【『Live!ロックちゃん2023』対談シリーズ①】芦沢ムネト×GLIM SPANKY
音楽
インタビュー
左から、 亀本寛貴(GLIM SPANKY)、芦沢ムネト、 松尾レミ(GLIM SPANKY) 撮影:山本佳代子
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すべて見る「ぴあアプリ」で好評連載中の漫画『ロックちゃん』。音楽好きで知られる作者の芦沢ムネトがプロデュースする音楽イベント『Live!ロックちゃん2023』が、3月4日(土) 豊洲PITで開催される。くるり、ハンバート ハンバート、GLIM SPANKY、BREIMENの強力な4組によってどんな化学反応が起こるのか!? このイベントを前に、出演する4組のアーティストと芦沢ムネトとの対談シリーズがスタート! 第1回目のゲストは、GLIM SPANKY。彼らのデビュー時から交流を続ける芦沢ムネトとの止まらないトークセッションをどうぞ!
ロックって激しいだけの音楽じゃなくて、僕は心意気だと思っている(芦沢)
――まずは、このイベントがどのようなきっかけで生まれたのかというところから芦沢さんに伺いたいと思います。
芦沢 最初、ぴあさんからお声がけいただいたんです。ぴあさんの会社創立50周年の記念イヤーに芦沢さんがプロデュースするイベントをやりませんか?って。え! 僕でいいんですか!?ってめちゃくちゃびっくりしました(笑)。
それで、じゃあどういうイベントにしようかなというところで考えたのは、ぴあアプリで連載している漫画『ロックちゃん』は3歳の女の子が主人公なので、大人も子供も楽しめるものにしたいなということでした。若い人たちだけが盛り上がるんじゃなくて、幅広い世代の人たちが楽しめて、そこで初めての音楽体験を得られたりする場所にできたらいいなと思ったんです。
――そういう想いやコンセプトに基づいて出演オファーを始めて集結したのが、すでにアナウンスされている4組というわけですね。確かに世代もジャンルもバラバラで、普通のイベントであれば揃わない4組だなという感じがします。
芦沢 そうですよね。ロックって激しいだけの音楽じゃなくて、僕は心意気だと思っているので、いろんな感情が感じられるようなラインナップにしたかったんですよね。だからロックではなく『ロックちゃん』っていうのがちょうどいいかなって。で、GLIM SPANKYはもう最初から絶対に出てもらうつもりで僕の中では勝手に決めていました(笑)。
松尾 うれしい。
亀本 ありがとうございます。
芦沢 GLIMのアルバム(『Into The Time Hole』)が出て、よく聴いてたんですよ。中でも9曲目の「形ないもの」っていう曲がすごい好きで、聴いた瞬間にメールしました。ちゃんとまだ歌詞も聴き込んでいないのに、いい!って思って。勢いに任せて送っちゃったからなんか失礼なこと書いてなかったかなって心配になっちゃったりして(笑)。
松尾 いえいえまったく。
芦沢 そのタイミングとこのイベントの話を具体的にしていくタイミングがちょうどかぶって、もうこれはGLIM SPANKYには出ていただくしかない!ってなったんです。
亀本 芦沢さんはいつも僕らが新曲を出すとチェックしてくれるんですよね。
松尾 ありがたすぎる。
――最初に芦沢さんがGLIM SPANKYのおふたりに会ったのはどのようなシチュエーションだったんですか?
芦沢 えっとね……まず初めてGLIM SPANKYの曲を聴いたのは、当時僕が『RADIO DRAGON』(TOKYO FM)という番組をやっていて、ディレクターさんが「焦燥」(Sg/2014年)をかけたんですよ。それがめっちゃくちゃカッコ良くて、びっくりしたんです。声と音が最高で、ゆっくりかと思ったら速い!って(笑)。すごい小学生みたいな感想ですけど。それでライブを最初に観たのは、たぶんレコードメーカーさんが主催している新人のショーケースみたいなイベントだったと思うんですよね。
松尾 うわー、めっちゃ前だ。赤い公園、ボールズ、テスラは泣かない。と一緒に出たイベントですね(『EMI ROCKS neo』/2014年)。
芦沢 それだ!
