新国立劇場、来シーズンにシェイクスピアの“問題劇”2作「歴史劇シリーズとは違った魅力を」
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「新国立劇場 2023 / 2024シーズン ラインアップ説明会」より。左から小川絵梨子、大野和士、吉田都。
「新国立劇場 2023 / 2024シーズン ラインアップ説明会」が本日3月7日に東京・新国立劇場で行われ、オペラ芸術監督の大野和士、舞踊芸術監督の吉田都、演劇芸術監督の小川絵梨子が登壇した。
会見冒頭では、新国立劇場の銭谷眞美理事長より、世界情勢の影響による物価高から劇場の財政状況が悪化したため、来シーズンの一部演目が延期となり、さらにオペラとバレエのチケット料金を値上げすることが発表された。銭谷理事長は「厳しい状況の説明から始まってしまいましたが、来シーズンも各芸術監督のもとで質の高い公演を行い、舞台芸術の素晴らしさを発信し続けてまいりたい」と言葉に力を込めた。
まずは小川が演劇部門のラインナップを説明。10・11月にはウィリアム・シェイクスピアの“問題劇”と呼ばれる2作品「尺には尺を」と「終わりよければすべてよし」が披露される。小川は、同劇場で2009年より上演が重ねられ、2020年に完結したシェイクスピアの歴史劇シリーズに触れつつ「歴史劇シリーズでは男性のキャラクターが中心となり物語が展開しましたが、この2作品はシェイクスピアの作品の中でも、女性の役割が大きく、社会的な問題やモラルの葛藤が物語の軸になっています。歴史劇シリーズとは違った魅力をお届けできるのでは」と述べる。さらに「2作品共、鵜山仁さんの演出、そして同キャストの出演で交互上演します。どちらが表、裏ということはありませんが、表裏一体のような作品になるのではないかと思います」と期待を言葉ににじませた。このほか、12月にはフルオーディション企画初となるミュージカル作品「東京ローズ」、4月から7月にかけては、10つの中編で構成され、小川と上村聡史がそれぞれ半分ずつ演出を手がける「デカローグ I~X」が上演される。なお会見後の懇親会で、小川は「デカローグ」を「ずっとやりたかった作品」と紹介。「二十代にこの作品に出会い、人間の根源的な迷いや弱さを等身大に見つめている、普遍的な作品だと心を打たれました。どの社会、どの時代であっても現代社会を生きる人にリンクしやすい物語ではないかと思っています」とその魅力を語った。
大野は、オペラ部門のラインナップについて「僕が若い頃に触れてきた演目が多い」と笑みを浮かべる。ダブルビルシリーズの第3弾で新制作となる「修道女アンジェリカ」と「子どもと魔法」について「今回のダブルビルのテーマは、“母と子の愛”。『修道女アンジェリカ』では子を亡くしたアンジェリカの物語、『子どもと魔法』ではお母さんに怒られてばかりの子どもが、夢の中で経験する出来事が描かれます」と説明。さらに「『修道女アンジェリカ』は、プッチーニ作品の中で最も“聖なる音楽”だと考えています。音楽の高みを感じさせてくれます」と、劇中の音楽を身体いっぱいで表現しつつ、その魅力を語った。オペラ部門には2演目のほか、大野の指揮、ピエール・オーディの演出による新制作「シモン・ボッカネグラ」、「こうもり」「エウゲニ・オネーギン」「ドン・パスクワーレ」「トリスタンとイゾルデ」「椿姫」「コジ・ファン・トゥッテ」「トスカ」といった演目が並んだ。
続く吉田は、バレエ部門の来シーズンを「立て直しのシーズン」と表現しつつ「新国立劇場バレエ団は今とても充実していますが、それはひとえに、バレエ団を育ててくれた歴代の芸術監督のおかげ。来シーズンは、歴代監督へのオマージュを込めたラインナップにしました」とコメント。「まずは、初代芸術監督の島田(廣)先生がレパートリー化された『ドン・キホーテ』で華やかにシーズンをスタートさせます。また来年2月には、前芸術監督の大原(永子)先生が新制作された『ホフマン物語』、4月には牧阿佐美先生が手がけられた『ラ・バヤデール』、6月にはデヴィッド・ビントレーさんが手がけられた『アラジン』をお目にかけます」と話す。なお、大原とビントレーは各演目で直接ダンサーたちに指導する。このことに吉田は「直接ご指導いただけるのは、ダンサーたちにとっても刺激になります」と笑顔を見せた。このほか、ダンサーが自ら振り付ける人気企画の新しい試みとして、若手ダンサーが古典バレエの主役級の役に挑戦する「DANCE to the Future: Young NBJ GALA」、毎年恒例の「くるみ割り人形」、森山開次による「新版・NINJA」の上演が予定されている。
