『温泉むすめ』プロデューサー橋本竜が語る、メディアミックスと地方活性化における“音楽”の重要性
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『温泉むすめ』は、日本全国の温泉をモチーフにしたキャラクターが、全国の温泉地を盛り上げるべくアイドル活動を行い、歌と踊りで人々に“笑顔と癒し”を与えるメディアミックスプロジェクト。2016年11月よりプロジェクトがスタートし、当初は人気イラストレーターの書き下ろしによるキャラクターが次々と登場することで話題を集め、そこからそのキャラクターボイスを担当する声優がリアルライブやイベントといったアイドル活動を行うことで着実にその規模を拡大(12月5日現在、112人の絵師と112人の声優がキャラクターを担当している)。これまで有馬温泉、別府温泉、道後温泉といった温泉地とのコラボはもちろん、地方活性化に繋がるイベントやグッズを展開している。
また、音楽面でも第一弾のSPRiNGSを筆頭に個性豊かなグループが登場。12月25日には、新グループとしてOH YOU LADY?のシングル『レイニーボーイフレンド』、初のソロプロジェクト・大手町梨稟のシングル『Passionate Journey』、配信アルバム『Diversity』がリリースされる。
リアルサウンドでは、『温泉むすめ』の発起人であり、総合プロデューサーの橋本竜氏にインタビュー。『温泉むすめ』が始まった経緯、現在までの手応えや苦労を振り返りつつ、プロジェクトの中で一番プライオリティーが高いという楽曲や衣装制作、ライブにおけるこだわりについて語ってもらった。(編集部)
なぜ温泉を擬人化したのか?
ーー『温泉むすめ』は「地方活性クロスメディアプロジェクト」と銘打って2017年3月にプロジェクトを本格スタートさせましたが、二次元コンテンツと地域振興を結び付けた試みは近年よく見られるなか、『温泉むすめ』は特定の地域・都市ではなく全国各地の温泉地とコラボするユニークな取り組みを行われています。そもそもこのコンテンツを立ち上げたきっかけは?
橋本竜(以下、橋本):自分は福島県郡山市の出身なのですが、まず第一に震災の影響で来訪者が少なくなった地元に人を呼び戻したい気持ちがあったんです。そこで当時、何か良い手段はないかと考えていた時に、『ガールズ&パンツァー』という作品に出会って、アニメコンテンツに人を集める力があることを知りまして。その後、縁があってKADOKAWAに入社したのですが、そこでアニメ作品を担当するなかで『艦これ(艦隊これくしょん -艦これ-)』に出会い、擬人化のおもしろさにも気づいたんですね。仮にオリジナルのキャラクターコンテンツを作るとしたら0から創作するのは大変ですが、擬人化であればある程度の土台があります。そこで『ガールズ&パンツァー』のように地域に根付いたコンテンツと擬人化を組み合わせることで何かできないか、と思うようになったんです。
ーー当初は地元である福島の活性化をめざしていたものが、なぜ全国規模の展開に拡大したのでしょうか?
橋本:例えば『ガールズ&パンツァー』は大洗、『ラブライブ!サンシャイン!!』は沼津の地域活性のきっかけになりましたが、どちらも作品の舞台がたまたまそこだったとも言えます。しかし、日本には福島の他にも人の減少で困っている地方都市がたくさんあります。さらに2020年には東京オリンピックの開催を控えてインバウンド需要が加速しているなか、それなら日本全国に注目の範囲を広げてコンテンツの力で何かできないかと考えるうちに、全都道府県に存在する温泉の擬人化というアイデアを思いついたんです。温泉は日本ならではの文化ですし、調べてみると全国で3,000カ所の温泉地があるということだったので、「全国を網羅したら3,000キャラも作れるのでネタに困らない!」と思いまして(笑)。
ーー橋本さん自身に地域の活性化に対する強い想いがあったんですね。
橋本:自分は東京に出てきてから故郷に錦を飾りたいという思いは常に持ってますし、地元にいる時は周りから人を巻き込みたがる変な人と思われてたんですけど(笑)、そういう変わった人間こそが地域の良さを知らしめる宣伝広報的な役割を担うのがいい、という勝手な義務感のようなものを感じていまして。地方の方は人を呼び込むことに対してあまり慣れてないところがあるんです。例えば、良い旅館、良い食事、良い酒を用意すれば自然とお客さんが来てくれるという、受け身のところがあるんですね。それだけでは今の時代、お客さんは来てくれない。そこで我々が宣伝に使える素材とコンテンツを無償(ロイヤリティーフリー)で提供して、地域の方々が集客に繋がるきっかけとして活用していただければ、と思ったんです。
ーー『温泉むすめ』には2018年11月現在で112の各温泉地をモチーフにしたキャラクターがいますが、その各キャラすべてに別々のイラストレーターと声優を起用しているところも大きな特色です。要するに現時点で112人の絵師と112人の声優がこのコンテンツに関わっているわけですが、試みとしてユニークとはいえ費用や労力の面で相当大変なのでは?
