負けない王者・埼玉WKに追うS東京ベイ&東京SG、僅差の4位争い、NTTリーグワン前半戦を振り返る
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堀江翔太(埼玉ワイルドナイツ) (c)JRLO
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すべて見る熱戦、激闘続きの『NTTジャパンラグビー リーグワン 2022-23』ディビジョン1が今週バイウィークを迎えた。今年に入って5連戦、全7試合を消化し、2週間のインターバルを挟むのだ。ここまで前半戦の勢力図を振り返ってみたい。
昨季の4強も『NTTリーグワン2022-23』の高い競争力に目を見張っている。王者・埼玉ワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督は「とても厳しい道のりになるのではないかなという思いが明確になった。試合を見ればわかると思うが、全チームが全チームを倒す可能性があるし、全チームが成長していると感じている。とてもフィジカルなゲームで競争的な大会だと思う。セットピース、1オン1のぶつかり合いが激しくなっていると感じている。出場しているメンバーを見ればわかるが、経験豊富ないい選手が揃っている」とリーグ全体の成長を肌で感じていた。
東京サンゴリアス・田中澄憲監督が第7節・東芝ブレイブルーパス東京戦後に「ローテーションという考え方とは違う。コンディションを見ながらいい選手を出している。楽に勝てるチームはひとつもないので、常にベストメンバーで戦っていく」と語れば、BL東京・リーチ マイケルも第4節・三菱重工相模原ダイナボアーズに敗れた後「リーグワンは自分たちのパフォーマンスを5%落としたら負けてしまうくらい本当にタイトなリーグになってきた。常に高いパフォーマンスを出し続けなければいけない」と自らを戒めた。
戦力が拮抗し、シビアな戦いが連続する中、王者・埼玉WKは7連勝とさすがの結果を残している。“逆転のワイルドナイツ”の異名通り、試合終盤の逆転劇はお手の物。第2節・静岡ブルーレヴズ戦や第6節・横浜キヤノンイーグル戦など、試合終了間際のトライに逆転コンバージョンゴールなど、神がかった勝負強さを発揮している。昨季の不戦敗を除いて40戦負けなし。最後の黒星は2018年12月まで遡らなくてはならない。
埼玉WKの奇跡的な強さを支えているのが、強固なディフェンスである。7試合で93失点はリーグ最少。2位の横浜キヤノンイーグルスが142点と言えば、いかに埼玉WKの数字が傑出しているか理解できるだろう。リーグワン初代MVPのラスボス・堀江翔太の存在だけではない。南アフリカ代表65キャップのLOルード・デヤハーやCTB長田智希ら新戦力の活躍も心強い。
7戦全勝・勝点30の埼玉WKに勝点2差で続くのが、2位クボタスピアーズ船橋・東京ベイと3位東京SGだ。両軍は開幕戦で激突。S東京ベイが東京SGに31-18で完勝した。これまで壁として立ちはだかってきた天敵に18季ぶりに勝利したS東京ベイだが、続く横浜E戦ではブレイクダウンで後手に回り敗戦ムード濃厚となるも、終盤相手のミスを突き27-27の引き分けに持ち込んだ。その後も第5節・コベルコ神戸スティーラーズ戦・25-21、第6節・ブラックラムズ東京戦・40-38、第7節・トヨタヴェルブリッツ戦・44-34と際どい試合を制して6勝1分。立川理道主将も「大事な時間帯でみんながチーム全体として動けている。同じ絵を見て動けているというのが昨季よりも多くなっている」と手応えを感じていた。
黒星発進となった東京SGもその後は6連勝。第3節・横浜E戦ではニュージーランド代表50キャップのSOアーロン・クルーデンがわずか18分で一発退場したが、数的不利を埋めて余りあるハードワークで32-23の勝利を手繰り寄せた。
BL東京との府中ダービーとなった前節は取りつ取られつのシーソーゲームに。BL東京のCTBセタ・タマニバルとWTBジョネ・ナイカブラがそれぞれ2トライを奪えば、東京SGはWTB尾崎晟也がハットトリック。最後、BL東京の猛攻も尾崎のジャッカルでノーサイド。40-34の好試合を締め括った。
トライランキング2位・ナイカブラが8トライ、S東京ベイの若き両WTB・根塚洸雅&木田晴斗が合計12トライという数字が並ぶ中、ダントツトップの13トライを量産する尾崎は「トライ王は徐々に意識しているし、絶対に取る。毎試合トライを目標にしている。毎試合高いパフォーマンスを発揮し続けることが日本代表への近道だと思うので、結果を出していきたい」とキッパリ。
