「与話情浮名横櫛」片岡仁左衛門、坂東玉三郎に信頼寄せる「自然と役の気持ちで演じられる」
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片岡仁左衛門
歌舞伎座新開場十周年記念「鳳凰祭四月大歌舞伎」に出演する片岡仁左衛門の取材会が、昨日3月13日に東京・歌舞伎座で行われた。
仁左衛門が出演する「与話情浮名横櫛」は、昨年6月に上演予定だったもので、今回は中止公演に続き仁左衛門が与三郎、坂東玉三郎がお富を演じる。本作で仁左衛門と玉三郎がタッグを組むのは、2005年ぶりのこと。「(観客には)期待をしすぎないようにしていただきたいですね(笑)。『桜姫東文章』のときもそうだったのですが、昔のイメージで観られると困っちゃう」と茶目っ気たっぷりな笑みを浮かべつつ「玉三郎さんとはお互い気心が知れていますので、一緒にやっていると自然と役の気持ちで演じられて、ぎくしゃくしない。『与話情浮名横櫛』の与三郎とお富は、がっぷりと組むことがあまりありません。特に『赤間別荘』はのらりくらりとしている間に終わってしまうので(笑)、逆に気が合う人としかできない演目だと思います」と、言葉に玉三郎への信頼をにじませた。
本公演では、与三郎とお富が互いに一目惚れする「見染」、密会した2人の色模様と、密会が明るみに出たことで与三郎が赤間一家に責められる「赤間別荘」、そして2人の再会を描く「源氏店」が展開。「与話情浮名横櫛」は、「見染」「源氏店」の組み合わせでの上演が多いが、今回「赤間別荘」も入れた経緯を「『見染』と『源氏店』だけですと、歌舞伎を見慣れていないお客様には、『源氏店』に移ったときに別の狂言が始まったのかな?と思われる可能性がございます。『赤間別荘』が間に入ることで、物語がわかりやすくなる」と説明。「歌舞伎は娯楽ですので、始まる前にお勉強してから来ていただく、というものでもございません。難しいことを考えず、気持ちよく観ていただければ」と微笑む。
仁左衛門が初めて与三郎を演じたのは、1982年のこと。当時を「『見染』で手紙を読むところで、緊張で手が震えましたね。『源氏店』で花道から出ていくところも怖くてね。“歩く”という動作で頭がいっぱいでした。歌舞伎はまず、先輩方の演技の模写からはじまりますが、先輩方のお手本があまりに高いところにあると感じ、演じることが怖かった」と振り返る。さらに「与三郎は、江戸の二枚目の基本みたいなお役。助六も同様ですが、あれは勢いでババッといけるお役(笑)。でも与三郎は勢いというものではなく、花道の出もゆっくりと歩かなければいけない。そのときの姿が良かった、と言ってくださったお客様もいらっしゃったので、より一生懸命になりましたね。今は自然体で歩いています」と続けた。
役については「父(13世仁左衛門)から教わりました。与三郎は多くの型が残っておりますので、11代目市川團十郎のおじさまや、喜の字屋のおじさま(守田勘弥)といった多くの先輩方の映像を拝見し、参考にしております。与三郎は大店の息子ですので、大事なのはやはり品、そして若旦那らしい甘さと、アウトロー感の強さの兼ね合いですね」と語る。仁左衛門が、上演ごとに自身が過去に与三郎を演じたときの映像を振り返り、改善点を探っていると明かすと、記者が「今回、反省を生かして新たに変えられる場所は?」と質問。すると仁左衛門は「それをお話しすると、お客様にそこばかり観られてしまいますので、言えません(笑)」といたずらっぽい表情を浮かべた。「鳳凰祭四月大歌舞伎」は、4月2日から27日まで歌舞伎座にて。
歌舞伎座新開場十周年記念「鳳凰祭四月大歌舞伎」
2023年4月2日(日)~27日(木)
東京都 歌舞伎座
昼の部
「新・陰陽師 滝夜叉姫 蘆屋道満宙乗り相勤め申し候」
原作:夢枕獏「陰陽師 瀧夜叉姫」
監修:石川耕士
脚本・演出:市川猿之助
出演
安倍晴明:中村隼人
源博雅:市川染五郎
平将門 / 村上帝:坂東巳之助
滝夜叉姫 / 如月姫:中村壱太郎
興世王:尾上右近
桔梗の前:中村児太郎
俵藤太:中村福之助
大蛇丸:中村鷹之資
源八坊:市川青虎
琴吹の内侍:市川寿猿
式神密夜:市川笑三郎
式神密虫:市川笑也
藤原忠平:市川猿弥
藤原実頼:市川中車
三上山の山姥:市川門之助
蘆屋道満:市川猿之助
夜の部
一、「与話情浮名横櫛」
作:三世瀬川如皐
出演
与三郎:片岡仁左衛門
お富:坂東玉三郎
蝙蝠安:片岡市蔵
番頭藤八:片岡松之助
五行亭相生:市村橘太郎
海松杭の松五郎:中村吉之丞
お針女お岸:中村歌女之丞
赤間源左衛門:片岡亀蔵
鳶頭金五郎:河原崎権十郎
和泉屋多左衛門:市川左團次
二、「連獅子」
作:河竹黙阿弥
出演
狂言師右近後に親獅子の精:尾上松緑
狂言師左近後に仔獅子の精:尾上左近
僧蓮念:坂東亀蔵
僧遍念:河原崎権十郎