橋本:たしかに始める前から何となく厳しい戦いになるだろうとは思っていました。ただ、『温泉むすめ』を他のコンテンツと差別化するために、よりたくさんの人を巻き込みたかったんですね。例えば、イラストレーターさんも声優さんも一人一人がSNSをやってらっしゃると思うので、その皆さんが『温泉むすめ』についての情報を告知することで、今なら合計で数千万人ものフォロワーに情報が拡散する可能性がありますし、もちろん先行投資だけでもかなりの費用がかかっていますが、それも後から必要になるプロモーション費用と考えればと思いまして。さらに弊社はキャスティング会社もグループに持っているので声優さんについてはそちらで対応できますし、イラストレーターさんの選定についても、イラストやシナリオの制作会社を持っているだけでなく、自分自身がコミケにも通ったりしてある程度の造詣はあったので、自分がいいなあと思った方に直接コンタクトをとって一人一人にキャラクターデザインをお願いしたんです。そうやって最初にコンテンツの基礎をしっかり作っておけば後々楽になりますし、コンテンツを立ち上げる時から、長く愛されるコンテンツを運営するためにはこの部分はマストだと思っていました。
ーーそういう意味ではある種の勝算があったんでしょうか。
橋本:勝算は正直なかったです。ベンチャーキャピタルを何十社と回って、その度にコンテンツだけに頼るビジネスモデルは博打がすぎると酷評されて。最終的には運良く個人のエンジェル投資家やベンチャーキャピタルに出資いただいたのですが、もし初期投資の段階で資金が集まらなかったら解散していたと思います。そこは「温泉を使って地域活性化を行う」という『温泉むすめ』のテーマ自体が投資家の皆さんに共感いただけたところもあったでしょうし、海外で日本のアニメや漫画などのコンテンツの人気が高いという時代性もあって、コンテンツビジネスの将来性に期待していただけたんだと思います。
地域の人との連携で長く続くコンテンツに
ーー『温泉むすめ』のプロジェクトが発足してから約2年になりますが、現時点での手応えはいかがですか?
橋本:立ち上げ当初は東京オリンピックが開催される2020年までに、4年ほどかけて何とか形にしようという計画だったんです。『ガールズ&パンツァー』の成功例を見てもわかりますが、コンテンツで地域活性を行うには地域の皆さんの協力が不可欠だと思いますが、地域にコンテンツのことを理解して受け入れてもらうためには、やはり数年単位はかかると思うんです。
ーーというのは?
橋本:自分はKADOKAWA時代に本の情報誌である『ダ・ヴィンチ』編集部にいたんですが、その時にアニメ化されたことで舞台となった地方にたくさんの人が聖地巡礼に訪れたんですが、それを受けて地元の人たちがキャラクターのグッズやポップを作っていたら、アニメの放送が終わった瞬間に元の閑古鳥の状態に戻って寂しい思いをした、という話を取材で聞いたことがありまして。であれば、コンテンツ自体が一過性のものではなく、長く続くことが必要ですし、そのためには地元の人とコミュニケーションを取りながら一緒に作り上げなくてはならないし、時間も労力もかかると思ったんです。
ーー地方団体や企業サイドから好反応を得られている一方で、『温泉むすめ』というコンテンツ自体のファンやお客さんからの反響はいかかでしょう?
