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Reolが松本で初の凱旋公演、“あの日に残して来た彼女”と向き合い変わる故郷の景色

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Reol(Photo by Loco Kinoshita)

Reolが昨日3月5日に長野・まつもと市民芸術館でツアー「Reol Oneman Live 2023 新式浪漫 Neo Nostalgia」の最終公演を行った。

全国9都市を巡った今回のツアーの終着地となった長野県松本市はReolの故郷。彼女が凱旋公演を行うのは今回が初とあって、会場には県内のみならず県外からも多くのファンが集まり、Reolにとっての記念すべき一夜を見届けた。

開演時刻を迎え、オープニングを飾る「secret trip」が鳴り響くまつもと市民芸術館。「帰って来ました、松本ー!」。感慨があふれ出るようなReolの叫びとともに、彼女の凱旋ライブは幕を開けた。ビビッドなオレンジの衣装をまとって舞台中央に設置されたステージに立つ彼女は、続く「drop pop candy」をダンサブルに歌い上げて客席の熱気を高めていく。「松本! Reol in the house!」とポーズを決めて鋭利なラップを叩きつけた「Nd60」を披露し終えたところで、客席をぐるりと見渡したReol。この日の会場は、かつてReolが「ブラスト!」の公演を観てステージに立つことに憧れを抱いた場所であること。そして、彼女が17歳のときに他界した演劇好きの父親との思い出の場所でもあること。特別な思いを胸にライブに臨んでいることをファンに伝えた彼女は「まさかこの景色をReolとして見られるとは……」と思いを語り「今日、凱旋できてとてもうれしいです!」と笑顔を見せた。

今ツアー「新式浪漫」のテーマは「追憶と進化」。1つの映画の回顧上映を想起させる流れで進行してゆくライブの随所には架空の映画の予告編映像なども差し込まれ、Reolの遊び心とこだわりを観る者に感じさせた。舞台上の景色も各ブロックごとにドラマチックに移り変わっていき、Reolがフリンジの揺れる角笠で顔を隠した純白衣装で登場したセクションの冒頭、「水底游歩道」で神秘的なムードを醸す彼女の立ち居振る舞いと空間を切り裂くようなボーカルがオーディエンスを惹き付ける。「真空オールドローズ」では、薔薇の花びら揺れ落ちる映像を背景にピアニカを吹き鳴らして楽曲を彩ったReol。まるで役を演じるように曲ごとに違った表情を見せる彼女の多彩な表現を、オーディエンスは熱い眼差しで見つめていた。

「第六感」では、4つのミラーボールが反射する光の粒が客席を忙しなく照らし出す中で「まだまだいけますか松本ー!」と叫んだReolが圧倒的なパワーボーカルで聴衆の体を揺らし、客席が揺れるほどの一体感を作り出す。短いインタールードを挟み、「SCORPION」でライブは後半へ。タイトなレザーのボディスーツに着替えたReolは、上下2段に分かれた“6つの部屋”の舞台セットの上層階から客席を見下ろし、手にしたピストルを放つアウトローな演出で場内を沸かせる。なお、この“6つの部屋”のセットは、彼女がかつて観た「ブラスト!」の舞台セットをオマージュしたもの。セットを自在に行き来するReolのエンターテイナーぶりは曲を重ねるごとに加速し、ジャジーなサウンドの「ROXY」ではトランペットソロで歓声を誘う場面も。そして「ここをライブハウスに変えてもいいですか!」という声とともになだれ込んだアッパーチューン「赤裸裸」ではスタンドマイクを逆さに持ち上げて熱いシャウトを響かせるパワフルなパフォーマンスでも客席の熱狂をぐっと引き上げていた。

アカペラの歌い出しから始まり、曲の終盤に響かせた圧倒的なロングトーンまで、ドラマチックな歌唱表現が聴衆の心を震わせた「秋映」を終えたところで、Reolは改めて故郷のステージに立つことへの思いをファンに吐露。東京での音楽活動の充実の裏で「ずっと何かから目を背けているような気持ちがどこかにあった」と話す彼女は、今回の凱旋公演を機に「“あの日”に残してきてしまった、自分の心のどこかにいる“彼女”に向き合う決心をした」ことをファンに伝えた。自身の生い立ち、父親への深い思い、父との別れをきっかけに見え方が変わってしまった故郷の景色について。自分の記憶と向き合い、時に声を震わせながら赤裸々に思いを伝えようとするReolの言葉を、ファンも真剣な眼差しで受け止める。「今日を境に、松本から見えるきれいなアルプスの山に対しての自分の中の景色が変わってくれたらいいなと思ったりしています」。そう望んだReolは「ここに戻ってくるのが1人じゃなくてよかった。人生には別れもあるけど出会いもあるんだって。これだけの皆さんとの出会いがあって、私にはこれだけの親友ができたんだと思うと……やってきたことは無駄じゃなかったんだって思えるようになりました。全部皆さんのおかげです」と、ファンへ向けてまっすぐに感謝を伝えた。

「ニュータイプトーキョー」では「生まれてきてよかったです。ありがとう!」と晴れやかな声色で伝えるReolの言葉に、客席にも笑顔が広がる。本編のクライマックス、「ゆーれいずみー」「煽げや尊し」のエネルギーに満ちた歌とダンスで狂騒の空間を作り出した彼女は「あのとき自分の欲求に正直に、音楽作ってよかった!」と充実感を口にして舞台袖へと姿を消した。

映画作品と同様にエンドロールが用意されていた今回のツアーではアンコールを行っていなかったReolだが、最終公演では鳴り止まない声援と拍手の音に導かれて再びステージへ。観客に居住地を尋ねた彼女は「長野県民、盛り上がりは君たちにかかっている!」と呼びかけ、松本の夏の風物詩「松本ぼんぼん」で地元民が踊る「松本ぼんぼん」のリミックスバージョンをファンにプレゼントした。ラップパートを交えたReol流の「松本ぼんぼん」にはダンサーのみならずスタッフチームも参加し、客席もステージ上も一緒に踊る、文字通りのお祭り騒ぎの光景が広がる。「(披露するのは)最初で最後かも」という、凱旋公演ならではのスペシャルなひとときを会場に集まった観客、スタッフと共有した彼女は「皆さんに出会えたことが私の人生の誇りです」と笑顔を浮かべ、再びの「煽げや尊し」で特別な一夜を締めくくった。

Reol「Reol Oneman Live 2023 新式浪漫 Neo Nostalgia」2023年3月5日 まつもと市民芸術館 セットリスト

01. introduction for Neo Nostalgia
02. secret trip
03. drop pop candy
04. Nd60
05. HYPE MODE
06. Boy
07. 水底游歩道
08. un, deux, trois
09. 真空オールドローズ
10. 平面鏡
11. 第六感
12. nil~極彩色
13. interlude for Neo Nostalgia
14. SCORPION
15. ウテナ
16. ダリ
17. ROXY
18. 赤裸裸
19. -orderly-
20. ハーメルン
21. 秋映
22. 1LDK
23. ニュータイプトーキョー
24. ゆーれいずみー
25. 煽げや尊し
<アンコール>
26. 松本ぼんぼん(Born Born Remix)
27. 煽げや尊し