尾崎由香×40mPが語る、初バラードから生まれた飾らない表現「歌詞の気持ちをそのまま伝えた」
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尾崎由香が、2ndシングル『オトシモノ』を12月5日にリリースした。尾崎は表題曲「オトシモノ」で初めてバラードに挑戦。1stシングル『LET’S GO JUMP☆』ではポップな曲に乗せて元気の良い歌声を披露したが、同曲は歌詞に描かれる切ない恋模様を情感たっぷりに歌い上げた。また、尾崎は「オトシモノ」でドラマ『今夜、勝手に抱きしめてもいいですか?』のエンディングテーマを担当。尾崎にとってドラマタイアップも初めてとなる。
リアルサウンドでは、尾崎由香と「オトシモノ」の作詞作曲を担当した40mPにツーショットインタビュー。初めてバラード曲に挑戦した印象をはじめ、40mPから見た歌手としての尾崎由香の魅力、そしてお互いの音楽的ルーツや共通点など、広く語ってもらった。(編集部)【最終ページにチェキプレゼントあり】
40mP「表現力も含めて、すごく魅力的な声」
ーードラマ『今夜、勝手に抱きしめてもいいですか?』のエンディングテーマを務める「オトシモノ」を聴いて、王道感がありながら、人の心に訴えるフックのある楽曲&歌声というマッチングの良さを感じました。尾崎さんは、初めて連続ドラマのエンディングテーマを担当すると聞いたとき、率直にどんな感想を持ちましたか?
尾崎由香(以下、尾崎):私は声優なのに、実写の連続ドラマのエンディングテーマを歌って大丈夫かな、というプレッシャーを感じました。同時に、ドラマは大好きでたくさん観てきていたので、すごくうれしかったですね。恋愛ドラマに合う楽曲と考えると、これまでとはまた違ったものが歌えるんじゃないかって、楽しみが膨らみました。
ーー初のバラードになりましたね。
尾崎:もともとバラード曲が好きで、「歌いたいです」ってリクエストしていたんです。それがドラマエンディングテーマということで、ありがたいなって。
ーー40mPさんは、アニメ『けものフレンズ』のキャラクターソング、「ドレミファロンド」以来のコラボになりましたが、あらためて“ボーカリスト・尾崎由香”についてはどんな印象をお持ちでしたか?
40mP:「ドレミファロンド」も含めて、やっぱりアニメーションのイメージが強くて、元気に可愛らしく歌われる方、という印象がありました。1stシングル曲の「LET’S GO JUMP☆」もノリノリな曲ですし、今回、ドラマエンディングテーマということで、どんな作品になるのか、お話をいただいた当初は、イメージがつかめないところがあったんです。ただ、カップリングされていた「僕のタイムマシン」を聴くと、かなり振り幅があることがわかるし、元気だけれどしっとり、という声もぴったりハマっていたので、そのイメージで曲を考えていきました。
ーー40mPさんはこれまで、多くのアーティストの楽曲提供してきましたし、「歌ってみた」動画も含めて、本当に多くの歌声に触れてきたと思います。そのなかでも、尾崎さんの声には特別なものがあるのではと思うのですが、どうでしょう?
40mP:僕が言うのも忍びないですが、可愛らしく元気な声、しっとりめの声だけじゃなくて、今回のバラードでもさらに幅を広げてもらって。表現力も含めて、すごく魅力的な声だと思います。
尾崎:恥ずかしい!(笑)。
ーー実際の制作については、まずドラマの内容を見て、というところでしょうか。
40mP:そうですね、まずドラマの台本をいただいて。そのときまでに仕上がっていたものを全部読ませていただいたのですが、わりと1話目を読んだくらいのところで、曲の構想はできていきました。
ーードラマの内容と共鳴するような、“過去への切ない執着”というイメージが伝わってきます。
40mP:ドラマやアニメなど、物語のあるものに対して楽曲を提供するとき、僕がいつもやる手法が、登場人物になりきる、というものなんです。この人だったらどんな言葉で語るだろう、と考えて。このドラマの主人公・(佐伯)莉子ちゃんは、幼馴染の(市原)柊二と再会して、どんどん恋に落ちていきますが、どちらかというと、再会する少し前に視点をおきました。ずっと彼のことを忘れられていないけど、その気持ちに、まだ明確には気付くことができていない、という。
ーーなるほど。確かに再会の前日譚という感じが、ドラマにつながりますね。尾崎さんは、この曲を受け取ってどう感じましたか?
尾崎:私も脚本を読ませていただいてからレコーディングに挑んだのですが、「莉子ちゃんの気持ちになって歌わなきゃ!」と考えていたなかで、気持ちがすごく汲み取りやすかったんです。私もすんなりと、この歌詞の物語の登場人物になれました。実際に歌う時は、言葉一つ一つを大切に、ということに集中できましたね。
ーーちなみに、楽曲の主人公に共感する部分はありましたか?