橋本:『温泉むすめ』は20代から30代の若い方々がファン層の中心なのですが、その世代の中には温泉に行ったことのない人が結構いらっしゃるんですね。それが声優さんを入り口に『温泉むすめ』のコンセプトを知って、温泉地に行ってみようと思われる方が増えていることを実感していまして。SNSを見てると毎週「今日は〇〇温泉に行ってきた!」と聖地巡礼されてる方がとても多いんです。
ーー『温泉むすめ』というコンテンツを通じて、温泉や旅の魅力に気づくわけですね。
橋本:最初は「若い人の旅離れをどうするか?」という課題もありましたが、そこは『ポケモンGO』のブームが背中を押してくれたところもありまして。ああいう形のお出かけが前提のゲームが流行るのであれば、スマホ世代の人もきっかけがあれば出かけてくれると思ったんです。温泉の良さというのは、入浴すれば絶対にわかるものです。だから、今では温泉に入りたいから『温泉むすめ』のイベントに行ってる、というふうに目的が逆になってきている方もいるようなんです。さらにはファンの方が地元の方とコミュニケーションをとったり、自発的に動かれてることも多くて、そういう意味で温泉むすめがきっかけとなった輪が広がってますし、キャラクターが全国にいることでいろんな接点をコンテンツを通して作れてると思います。
『温泉むすめ』独自の音楽の強み
ーーそんな『温泉むすめ』において、音楽はどういう位置づけにあるものなのでしょうか?
橋本:やはり出発点として『ラブライブ!』や『THE IDOLM@STER』のようなアイドルコンテンツをめざしていたので、プライオリティーで言えば最上位に置いています。『温泉むすめ』は人間ではなくて温泉の神様という設定で、その最上級神であるスクナヒコ(CV:水樹奈々)から「温泉と同じように人々の心を癒して沸かせること」というミッションを言い渡されて地方を盛り上げる物語なので、特に人を沸かせるライブは重要な要素だと考えています。ですので初期投資の面でも、実はキャラクターよりも音楽やライブのほうに費用をかけたんですよ。それと広い視野で考えると音楽は国境を越えるものだと思うんです。『温泉むすめ』では和楽器を使った曲を多く作ってますが、幅広いジャンルの楽曲を制作しつつも、ベースの“和”の部分はなくさずにいることで、外国の方が音を聴いただけで日本や『温泉むすめ』の良さを感じてもらえるよう、海外市場も視野に入れて作ってきた部分もあります。
ーーいわゆる2.5次元系のアイドルコンテンツは多様化を極めていますが、その中で支持を得るために工夫されてることは?
橋本:先ほどお話したように『温泉むすめ』はライブにとことんこだわっていまして、衣装はAKBグループの衣装を全て制作されているオサレカンパニーさん、ダンスもいろんなアイドルの振り付けをされてる西田プロジェクトさんに、オーダーの段階から細かいコンセプトを伝えて作っていただいてるんです。楽曲が良くても衣装やダンスのクオリティーが低いと観ている人は作品に共感できないと思っていまして。ダンスに関しても声優さんの事務所からは「あまりフォーメーションは動かないようにしてください」とお願いされるのですが、「ライブのクオリティーを高めるためにここまでしたい」というお話をさせていただいて、最終的には納得していただくこともありまして。
ーーとにかくお客さんに良いものを見せたいと。
橋本:はい。例えばSPRiNGSの「純情-SAKURA-」という曲はフォーメーションや立ち位置の変化が複雑で、一般的なアイドルさんの曲よりも難しい曲かもしれません。声優さんにここまで高いレベルのパフォーマンスを求めるコンテンツはあまりないと思いますし、目に見えるところすべてに対してクオリティーを妥協しないところが『温泉むすめ』の一番の工夫かもしれないですね。
ーーライブと言えば、今年の夏に開催された音楽フェス『SUMMER SONIC 2018』に『温泉むすめ』からSPRiNGSとpetit corollaが出演して話題になりました。
橋本:実は昨年末に行った『温泉むすめ』の2ndライブ(『NOW ON☆SENSATION!! Vol.2” 〜聖夜にワッチョイナ!!〜』)をサマソニ関係者がご覧になられて、そこでお声がけいただいたんですよ。2日連続で出演させていただきましたが、反応も上々でした。やはり皆さんが言われるのは「声優のライブとは思えない」ということなんですが、声優さんは歌えるし、踊れるし、トークもできて、さらに役にもなりきれる。そういう新しい魅力と可能性が声優さんにはあると思うんですね。
ーーSPRiNGSは『温泉むすめ』の中心的グループですが、彼女たちの音楽的なコンセプトはどういったものでしょうか?