亀本 ゴリゴリのコンベンションライブでしたね。赤い公園はその1年前にデビューをしていたんですけど、僕らを含めた他の3組は同時にデビューしたんですよ。
芦沢 関係者に品定めされてるようなライブだったよね。
亀本 でも当時僕らは何もわからなかったから、こんなもんなのかなって思いながらやってましたね(笑)。
芦沢 で、その後くらいに僕が『SCHOOL OF LOCK!』(TOKYO FM)という番組で“教頭先生”になるんですけど、GLIM SPANKYはもともと『SCHOOL OF LOCK!』が主催していた『閃光ライオット』(10代を対象にしたティーンエイジャー参加型ロックイベント)出身という縁もあったんですよね。『閃光ライオット』に出た時って何歳だったっけ?
松尾 高校3年生と大学1年生(亀本)でした。
芦沢 すごいですよね。で、僕が『SCHOOL OF LOCK!』をやっているときにゲストで来ていただいたりっていう感じで交流が始まりましたね。
亀本 デビューしてからしばらくツイキャスをやってて、僕らだけだとあまりにもグダグダになるからっていうので、芦沢さんが司会をやってくれたこともありましたよね。
芦沢 あったあった(笑)。ま、司会というか、楽しくおしゃべりしてただけなんだけどね。
松尾 『SCHOOL OF LOCK!』をやられてたっていうのもあったし、私たちも『フテネコ』好きだったし(笑)。
芦沢 その頃に1回だけプライベートで飲みに行ったよね?
松尾 行きましたね。
亀本 3人で?
芦沢 シモキタの。
松尾 中華料理屋。
亀本 あっ、中華行った! 確かラジオ終わりでしたよね。
松尾 そうかも。
芦沢 全然何を話したか覚えてないけど。
バンドでデビューするっていうことが決して雲を掴むようなことではないんだって思えた(松尾)
――どういうイベントになりそうですか?
芦沢 どうしましょうかね。一応僕の役割としてはMCなんですけど、ぶっちゃけいらないんじゃないかなって思ってるんですよね。だって、ライブの合間に出てこられてもいらなくない?
松尾&亀本 はははは。
亀本 でも確かに難しいですよね。
芦沢 もう素敵な4組がライブをやってくれるわけじゃないですか。そこに説明なんていらないじゃないですか。それなのに出てくるわけですよ。「さてさて……」じゃないよ!って自分で自分にツッコミそうになる(笑)。
松尾 でも全然嫌じゃないですよ。その方が楽しい。
亀本 そうそう。僕らは全然いいんですけど、ただ僕がお客さんとして観ていて、くるりのライブが終わった後に、「はいどうも〜!」っていうテンションについて行けるかどうかは心配(笑)。
芦沢 いや、そうなのよ。
松尾 でも、ライブ終わった後にミュージシャンの話を聞けるっていうのはレアだからお客さんもうれしいんじゃないですかね。
芦沢 だからそうか、そういうふうにちょっとトークができればいいかもね。終わった後に俺だけステージに出て行って、お客さんに向かって「どうでしたか?」も何にもないよね(笑)。よかったに決まってるじゃん!ってなるもん。
松尾 それにしてもすごいメンツですよね。くるりもハンバート ハンバートもずっと好きだし、BREIMENもやったことがなかったのですごい楽しみですね。なんか、普通にいい音楽が聴けるイベントだなっていう感じがすごくいいですよね。
芦沢 そう。それをずっとやりたかった。
亀本 くるりもハンバート ハンバートも今までやったことありそうでなかったんですよ。
芦沢 あ、そうだったんだ!
松尾 そう。関わりはあるんですけど。
芦沢 だって、佐藤さん(くるり)がベースやったりしてるよね?
亀本 佐藤さんにめっちゃ弾いてもらってるのに、対バンはしたことなかったんです。
芦沢 えー!
松尾 大きなフェスで出演日が同じ、とかはありましたけどね。
亀本 だから僕らからしたら、今回すごくいい機会をいただいたなっていう感じでうれしいんですよ。くるりだけじゃなくて、ハンバート ハンバートもBREIMENも初めてなんで。
芦沢 そうだったんだ。
松尾 本当に私たちにとってもいいメンツだなって思うし、何よりデビュー当時から応援してくれてる芦沢さんにお声がけいただいたっていうことで個人的にはすごく特別なイベントですね。
――今からGLIM SPANKYのセットリストが楽しみです。
芦沢 そうなんですよ。
亀本 「形ないもの」はやろう。この話の流れでやらないのも変だし(笑)。
松尾 そうだね。
――出順も芦沢さんが決めるんですよね?
