのときの慟哭が、貴志ルオトに対する怒りの原点にも思えますし。
菊池 実は僕、あのシーンの映像を監督に見せていただいたんです。
中谷 ええ!? そうだったんですか?
菊池 はい。12年前の場面なので僕は演じていませんが、ルオトの記憶にあるはずなので。監督からは「見て、役として想像してください」と言われました。でも、本当にもう苦しくなっちゃって……。しかも、ルオトとしては、それを喜びに変えなきゃいけない。その作業が大変だったんですが、見て演じるのと見ないまま想像で演じるのでは濃さが全然違ったと思うので、見ることができてよかったです。すごく鮮明に、ずっと覚えていましたし。
中谷 痛み、苦しみ、憎しみ、あるいは自責。そういった感情を掘り起こしながらのシーンでしたが、“叫び”と言えばムンクだなと思いまして。ムンクの展覧会を見に行ったりもしました。ムンクは幼くして母親を亡くし、実の姉を亡くし……という複雑な人生を歩んだ人。そんな彼の絵画から、何かいただけるのではないかと思ったんです。「心をむき出しにしていないアートはアートではない」と言いますし。そうして、ムンクの絵画から受け取った思いをお腹の奥の方にずっと大切にしまって。しかも、あのシーンを演じる直前に、(穂乃花役の)松岡夏輝ちゃんが「お母さんへ」と手紙を書いてきてくれたんです。
菊池 えええ~っ!!
中谷 中に折り紙が入っていて……。
菊池 そんな……(絶句)。
中谷 ルオトとしては複雑な気持ちになりますよね(笑)。なんと言いますか、そんな彼女が私を“お母さん”にしてくれたように思います。
──撮影後は、すぐに作品世界から抜け出せましたか?
菊池 どうだったかな……。でも……あっ、中谷さんからクッキーをいただいて。本当にすっごく美味しいクッキーで、ちょっとだけ食べてみようと思ったら止まらなくなっちゃいました。
中谷 あらら、ごめんなさい(笑)。
菊池 いやいや(笑)。おかげでリフレッシュできました。
中谷 それならよかった(笑)。私は今回、撮影中はずっとリフレッシュしちゃいけないと思っていて。いつもは仕事と日常を極力切り離すようにしているんですが、今回はなにもする気になれませんでした。靴下を手で洗う気力もなく、「高いなあ……。でも、無理!」と思いながらクリーニングに出しましたね(笑)。そうじゃないと、張り詰めた倉澤の感情を演じられなかったんです。もちろん、エンターテイメントなので小気味よく楽しめる作品になっていますが、演じる側としては、どんよりとした真っ黒いものを常に背負っていないとできなかった。なので、そこから脱するのにも苦労して。それくらい、私にとっては大きな経験でしたね。
取材・文:渡邉ひかる
写真(中谷美紀):伊藤彰紀(aosora)
スタイリスト(中谷美紀):岡部美穂
ヘアメイク(中谷美紀):下田英里
衣装協力(中谷美紀):ブラウス/コル ピエロ(ウィム ガゼット 青山店)、イヤーカフ/ヴァンドームブティック(ヴァンドームブティック 伊勢丹新宿店)、リング/ヴァンドーム青山(ヴァンドーム青山本店)
『連続ドラマW ギバーテイカー』
放送・配信:1月22日(日) 放送・配信スタート(全5話)
【放送】WOWOWプライム/WOWOW4K:毎週日曜午後10:00(第1話無料放送)
【配信】WOWOWオンデマンド:無料トライアル実施中
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