橋本:SPRiNGSは『温泉むすめ』で一番最初に立ち上げたグループなので、まず王道のアイドルソングという軸はありながら、「ジャンルに縛られない」ということは決めていました。それと一般的なコンテンツの場合は、まず作品があって、それに紐づく楽曲を声優ユニットに歌わせる流れが普通だと思います。でも我々はまず曲が先行して、その後から作品がついてくる流れを想定していたので、楽曲ごとにアプローチを試しながらお客さんの反応を見て作っていった部分はあるかもしれません。そういう意味では、特に初期の作品には試行錯誤の歴史がありますし、ひとつひとつの楽曲が実験という面が大きかったかもしれないですね。
ーー一曲一曲が今後の指標になるような作り方というか。その「青春サイダー」を含む1stミニアルバム『ユノハナプロローグ』に続き、2ndミニアルバム『追憶カレイドスコープ』ではメンバーを3人ずつに分けたグループ内ユニット、しゃんぷーはっと、雪月花、SPicAの3組による楽曲も登場しました。
橋本:それらのユニットは声優さん自身がそれぞれ持ってるポテンシャルを考えつつ、キャラクターソングの枠に捉われないものを作ろうと思って考えました。特に雪月花の「SILENT VOICES」は3声のハーモニーを一人ずつパートを分けて歌ってもらったんですが、その手法は後のAKATSUKIの楽曲にも活かされていまして。“しゃんぷーはっと”も「ひたすらかわいいを目指したらどうなるか?」というテーマで作り、それは後にpetit corollaに進化しましたし、ライブ会場を盛り上げることに特化して作ったのがSPicAの「おはようジャポニカ」なんです。可能性の塊であるSPRiNGSで大きな実験を行うなかで、さらに細かな実験をユニット曲で行って、そこで「これはいける!」と確信を持てた部分が次の曲に繋がっていたりします。
ーーさらにその後、SPRiNGSのライバルグループとして、AKATSUKI、LUSH STAR☆、Adhara、petit corollaの4組が次々とCDデビューしました。
橋本:最近よく「多様性」というキーワードを使っているのですが、立ち上げの段階で間口を広げてコンタクトポイントを増やしたいと思った時に、せっかく112人のキャラクターがいるのに音楽活動をしてるのがSPRiNGSだけだとファン的にも物足りなさを感じてしまう。そもそも全部で3,000の温泉むすめがいる設定なので、最初の設計の段階からいろんなグループが自然と生まれるストーリーだったんです。今後は作品の中でアイドルグランプリというトーナメントを開催する予定なのですが、そこでの対戦相手が必要になりますし、お互いを認め合うライバルと切磋琢磨するという意味でも、SPRiNGSの最強のライバルグループとしてAKATSUKIがいて、さらにAdharaやLUSH STAR☆、petit corollaなどがいるということですね。
ーーそれがコンテンツ自体の広がりにも繋がりますし。
橋本:そうですね。それこそAdharaの楽曲を入り口に『温泉むすめ』のファンになってくださった方もたくさんいらっしゃって。そういう意味では声優やコンテンツの部分だけではなく、音楽や楽曲の多様性を武器に幅広くファンを取り込んでいきたいですし、それらひとつひとつがファンを取り込めるきっかけになればと思うんですね。
なおかつ、そうすることで他のコンテンツが追随できないところまで広げていくのが我々の目的でもあるので、点ではなく面で攻める戦略は間違っていないと信じたいと思っています。
自主レーベルならではのスピード感
ーーそして今年、『温泉むすめ』は新レーベルの<Jewelry Box Records>を立ち上げました。ここにきて自主レーベルを発足した理由は?
