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詩、女子プロレス、スタンドイン俳優、デブリSF!若手監督による短編4本が初披露

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「ラ・マヒ」舞台挨拶の様子。左から成瀬都香、ライディーン鋼、夏目朱里、中野深咲、道田里羽、草野航大。

「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2022」の合評上映会が2月7日に東京・丸の内TOEIで開催。公募から生まれた4本の短編映画が初上映され、監督の岡本昌也、成瀬都香、藤本楓、牧大我が各作品のキャストとともに登壇した。

文化庁が主催する「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」は若手映画作家の発掘と育成を目的に、映像産業振興機構(VIPO)が2006年度より運営する人材育成事業。公募によって選ばれた監督がプロのスタッフ・キャストとともに30分以内の短編映画を制作するプロジェクトで、これまでに 「浅田家!」の中野量太、「あのこは貴族」の岨手由貴子、「エゴイスト」の松永大司、「劇場版 きのう何食べた?」の中江和仁、「ハケンアニメ!」の吉野耕平といった監督が参加してきた。

初監督作「光の輪郭と踊るダンス」が2021年の「ゆうばりホープ」に選定された岡本は、福永朱梨と日下七海を主演に迎え、大人になりきれない2人の女性が詩という共通言語を介して変わっていく「うつぶせのまま踊りたい」を監督。現在27歳の岡本は社会性を獲得するうちに薄れていった「子供っぽい衝動」をなかったことにしたくないという思いから本作を手がけたそう。詩を題材にした理由は「子供の気持ちや人生の中での夕焼けの季節とか、詩はあいまいなものをあいまいなまま表現するのに長けてるんじゃないかと思った」と明かす。演出家・劇作家としても活動する岡本は、今回の経験を踏まえ「映画の豊かさ、底知れなさ。その片鱗を垣間見た。でも底は見えてなくて真っ暗、そこに行ってみたいという探究心がある。今回はぶっとい手綱からそろそろと下ろしていただいたが、ここからは自分で飛び込んでいくしかない。映画の奥底に行ってみたい思いがあります」と話した。

映画美学校フィクションコースの修了制作として監督した「泥」が多数の映画祭で入選した成瀬。「ndjc」では自身が2年前に“ドハマリ”し、現在も追っかけをするほど愛好しているプロレスを題材に「ラ・マヒ」を手がけた。まりあが主演を務めた本作は、人の目を気にして無難に生きてきた主人公・荻野愛が、縁もゆかりもなかったプロレスと出会い、自分らしい生き方を貫こうとする物語。成瀬は「もともと、ひたむきにがんばる主人公が好きな性格ではなかった。でも初めてプロレスを見たときに『なんで、この人たちはあきらめずに何度も立ち上がるのか』と純粋に思って、帰りの電車でぼろぼろ涙を流すほど感動した」と、制作の原点となった体験を明かす。自身がアマチュアレスラーとしてリングに立つこともあるという成瀬。キャストからは「現場だと監督の目が違う。その熱気が演者に伝わる。それが一体感につながった」という証言も。成瀬は今後の展望を「プロレスの長編映画を撮りたい思いがすごく強くある。日本でプロレス映画を作れるのは私しかいない……! 傲慢なこと言ってすみません(笑)。でもかっこつけた、かっこいい映画を撮りたいです」と語った。

東京藝術大学大学院で映画製作を学ぶ藤本は、CMの撮影現場でスタンドインとして働く35歳の俳優・柳田佳典を主人公にした「サボテンと海底」を発表。主人公は主演の宮田佳典に当て書きで執筆した。藤田は「普段は美術スタッフや制作部として現場に関わることが多いんですが、CMの現場で初めてスタンドインの方を見て。この人たちを主人公にしたいと思った。その頃に現場で宮田さんとお会いして。ご本人に無許可で当て書きをしました(笑)」と述懐。なかなか俳優としてのチャンスに恵まれない柳田は、とある学生の自主映画で主演を務めることに。劇中映画の脚本は何度も改訂され、柳田は翻弄されるが、タイトルの「海底」はこの「改訂」にかけたもの。実際に「サボテンと海底」の制作でも改訂が何度も行われたため、劇中の改訂数をより極端な数字に調整する必要もあったそう。最後に藤本は「失敗だったり、恥ずかしい経験だったり、たくさんジタバタしてきた自負がある。自分のネガティブな経験を作品に昇華させて、観た人が救われたり、笑ってくれたりしてもらえたらいいなと思ってます」と語った。

短編「ダボ」でSSFF & ASIA 2022への入選経験のある牧は、地球のゴミで作られた衣服と仮面を身にまとう謎の民族との共同生活を描いた「デブリーズ」を監督。舞台挨拶にはキャストの山根和馬、森優作、カトウシンスケに加え、デブリーズの族長とマザーも登壇した。制作でもっとも労力をかけたのはデブリーズの衣装。牧は「友人がリメイクアーティストをしていて、彼ならできるんじゃないかとお願いした。デザインはゴミが集まってからしか考えられないので、最初はゴミ集めからスタートした。即興的な要素もあって、作りながら考えるという感じでした」と振り返る。形作るときに「ボンドは使わない」といったルールを決めながら試行錯誤を繰り返して完成。デザインは写真家のシャルル・フレジェから影響も受けているそう。今後について、牧は「妄想によって生じるロマンや自分の失敗を笑いにして、もの作りをしていきたい。直近ではクレイアニメと実写を織り交ぜて実験的なことができないかと考えてます」と明かした。

「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2022」の4作品は、2月17日より東京・角川シネマ有楽町、3月10日より愛知・ミッドランドスクエア シネマ、3月17日より大阪のシネ・リーブル梅田にて1週間限定で上映。

(c)2023 VIPO