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「アクターズ3」審査員はどう評価した?LiLiCo&よしひろまさみちの短評到着

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「アクターズ・ショート・フィルム3 ザ・ドキュメンタリー 映画はつねに新しい 完全密着1年間の記録」ビジュアル

高良健吾、玉木宏、土屋太鳳、中川大志、野村萬斎が監督として参加した「アクターズ・ショート・フィルム3」。このたび審査員を務めた映画コメンテーター・LiLiCoと、映画ライターのよしひろまさみちによる5作品の寸評コメントが公開された。

「アクターズ・ショート・フィルム」は、予算や撮影日数など同じ条件のもとで、5人の俳優が25分以内の短編映画を制作するWOWOWのプロジェクト。高良は東京を忙しく走り回るメッセンジャーの物語「CRANK-クランク-」、玉木はボクシングを題材にした異色のSF「COUNT 100」、土屋は戦争の記憶と家族の今を描く「Prelude~プレリュード~」、中川は田舎の小さな駅に取り残された3人の男子を描く「いつまで」、萬斎は「ハムレット」「山月記」をモチーフに孤独な青年の心象風景をえぐる「虎の洞窟」を監督した。

LiLiCoが「正直に言って、5本の中でメッセージとしても描き方としても一番好き」と評価するのは、玉木が林遣都を主演に迎えた「COUNT 100」。玉木が俳優として感じる恐怖や不安を詰め込んだ入れ替わりの物語を「すんごいファンタジーなのに、もっとも人間らしい物語」と紹介しつつ「映画は目で見て、脳の中で感じて、噛み砕いて心の中に入ると思うのですが、この作品は一本道でズドンと入ってきたような気持ちになりました。やられたな笑」と評した。

よしひろは萬斎が監督、窪田正孝が主演を務めた「虎の洞窟」について「到底、20分尺ではできようのない『ハムレット』を下敷きに、野村さんらしい狂言、舞台的な演出で、寄り切り勝ちといったところでしょうか」とコメント。社会に自分の居場所を見出せない男が、やがて虎になっていると気付く物語であり「特に主人公の一人芝居に任されたパートがほとんどの中、それにしれっと応えた窪田正孝さんの芝居は圧巻。彼のポテンシャルの高さを証明した作品になったと思います」とつづっている。

「アクターズ・ショート・フィルム3」はWOWOWオンデマンドで配信中。LiLiCoとよしひろによる寸評の全文は下記の通り。各作品のティザー映像もあわせて掲載している。なお明日3月4日21時30分からはプロジェクトの裏側に完全密着したドキュメンタリー番組がWOWOWで放送・配信される。

アクターズ・ショート・フィルム3 ザ・ドキュメンタリー 映画はつねに新しい 完全密着1年間の記録

WOWOWプライム、WOWOWオンデマンド 2023年3月4日(土)21:30~

高良健吾「CRANK」

LiLiCo 寸評

哲学的でもあり、夢に満ちていて、私は彼の作風が好きです。多分彼は一回見てすぐに分かるような作品は作らない。だから考えさせてくれる。
例えば、自転車とか普通はあんなに長く撮らない。ちょっと漕いでいれば分かるから。ここからここまで行ったんだなって。「ミッションインポッシブル」、どうやって移動した?ってなりますよね。
でもこの作品は、その後ろ姿だったり、漕いでいる姿勢で、人生が見える。移動を長く回すことによって、長く描くことによって、主人公と共に旅をして、主人公の心情、どうやって生きてきたかを感じ取れるんです。

よしひろまさみち 寸評

タイトル通り、人生のクランクに入り込んだ(もしくはクランクに入っていることすら気づいていない)バイクメッセンジャーの不穏な惑い。一見ハッピーな雰囲気にも感じられるものの、
観終わった後でちょっとしたひっかかりがある不穏さを醸し出しており、その空気づくりはお見事。高良さん自身の出演縛りが、まさか不倫会見とは思いませんでした。
そこが笑いのフックになっていたことも、緩急づけの演出として上手でした。

玉木宏「COUNT100」

LiLiCo 寸評

正直に言って、5本の中でメッセージとしても描き方としても一番好きです。
すんごいファンタジーなのに、もっとも人間らしい物語です。
「明日やればいい」が「違う!今だ!」に切り替えられる作品。ありがとう、玉木監督!みたいな。これを見た人にとって、パワー映画になってくれたらいいなと思います。ちょっと疲れたなと思った時に、「やばい!やばい!取られちゃう」となれるような。
普通、映画は目で見て、脳の中で感じて、噛み砕いて心の中に入ると思うのですが、この作品は一本道でズドンと入ってきたような気持ちになりました。やられたな笑。