橋本:メジャーレーベルにはメジャーの良さがあると思うんですが、いろんなことに素早く対応するためには小回りの利く自主レーベルがよいんじゃないかということで、新レーベルを立ち上げたんです。
ーーサブスクリプションサービスや配信が主流になりつつある今の時代に即した部分もあるかもしれませんね。
橋本:そうだと思います。先日『温泉むすめ新聞』(『温泉むすめ』とスポーツ報知によるコラボ企画)にも書かせていただきましたが、道後温泉の観光親善大使に内定したのが今年の7月下旬ごろだったんですね。その時に就任を記念した新曲を作りたいと思って、札幌イベント(8月5日に開催された『SPECIAL YUKEMURI FESTA in 札幌』)で急遽発表したんですよ。そういう動きは今の体制だからできることだと思いますし、道後温泉の方々にもすごく喜んでいただいたんですね。
ーーこの12月には同レーベルからの第1弾リリースとして、『温泉むすめ』初のソロプロジェクトとなる大手町梨稟(CV:楠木ともり)がシングル『Passionate Journey』でデビューします。これまでグループ展開を行ってきたなか、今回はなぜソロプロジェクトなのでしょうか?
橋本:理由はいくつかありますが、温泉むすめたちが競い合う「アイドルグランプリ」を行うにあたって「私はソロで頂点をめざす!」という子がいてもおもしろいと思ったんです。その象徴が大手町梨稟というキャラクターだったんですね。
大手町梨稟は東京で唯一の『温泉むすめ』です。温泉というと地方のイメージが強いですが、その中で東京の『温泉むすめ』に何をさせるべきかを考えた時に、今回の「Passionate Journey」という楽曲にも表れているように彼女は旅好きという設定なので、彼女が旅をして日本各地の温泉地と温泉むすめに触れあうことで、その良さを「東京が一番だけど、地方も悪くないわね」とツンデレ気味に紹介する……いわば第三者視点でスピーカー代わりの役割を担ってくれたらと思ったんです。そこで実際に東京生まれ東京育ちの楠木さんを選んだという理由もありますし、ソロの方が各地域でライブも行いやすいと思いまして。
これは先ほどお話した実験の側面も強くて、彼女がソロでどこまでライブを盛り上げることができるのか、他のグループと一緒にステージに立った時にどんなシナジーが生まれるのか、ということを楠木さんのポテンシャルに賭けたところはありますね。ただ、彼女はその期待に応えてくれると思っています。
ーーお話を聞いていると、キャラクターの設定と担当声優さん自身の特性を考えた上で、しっかりと計画を練っているんですね。
橋本:『温泉むすめ』の一人一人が地域を代表する存在となるので、それぞれのキャラをどう絡めていけばおもしろくなるかは常に考えてますね。それと我々がキャラクターを作った時に「全然地元っぽくない」と言われてしまうと、プロジェクト自体が潰えてしまうので、「なぜこのようなキャラクターなんですか?」と聞かれた時にしっかりと説明できるような背景と理由は全てのキャラクターに設定しています。
ーーそして大手町梨稟と同時にデビューするのが、いわきあろは(CV:大坪由佳)、万座千斗星(CV:井澤美香子)、定山渓泉美(CV:小野早稀)の3人による新ユニット、OH YOU LADY?です。このユニットは「昭和」というコンセプトを掲げていますね。
橋本:はい。OH YOU LADY?は、まず「温泉むすめたちに何をさせたいか?」というところから出発してるんです。温泉むすめコンテンツに対する反応として、若い方には受け入れていただけるんですが、ご年配の方にはどういうコンテンツなのかを理解していただけないことが多いんです。なおかつ、地方にはライブのできる会場がない場合もありまして、その場合はカラオケ設備しかない温泉旅館の宴会場でライブや興行を行わなくてはならない可能性がある。そういう時に、例えばおニャン子クラブのような昔のアイドル風のコンセプトの曲であれば、年配の方にも聴き馴染みがあって受け入れられるんじゃないかと思ったんです。なので「昭和歌謡」を歌うことでより地域の方々に温泉むすめコンテンツを理解していただければ、ということで結成したのがOH YOU LADY?なんです。
ーー実際にデビューシングルの表題曲「レイニーボーイフレンド」は、80年代のアイドル歌謡曲のような懐かしさがありますね。
橋本:そしてその延長にあるのが、カップリング曲の「ぽかぽか音頭」なんです。例えキャラクターソングという概念がわからない方であっても、「音頭」であれば全国共通でお祭りの時に流れるものなので、日本人的には聴けば高揚するものがあるでしょうし、踊りも簡単なので、ライブでいろんな人を巻き込んで盛り上がれると思ったんです。それが今の『温泉むすめ』に一番必要とされる部分だと考えたんです。彼女たちにはこれからカバー曲も歌ってもらう予定で、例えばキャンディーズや小泉今日子さんの曲を地域で歌えば懐かしさからコンテンツを受け入れてもらえると思うんです。
ーーたしかに「音頭」は温泉地の雰囲気にもぴったりはまりそうです。
橋本:今は我々が自主的に各地でイベントを開催していますが、将来的には地方の方々から呼んでいただくことが目的です。実際に地方のお祭りに温泉むすめたちが呼ばれて、それを目当てにファンも集まって、地元の音頭がかかるなかで「ぽかぽか音頭」もかけていただいて、老若男女がみんな一緒に盛り上がればいいなあと思ってます。
2019年の新展開は?
