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世界平和は簡単ではないけれど――おじさんふたりの交流を描く『じりりた』主演・渡辺哲×酒井敏也×脚本・演出ニシオカ・ト・ニール鼎談

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左から、渡辺哲、ニシオカ・ト・ニール、酒井敏也 撮影:源賀津己

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“大人の放課後”をイメージし、株式会社明後日がこれからの才能と実験的な試みをする「明後日HR(ホームルーム)」。その第2弾として上演されるのが、ニシオカ・ト・ニールの書き下ろし『じりりた』だ。気になるタイトルの由来は、自分の幸せを指す「じり(自利)」と他人の幸せを指す「りた(利他)」を組み合わせたもので、「じり」と「りた」が一緒になるのが本当の幸せ。本当の平和。――とある施設で相部屋となった、性格も生きざまもまったく異なるおじさんふたり。ひょんなことからたまごを温めることになり……。稽古も中盤に差しかかったある日、演出も手がけるニシオカと、W主演の渡辺哲、酒井敏也に話を訊いた。

寂しいおじさんふたりを繋ぐたまご

――創作の起点になった出来事とは?

ニシオカ コロナで延期になってしまいましたが、当初は2020年に上演する予定だったんです。そのせいか、なにが創作のきっかけだったか……(苦笑)。ただ私が心に傷を負ってしまい、なにか優しい物語を作りたい、と思ったことがひとつあると思います。もともとおじさんがたまごを温める話をやりたいと思っていたことも、それならぴったりじゃないかなと(笑)。哲さんと敏也さんがたまごを温めながら悪銭苦闘する。それってなんかいいなと思ったんです。

――W主演のお相手が渡辺さん、酒井さんと知った時の心境は?

渡辺 僕はものすごく楽しみにしていました。だってほら、酒井さんって可愛いでしょ?(笑)

酒井 そう言う哲さんもかわいいですよ(笑)。

ニシオカ 本当に可愛いです! あっ、可愛いなんて言ったら失礼かもしれませんが……(苦笑)。

渡辺 いやいや、僕のはまやかしだから。今回はきっちり二枚目の役を……って嘘、嘘(笑)。

酒井・ニシオカ (笑)。

ニシオカ もう稽古も中盤ですが、毎日本当に楽しくて! 日々みんなで作り上げていることに感動してしまうというか。「ここはこう変えよう」「あそこはこうしてみよう」みたいな感じで、芝居がどんどん整理されていき、自分が考えていたものとは全然違うものになっていく。それが本当に楽しいですし、まるでいつまでも完成しない、サグラダ・ファミリアのようです(笑)。

――(笑)。おふたりはまっちゃんこと松本、すーさんこと鈴木という役どころについて、現状どのように捉え、臨まれていますか?

渡辺 やっぱりふたりの関係性ですよね。それがだんだんとわかってきた感じ。最初はすーさんのことを鬱陶しく思っていたのに、だんだんと親愛の情が芽生えていく。ただそれについて、あまりまっちゃんの方からわからせる必要はないのかなと思っています。話が進むにつれ、あれ? やっぱり? みたいに感じられるのがいいんじゃないかと。あとはたまごとの関係性。そこがもうちょっとはっきり見えてくるといいなと思います。

明後日HR#2『じりりた~おじさんとたまごの諸事情~』稽古より

酒井 すーさんにとってまっちゃんは、やっぱり親友ですよね。すーさん自身はとても寂しい人生を送ってきた人で、相部屋になったまっちゃんととにかく友達になりたいし、ちょっとしたことでも優しさを感じちゃう。だからまっちゃんが来てくれたことが、本当に嬉しくて。それはたまごも同じ。そうして生まれるヒナの温もりというか……。

渡辺 まっちゃんにもまた違う寂しさがあるわけで。ふたりにとってたまごの存在はすごく大きいよね。

酒井 大きいですね。今日の稽古で、ふたりのたまごへの扱い方がまた変わったような気がします。

責任者としてふたりが一番素敵に見えるように

――ニシオカさんとは初の顔合わせですが、どんなタイプの演出家さんですか?

渡辺 やっぱり深いかな。すごくわかりやすく伝えてくれますし、ある程度自由にやれるよう、役者を野放しにしてくれる。そういう点ではやっていて非常に楽です。もちろん、その分プレッシャーはあります。

酒井 稽古自体は中盤ですけど、まだまだやるんだろうなって予感はあります(笑)。今は小出しにされている演出も、ト・ニールさんの頭の中にはさらにいろんな考えがあって、これからもっともっと面白くなっていくはず。それが僕はすごく楽しみで。だってやっぱり面白い作品にしたいですからね。あと家で声を出して脚本を読んでいると、家族から「当て書き?」と言われることがあるんです。でもそれじゃあいかんと思っていて。役者としてはもっと違うものを引き出していかなくてはいけない、そんな思いもあります。

明後日HR#2『じりりた~おじさんとたまごの諸事情~』稽古より
明後日HR#2『じりりた~おじさんとたまごの諸事情~』稽古より

――確かに、渡辺さんならこう、酒井さんならこうと、想像しながら読んでしまう部分はありますね。

酒井 そうですよね。でもお客さんにそれを想像させない、まったく違うものを提示出来た方がいいだろうなと。だからこそ、もっとはっちゃけたいと思っています(笑)。

ニシオカ でもすでに、「おふたりならこう読むかな?」と思っているところで、まったく違うことをやってこられたりしますからね。やっぱり大先輩はすごいと思いますし、これはもう放っておいてもいいなって思っちゃうんです(笑)。

酒井 いやいや、でもやっぱり一番正しいのは演出家ですから。

渡辺 そうそう。

ニシオカ もちろんこの作品の責任者として、おふたりが一番素敵に見えるところを探っていきたいと思っています。

酒井 素敵に見えるところ、それいいですね!

渡辺 本当にありがたいです。

――冒頭で「優しい話にしたい」といった言葉もありましたが、お客様にはこの作品から、どんな時間をお届けしたいと考えていますか?

渡辺 もちろん楽しい芝居だとは思います。ただなんというか「幸せってなんだろう?」みたいな、そんなことをふと考えさせられる作品になるんじゃないかなと思います。

酒井 演劇って、このコロナ禍でかなりダメージを負ったもののひとつだと思うんです。だから改めて、演劇という面白いものがあるんだよ、と。特に今回の新宿シアタートップスは、お客さんの息遣いまで感じられるようないい劇場ですから。この作品を通し、演劇の面白さが広がればいいなと思います。

ニシオカ やっぱり世の中的に、「はぁ…」ってことがまだまだ多いですよね。だからせめてこのお芝居を観ている間は、優しさをチャージしてもらえたらなと。世界平和は簡単ではないけれど、隣の人にちょっと優しくしてみようかな、みたいな。そんなことを思ってもらえる時間になったらいいな、と思います。

取材・文:野上瑠美子  撮影:源賀津己

<公演情報>
明後日ホームルーム #2『じりりたじりりた~おじさんとたまごの諸事情~』

2023年2月22日(水)~2023年3月1日(水)
会場:東京・新宿シアタートップス

チケット情報はこちら:
https://w.pia.jp/t/asattehr-02/

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