芦沢 そうなんですよね。いやぁ、楽しみ(笑)。
亀本 でもこの4組の感じだと、キャリアの若い順からっていう感じが普通じゃないですか。
芦沢 まあね。
亀本 そしたら最初はBREIMENになるんですけど、そうするとそこでもうわかっちゃうので、だとしたら僕らがトップでやるんじゃないかなって勝手に想像してました。先輩2組を最初に持ってくるわけにも行かないし、まあ僕らの音楽って瞬発力もあるタイプじゃない?
松尾 そうなの?
亀本 そうじゃない?
松尾 うん、まあいいや。
亀本 そう。だからそんな感じ。
芦沢 ふたりのこの感じがね、音楽を聴いていたらわからないんだけど、絶妙にいいんだよね(笑)。インスタライブをこのふたりでやってるとハラハラするもん(笑)。そこがすごい好き。
亀本 でも、バランスが崩壊することはないんですよ。
松尾 ギリギリね。
芦沢 そう。だからそれがすごい不思議なんだよね。今、組んで何年?
亀本 14、15年?
松尾 私が15歳の時に組んだので。
亀本 じゃあ15年か。
松尾 うん。人生の半分やってるわ。
芦沢 音楽性の部分以外で、何が居心地よかったりっていうことなんですか?
亀本 初めて組んだバンドがGLIM SPANKYで、学生コンテストも経験して、大学時代にライブハウスの出演を経験してメジャーデビューしてっていう感じでずっとやってきているので、それ以外を知らないんですよね。
松尾 そうなんだよね。
亀本 だから、バンドってこういうものっていうことになっちゃってるんですよね。
芦沢 なるほど。
亀本 この活動によって自分たちの音楽人生が形成されてきているんで。
松尾 これしかやったことないから、これが常識になっちゃってるっていう感じですね。
芦沢 結果、それがふたりのいいバランスになっていくんですね。
亀本 いいのかどうなのかはわからないんですけど成立してるっていう(笑)。
――最初からふたりだったわけではないんですよね?
松尾 もともとは4人組でした。うちの高校は軽音部がなかったので、有志が集まったバンドだったんですよ。
亀本 僕は途中で入ったんですけどね。
松尾 私が高校1年生で、亀が2年生だった。で、亀よりもう1コ上の先輩と私と同級生の子がいてっていう4人組だったんですよ。軽音部の活動じゃなかったからこそ終わりがなかったというか。部活だったら、高校が終わったら解散っていう感じになるじゃないですか。でもそうじゃなかったから、目標も長いスパンで持てましたし、そもそもバンドをやりたくて集まってたからみんな気合いが入ってるんですよね。
芦沢 自分の目標を紙に書いてて、それがその通りになっていったっていう話をしてたよね?
松尾 そうなんですよ。その目標はメジャーデビューまでで終わってるんですけど。中学生くらいの頃に作って、とにかく、この時にこれをする、この時にはこれをするっていうのを予め書いておいて、全部実現させていこうって思ったんですよ。
芦沢 それができるってすごいよね。デビューより先を書かなかったのはどうして?
松尾 書いたことを実現していくっていうのはもちろん目標にはなるんですけど、でもそれ以上は行かないんじゃないかっていう気もして。どこか自分の限界を決めちゃうような気がして。
芦沢 うわ、すごいな!
亀本 想像できる範囲をクリアしていくっていうこともすごいことだよ?
松尾 そう、今考えたらね。でも努力したというよりも、好きでやってただけだから。だって、『閃光ライオット』の出場を『SCHOOL OF LOCK!』に応募して、まさかラジオから自分のバンド名が呼ばれるなんて思いもしなかったもん。
亀本 僕は選ばれると思ってたよ。
松尾 え!
亀本 その時大学に行ってたんですけど、たぶん呼ばれるからラジオつけとこうって友達の家で聴いてたから。
松尾 マジ!? 私、腹筋してたら呼ばれてビビった。
芦沢 なんで腹筋してたの?