質疑応答では、記者から公共劇場としての役割を問う質問が寄せられた。これに小川は「“公演をするだけの場所”ではないと捉えています」と返しつつ「公益に貢献できるような視点での運営を考えています。アウトリーチやエデュケーション面、創作の場所の提供など、公演以外の部分でも劇場の役割というものを果たし、『ここに来れば文化がある』と思ってもらえる場所にしていければ」と思いを述べた。
新国立劇場 2023 / 2024シーズン 演劇ラインアップ
シェイクスピア、ダークコメディ交互上演「尺には尺を」「終わりよければすべてよし」
2023年10月18日(水)~11月19日(日)
東京都 新国立劇場 中劇場
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:小田島雄志
演出:鵜山仁
出演:岡本健一、浦井健治、中嶋朋子、ソニン、立川三貴、吉村直、木下浩之、那須佐代子、勝部演之、小長谷勝彦、下総源太朗、清原達之、藤木久美子、川辺邦弘、亀田佳明、永田江里、内藤裕志
フルオーディション Vol.6「東京ローズ」
2023年12月7日(木)~24日(日)
東京都 新国立劇場 小劇場
台本・作詞:メリー・ユーン、キャラ・ボルドウィン
作曲:ウィリアム・パトリック・ハリソン
翻訳:小川絵梨子
演出:藤田俊太郎
音楽監督:深沢桂子
出演:飯野めぐみ、シルビア・グラブ、鈴木瑛美子、原田真絢、森加織、山本咲希
「デカローグ I~X」
2024年4~7月
東京都 新国立劇場 小劇場
原作:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ
翻訳:久山宏一
上演台本:須貝英
演出:小川絵梨子、上村聡史
「こつこつプロジェクト-ディベロップメント-」「こつこつプロジェクトStudio公演」
「ギャラリープロジェクト」
新国立劇場 2023 / 2024シーズン バレエ&ダンスラインアップ
新国立劇場バレエ団「ドン・キホーテ」
2023年10月20日(金)~29日(日)
新国立劇場 オペラパレス
振付:マリウス・プティパ、アレクサンドル・ゴルスキー
改訂振付:アレクセイ・ファジェーチェフ
音楽:レオン・ミンクス
新国立劇場バレエ団「DANCE to the Future: Young NBJ GALA」
2023年11月25日(土)・26日(日)
新国立劇場 中劇場
「ドゥエンデ」
振付:ナチョ・ドゥアト
音楽:クロード・ドビュッシー
新国立劇場バレエ団「くるみ割り人形」
2023年12月22日(金)~2024年1月8日(月・祝)
新国立劇場 オペラパレス
振付:ウェイン・イーグリング
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
新国立劇場バレエ団「ホフマン物語」
2024年2月23日(金・祝)~25日(日)
新国立劇場 オペラパレス
振付・台本:ピーター・ダレル
音楽:ジャック・オッフェンバック
編曲:ジョン・ランチベリー
新国立劇場バレエ団「ラ・バヤデール」
2024年4月27日(土)~5月5日(日・祝)
新国立劇場 オペラパレス
振付:マリウス・プティパ
演出・改訂振付:牧阿佐美
音楽:レオン・ミンクス
編曲:ジョン・ランチベリー
新国立劇場バレエ団「アラジン」
2024年6月14日(金)~23日(日)
新国立劇場 オペラパレス
振付:デヴィッド・ビントレー
音楽:カール・デイヴィス
森山開次「新版・NINJA」
2024年6月28日(金)~30日(日)
新国立劇場 中劇場
演出・振付・アートディレクション:森山開次
音楽:川瀬浩介
出演:森山開次 ほか
こどものためのバレエ劇場 2023「エデュケーショナル・プログラム『白鳥の湖』」
2023年7月28日(金)~30日(火)
新国立劇場 オペラパレス
オリジナル・プロダクション:バーミンガム・ロイヤル・バレエ
振付:マリウス・プティパ、レフ・イワーノフ、ピーター・ライト
