sumika結成10周年ツアーで“あなた”の声が響き渡る、大切な記憶を胸にさらなる未来へ
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「sumika Live Tour 2022-2023『Ten to Ten』」愛知・日本ガイシホール公演の様子。(撮影:後藤壮太郎)
sumikaが2月19日に愛知・日本ガイシホールでライブツアー「sumika Live Tour 2022-2023『Ten to Ten』」ファイナル公演を開催した。
2013年5月にバンドを結成し、今年10周年を迎えるsumika。彼らは「Ten to Ten」と冠したツアーで昨年9月より全国20カ所の会場を回り、計26公演を行った。
sumikaは新境地のファンクメタルナンバー「New World」でダイナミックにライブを開始。エッジの効いたバンドサウンドを思い切りよく放ったあと、「Glitter」を軽快にプレイして会場を盛り上げた。このツアーで3年ぶりに観客の声出しが可能になったことから、片岡健太(Vo, G)は「ずっと待ってたんだよな、この日をな! とんでもない、3年間分の“ふっかつのじゅもん”をかけます!」と宣言。「ふっかつのじゅもん」では待ちわびたとばかりにオーディエンスの掛け声が沸き起こり、その声を受けてメンバーの演奏にも一層熱がこもっていった。
その後もsumikaは昨年9月にリリースした最新アルバム「For.」の収録曲「何者」や代表曲の1つ「Lovers」など10年の歴史の中で生まれたさまざまなナンバーをパフォーマンス。オーディエンスのクラップとひさしぶりの合唱が、アニバーサリーイヤーならではのセットリストをより鮮やかに彩っていく。「泣きそうだよ、もう。うれしいね」と片岡は感極まった様子で会場を見渡し、「今までのいつよりも今日、最高にカッコいいライブをして帰りたいと思います!」という言葉とともに「1.2.3..4.5.6」を勢いよく投下した。
晴々とした青空と大樹を背景にsumikaは「Porter」で心躍るような開放感のあるサウンドを鳴らす。「イコール」では小川貴之(Key, Cho)が優しい歌声をまっすぐに響かせ、「いいのに」では心地のいいアンサンブルに観客の軽やかなハンドクラップが重なった。そして片岡は「去年の5月から今年の5月に向けて結成10周年イヤーを走っています。そこでsumikaのことを支えてくれた方に向けて音楽で何か伝えられることはないかなという話をしまして、曲を作りました。そうして行き着いたのが“愛”という答えだったんですよね。あなたから何も返ってこなくていい。だけど俺たちはどうしても伝えたいという、見返りを求めないのが愛という感情じゃないかなと思いました」と述べ、昨年からライブで演奏してきた楽曲「透明」を歌唱。オーディエンスへの愛情と感謝の思いを「愛している」という言葉でストレートに伝えた。
ここでサポートメンバーが一度ステージをあとにし、sumikaの4人はアコースティック形態にチェンジ。まずはsumika[camp session]名義で3月15日にリリースするミニアルバム「Sugar Salt Pepper Green」にも収録されている楽曲「知らない誰か」を穏やかに奏でた。続いて4人はこれからの季節にぴったりのナンバー「春風」を披露。荒井智之(Dr, Cho)によるカホンのゆったりとしたリズム、黒田隼之介(G, Cho)の柔らかなギターの音色、片岡と小川の繊細で美しいハーモニーにオーディエンスはじっくりと浸って聴き入った。片岡が1人でステージに立ち、弾き語りで歌い上げたのは「ファンファーレ」。かつてsumikaを結成する前に1人で弾き語りライブを行っていたこともある片岡は、当時を思い返すようにギター1本で剥き出しの歌声をじっくりと届けた。
ライブ後半、2枚の大きな花の絵に彩られたステージにsumikaとサポートメンバーが登場。「ソーダ」ではオーディエンスの一体感のあるシンガロングが会場に響き渡り、「Flower」では跳ねるようなリズムに合わせて観客が一斉に体を揺らした。そしてsumikaはスモークが漂うステージで「The Flag Song」をエモーショナルにプレイ。さらに雷のような激しい照明を浴びながらアッパーチューン「イナヅマ」を続けて演奏すると、会場に熱気が一層広がった。
