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【『Live!ロックちゃん2023』対談シリーズ④】芦沢ムネト×くるり

音楽

インタビュー

ぴあ

くるり×芦沢ムネト Photo:山本佳代子

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「ぴあアプリ」で好評連載中の漫画『ロックちゃん』。音楽好きで知られる作者の芦沢ムネトがプロデュースする音楽イベント『Live!ロックちゃん2023』が、3月4日(土) 豊洲PITで開催される。出演する4組、くるり、ハンバート ハンバート、GLIM SPANKY、BREIMENを1組ずつ迎えてトークを繰り広げる対談シリーズ、ラストとなる第4弾は、くるりが登場。楽曲制作の裏側やライブという特殊すぎる空間について、貴重なお話だらけの対談となりました。

めちゃめちゃ京都弁で「下品な笑い方しはりますねぇ」って(笑)(芦沢)

芦沢 最初にくるりを聴いたのは「ばらの花」で、大学生の時だったんですよ。そこからめちゃくちゃ好きになって、今もずーっと好きです。まさか自分が芸人になって、お会いするなんて思いもしなかったですね。

――どのようなきっかけで会ったんですか?

芦沢 フェスでご挨拶させていただいたのが最初だったと思います。あと、岸田さんとは一回だけ飲んだというか、Dragon Ashの櫻井(誠)さんがやっているお店があるんですけど、そこで打上げかなんかをされてたんですよ、Dragon Ashとくるりが。でもその時、佐藤さんはいらっしゃらなくて。ファンファンさんと岸田さんで。

岸田 そんなこともありましたね。

芦沢 みんなすごい酔っ払ってて、岸田さんがずっと謎のラップをされてました(笑)。

岸田 すみませんでした(笑)。

芦沢 で、櫻井さんが気をつかってくれたというか、「おまえがくるり大好きなの知ってるぞ」って、岸田さんの横に座らせてくれたんですよ。そしたら僕、うれしくてテンション上がりすぎちゃって、ゲラゲラ笑ってたみたいなんです。その僕を見た岸田さんの第一声が、めちゃめちゃ京都弁で「下品な笑い方しはりますねぇ」って(笑)。それがズドーンと衝撃で、今も残ってます(笑)。いや、うれしいんですけどね。

岸田 ぜんぜん記憶にないですね(笑)。サクちゃんのお店ですか?

岸田繁(くるり)

芦沢 そうです。

岸田 サクちゃん大好きで、最近はお会いしてないんですけど、その時、うっすらある記憶では、ラーメンの話ですごく盛り上がったのは覚えてるんですけどね。サクちゃん、料理も上手なので、こうやって出汁をとるといいよみたいな話をしました。けどその時に芦沢さんがいらっしゃって、そんなことを言ったとは……すみません(笑)。

芦沢 いえいえ。今日も何回か下品な笑いが出るかもしれないですけど(笑)。

岸田 私なりのリップサービスだったんだと思います(笑)。あまり業界の人とかと飲みに行ったりしないので。でもそうですね、今お話を聞いて気をつけようと思いました(笑)。

芦沢 いえいえ、うれしかったんで、はい。

――佐藤さんとは?

芦沢 このあいだ、それこそ何人かと一緒に飲んだなかに佐藤さんもいらっしゃって。

佐藤 確か初めてお会いしてすぐに、お芝居に誘われて行かせていただいたのを覚えてます。

芦沢 あ、そうですよね。僕の一人芝居に来ていただきました。

佐藤 正直僕、お笑いもそうなんですけどお芝居を観るのって苦手で。テレビで見るのはまだあれなんですけど、やっぱり言霊が強いじゃないですか、舞台の人が発する言葉って。それを浴びるのが怖かったんですよ。でもだんだん、そういう場所に行く機会が増えていって、去年ついにルミネ(theよしもと)に行きました。

芦沢 あ、そうなんですね。楽しめました?