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
新国立劇場 2023 / 2024シーズン オペララインアップ
「修道女アンジェリカ / 子どもと魔法」
2023年10月1日(日)~9日(月・祝)
新国立劇場 オペラパレス
作曲:「修道女アンジェリカ」ジャコモ・プッチーニ / 「子どもと魔法」モーリス・ラヴェル
台本:「修道女アンジェリカ」ジョヴァッキーノ・フォルツァーノ / 「子どもと魔法」シドニー=ガブリエル・コレット
指揮:沼尻竜典
演出:粟國淳
「シモン・ボッカネグラ」
2023年11月15日(水)~26日(日)
新国立劇場 オペラパレス
原作:アントニオ・ガルシア・グティエレス
作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ
台本:フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ、アッリーゴ・ボーイト(改訂版)
指揮:大野和士
演出:ピエール・オーディ
「こうもり」
2023年12月6日(水)~12日(火)
新国立劇場 オペラパレス
原作:アンリ・メイヤック、リュドヴィク・アレヴィ「大晦日の祝宴」ほか
作曲:ヨハン・シュトラウスII世
台本:カール・ハフナー、リヒャルト・ジュネー
指揮:パトリック・ハーン
演出:ハインツ・ツェドニク
「エウゲニ・オネーギン」
2024年1月24日(水)~2月3日(土)
新国立劇場 オペラパレス
原作:アレクサンドル・プーシキン
作曲:ピョートル・チャイコフスキー
台本:コンスタンチン・シロフスキー、ピョートル・チャイコフスキー
指揮:ヴァレンティン・ウリューピン
演出:ドミトリー・ベルトマン
「ドン・パスクワーレ」
2024年2月4日(日)~10日(土)
新国立劇場 オペラパレス
原作:ステファノ・パヴェージのオペラ「マルカントーニオ氏」のアンジェロ・アネッリの台本による
作曲:ガエターノ・ドニゼッティ
台本:ジョヴァンニ・ルッフィーニ、ガエターノ・ドニゼッティ
指揮:レナート・バルサドンナ
演出:ステファノ・ヴィツィオーリ
「トリスタンとイゾルデ」
2024年3月14日(木)~29日(金)
新国立劇場 オペラパレス
台本・作曲:リヒャルト・ワーグナー
指揮:大野和士
演出:デイヴィッド・マクヴィカー
「椿姫」
2024年5月16日(木)~29日(水)
新国立劇場 オペラパレス
原作:アレクサンドル・デュマ・フィス
作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ
台本:フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ
指揮:フランチェスコ・ランツィロッタ
演出・衣裳:ヴァンサン・プサール
「コジ・ファン・トゥッテ」
2024年5月30日(木)~6月4日(火)
新国立劇場 オペラパレス
作曲:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
台本:ロレンツォ・ダ・ポンテ
指揮:飯森範親
演出:ダミアーノ・ミキエレット
「トスカ」
2024年7月6日(土)~21日(日)
新国立劇場 オペラパレス
原作:ヴィクトリアン・サルドゥ
作曲:ジャコモ・プッチーニ
台本:ジュゼッペ・ジャコーザ、ルイージ・イッリカ
指揮:マウリツィオ・ペニーニ
演出:アントネッロ・マダウ=ディアツ
新国立劇場 高校生のためのオペラ鑑賞教室 2023「ラ・ボエーム」
2023年7月10日(月)~15日(土)
新国立劇場 オペラパレス
原作:アンリ・ミュルジェ
作曲:ジャコモ・プッチーニ
台本:ジュゼッペ・ジャコーザ、ルイージ・イッリカ
指揮:阪哲朗
演出:粟國淳
新国立劇場 高校生のためのオペラ鑑賞教室 2023「魔笛」
2023年10月26日(木)・27日(金)
京都府 ロームシアター京都 メインホール
作曲:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
台本:エマヌエル・シカネーダー
指揮:園田隆一郎
演出:ウィリアム・ケントリッジ
※初出時、見出しと本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。