松尾 歌唱力つくかなと思って(笑)。そしたら呼ばれたからいつもの倍やったよね。
芦沢 やっぱこういう時に腹筋してる人が上にあがるんだな。
松尾 いやでもラジオで呼ばれるってあり得ないことだと思ってましたよ。私の住んでたところなんて人口が6,000人くらいしかいない村だったから。駅もないし。
芦沢 そんな感じのところだったんですね。
松尾 そうなんです。私は美術系の大学にずっと行きたいって思ってたんですけど、例えば町の人とかにそれを言うと、笑われる感じですよ。そんな人いないので。結局、高校創立以来最初の美術系大学入学者なんですよ、私(笑)。
で、『閃光ライオット』に出て、『SCHOOL OF LOCK!』の校長や教頭がいて、コメントくださいとか言われるっていうことが現実に起こって、それまではそんなこと想像すらできない出来事だったんですけど、バンドでデビューするっていうことが決して雲を掴むようなことではないんだって思えたんですよね。それでGLIM SPANKYで東京に行こうって決めて、亀はその時名古屋の大学にいたんですけど辞めてもらって。
芦沢 辞めたんだ! それ、すごいね。さらっと「辞めてもらって」って言ったけど(笑)。親になんて言ったの?
亀本 最初、バンドやるために東京行くから大学辞めるわって言ったんですよ。そしたら、一応大学は出なさいって言われて。でもバイトしながら東京で音楽やるわって。それでも大学は出とけ、お金は出すからって言ってくれたんで、東京で活動ができるように大学を受け直したんですよ。それで結局そこも辞めちゃうことになったんですけどね。
松尾 私も中退しちゃうんですけど。
ちゃんと考えた結果、大胆に速く決断するっていうのは、僕はいつもそうですね(亀本)
――自分の思い描いた未来って決して夢物語じゃないんだなっていう感覚を10代のときに持てたというのが大きいですよね。
松尾 そうなんですよ。それが自分の人生を決定づけましたね。周りの大人たちはいろいろ言ってくるけど関係ねえって思って作ったのが、最初に出した「焦燥」って曲で、『閃光ライオット』に出たのもその曲だし、デビュー曲もそれなんです。その時の気持ちがいまだに私の中で大きいものを占めていますね。
芦沢 確かに、周りがどんなことを言っても関係ねえよっていう感じは、他の曲の歌詞にも出てくるよね。
松尾 そこが根っこになって結構たくさん書いてますね。
芦沢 なるほど。そこが大きなテーマになってるんですね。
松尾 そうです。その怒りはまだずっとありますね。
芦沢 だからか。GLIM SPANKYの曲って、言葉の覚悟がすごいんですよね。「お前何まわりの言うことに惑わされてんだよ」って、ストレートに言ってくれる人は今の時代にいないなって。「そうっすよね、先輩!」みたいな(笑)。ムカついてる部分をちゃんと持ってるっていうのが何よりロックですよね。
松尾 なんか私昔から、子供の頃の記憶もそうですし、過去の記憶がすごいこびりついてるんですよ。で、歌いながらでもそうなんですけど、そのことを思い出したり考えたりしたら、精神がその頃にタイムスリップするんですよ。その時の感情をめちゃくちゃリアルに感じることができるので、そこが力になっているんですよね。
芦沢 じゃあ歌いながら思い出してムカついたりするんだ?
松尾 しますね。今も話しててだんだんムカついてきてますもん。
芦沢 はははは! 具体的な顔が浮かんでるでしょ。
松尾 浮かんでますね(笑)。でも、ムカつく奴はいたけど、先生とか友達とかがめちゃくちゃ応援してくれたんで、がんばれたんですよね。私たち生徒会もやってて、(亀本が)生徒会長で私が副会長だったんですよ。
芦沢 えー! 嘘だぁ。いや、嘘ってことはないけど。マジで?
