「コンパートメントNo.6」は複雑な状況だからこそ観てほしい、監督が思い明かす
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ユホ・クオスマネン
「コンパートメントNo.6」の舞台挨拶が本日2月11日に東京・新宿シネマカリテで行われ、監督のユホ・クオスマネンが登壇した。
ロサ・リクソムの小説を原案にした本作の主人公は、恋人にドタキャンされ、地球最北端の駅へ向かう寝台列車に1人で乗り込んだ学生ラウラ。彼女は6号コンパートメントで粗野な炭鉱夫リョーハと出会い、交流していく。
初来日を果たしたクオスマネンは「息子と一緒に日本を訪れました。息子は日本食や日本のゲームにハマっていて、今回2人で来ることができてうれしく思います」と挨拶。ロシアを舞台に描かれた本作だが、その意図について問われると「リクソムの小説の舞台がロシアだったのが理由ですが、時代設定は変えました。1980年代末だったところを、90年代末に。フィンランドとロシアは隣国で、複雑な歴史がある。民主主義の非常にいい政治家が暗殺されてしまった背景などを反映しました」と答える。
また2022年2月にロシアがウクライナへ軍事侵攻を始めたことに触れ、クオスマネンは「この映画に加わったクルーは『もう未来がない』とロシアを去った。あの地で希望や温かみのある愛情にあふれた映画を撮ることはもう不可能なんじゃないかと思います。非常に残念でなりません」と胸の内を明かす。続けて、「この映画を上映するのは間違いではないかと決断を迫られた時期があった。ですが、複雑な状況だからこそ『コンパートメントNo.6』を観てもらうことが大事なのではないかと思った。白黒つけなければいけない世の中の風潮に、何か訴えかけることができたら」とメッセージを送った。
第74回カンヌ国際映画祭のグランプリ受賞作「コンパートメントNo.6」は、全国で順次公開中。
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