一昨年リリースされた楽曲「Shake & Shake」にも満を持してオーディエンスの歌声が加わる。曲の合間にはメンバーの名前を呼ぶ声が飛び交い、「帰ってきたね、こういう世界が」と片岡は微笑んだ。片岡が「めちゃくちゃ楽しい曲がいっぱいあるし、sumikaのイメージをひと言で言うと『幸せ』、『前向きになれるようなバンド』だと思ってくれるような方がいる。でも人間って笑ってばっかりいられたら、ちょっと信じられないと思うんですよ。心から笑ってるときを“嘘じゃない”と見せるには、それ以外の感情を見せてこそ。喜怒哀楽は並列。始まりの歌があれば終わりの歌もある。今日は来てくれたあなたに人間として全部の感情を伝えたいと思うので、あと少しだけ音楽を演奏させてください」と述べ、歌い始めたのは最新アルバムの最後を飾るスケール感のあるナンバー「Lost Found.」。凛とした空気をまといながら、4人は1音1音に思いを刻み込むようにこの曲を演奏した。そして4人は最後に「言葉と心」をプレイ。オーディエンスの心にまっすぐに思いを届け、大きな拍手に見送られながらステージをあとにした。
アンコールを求める熱い拍手と声に応えて再び登場したsumikaは、カラフルなライトに彩られながら「フィクション」を生き生きと奏でた。片岡は2020年からの3年間を振り返り、「2020年の2月19日が、いわゆる最悪の時代がくる前の最後の声出しのライブだったんです。今日で丸3年。こんな時代が来て、ずっと『本当は……』のその先がいっぱいあったんだよね。でも、俺だけわがまま言っても仕方ない。みんな戦ってるから」と述べたうえで、「『本当は……』の先をやっと言えるなと思いました。本当はずっとあなたの声が聞きたかったです」と本音を口にする。人とつながるために音楽を続けてきたという片岡は「みんなが出してくれる声がなくなってしまうことがとんでもなくつらかった」と話し、「だけど、やっぱりまだ音楽を続けたいなと思ったのは、ライブの記憶があったからです。音楽を聴いてくれる、あなたが作ってくれた記憶があったから。そして2020から2023年の間、それでもやっぱり音楽が必要だと思ってくれる人の気持ちや言葉があったから、そのおかげで俺は音楽を続けてこれました」と感謝の思いを述べた。そしてsumikaは「雨天決行」を豪快にパフォーマンス。「あなたの人生の“線”にどでかい点を打ち込むために、俺たち全員で取り戻した歌、一緒に歌ってください!」と片岡が告げると、sumikaは「『伝言歌』」を演奏した。オーディエンスの温かな歌声に包まれながら、sumikaはあふれんばかりの感情をこの曲に注いで届ける。最後に「つらかった3年間、散々救ってもらった恩で、これから先の未来は約束します。必ず、幸せにします!」と片岡が誓い、sumikaは晴れやかな笑顔でツアーを締めくくった。
なおsumikaは結成10周年イヤーの締めくくりとして5月14日に神奈川・横浜スタジアムでバンド史上最大規模のワンマンライブ「Ten to Ten to 10」を開催する。
sumika「sumika Live Tour 2022-2023『Ten to Ten』」2023年2月19日 日本ガイシホール
01. New World
02. Glitter
03. ふっかつのじゅもん
04. 何者
05. Lovers
06. 1.2.3..4.5.6
07. Porter
08. イコール
09. いいのに
10. 透明
11. 知らない誰か(sumika[camp session])
12. 春風(sumika[camp session])
13. ファンファーレ
14. ソーダ
15. Flower
16. The Flag Song
17. イナヅマ
18. Shake & Shake
19. Lost Found.
20. 言葉と心
<アンコール>
21. フィクション
22. 雨天決行
23. 「伝言歌」
sumika 10th Anniversary Live「Ten to Ten to 10」
2023年5月14日(日)神奈川県 横浜スタジアム