亀本 僕が卒業した後の代の副会長なんですよ。一緒にやってたわけじゃないんです。
松尾 カルチャーを変えたくて。それで生徒会をやってたんですよ。
芦沢 よく「カルチャーを変えたい」って言ってたもんね。その頃からそうだったんだ。
松尾 「ネオフラワーチルドレン」っていうのを始めたんですよ。町が「花いっぱい運動」っていうのをやってて。
芦沢 あ、ヒッピー的な感じのやつじゃなくてね。
松尾 そうですそうです。
亀本 普通にパンジー植えてました。
芦沢 はははは。
松尾 それが長年続いていて、花を植えるってことはフラワーチルドレンになればいいじゃないかっていうことでヒッピーカルチャーの危険な部分は伏せて企画書を書いたんです。そしたら好きなロックをかけられるわ、ポスターとか文化祭も全部私が作れるわ、もう最高じゃねえかって思って副会長になってやりました。
芦沢 その当時から始まってたんですね。GLIM SPANKYのいろいろが。
松尾 そうですね。今でもグッズのデザインを自分でしたりとかっていうのは、その時のことがきっかけになって続いているのかもしれないです。
芦沢 さっきレミちゃんが言ってた「怒りの感覚」を亀ちゃんは共有するの? 隣でギターを弾きながら。
亀本 なんだろうな、書く言葉とか歌声とかもそうなんですけど、すべてを含めて誰とも比べられない個性を最初から持ってますし、そこは自分も含めて他にはないものなんですよね。まあだから、大学辞めてもいいかなって思えたんですよね。
松尾 他のボーカルを探したんですって。
亀本 いや、それはバンドメンバー募集みたいなことではなくて、常に生きてる中でいいボーカリストいないかなって当たり前に思うっていうことだよ。
松尾 だからもしかしたら名古屋にすごいボーカリストがいたら、一緒に東京には来なかったかもしれないよね。
亀本 それはそうだったかも。
松尾 だよね。
芦沢 亀ちゃんはさ、自分の決めたことに躊躇なくパッと行ける人だよね。
亀本 そうですね。
芦沢 普通だったら、そこでそうしようかな?とか、親のこととかいろいろ考えるわけじゃない。でも、わかったって瞬間的に言える、その感じが決して空返事じゃないのがすごい。
亀本 ちゃんと考えた結果、大胆に速く決断するっていうのは、僕はいつもそうですね。その代わり松尾さん全然決断できないんだよね。
松尾 ごめん。
芦沢 そうなの?
松尾 あーいやもう。
芦沢 バキッと行けないんだ。
亀本 ファミレスですら決められませんから。だからこっちがもうボタンを押すしかないっていう(笑)。
松尾 だってさっきもこの取材が始まる時、水かお茶にするか悩んだもん(笑)。
芦沢 曲作りの進みも遅いんですか?
松尾 それもそうですね。
亀本 制作の進み方は速くないよね。時間がかかる。
松尾 でもデビュー前に比べたら50倍くらいの速さでやってるんですけど、デビュー前はモナリザみたいな感じで描いても描いても完成しなくて(笑)。完成したかなと思ったら剥がれて前描いた絵が出てきてやっぱりこっちの方がいいんじゃないかなとか思ったり。
芦沢 あははは。
松尾 だからデビュー前は1年に3曲できるかどうかって感じだったんですよ。
亀本 うん。そんなもんだった。
松尾 だからこれでも今はギアを上げてる方です(笑)。
芦沢 じゃあテーマがあったら作りやすかったりするんだ。
松尾 そうですね。でも例えばタイアップでも、決められたテーマに沿いつつ、自分で表現しなければいけないこともきちんと盛り込んで、こだわりを持っていながらもちゃんと点を取りに行きたい。
亀本 すごいね。こんなじゃん(と言って両腕を広げてテーブルの上のものをかき集める仕草をする)。
芦沢 全部盛りでしたね(笑)。
松尾 全部盛りです。でもそんぐらい目指さんと何なん?って感じじゃん。な?
亀本 そうだそうだ。
松尾 こだわりは負けちゃいかんでしょ。
亀本 常に自分の価値観を疑い続けるっていうのは大事だよね。
松尾 それは大事。だからそこを目指してやってるんですけどね。
芦沢 全部盛りをね。
松尾 そうです。音楽的にもなんでも取り込んでいきたいと思ってるし。
芦沢 あ、そうそう。新しいアルバムを聴いていると、そういういろいろな要素を感じるというか。こなくそ!以外のものもある(笑)。アルバムの中に「HEY MY GIRL FRIEND!!」って曲があるじゃないですか、あれすごい好きなんですよ。あ、レミさんこういう歌うたうんだ!って。
松尾 あれはそうですね、チャレンジしてみました。ティーンの恋愛映画みたいなイメージで書いたんですけど、もともと野宮真貴さんに提供する楽曲の候補としてあったものなんですよ(野宮真貴の40周年記念アルバム『New Beautiful』に「CANDY MOON」を提供)。
芦沢 あ、そうだったんだ!
