ホラーを語るリレー連載「今宵も悪夢を」 第35夜 選者 / 南波志帆「サンタクラリータ・ダイエット」
映画
ニュース
「サンタクラリータ・ダイエット」シーズン1場面写真
ホラーやゾンビをこよなく愛する著名人らにお薦め作品を紹介してもらうリレー連載「今宵も悪夢を」。集まった案内人たちは身の毛もよだつ恐怖、忍び寄るスリル、しびれるほどの刺激がちりばめられたホラー世界へ読者を誘っていく。
第35回は、南波志帆がNetflixシリーズのゾンビドラマ「サンタクラリータ・ダイエット」を推薦。「ゾンビ作品の血みどろのどんなシーンでも笑顔で観ながらごはんを食べられちゃう私ですら、この作品は違った意味でNGでした(笑)」と述べつつ、ポンコツな夫婦の“いい意味で楽観的な気持ちになれる”物語を紹介してくれた。
文 / 南波志帆(コラム)、田尻和花(作品紹介)
この夫婦、本当に詰めが甘い!でも…
みなさん、こんばんは。「今宵も悪夢を」案内人のすいか生肉ゾンビが大好きな南波志帆です。
相変わらず、引き続き、私はグロテスクだけれど、チャーミングで笑える面白要素のあるゾンビ作品が大好物なので、このホラーコラムでも勝手にひとりお届けしております。今回もホラーと言っていいのか謎めいておりますが、最近観て最高だったゾンビドラマ「サンタクラリータ・ダイエット」をご紹介したいと思います。
舞台はロサンゼルスの新興住宅地・サンタクラリータ。そこに住む、不動産業界で働く夫婦(夫ジョエル、妻シーラ)とその一人娘(アビー)。妻のシーラがとあるきっかけでゾンビになってしまいます。
このドラマのゾンビの特徴として新しいのが、感染すると、とにかくたくさん吐きまくる! その部屋が全滅するくらい、容赦なく全方位に吐きまくる……!(笑)
ゾンビ作品の血みどろのどんなシーンでも笑顔で観ながらごはんを食べられちゃう私ですら、この作品は違った意味でNGでした(笑)。
とことん吐き散らかして、謎の赤い塊を吐き出し、心臓が止まり、ゾンビが完成します。前回このコラムでご紹介した「iZombie」と同じく、こちらのドラマでも、ゾンビになってもバレずに普通に生活できます。食べるものは、もちろん人の肉になってしまいますが……。
不動産業を上手く利用しつつ、食べるために人を殺めていくわけなんですが、この夫婦、本当に詰めが甘い! 現場に指を1本落としていたり、肉片が思わぬ所に付着していたり、血も拭き忘れていたり、とにかく雑で、殺しのど素人すぎる!(笑)
しかも、よりによって、自宅の両隣りに警察官が住んでいるという、なんともスリリングな状況! 永遠にピンチが続くのです……!(笑)
私は、聡明で、テキパキ動いて仕事のできる、無敵よりの主人公に好感を持つタイプなので、あまりの手際の悪さに始めは呆れながら、なんならちょっとイラッとしながら観ていたのですが、不思議なもので、だんだんとそのポンコツ具合が妙な癖になってきます。しかも、どんな強運の持ち主なのか、大体どうにか大丈夫になって、なぜだか助かってしまうのです。
現代に生きる私たちは細かいことで日々悩んだりもするけれど、このドラマを観ていると、人生どうにかなるというか、どんな状況でも生きていけるなと、なんだかいい意味で楽観的な気持ちになれます。ついつい考えすぎて真面目に生きてしまいますが、もっと楽に、もっとラフに、生きてみるのもありなのかもなあ、と気づきと勇気をもらったのでした。
解放感を求めている方に、ぜひ観てもらいたいドラマです。とっても痛快です!!
南波志帆(ナンバシホ)
1993年6月14日生まれ、福岡県出身のシンガー。2008年11月にミニアルバム「はじめまして、私。」でデビューを果たし、デビュー10周年を迎えた2018年には初のベストアルバム「無色透明」をリリースした。2014年からNHK-FM「ミュージックライン」のDJを務めている。
「サンタクラリータ・ダイエット」(2017年~2019年製作)
Netflixシリーズ「サンタクラリータ・ダイエット」の舞台は、米ロサンゼルス郊外の町サンタクラリータ。なんとなく満たされない日々を過ごしていた夫妻だったが、ある日妻の体にある変化が!? 娘も巻き込んで“死と破滅の道”を進むことになるが、案外それも悪くなかったようで……。
夫妻にドリュー・バリモアとティモシー・オリファント、娘にリヴ・ヒューソンが扮し、スカイラー・ギソンドも共演。バリモアとオリファントは製作総指揮にも名を連ねた。
Netflixシリーズ「サンタクラリータ・ダイエット」はシーズン1~3が独占配信中
※「サンタクラリータ・ダイエット」の視聴推奨年齢は16歳以上