「すずめの戸締まり」ベルリン映画祭で上映、新海誠が現地に立ち「信じられない」
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第73回ベルリン国際映画祭の様子。左から原菜乃華、草太(すずめの椅子)、新海誠。
「すずめの戸締まり」が第73回ベルリン国際映画祭で現地時間2月23日に上映され、監督の新海誠、声のキャストを務めた原菜乃華、プロデューサーの川村元気が参加した。
日本各地の廃墟を舞台に据えた「すずめの戸締まり」では、災いのもととなる“扉”を閉めていく旅をする少女・岩戸鈴芽(すずめ)の解放と成長が描かれた。記者会見で「今作で描きたかったことは?」と聞かれた新海は、「現代の日本を舞台にした冒険物語を作りたいと思いました。自然災害によって人が住めなくなってしまった場所、人口減少によって人がいなくなってしまった場所、そういう場所を旅する少女を描きたいと。そんな中ですずめがどこにたどり着くべきかと考えたときに、12年前に起きた東日本大震災が起きた場所で、すずめ自身が災害と向き合うお話にしたかったんです」と答える。
「『千と千尋の神隠し』以来、21年ぶりに日本のアニメーションが同映画祭のコンペティション部門にノミネートされました。この重要度はどのように受け止めているか?」という質問には、新海が「21年前のことはよく覚えています。ちょうど自分がアニメを作り始めた年でした。日本のアニメがそんなに遠くまで届くのだと教えられたので、今そういった場所に自分がいることが信じられないです」と回答。そして「12年前に起きた東日本大震災という出来事が未だに日本人の心の中に残っている、復興していないところもあるということを皆さんに知ってもらえる、とても貴重な経験になったと思う」と語った。
「君の名は。」「天気の子」で新海と組んできた川村は「新海誠という監督の才能を世界に知ってほしかった。『すずめの戸締まり』は、手描きとCGが融合している面白い作りになっています。監督自身が撮影処理もするというのは、新海監督ならでは」とコメント。また原が「声優に初挑戦させていただいたので、最初は右も左もわからないことだらけで、何をどうすればいいのかまったくわからなかったです。それを監督に相談したら『そのままで大丈夫』と。何度もテイクを重ねさせていただいて、納得いくまで挑戦させてもらいました」と述べると、新海は「初めての不安も含めて演じてもらいたいと思っていました。菜乃華さんの成長とすずめの成長がシンクロしていました」と当時を振り返る。
レッドカーペットに新海らが到着するとファンから歓声が上がった。原は赤い着物をまとい、劇中に出てくる草太(すずめの椅子)とともに登場。原は「草太さんも一緒です」、新海は「我々は(草太役の)松村北斗くんと一緒に行ってきます」と話して上映会場へ向かう。上映終了後は約3分におよぶ拍手が巻き起こり、新海は「この作品は12年前の東日本大震災をベースにしています。今でも故郷に帰れない人たちがたくさんいます」と言って震災にまつわる劇中シーンの説明をしつつ「どんなに大きな災害にあっても、人は笑いながら成長していきます。こうやってたくさんの方に笑いながら観てもらえたことが幸せでした」と観客へ語りかけた。
イベントをすべて終えた新海は「プレミア上映では、すごく笑いが起こっていました。日本とは違うところで笑いが起こるので勉強になりましたね。特に(謎の白い猫である)ダイジンが出てくるたびに笑う人が多かったですね。笑いながら、泣きながら観てくれていました」と述懐。原も「ベルリンの方々の反応がとてもよくて、たくさん元気をもらいました。ここまで来ることができたのも、本当にたくさんの人が観てくださった結果だと思います。観てくださった方たちに感謝していますし、新海監督やスタッフの方々にも感謝しています。世界中の方と感想を語り合えるような機会があったらいいなと思います」と胸の内を伝えた。
「すずめの戸締まり」は全国で上映中。
(c)2022 「すずめの戸締まり」製作委員会