芦沢ムネト

佐藤 楽しめました。おかげさまで。あの時に芦沢さんに誘われてなかったら、たぶん死ぬまで舞台っていうものに行ってなかったかもしれないですね。昔、土日とかになるとおばあちゃんとかが絶対に宝塚とか見てたんですけど、何かを演じてる人がいるっていうのが、ちょっと怖くて。自分と違うものを入れてる人を目の前にするっていうのがどうにも怖かったんですよ。例えば音楽の人だったら、僕の隣で岸田さんがしゃべってても歌ってても、自分の言葉だから一緒の人なんですよ。で、テレビとか映画だったら、まあ大丈夫になったんですけど、生の舞台っていうのが最近までなかなか慣れなくて。

岸田 トム・クルーズとかでもアカンの?

佐藤 いや、それは……生で演技してるとこ見ることないやろ?(笑)

お笑いに学ぶことって多いなって最近思いますね(笑)(岸田)

――芦沢さんは、このイベントを開催するとなって、すぐに出ていただきたい!と思ったのが、くるりだったんですよね?

芦沢 そりゃあもう。自分でイベントをやるなら、くるりを呼びたいというのは夢でしたから。

岸田 下品な歌い方しかできないですよ?

全員 (爆笑)

芦沢 このイベントをやるにあたって僕がひとつ思い描いたのが、若手のバンドとくるりを同じステージで観てみたいなって思ったんですよね。どうなんですか? 最近は若いバンドと一緒にやったりすることはあるんですか?

岸田 昨年ね、KOTORIとかリーガルリリーとか、割とそういう機会が多かったんですよ。音博(京都音楽博覧会)っていう自分たちで主催しているフェスがあって、そこにSHISHAMOやマカロニえんぴつ、Vaundyとかに出てもらって。同じステージに立てたーやったー!ってなってました。

芦沢 いやいや、向こうはもっと「やったー!」ですよ。

佐藤 今回で言うと、BREIMENはこういう機会でもないと一緒にならないだろうなって思ったから楽しみですね。

佐藤征史(くるり)

岸田 なんかめちゃくちゃ上手みたいですね。

芦沢 いやそれはだってくるりさんも、というか、くるりの曲って一体どうやってできてるのかなっていうのがすごい不思議なんですよね。やっぱ普通じゃないというか。いや、それが普通に聴こえるっていうのがすごいんですけど。まずは岸田さんスタートなんですよね?

岸田 そうですね、曲に関しては。ネタってどうやって書きますか?

芦沢 面白いボケが一個浮かんで、それをやりたいがために作る時と、あとは、こういう雰囲気は浮かんでるけど、どうしたらこの雰囲気になるかな? みたいな感じですかね。

岸田 似てます。曲もそういう感じです。今、3人組ですよね?

芦沢 そうです。

岸田 以前は5人でしたよね?

芦沢 よくご存じで。

岸田 例えば5人とかだったらどうするんですか? ひとりで考えるんですか?

芦沢 5人だったら、僕ともうひとりメインで作ってたやつがいたんですけど、5人がどう生きるかっていうのをパズルっぽく考えてましたね。本来なら2人で済むことを5人で分けなきゃいけないので、ぶっちゃけ5人目とかいらない場面もあるので、突発的に出てきて場を壊す役とかっていう感じで全員を使い切ってましたね。あとは団体だからこそ起きる変な空気みたいなものは大事にしてました。

岸田 バンドとかでも、こんな曲ができましたっていうデモを作って、各々さらってもらって、スタジオで微調整しながら録る。録ったものをさらにいじったりする場合もありますし。あるいは、ノーコンセプトで集まってなんかやってみようって言って、ボヨボヨと始まって、その中で音楽的なモチーフがはっきりしてないものを誰かが出した時に、みんな勘違いするというか、これはこういうことかなって勘違いしたのが面白くて、それが基になってだんだんできてくるっていうこともあるんですよね。こっちは佐藤さんに「レ」の音を弾いてほしいのに、何を勘違いしたかずっと「ラ」を弾いてるみたいなことがあったり。

芦沢 端から見たら失敗してるように聴こえるんだけど――。

岸田 いや、端から見てもそれなりに聴こえるっていうところを切り取ったら、予定調和なものでも、もうちょっと面白いものができる時があるんですよね。自分で作るものって飽きません?