リーグ最多得点はS東京ベイの284点で、東京SGが3点差の2位。埼玉WKが堅守なら、S東京ベイと東京SGは爆発的な攻撃力で勝点を積み重ねている。悪いなりにも勝ち切る術を手に入れたS東京ベイはもちろん、オーストラリア代表27キャップのNo8ショーン・マクマーンと同41キャップのCTBサム・ケレビを欠いてこの成績を残す東京SGもさすがである。
4位争いも熾烈だ。4位横浜Eは4勝1分2敗・勝点22、5位BL東京は4勝3敗・勝点21。横浜EもBL東京も埼玉WKをあと一歩まで追い込む力を持っている。だが、横浜Eは前記の第2節・S東京ベイ戦、第3節・東京SG戦など勝たなければいけない展開ながら勝ち切れなかったり、BL東京は第4節・相模原DB戦を落とすなど、詰めの甘さが気になる。
第6節・埼玉WK戦では80分に同点トライを許し、サヨナラCGでノーサイドとなり、大魚を逸した試合後、横浜E・沢木敬介監督は「悔しいが、チームが強くなる過程ではこれを乗り越えなければならない。困難は強くなっていく試練。少し前であれば内容に満足してしまったかもしれないが、今は違う。今日はこの悔しさを忘れずに、ポジティブな部分はあったし自分たちの力を認め、少しの差を探しながら、毎日埋めていく作業が必要になる。チーム一丸で成長していきたい」と日々成長することを誓った。
中位グループもバイウィーク明けから勝負どころを迎える。6位・神戸Sは3勝4敗・勝点15、7位・相模原DBは3勝1分3敗・勝点15、8位・静岡BRは2勝1分4敗・勝点14、9位・トヨタVは2勝5敗・勝点10、10位・BR東京は2勝5敗・勝点9とひしめく。
第2節・トヨタVを相手に27-25で逃げ切り、第4節・BL東京に23-19と逆転勝ちしたD1昇格組の相模原DBはさておき、4強入りを目指す神戸S、静岡BR、トヨタVにとって、負け越しは納得がいかないだろう。神戸Sは第4節・S東京ベイ戦・21-25、静岡BRは第2節・埼玉WK戦・14-15、BR東京は第6節・S東京ベイ戦・38-40と4強相手に接戦を演じる力を持っている。しかし、試合によって波があるのも確か。たとえ不調であっても、規律が乱れても、アクシデントが起こったとしても、格下相手にはきっちり勝ち切らなくてはならない。そして4強相手には敗れたとしても少なくとも7点差以内のボーナスポイント1を獲得する粘りが求められる。
グリーンロケッツ東葛と花園Lはバイウィーク明けから正念場となる。11位・GR東葛は1勝6敗・勝点4、12位・花園Lは7戦全敗・勝点1。下位に沈む理由はハッキリしている。GR東葛はリーグワーストの107得点、花園Lはリーグワーストの390失点である。
GR東葛のレメキ ロマノ ラヴァ主将は第6節・静岡BR戦後に「チームとしてやりたいラグビーがうまくできなかった。何回もチャンスがあったけど最後に取り切れず、ちょっと今日はしんどい。ブルーレヴズがフィジカルバトルでほぼ勝っていた。ここ6試合全然勝てていないから、何を変えればいいのかわからない」と苦しい胸の内を明かした。ただ第6節より新加入のSO前田土芽がGR東葛デビュー、日本代表75キャップのSH田中史朗は前節戦線復帰した。豪州代表72キャップのSHニック・フィップスも含めたゲームコントロールの向上に期待したい。
開幕前、ライナーズスタイルでのD1チャレンジを楽しみにしていた花園Lだが、あまりにも失点が多すぎる。もちろん、花園Lもこの事態に手をこまねいているわけではない。レベルズのニック・スタイルズGMとポム・シモナコーチを期間限定で招聘し、ディフェスの建て直しに取り組んでいる。ライナーズスタイルのカギを握る豪州代表76キャップのSOクウェイド・クーパーの復帰も待たれる。110キャップのSHウィル・ゲニアとの豪州代表コンビで浮上のキッカケを掴みたい。
2週間の時間を有意義に使うチームはどこか、バイウィーク明けに流れを変えるチームは現れるのか。『NTTリーグワン2022-23』第8節は2月18日(土)・BR東京×東京SG・駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場、横浜E×BL東京・レゾナックドーム大分、埼玉WK×花園L・熊谷スポーツ文化公園ラグビー場、トヨタV×GR東葛・パロマ瑞穂ラグビー場、19日(日)・S東京ベイ×相模原DB・江戸川区陸上競技場、神戸S×静岡BR・神戸総合運動公園ユニバー記念競技場にキックオフ。
取材・文:碧山緒里摩(ぴあ)
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ジャパンラグビー リーグワン 観戦ガイド 2022-23:
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