ーーそして12月22日には4thライブ『温泉むすめ 4th LIVE“ NOW ON☆SENSATION!! ” 〜聖夜にワッチョイナ Vol.2〜』の開催を控えています。今回はSPRiNGS、AKATSUKI、大手町梨稟、OH YOU LADY?、ゆのはな選抜が出演しますが、どんな内容になるのでしょうか?
橋本:これまでのライブはあくまで声優が歌って踊る部分が強かったですが、今回はもう少しキャラクターに特化したライブ、さもキャラクターがライブをしてるような世界観に浸れるようにもう一歩進んだ形にしようと思っています。こないだ神戸で行ったイベント(『SPECIAL YUKEMURI FESTA in KOBE Vol.3』)でそういう実験をしたんです。そのライブには、北兵庫の温泉むすめと、南兵庫とゆかりのある台湾の温泉むすめの4人が出演したのですが、北の城崎温泉の温泉むすめが南の有馬温泉の温泉むすめに勝手にライバル心を抱いてるという物語上の設定があるので、それを舞台で歌の合間に寸劇のような形で行ったところ、評判がすごく良かったんです。完全な形ではやりきれないかもしれないですけど、今回もそういう取り組みができればと思っています。
ーー声優コンテンツによるライブとして、新しいフェーズに突入しそうですね。
橋本:それと今回は「ゆのはな選抜」という選抜メンバーによる5人組も出演します。今までの「ゆのはな選抜」は求められたらその場で作る即席グループという役割が強かったのですが、今後はいろんな地域でイベントを求められるケースが増えると思いますので、選抜にもかなり力を入れています。今回のライブでは選抜用の新曲も初披露します。個人的には歌詞のイメージから楽曲のコンセプトまで細かく作りこむぐらい、今まででいちばん力を入れた曲ですので、ぜひ4thライブではその曲を聴いて皆さんにエモくなってもらいたいです(笑)。
ーーそれはどんな曲になっているのか気になるところです。
橋本:SPRiNGSの「未来イマジネーション!」は「アイドルソングのド王道を作ろう!」という最初の実験曲だったのですが、今年の札幌のイベントで披露した「未来の彼方」はそのアンサーソングと自分の中では捉えていまして。今回の新曲は「未来」シリーズの派生として、「感謝」をテーマに作った曲なんです。応援してくださってるファンやこれまで支えてきてくれた温泉地の方々、キャスト、スタッフ、この2年に関わっていただいた全ての人に感謝の気持ちを示したかったんです。ずっと応援してくださってるファンの方が聴くといろんな思いがオーバーラップする曲になっていると思いますので、ぜひご期待していただければと思います。
ーー『温泉むすめ』としては2019年以降、どんな展開を予定していますか?