芦沢 飽きますね。

岸田 だから、バンドで作る時は自分がきっかけを作るんですけど、なんかもう全然こっちが考えたことと違うことやってて腹立つ時もあるんですよ(笑)。全然話が通じないって思う時もあるんですけど、でもそれは角度を変えて見たら、これは社会一般でもこういうことあるよねって捉えると曲が生き物になるっていう感覚があるんです。バンドではそういう作り方なんです。例えば、コマーシャルの曲書いてくださいとか、僕ひとりで劇伴を作ったりとかオーケストラのために作ったりしたりする時は、一人芝居じゃないけど自分の中でそういうこと(バンドの時のような偶然)を起こすっていうことをやっている感じですね。

芦沢 なるほど。こっち側で言ったら、全然意図と違うボケを相方が返してきた時に、違うんだけどなんか面白いから採用してみようかっていう時はやっぱあるんで、それにちょっと近いのかなっていう気がしました。

岸田 そうですね。その時に予定していた自分の中でのおもろいツッコミではない、わけわからない反応してしまう時の自分探しとしては上出来じゃないですか(笑)。

芦沢 そうですね(笑)。お笑いだとそこで、本来伝えたかったことじゃないことになる場合が多いんですよ。まずこういうボケにしてからここに行きたいのに、そいつが変なボケを入れちゃったもんだから、またそれをこっちも面白いと思っちゃったもんだから、もう戻れなくなっちゃったっていうところに落ち入る時があるんですよ。そういう、どうしようもなくなることっていうのはないんですか?

岸田 ものにもよるんですけど、基本的にはスッとできて、これしかないっていうようなものが好きなんですよ、私は。必然みたいなものが。もし、ポール・マッカートニーが「イエスタデイ」を書く時に、たまたま間違ってププッと笑いながら作ってたら結構ショックを受けるじゃないですか(笑)。もう、あれはあれでしかないっていう感じだと思うんで。一方で、イメージはあるのにうまいことできないとか、あるいは、アイデアとしてしょうもなさすぎるから逆に気になるみたいなものを育てる行為っていうのも、それはそれで好きなんです。でもそれは磨かないままだと間違いとかしょぼいもんに聴こえてしまうっていう場合があって、逆に言えば磨いたらやっぱり輝く可能性を秘めてるんですよね。だから何回もやってこれは面白いですとか、これは正解ですとかきれいですよねって思わせるか、それともすごいパワーでこれはたいして面白くないかもしれないけど輝いているように見せるか、みたいなのはどっかで分かれ目があって、そのどっちかで作ろうみたいな意識はあるんですよ。僕らはどうもこねくり回しすぎるきらいがあるから、何回もやってるうちに作ってる本人がゲシュタルト崩壊を起こしたりとか、変だけど当たり前みたいになってしまってるものも多くて、そういうのってやっぱりすごい難解な作品になっちゃうんですよね。でもちょっと歪(いびつ)かもしれないけど、そこにかなり強い歌詞を入れたりとか、普通はこう行くだろうけど音程的に跳躍させたりとか、和音を工夫したりしたら、大したことなくてもボーンと行く時があるんですよ。そういうのができた時は、おっしゃ!って思うんですよね。

芦沢 なるほど。

岸田 「こーんにーちはー!」((C)錦鯉)っていうのって、ただの大きい声での挨拶じゃないですか、言ってしまえば(笑)。でも、あの顔面とか動作とか、相方さんの絶妙なツッコミがあるから必殺のギャグになって盛り上がるじゃないですか。しかもそれをど頭に置くことで。音楽もなんかそういうことに近いというか(笑)。あんなイントロ作ってみたいって思うんですよね。やっぱりくるりって売れた曲以外は、そういうのないから、お笑いに学ぶことって多いなって最近思いますね(笑)。

芦沢 むっちゃ面白いですね! 