よしひろまさみち 寸評

ボクシングを主軸にしたこと、トレーナー、アクション監修など、玉木さん自身が続けられていることをてんこ盛りにしたのは大正解。経験値がものをいうアクションの切れ味は抜群でした。
特に、ボディダブルのシーンはいったいどうやってるんだか、また林遣都さんのとてつもないアクションセンスを引き出したことは、この作品の宝物だと思います。
ただし、短編で100日間にも及ぶストーリーはちょっと盛り込みすぎ? ちょっと物語の時間を絞ったら言うことなしではないでしょうか。

土屋太鳳「Prelude」

LiLiCo 寸評

土屋太鳳と有村架純。この二人の映画、たくさん見てます。でも、全く見たことのない表情を見せる二人。
演技という言葉が当てはまらない。自然体で、目の奥も、今までと全然違います。
それはなぜでしょう? やりたいことだからなのか。無理しなくてもいい、誰かに言われたことを覚えて、やるのではなくて…。色々考えましたが、私はこの作品の二人の表情が大好きです。

よしひろまさみち 寸評

土屋さんがひごろ考えている問題意識が如実にわかる脚本に、彼女しかできない身体表現をプラスしたのは素晴らしい演出だと思います。回想劇のインサートと演出、時代設定、多言語構成など、
工夫を凝らしたところも非常にスマートで、初監督としては大合格かと。ただ、台詞による説明がちょっとだけ長過ぎるのは残念。そこを土屋さんらしくボディランゲージで伝えるという発想の転換があったら、
世界に打って出す作品になったと思います。

中川大志「いつまで」

LiLiCo 寸評

最初の10秒でこれ、なんか怖!これどうなるの?って。ホラーなのかミステリーなのか。でもそのあとのワチャワチャ感。それが凄く楽しくて、そして色々なことに花が咲くというお話。
久しぶりに会ったみんなで何かを話す、知らない内に時間が経ってしまう、これってとても良い日本の光景なんですよ。見ている人も少年少女に戻れる瞬間だと思うんです。
3人のこの時間軸と、観客を鷲掴みにするセンス、抜群ですね。早く中川監督と話がしたい。これ不思議なんですけど、ショートフィルムを作った人と話すると、なぜか距離感もショートなの。距離が近いんですよ、その監督も役者さんも。

よしひろまさみち 寸評

中川さんをはじめ、脚本、主要キャストがみな同世代ということが、逆に強みとして出た作品だと思います。冒頭のミステリー的なアプローチの編集は、観客を混乱させてしまうかも、ですが、
全編フレッシュ。短編映画は作り手の素がそのまま出てしまうもの、ということもふまえた上で作られたのでしょう。背伸びせず、今の中川さんにしか作れないものを形にしてくれた、と思います。
かといって稚拙な部分がどこにもないのは、さすが若きベテラン俳優。

野村萬斎「虎の洞窟」

LiLiCo 寸評

5本の中で、一番ショートフィルムらしい作品。そして描き方、日本のショートフィルムなんだなと。これを海外に出したら、みんなぶっ飛ぶと思います。
テーマは皆が目を向けようとしない悲しさ。色々な人がああいう風に思っている。もしかしたらこの映画を見ているあなたも…。自分を追い詰めて、自分じゃない人になってしまう。一回立ち止まろ…立ち止まって、本当に大切なものを見てみよう。
実は一番寄り添っていない作品かもしれない。でも、見方によっては癒してもくれる、何回も見たくなる、とても魔法のような作品。

よしひろまさみち 寸評

ほとばしるパイセン感に圧倒されました。到底、20分尺ではできようのない「ハムレット」を下敷きに、野村さんらしい狂言、舞台的な演出で、寄り切り勝ちといったところでしょうか。
特に主人公の一人芝居に任されたパートがほとんどの中、それにしれっと応えた窪田正孝さんの芝居は圧巻。彼のポテンシャルの高さを証明した作品になったと思います。
ただ、この作品だけ妙にゴージャスに見えてしまうのですが、本当に予算収まってます?