橋本:我々は地方を盛り上げることが目的なので、来年も変わらず各地でイベントを開催していきますし、それを続けるためには、その場所をファンもファン以外の方も楽しめるような仕掛けを常に提案していきたいと思っています。ファンの方は足を運ぶだけでも大変かと思いますが、もちろんイベントを全通する必要はまったくないので、来られそうなイベントだけ来てくださればと思います。もちろん、ライブだけでなくその前後で温泉地をしっかりと楽しんでいただければ嬉しいです。
それと12月25日に配信予定のアルバムのタイトルが『Diversity』ですので、その「多様性」こそが『温泉むすめ』の最大の魅力だと考えているので、その部分をもっと広げていくことが2019年のもうひとつのテーマですね。
現在「写真部」「新聞部」といった形で動き始めている温泉むすめの部活動も、もっと広げられたらと思いますし、今はコンテンツビジネスの新しい枠組みを見出すのが難しいなかで、その可能性を広く模索している段階なんです。そのテーマのひとつが「地方活性化」ですが、それに加えて「日本文化の啓蒙と発展」まで進めていきたいですし、それとキャラクターコンテンツが組み合わさった時に何が出来るのか。いろんなカルチャーを取り入れていくのも日本の良さですし、世界から見て「日本のコンテンツはやっぱりクールでおもしろい!」と思ってもらえるように、『温泉むすめ』がそういうミックスカルチャーを体現できるような未来のコンテンツビジネスのひとつの指針になれたらと思います。
(取材・文=流星さとる)
■ライブ情報
『温泉むすめ 4th LIVE“ NOW ON☆SENSATION!! ” 〜聖夜にワッチョイナ Vol.2〜』
2018年12月22日(土)
昼の部:OPEN 13:30 START 14:30
夜の部:OPEN 18:00 START 19:00
<出演>
SPRiNGS
草津 結衣奈(CV:高田 憂希)
箱根 彩耶(CV:長江 里加)
秋保 那菜子(CV:高橋 花林)
有馬 輪花(CV:本宮 佳奈)
道後 泉海(CV:篠田 みなみ)
登別 綾瀬(CV:日岡 なつみ)
下呂 美月(CV:佐伯 伊織)
有馬 楓花(CV:桑原 由気)
奏・バーデン・由布院(CV:和多田 美咲)
AKATSUKI
鬼怒川 日向(CV:富田 美憂)
玉造 彗(CV:田澤 茉純)
別府 環綺(CV:岩橋 由佳)
ソロプロジェクト 第一弾
大手町 梨稟 (CV:楠木 ともり)
OH YOU LADY?
いわき あろは(CV:大坪 由佳)
万座 千斗星(CV:井澤 美香子)
定山渓 泉美(CV:小野 早稀)
ゆのはな選抜
伊香保葉凪(CV:茜屋日海夏)
阿蘇ほむら(CV:髙橋麻里)
下田莉華(CV:南早紀)
南房総日由美(CV:徳井青空)
奥津かがみ(CV:久保田未夢)
特別ゲスト
ゆもみちゃん(草津温泉観光大使)
<会場>
カルッツかわさき 大ホール
〒210-0011
神奈川県川崎市川崎区富士見1-1-4
TEL:044-222-5211
チケット料金:7,200円(税込)※全席指定
・一般販売
11月11日(日)10:00〜
取り扱い:楽天チケット、イープラス、チケットぴあ、ローソンチケット
■リリース情報
大手町 梨稟『Passionate Journey』
12月25日(火)リリース
12月22日(土)4thライブにて限定パッケージを先行発売
<収録内容>
「Passionate Journey」
歌:大手町 梨稟(CV:楠木ともり)
作詞:畑亜貴 作曲:松本隆宏、緒方友美、yamayama
編曲:松本隆宏、yamayama
Guitar:yamayama Bass:島田悠生
Directed by 塩原奈美子-Namy*-(Numéro.8)
「願いキラキラきらり」
歌:大手町 梨稟(CV:楠木ともり)
作詞:畑亜貴 作編曲:光増ハジメ(FirstCall)
All Other Instruments & Programming:光増ハジメ(FirstCall)
Directed by 森田和樹(FirstCall)
OH YOU LADY?『レイニーボーイフレンド』
12月25日(火)リリース
12月22日(土)4thライブにて限定パッケージを先行発売
「レイニーボーイフレンド」
歌:OH YOU LADY? いわき あろは(CV:大坪 由佳)、万座 千斗星(CV:井澤 美香子)、定山渓 泉美(CV:小野 早稀)
作詞:Maria Okada 作曲:mattsbox、ABASS、D.Yamamori 編曲:ABASS、D.Yamamori
All Instruments & Programming:ABASS、D.Yamamori
「ぽかぽか音頭」
作詞:Maria Okada 作曲:mattsbox、ABASS、D.Yamamori 編曲:ABASS、D.Yamamori
All Instruments & Programming:ABASS、D.Yamamori
配信アルバム『Diversity』
12月25日(火)配信
M 1 情熱のパラディソ 歌:AKATSUKI
鬼怒川 日向(CV:富田 美憂)、玉造 彗(CV:田澤 茉純)、別府 環綺(CV:岩橋 由佳)
M 2 うぇるかむ to ONSEN!! 歌:道後 泉海(CV:篠田 みなみ)
M 3 未来の彼方 歌:草津 結衣奈(CV:高田 憂希)、コーラス:尖石 内湾(CV:安齋 由香里)
M 4 Passionate Journey 歌:大手町 梨稟(CV:楠木 ともり)
M 5 願いキラキラきらり 歌:大手町 梨稟(CV:楠木 ともり)
M 6 レイニーボーイフレンド 歌:OH YOU LADY?