雑味のあるものだからこそ限定されないものになるんじゃないかなと思うんですよ(佐藤)

芦沢 「街」とか聴くと、団地が思い浮かぶんですよ。でもそれってみんな違う情景が浮かぶと思うんですけどね。なんか、友達の家に行こうとして同じような公団の建物の中で迷子になった思い出とか、そういうのがバーっと出てくるんですよ。

岸田 名前のついてない幼児体験みたいなこととか、直感でわかるよね、みたいなことって言語化が難しかったりするじゃないですか。それを正確に言語化できたりストーリーテリングできたりする言論のプロってすごいなって思うんですけど、僕は音楽でそれをやりたいと思っていて。鉄棒の血みたいな味とか、自分の中に残っている生臭い記憶とか、なんでもいいんですけど、そういう名前のついていない情景を――それをもちろん具体的な言葉や誰もが認識できる共通のイメージみたいなものを使ってやる場合もあるんですけど、それよりはこの2小節、あるいは4小節の流れと次の流れをつなげて聴いたら、見たことあるようなパースが広がるっているというようなもの、それをたぶんやりたいんだろうなって思うんですよね。

芦沢 佐藤さんはこういう岸田さんのイメージみたいなものを事前に聞いたりするんですか?

佐藤 昔だと、例えば新しいドラマーさんとやる時に、この曲とは何だ、みたいなことを理解するためにそういう話はありましたけど。とは言え、レコーディングしたり曲を作ったりしている段階ではまだそこまで歌詞もなかったりしますし。今はそれこそDTMとかでシンガーソングライターさんなんかは痒いところに手が届くようなクリアなものをひとりで作れると思うんですけど、バンドってどっちかって言ったら、複数人が集まったからこそ出てくる雑味だと思うんですよね。だから、さっき芦沢さんが「街」を聴いたら団地を思い出すっておっしゃいましたけど、聴いた人によって全然違うものが思い浮かんだりするっていうのは、雑味のあるものだからこそ限定されないものになるんじゃないかなと思うんです。それでしかないっていうものにならないのがバンド感なのかなって。そういうバンドの数はたぶん今はすごく少なくなっているんでしょうけどね。

岸田 見てる景色や肌触りが全然違うってなったら、いやこれはこうでって話はするかもしれないです。でも、それこそ佐藤さんとはもう長く一緒にやってるし、音楽的に参照する年代とかジャンルにズレがあったらそこは徹底的にコミュニケーションを取ってやりますけど、そうじゃなくて雰囲気というか明かりの強さっていうんですかね、そこは今やあんまり誤差はないと思ってるんですよね。たぶん、見てた風景とかも近いだろうし、世代も同じだからっていうのもあるんですけど、ただ、それも別に多少違っても面白いって思う瞬間もあるんですよね。アメリカ人のメンバーと一緒にやってた時期がありましたけど、「なんでおまえこの曲でそんな大リーグ的なリズム叩くねん」みたいなことって正直あったんですよ(笑)。もちろんこっちが思ってたものと違うけど、でもそれはそれで面白いっていうか。

芦沢 ああ、なるほど。

岸田 さっきの「街」聴いたら団地っていうので言うと、曲にもよるんですけど、例えば「街」って曲を書いた時にどういうことを考えて作ってたか、あるいは――私はあんまり自分の曲を振り返って聴いたりはしないんですけど――あの曲を聴いた時にどんな感じがするかと言えば、作ってる時に見えたもんしか見えてないというのが事実だったりするんですよ。だからスタジオの壁しか見えてない。スタジオの壁に空いてるプツプツした小さい穴とかを思い出すんですよね(笑)。そこにはリアルな記憶しかないんですよ。よくこういう質問もされるんです、「『ばらの花』を作った時はどんなイメージで?」とかって。でも実際見えてるもんってギターの巻き弦とかなんですよ。それしか見えてこないんです。その代わり、鳴らした音は何かではあるから、そこは「すみません、ここまでは自己責任なんで、ここからは知りません」っていうか、もう自分の曲ではなくなっているという感覚なんです。

芦沢 へー。ちなみにライブで歌っている時には何かが思い浮かんでるんですか?