尾崎:そうですね。恋愛に限らず、私も小さい頃から忘れられず、大切に抱えている思い出がけっこうあるので。そういうことをなんとなく思い出しつつ歌っていたな、という感じがします。割り切れずに残ってしまう思いは誰にでもあると思いますし、それを思い出させてくれる楽曲だと思いました。
ーー40mPさんはどちらかというと、あまり過去にこだわらない、さっぱりとした性格だと思うのですが、歌詞は非常に繊細な描写がありますね。
尾崎:そう! どうやったらこんなに繊細に描けるんですか?
40mP:実体験をもとにすることはほとんどなくて、本当に主人公になりきる、という感じなんですよね。たぶん、これまで触れてきたドラマや映画などから、いろいろなキャラクターをミックスして、自分の中で主人公像を作り上げているんだと思います。
ーーそのなかで出てきた「オトシモノ」という言葉は、人生の機微が伝わる素敵なモチーフだと思いました。
40mP:言葉を紡いでいく中で、本当に自然に出てきたワードでした。変わっていく人生のなかで、その道筋では、得ていくものもあれば落としていくものもある。最後にひとつだけ、手のなかにのこったものが、一番大事なものなんだと。そういうメッセージをきちんと伝えられたら、という気持ちで言葉を選びました。
ーーそうしたメッセージについては、歌入れの前に二人で話したり?
40mP:していないですね(笑)。ディレクションは多少させていただくのですが、もともとあまり「こういう曲なんです!」と伝えることはしていなくて。歌詞を見て、その人が受け取ったイメージで歌ってほしいんです。
ーー多くの人が歌うことがある種の前提になっている、ボカロPらしいスタンスですよね。歌い手の感性に任せて、楽曲の魅力が広がっていくというか。「言葉を丁寧に」というお話がありましたが、楽曲を受け取った尾崎さんは、どんなことを意識して歌いましたか?
尾崎:自分のなかで、着飾っているものを一度取る、という感覚でした。着飾らずに、歌詞の気持ちをそのまま、自分の声で伝えるというか。
40mP:ちょっと聞きたかったんですけど、これまでの明るく元気な楽曲と「オトシモノ」だと、どちらが自然体でしたか?
尾崎:「オトシモノ」の方が自然ですね。等身大の自分に近いし、ナチュラルに歌声にメッセージを乗せられている感じがありました。
尾崎「素の自分と“役”が半分ずつ入ってる」
ーーそれでは尾崎さん自身が、この気持ちだけは大切にしたい、と思っているのはどんなことですか?
尾崎:親への感謝です。小さいころは当たり前だと思っていたし、嫌だったこともあるけれど、いま振り返ると、両親の愛情をすごく感じるというか。それは絶対に一生忘れちゃいけない、握りしめていなければいけないものだなと思います。そして、ちゃんと言葉にして伝えないと。
ーー音作りについても聞かせてください。ストリングスが入り、ドラマチックで聴き応えのある曲に仕上がっていますね。
40mP:実は僕もバラードを作る機会って、意外と少ないんです。ボーカロイドで曲を作っていると、オーダーされるのも元気で派手な曲が多いので。そういうこともあって、今回は王道のバラードにしたいな、と思ったんです。もともとバラードが好きだし、自分が作りたいバラードの形をそのまま正直に詰め込もうと。そうなると、やっぱりストリングスを入れたかったし、大好きなピアノの音もいれたくて。自分が好きな音作りで構築していった感じです。
尾崎:音も本当にグッとくるものになっていますよね。気持ちがすんなり入っていくし、とても歌いやすいです。
ーーあらためて、ドラマのなかでこの曲が流れる、というのはどんな気持ちですか?
尾崎:本当にうれしい反面、ドラマに集中している時に自分の声が流れてくるのは、少し恥ずかしいかもしれません(笑)。でも、視聴者のみなさんに共感していただけたらいいな、と思います。
40mP:たぶん、流れるシーンによって、歌詞の受け取り方も変わってくると思うんですよね。切なく悲しい意味で捉えられることもあれば、大事にして着たこの気持ちをちゃんと伝えよう、という前向きな意味で捉えられることもありそうで。ドラマのなかで表情を変えていくと思うので、それが楽しみです。
ーー確かに、家族や友人との関係にも受け取れますし、自分が置かれている環境によっても意味の変わる、長く聴かれ得る曲になっていると思います。
40mP:そうですね。歌詞のなかで明確に「片思い」ということもいっていませんし、聴くシーンや情景によっても変わってくるのかなと。
ーーステージで披露されるときも、その時々でニュアンスが変わったり?
尾崎:確かにそうですね。ステージで歌うとなると、グッと役者のスイッチも入れなければいけないと思いますし、楽しみな反面、緊張しそうです。
ーーそんな楽曲のカップリングとして、恋に恋する気持ちが描かれた「Wishing Love」が収録されました。「オトシモノ」に至る前の弾けるような思い、というイメージで、2曲のマッチングも面白いですね。
尾崎:そうですね。「Wishing Love」は本当に女の子の恋するフレッシュな気持ちが出ていて、すごくテンポもいいので、気持ちよく歌わせてもらいました。ウィンターソングらしさもあって、クリスマスにもぴったりだと思います!
