「ジュリアン」監督と呉美保が音の演出を語る、トーマス・ジオリアは撮影を回想
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「ジュリアン」トークイベントの様子。左から呉美保、グザヴィエ・ルグラン、トーマス・ジオリア。
「ジュリアン」で監督を務めたグザヴィエ・ルグランと主演のトーマス・ジオリアが来日。本日12月4日に東京・ユーロライブで行われたトークイベントに出席した。
第74回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した本作は、ルグランの短編「すべてを失う前に」をもとに、離婚した両親の間で揺れ動く11歳の少年・ジュリアンを主人公とした家族ドラマ。長編化に至った経緯を問われたルグランは「もともとは『すべてを失う前に』のあとに短編を2つ制作し、短編3部作とする予定でした。でも話を進めるうちに1本の長編で描くことにしたんです」と説明した。
オーディションでジュリアン役を勝ち取ったジオリアは、出演が決まったときのエピソードを披露。「もともと僕は舞台俳優として活動していたんですが、演劇の先生がキャスティング責任者を紹介してくれたんです。オーディションに受かったと聞いたときは、初めての映画出演だったので飛び上がって喜んだことを覚えています」とほほえむ。ルグランはジオリアを選んだ決め手を「ほかの候補者より大人びていて、感性も豊か。ひと目見て、この子だと思いました。また、他の子供たちは映画の出演経験も多くテクニックもありましたが、彼の嘘のない純粋な演技が決め手になったと思います」と語った。
銀獅子賞を受賞した際の心境についてルグランは「あまりにも喜んでしまって涙が止まりませんでした。本作は私の長編デビュー作なのですが、ヴェネツィア国際映画祭のような権威ある映画祭で評価されたことはこの上ない喜びでした」と述べる。本国フランスでの興行についても触れ「重いテーマを扱っている作品で、出演者も有名なわけではないという点を踏まえると、とても満足のいく動員だと思います」と話した。
イベントには、「そこのみにて光輝く」「きみはいい子」の監督を務めた呉美保も出席。試写会で本作を2度鑑賞した呉は「近頃観た作品の中でもっとも胸を打つ作品。終わったあとしばらく席を立てませんでした」と感想を述べ、ルグランは日本語で「ありがとう」と感謝した。МCが本作の演出で工夫した点を尋ねると、ルグランは「俳優たちをリアルな環境に置くことに注意を払いました。通常、音は後付けなんですが、音響監督にお願いして各シーンで聴こえる音を俳優たちも聴けるようにしました」と明かす。呉は「音に感情が動かされました。耳を澄ませてすべての感覚を使って聴いていると、すごく繊細な音が付いていて、その音がクライマックスに結び付いてくるのが、驚きもありつつよかったです」と述べた。
ジオリアは「撮影中は演技指導のコーチがついてくれて、撮影前に何カ月か指導を受け、リハーサルを重ねていたので戸惑うことはありませんでした。各シーンごとにコーチが『どうだった?』と聞きに来て改善点を教えてくれるような細かい指導をしてくれました。また、共演の俳優の方々にも助けられたおかげでジュリアンの役に没頭することができました」と語る。
呉は、自身も男児を持つ母親であることから、1度目は母親の視点で鑑賞したと明かす。「母と息子の結び付きが強い物語。最初に観終わったあとは母親に感情移入したと思い、放心とともにこみ上げたものがありました。父親の感情をなぞりたいと思って2回目を観たときに、なんて多面的な作品なんだと思った。一見母と息子の作品のように思えますが、父親の『人と一緒にいたい』という気持ちが伝わってきて、それぞれの感情で2度楽しませていただきました」と話した。
「ジュリアン」は1月25日より東京・新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で順次ロードショー。
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