岸田 ないですね。歌っている時は、大抵「次の歌詞なんやったっけ?」とか「次のコードなんやったっけ?」とか、「あ、ちょっとズレてるやん」とか、そういうことしか考えてないですね。

芦沢 あ、もうその時の演奏に集中しているっていうことなんですね。

岸田 ライブってしんどいんですよ。苦手で。やっぱり歌を歌うから、あんな大音量でキックとかが鳴ってたら、歌取れないんですよ。それを一生懸命正しい音程で、正しいタイム感で、間違えんように歌うだけで精一杯なんです。僕の技量では。で、何らかの条件が整ったりとかして、自分の気持ち的なムードとかそういうものをたまに――1年に何回かしかないけど――打ち破ってバンと行けた時に、まったく何も考えない、みたいな状態があって、そういう時って自分の中で音と共にいるっていうような、すごくいい感じになってるんです。でもそれで後から同録聴いたら、おまえ半音くらいフラットしとるやんけ!ってなってるんですよね(笑)。

――それは結果、いいライブということではないんですか?

佐藤 まあ、中(ステージ上)と外(フロア)では音の環境も違いますしね、そこは難しいですね。

岸田 だから、あんまりもうライブのことは考えないようにしてて、全力は尽くすというか、気持ちが冷めてたらそのライブはやっぱり良くないんですよ。演奏に没入して、エンジンはめっちゃ動いてますっていう状態でやるにはやるんです。昨年のツアーだったかな、名古屋かどっかで、あんまりそういうことなかったんですけど、アタマ3、4曲やってる時に、ものすごい便意が来たんですよ。

芦沢 (笑)。

岸田 これ、最後までもたないだろうなと思って。ライブの時って邪念が入ると良くないから、間違ったりとか、心のない歌を歌ってしまうんで。これはマズいと思って、(セットリストの)ブロックごとの区切りが一応あるんで、これはもう行っておこうと。このままやったら“伝説のライブ”になってしまうと。

芦沢 はははは!

岸田 「ちょっとすんません」って、「トイレ言ってくるんで、佐藤さんちょっとしゃべっといてください」って言って、さーっと捌けて、イヤモニ外して、裏に駆け込んで行ったんですよ。で、ライブ中も裏でお仕事をされている方たちがいるじゃないですか。

芦沢 はい。

岸田 ものすごい複雑な気分で、その人たちに「おつかれさまです」って言いながらトイレに行って、まあ無事に用を済ましたわけですよ。そういう緊急事態から解放された時って、ふぅーって安心するじゃないですか。そしたらライブのモードも全部なくなってしまったんですよ。うわ、これどうしようかなと。で、その瞬間思ったのは、「私はさっきまでステージでロックスターをやっていたのだ」と。

――着ぐるみ脱いじゃったみたいな状態ですね。

岸田 そう。「でも今の私は仕事中に排便をしたおじさんにすぎない」みたいな状態になってしまって(笑)。でもとりあえず早く(ステージに)帰らなきゃ、佐藤さんもいい加減困ってるだろうなと。

佐藤 物販を紹介してました。

芦沢 素晴らしい(笑)。

岸田 で、とりあえずステージに戻って、なんてことないMCをしながらなんとか通常運転に持っていって次の曲をバンとやったんですけど、曲に入れないんですよ。もう全然入れなくて。みんなの演奏が、テンポがどうこうじゃなくて速すぎるというか。俺だけヤムチャみたいな感じがして。戦力外みたいな(笑)。

芦沢 めちゃくちゃ怖いですね。

岸田 それは恐怖体験でしたね。

芦沢 佐藤さんはそういう岸田さんの様子の変化っていうのはわかったんですか?

佐藤 前半おかしいっていうのは(笑)。ライブって、お笑いでもお芝居の舞台でもそうだと思うんですけど、この曲を演奏しますっていう気分でやってないから。

芦沢 はいはい。

岸田 アドレナリンだと思うんですけど、それが全部排出されてしまって、もう1回出てくるのって時間かかるじゃないですか。それがお客さんにバレたらどうしようって思ってたのがひとつと。あとは、バンドのメンバーにはすぐに伝わって、庇うような演奏もしてくれるから余計に、「ちゃうねん……ちゃうねん……」って(笑)。

芦沢 ツライ!

