ジャニーズとハロプロ、グループ/ユニット名の特徴は? 独特のセンスから考える両者のスタンス
音楽
ニュース
アイドルグループ名と言えば複数形を示す「s」がついた「~ズ」や「~ス」が基本だったのも昔の話。いまはインパクトあふれる個性的なグループ/ユニット名が花盛りだ。
(関連:SMAPからA.B.C-Zまで……独特のセンス発揮されたグループ名やエピソードを振り返る)
なかでも男性アイドルのジャニーズ、女性アイドルのハロー!プロジェクトは双璧と言ってもいいだろう。最近もジャニーズでは関西ジャニーズJr.で4年ぶりになるユニット・なにわ男子の結成や東京B少年のSexy美少年への改名、ハロプロでは新グループBEYOOOOONDSとそのグループ内ユニットであるCHICA#TETSUと雨ノ森 川海の結成といずれも「らしい」ネーミングが話題になった。
そこでこの機会に、それぞれのグループ/ユニット名の歴史を網羅とまではいかないが振り返ってみたい。
ジャニーズにも語尾に「s」がつく“正統派”はいた。元祖グループであるジャニーズ(Johnny’s)は少し意味合いが違うが、その後に活躍したフォーリーブスなどはそうだ。
だが1980年代になると、変化が起こる。遊び心のある「和」テイストの名前が増えるのである。
まずたのきんトリオは、田原俊彦、野村義男、近藤真彦の最初の漢字を組み合わせたもの。その後のシブがき隊や少年隊になると、「s」ではなく「隊」になったところがまさに「和」だ。忍者のデビューもあった。男闘呼組になるとヤンキー成分が入ってくる。光源氏ならぬ光GENJIの爆発的成功は、この和風路線の集大成とも言えるだろう。
1990年代以降になると、TOKIOやKinKi Kidsのように「洋」の要素の入った「和」や嵐のように純粋な「和」の名前のグループが誕生する一方で、「和」と「洋」を自在に駆使するジャニー喜多川ならではの造語感覚が本領を発揮し始める。
SMAPはその先駆だろう。“Sports Music Assemble People”の頭文字であることはよく知られた話だが、それ自体は完全な造語である。V6も造語パターンだが、「V」には「バレーボール(volleyball)」「ビクトリー(victory)」「バーサス(versus)」など何通りもの意味が持たされていた。
NEWSは造語ではないが、「ニュース」と英語の「東西南北」の頭文字の組み合わせ、Hey! Say! JUMPの場合は全員平成生まれを表す「Hey! Say!」と「Johnny’s Ultra Music Power」の頭文字である「JUMP」の組み合わせというともにひねりのきいた合わせ技。「Acrobat Boys Club」の頭文字の後にアルファベットの完成とゼロからのスタートというダブルミーニングで「Z」を付けたA.B.C-Zもそれに近い。
そんな造語感覚の最たる例が、KAT-TUNとKis-My-Ft2だ。たのきんトリオと同じくメンバーの頭文字を組み合わせたパターンだが、この二組の場合はちゃんとした意味のある文字列になっている。KAT-TUNは「勝運」や「cartoon」、Kis-My-Ft2はタップダンサーのグレゴリー・ハインズがサミー・デイビス・ジュニアの靴にキスをしたというエピソードを表したもの。その文字列には、ジャニーズエンタメ全般に通じる一種のカオスとマジックがある。
一方ハロプロのグループ/ユニット名はと言うと、出発点であるモーニング娘。からすでにユニークなネーミングだ。「モーニング」には「喫茶店のモーニングセットのように色々付いてくる盛り沢山なお得感」という意味合いがあり、女性アイドルグループ名の発想としては意表を突いている。
ただ「娘」のほうは「ガールズ」の和訳ととらえればオーソドックス。さらに「娘」というワードは南沙織、天地真理、小柳ルミ子の「新三人娘」なども連想させ、どこか懐かしい昭和感もある。ハロプロらしく、いい意味でダサさがある。
この「娘」パターンはココナッツ娘。やカントリー娘。(カントリー・ガールズ)にも継承され、ハロプロののれん分け的な老舗感をいやがうえにも強めている。Berryz工房からこぶしファクトリー、つばきファクトリーへ至る流れも同様だ。
とはいえ、つんく♂の一流の造語感覚も見逃せない。ごまっとうのようなたのきん的頭文字型もあるが、太陽とシスコムーンやメロン記念日はなかなかだし、アンジュルムの旧名であるスマイレージ(S/mileage)の「スマイル」「マイレージ」「エイジ」を絡める手際も鮮やかだ。また複数形を「Berries」ではなく「Berryz」に、「Cute」の「C」を「℃」にして「℃-ute」と表記する、はたまたJuice=Juiceの単語の繰り返しなどは、どれも最初は違和感があっても慣れると愛着が沸いてくる絶妙の匙加減だ。
おそらく、こうした独特なセンスの根底には、アイドルというものに対するつんく♂のやや距離を置いたようなスタンスがある。本人も言っているように、彼自身はあくまで歌手を育てようとしたのであって、ステレオタイプなアイドルをつくろうとしたわけではなかった。だからグループ名やユニット名もアイドルっぽいものにとらわれず、発想の飛躍が可能だったように見える。
同じことはジャニーズにも言えるだろう。ジャニー喜多川も、最初からアイドルをつくろうとしたわけではない。あくまでオリジナルミュージカルが最終目標で、そのために育てたタレントが結果的にアイドルと呼ばれるようになった。グループ名やユニット名を付けるにあたっても、ジャニー喜多川の頭のなかにはあまりアイドルらしさという考えはないのではないか。
さて、冒頭の話題に戻ろう。
BEYOOOOONDSの「O」を連打してインパクトを出しつつそれでも「s」が付く折り目正しさや、CHICA#TETSUと雨ノ森 川海から受けるおなじみの違和感はいかにもハロプロ的だ。ただ「超える」という意味合いを込めたグループ名、そして歌とダンスだけでなくパフォーマンスや演劇に力を入れていく両ユニットのコンセプトからは新分野開拓の意欲が伝わってくる。
なにわ男子はKinKi Kidsや関ジャニ∞のように関西というアイデンティティにこだわったこれも「らしい」名前だが、そのシンプルさには最近の原点回帰傾向も見える。「ジャニーズ」の名が入っているジャニーズWESTや光GENJIを思い出させるKing & Princeはまさにそうだろう。
ジャニー喜多川がマイケル・ジャクソンのセクシーさをイメージしたというSexy Zoneも基本的にシンプルかつ原点回帰的なグループ名だ。同時に、国際的な舞台での活動が意識されてもいる。そこにSexy美少年がどこまで絡んでくるのかは現時点わからないが、ジャニーズが強く意識しているのがうかがえる2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けてグローバルに発信する活動も期待できるのではないだろうか。(太田省一)