松尾 最初、亀がフレーズをくれたんですけど、もうそのときには野宮さんに提供する曲を作っていたので、このネタは自分たちのためにとっておこうということでアルバムの時に歌詞を書いたんですよ。だからちょっと自分とは違うテイストを盛り込んでみた、という感じですね。あえて野宮さんに提供するようなイメージでやってみたら面白いんじゃないかなと思って。
芦沢 なんか曲を聴きながら、ベッドの上で飛び跳ねているレミさんを勝手に想像してた(笑)。そういう怒りだけじゃない部分を感じられました。
松尾 いやあ、うれしいです。
芦沢 これはぜひ、イベントでも。
亀本 お!
松尾 やろうやろう。
芦沢 すみません、勝手にセットリストを決めているみたいで。
亀本 いえいえ。いつも悩んじゃうんで、イベントのセットリストは。ワンマンは決めやすいんですけどね。
芦沢 やっぱり、いろんなフェスやイベントがある中で、当然どことも似ていないものをやりたいじゃないですか。そしたら、こっち側の――やる側の熱量というか、好きな気持ちを伝えるというのは大事な要素としてあるのかなって思うんですよね。だからこそ、組み合わさらない人たちが組み合わさることができるのかなって。
松尾 私たちも今回は芦沢さんがやるっていうことだから、出たいって思いましたし、誰がいるとかって関係なく芦沢さんがやるので手を挙げました。
亀本 最初からそうだったよね。
芦沢 本当にうれしいです。
松尾 そしたらね、集まった人たちがすごくて、もう最高です。
芦沢 もうみんな最高なので、楽しみ。勝手な希望ですけど、誰かがライブをやってる時はみんな袖でライブを観ていてほしいですもん。
松尾 そういう雰囲気って最高ですよね。
亀本 僕はね袖では絶対観ないパターン。
松尾 あ、ちゃんとフロアで観たいんだ。
亀本 そう。
芦沢 場所はどこでもいいよ! 袖限定で言ってないから。
亀本 袖で観るの苦手なんですよ。
芦沢 わかったから、そういう話じゃないよ(笑)。
Text:谷岡正浩 Photo:山本佳代子
<ライブ情報>
『ぴあ 50th Anniversary「Live!ロックちゃん 2023」』
3月4日(土) 豊洲PIT
OPEN 16:00 / START 17:00
出演:GLIM SPANKY/くるり/ハンバート ハンバート/BREIMEN
【チケット料金】
スタンディング:6,000円(税込)
スタンディング ファミリーチケット(大人1名+小学生1名):8,000円(税込)
※入場時ドリンク代必要
※未就学児童入場不可
※スタンディング ファミリーチケットは、公演当日時点で小学生のお子様1名と同伴限定のチケットとなります。
チケット一般発売中:
https://w.pia.jp/t/liverockchan2023/
オフィシャルサイト:
https://live-rockchan.com
プロフィール
芦沢ムネト
コントグループ「パップコーン」のリーダー。癒し系キャラクター「フテネコ」の生みの親であり、様々なアーティストから支持を受け、数多くのMVやコラボグッズを手掛けるほか、ライブやフェス等のイベントではMCを務めるなど、幅広く活躍する。
GLIM SPANKY
男女二人組ロックユニット。 ハスキーでオンリーワンな松尾の歌声と、ブルージーで情感深く鳴らす亀本のギターが特徴。
ロックちゃん
ロックちゃんは、自分のことをなぜかオトナだと思っている4才の女の子(次女)。この連載はちょっと背伸びをした、キュートでやんちゃなロックちゃんの日常のお話です。
関連リンク
芦沢ムネト Twitter:
https://twitter.com/ashizawamuneto
GLIM SPANKY オフィシャルサイト:
http://www.glimspanky.com/
漫画連載『ロックちゃん』:
https://lp.p.pia.jp/article/series/62727/index.html
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