佐藤 僕はその時思ってたのは、マジで発熱とかだったらどうしようっていうことでした。だから「トイレ行って来る」っていうのは、体調がヤバくて下がるためにとりあえず言ったことなのかなって。

岸田 ただの便意(笑)。いや、すみません、こんな話になってしまって(笑)。

芦沢 いえいえ、めちゃくちゃ貴重なお話ですよ(笑)。

――ライブっていうのがそれくらい特殊な場であるっていうことですよね。

芦沢 そうですよね。自分がロックスターだったんだってふと思えてしまうっていうそのギャップがすごいですよね。

佐藤 大きいフェスとかだったらまた話は違ってくるんですけどね。緊張もそこまでしないんですよ。でもそこを上回っている精神状態にはなっているわけですからね、ライブっていうのは。

岸田 だって普通、あんなにこっち向いている人たちがいっぱいいる状況で歌ったりしないじゃないですか、よくよく考えたら(笑)。そうやってお客さんにパワーをもらって演奏したり歌ったりしている状態が当たり前の中で、でもコロナでライブができなくなって、ミュージシャンたちが悲しい気持ちになっていると。もちろん我々もそういう気持ちではいたんですけど、でもその排便事件があるまで、ステージに上がることの意味というか大切さをちゃんとわかってなかったなと思いました(笑)。

芦沢 はははは!

岸田 だから普通のおじさんミュージシャンとして、「あー、こんばんは、くるりです」って通常運転のままライブをやってたと思ってたんですけど、全然違ったっていうのを自分で知ることができましたね。だから芦沢さんのイベントの時は、しっかりやりたいと思います(笑)。

芦沢 万が一またピンチの時は、我々にだけわかる隠語を決めておきましょう(笑)。そうしたら、あ、岸田さん、そういうことかとお客さん以外みんなに伝わるので(笑)。

Text:谷岡正浩 Photo:山本佳代子

<ライブ情報>
『ぴあ 50th Anniversary「Live!ロックちゃん 2023」』

3月4日(土) 豊洲PIT
OPEN 16:00 / START 17:00

出演:GLIM SPANKY/くるり/ハンバート ハンバート/BREIMEN

【チケット料金】
スタンディング:6,000円(税込)
スタンディング ファミリーチケット(大人1名+小学生1名):8,000円(税込)

※入場時ドリンク代必要
※未就学児童入場不可
※スタンディング ファミリーチケットは、公演当日時点で小学生のお子様1名と同伴限定のチケットとなります。

チケット一般発売中:
https://w.pia.jp/t/liverockchan2023/

オフィシャルサイト:
https://live-rockchan.com

<ツアー情報>
くるり『愛の太陽EP』発売記念ライブツアー2023

5月12日(金) 広島・広島CLUB QUATTRO
5月14日(日) 香川・高松 festhalle
5月15日(月) 熊本・熊本 B.9 V1
5月18日(木) 長野・CLUB JUNK BOX
5月19日(金) 石川・金沢 EIGHT HALL
5月24日(水) 神奈川・横浜 BAYHALL
6月1日(木) 京都・磔磔
6月2日(金) 京都・磔磔

くるり『愛の太陽EP』発売記念ホールツアー2023

6月30日(金) 宮城・仙台GIGS
7月2日(日) 北海道・札幌道新ホール
7月7日(金) 埼玉・三郷市文化会館
7月17日(月・祝) 福岡・福岡国際会議場メインホール
7月19日(水) 大阪・オリックス劇場
7月29日(土) 愛知・名古屋市公会堂
8月2日(水) 東京・昭和女子大学 人見記念講堂
8月3日(木) 東京・昭和女子大学 人見記念講堂