いわき あろは(CV:大坪 由佳)、万座 千斗星(CV:井澤 美香子)、定山渓 泉美(CV:小野 早稀)
M 7 ぽかぽか音頭 / OH YOU LADY?
いわき あろは(CV:大坪 由佳)、万座 千斗星(CV:井澤 美香子)、
定山渓 泉美(CV:小野 早稀)
M 8 情熱のパラディソ(Instrumental)
M 9 うぇるかむto ONSEN!!(Instrumental)
M10 未来の彼方(Instrumental)
M11 Passionate Journey (Instrumental)
M12 願いキラキラきらり(Instrumental)
M13 レイニーボーイフレンド(Instrumental)
M14 ぽかぽか音頭(Instrumental)
※「情熱のパラディソ」「うぇるかむ to ONSEN!!」 「未来の彼方」のみ12月15日(土)に先行配信
■イベント情報
大手町梨稟シングルCD発売イベント
2018年1月12日(土)
出演:楠木 ともり(大手町 梨稟 役)
12:00〜 とらのあな秋葉原店C 4F イベントスペース
【内容】トーク+特典お渡し会
15:00〜 HMVエソラ池袋
【内容】トーク+特典お渡し会
18:00〜 SHIBUYA TSUTAYA
【内容】特典お渡し会
詳細は各店舗のPOP、ホームページ等でご確認ください。
OH YOU LADY? シングルCD発売イベント決定!
1月19日(土)
12:00〜とらのあな秋葉原店C 4F イベントスペース
15:00〜とらのあな秋葉原店C 4F イベントスペース
【内容】トーク+特典お渡し会
18:00〜 HMVエソラ池袋
【内容】トーク+特典お渡し会
■番組情報
『咲かせるよっ!みんなの湯の花!全部魅せます!温泉むすめ』
Abema TV アニメライブチャンネルにてオンエア
放送日時:2019年2月11日(月・祝)18:00〜19:00
出演:
<SPRiNGS>草津 結衣奈(CV:高田 憂希)、箱根 彩耶(CV:長江 里加)、秋保 那菜子(CV:高橋 花林)、有馬 輪花(CV:本宮 佳奈)、道後 泉海(CV:篠田 みなみ)、登別 綾瀬(CV:日岡 なつみ)、下呂 美月(CV:佐伯 伊織)、有馬 楓花(CV:桑原 由気)、奏・バーデン・由布院(CV:和多田 美咲)
<AKATSUKI>鬼怒川 日向(CV:富田 美憂)、玉造 彗(CV:田澤 茉純)、別府 環綺(CV:岩橋 由佳)
<ソロプロジェクト>大手町 梨稟 (CV:楠木 ともり)
<OH YOU LADY?>いわき あろは(CV:大坪 由佳)、万座 千斗星(CV:井澤 美香子)、定山渓 泉美(CV:小野 早稀)
<ゆのはな選抜>伊香保 葉凪(CV:茜屋 日海夏)、阿蘇 ほむら(CV:髙橋 麻里)、下田 莉華(CV:南 早紀)、南房総 日由美(CV:徳井 青空)、奥津 かがみ(CV:久保田 未夢)
<特別ゲスト>ゆもみちゃん(草津温泉観光大使)