40mP:僕はいま聴いたばかりなのですが、ボーカリストとして2曲でこれだけの振り幅が出せるのって、本当にすごいと思います。リスナーは尾崎さんのいろんな表情を見たいと思いますし、いい1枚になりましたね。
ーーさて、尾崎さんは、声優としての活動が歌に生きている、と思いますか?
尾崎:そうですね。1曲を物語と捉えて、主人公像を作る、という感覚があるので。だから、曲によって表情が変わるんだと思いますし、声優として「役に向き合う」という経験が、歌にも役立っていると思います。
ーー楽曲の主人公になる、という部分が、40mPさんの曲作りと重なりますね。
40mP:歌を聴いていても、「なりきる」という部分はすごく感じます。そのなかで「オトシモノ」は、少し素の歌声が出ているところもあって、素顔となりきりの度合いを調整するのがとても上手だな、と思います。
尾崎:確かに、素の自分と“役”が半分ずつ入ってるかもしれないです。
ーー冒頭にもお話ししましたが、お二人には共通点があるような気がします。例えば、オフの気分転換は、どんなことをしますか?
40mP:僕、家の近くに大きな公園があるので、心が病みそうになると、そこに森林浴に行きます(笑)。基本的に狭いスタジオにこもっているので、ちょっと癒されにいくと言うか。
尾崎:わかります! 私、山ガールなんですよ。お仕事を始める前は、リフレッシュのために山登りに行っていましたし、今年もキャンプをしたり。
ーー自然に癒される、というのも共通点ですね。バラードが好き、と言うことでしたが、思い浮かぶ名曲は?
尾崎:aikoさんの「カブトムシ」が大好きです。歌う上でも、参考にさせていただいたりしています。バラードなら、秦 基博さんもよく聴きます。
40mP:僕もaikoさんはすごい大好きですね。「カブトムシ」もそうだし、バラードだと、「えりあし」とか。音作りも影響されている部分があると思いますし、そういう意味でも、尾崎さんの歌とマッチングがよかったのかもしれないですね。秦さんの楽曲も大好きです
ーー共通点が多そうで、次回のコラボがあることを期待してしまいます。さて、今年ももう12月ですが、お二人にとって2018年はどんな年でしたか? そして、2019年はどんな年にしたいか。
40mP:今年、実はボカロの活動を始めてちょうど10年なんです。だからと言ってあまりやっていることは変わらず、依頼していただく曲も多く、やりがいのある一年でした。そのぶん、来年は自分が作りたいものに向き合って作っていくような年にしたいなと考えています。まだ未熟ですが、求められたことに応えるスキルは少しずつついてきているので、そのスキルを自分が主体的に作る楽曲にも活かすことができたら、どうなるのかと。そのあたりを突き詰めたいです。
尾崎:今年はソロとしていろんな活動をさせていただいたなかで、本当にあっという間に時間が過ぎていきました。スタートの年なので、来年以降は今年を基盤にして、より進化できたらいいなって。来年ももっと勉強して、いろんなものを吸収する一年にしたいです!
ーー最後に、「オトシモノ」をどんな気持ちで聴いてもらいたいか、リスナーにメッセージをお願いします。
尾崎:自分の過去を振り返りつつ、前に進むような曲でもあるので、少し落ち込んでしまっている人が勇気を取り戻せる曲になってほしいなと思います。
(取材・文=橋川良寛/写真=三橋優美子)
■リリース情報
『オトシモノ』
発売:12月5日(水)
・初回限定盤(CD+DVD)¥2,000+税
<CD収録内容>
1.オトシモノ
2.Wishing Love
3.オトシモノ inst
4.Wishing Love inst
<DVD収録内容>
「オトシモノ」MVほか
・通常盤(CDのみ)¥1,400+税
<収録内容>
1.オトシモノ
2.Wishing Love
3.オトシモノ inst
4. Wishing Love inst
<チェーン店別特典>
オリジナルB3ポスター
・タワーレコード
・Loppi
・HMV
・アニメイト
・とらのあな
・ゲーマーズ
・その他、サポート店
■イベント情報
『「オトシモノ」発売記念クリスマスイベント』
日時:12月25日(火)18:00~
場所:お台場 ヴィーナスフォート 教会広場
内容:ミニライブ&特典会
ゲスト:40mP
<特典会内容>
尾崎由香サンタコスチューム2ショット撮影会
直筆サイン入り非売品B2サイズポスターお渡し会
尾崎由香がセレクトしたクリスマスプレゼント抽選会
「オトシモノ」発売記念イベントも開催中
詳細は公式サイトより
■関連リンク
尾崎由香 オフィシャルサイト
尾崎由香 オフィシャルTwitter
尾崎由香 Instagram
『今夜、勝手に抱きしめてもいいですか?』オフィシャルサイト
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<応募締切>
12月19日(水)まで