詳細はこちら:
https://www.quruli.net/news/tour2023/

<リリース情報>
くるり『愛の太陽 EP』

3月1日(水) リリース

●初回限定盤A(CD+Blu-ray+特典CD):6,160円(税込)
予約リンク:
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Linkall/VIZL-2156.html

●初回限定盤B(CD+DVD+特典CD):6,160円(税込)
予約リンク:
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Linkall/VIZL-2157.html

くるり『愛の太陽 EP』初回限定盤ジャケット

●通常盤(CD):1,980円(税込)
予約リンク:
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Linkall/VICL-65783.html

くるり『愛の太陽 EP』通常盤ジャケット

【CD収録内容】※全形態共通
1. 愛の太陽
2. Smile
3. 八月は僕の名前
4. ポケットの中
5. 宝探し
6. 真夏日

【Blu-ray / DVD収録内容】※初回限定盤のみ
■くるりライブツアー2022 at Zepp Haneda, 2022.08.04
1. Bus To Finsbury
2. bumblebee
3. 青い空
4. 風は野を越え
5. Time
6. GIANT FISH
7. かごの中のジョニー
8. Tokyo OP
9. ロックンロール

■京都音楽博覧会2022 at 京都梅小路公園, 2022.10.09
・朗読 - 又吉直樹
1. 真夏日
2. 東京
3. ハイウェイ
4. 潮風のアリア
5. 琥珀色の街、上海蟹の朝
6. ばらの花
7. everybody feels the same
8. 太陽のブルース
9. ブレーメン
10. 奇跡
11. 宿はなし

【初回限定盤付属特典CD収録内容】
■岸田繁 / 映画『ちひろさん』オリジナル・サウンドトラック
1. ちひろさん
2. オカジとちひろ
3. おじさん
4. 白昼の狂気
5. マコトのお弁当
6. オカジとちひろ Ⅱ
7. 夏の日の出来事
8. ちひろの回想
9. 宝の地図
10. 多恵と綾
11. ちひろとちひろ
12. 金魚
13. 綾の正体
14. 多恵と綾 Ⅱ
15. お月見
16. その後の日々
17. 愛の太陽 -Alternative mix-

詳細はこちら:
https://www.jvcmusic.co.jp/-/News/A012067/475.html

<作品情報>
Netflix映画『ちひろさん』

2月23日(木・祝) Netflixで独占配信&全国の劇場で公開

Netflix映画『ちひろさん』キービジュアル (C)2023 Asmik Ace, Inc. (C)安田弘之(秋田書店)2014

原作:安田弘之『ちひろさん』(秋田書店「秋田レディース・コミックス・デラックス」刊)
監督:今泉力哉
脚本:澤井香織 今泉力哉
音楽:岸田繁
主題歌:くるり「愛の太陽」(VICTOR ENTERTAINMENT / SPEEDSTAR RECORDS)

【出演】
有村架純
豊嶋花 嶋田鉄太 van
若葉竜也 佐久間由衣 長澤樹 市川実和子
鈴木慶一 根岸季衣 平田満
リリー・フランキー 風吹ジュン

公式サイト:
https://chihiro-san.asmik-ace.co.jp/

プロフィール

芦沢ムネト
コントグループ「パップコーン」のリーダー。癒し系キャラクター「フテネコ」の生みの親であり、様々なアーティストから支持を受け、数多くのMVやコラボグッズを手掛けるほか、ライブやフェス等のイベントではMCを務めるなど、幅広く活躍する。

くるり
1996年9月頃、立命館大学(京都市北区)の音楽サークル「ロック・コミューン」にて結成。古今東西さまざまな音楽に影響されながら、旅を続けるロックバンド。

ロックちゃん
ロックちゃんは、自分のことをなぜかオトナだと思っている4才の女の子(次女)。この連載はちょっと背伸びをした、キュートでやんちゃなロックちゃんの日常のお話です。

関連リンク

芦沢ムネト Twitter:
https://twitter.com/ashizawamuneto

くるり オフィシャルサイト:
https://www.quruli.net/

漫画連載『ロックちゃん』:
https://lp.p.pia.jp/article/series/62727/index.html

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