永沼伊久也、榎田貴斗、中村大輝、川並淳一……『まんぷく』を盛り上げる“塩軍団”俳優パート2
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『まんぷく』(NHK総合)第10週では、萬平(長谷川博己)や神部(瀬戸康史)らたちばな塩業の社員が進駐軍への反乱容疑で逮捕される。元々陸軍の倉庫だった建物に隠されていた手榴弾を社員の一部が見つけ、魚を獲るのに使ったことがきっかけで、あらぬ疑いをかけられたのだ。順調だった塩業、栄養食品・ダネイホン作りも滞り、一波乱な週となっている。
そんな中、たちばな塩業で働く“塩軍団”の男たちに注目したい。塩づくり組とダネイホン組で大げんかを巻き起こすなど、たちばな塩業のあり方を大きく変える存在となった15人の男たち。そんな彼らの中から、印象深いキャラクターをピックアップした。
参考:瀬戸康史、中尾明慶、毎熊克哉……『まんぷく』長谷川博己を支える“塩軍団”俳優に注目
●赤津裕次郎(永沼伊久也)
赤津裕次郎は仲間思いの青年だ。塩づくり組とダネイホン組の不和にいち早く気づき、福子(安藤サクラ)や鈴(松坂慶子)にそっと教える姿が印象的だった。ただし不和に気づくことはあってもマイペースな一面もあるようで、塩づくり組とダネイホン組の大げんかでは、1人だけ騒ぎを気にせず寝ていた。
永沼は公式インタビューにて「赤津はとにかく仲間が大好きです」と話している。喧嘩っ早い“塩軍団”の中でも比較的穏やかな性格の赤津からは、仲間への思いがひしひしと伝わってくる。特に、福子や鈴に仲間の不和を伝えたときの「奥様」「大奥様」というそっとした声の問いかけには驚いた。彼女らに仲間の不和を具体的に伝える前から、その声の響きだけで、仲間の不和をどうにかしたいという思いがしっかりと伝わってきたからだ。
また赤津演じる永沼の飄々とした演技や表情は、喧嘩っ早い“塩軍団”のギスギスとした雰囲気を穏やかにする。不和の合間合間に彼が登場するだけでその場の空気が和らぐため、ムードメーカーのような存在感を発揮している。
●倉永浩(榎田貴斗)
ダネイホン組で自身の真面目さを存分に発揮しているのが倉永浩だ。公式サイトでは、「新聞にまつわる仕事を学生時代にかじっており、常にメモをとっている。不器用ながら、仕事に対して責任感がある」と紹介されている倉永。ダネイホン作りの際は神部の後ろに立ち、メモを取りながら懸命に仕事に励む彼の姿が伺える。公式インタビューで榎田は「真面目で控えめな倉永がたちばな塩業での出会いや出来事を通じ、徐々に自分を主張していく姿を大切に演じています」と話す。榎田の演技に向かう姿勢は倉永の成長にそのまま活かされており、ダネイホンづくりの場では積極的に発言する彼の姿が見てとれる。倉永が見せるいきいきとした表情は、発明家である萬平とよく似た雰囲気を醸し出す。榎田の演技は倉永の真面目さを真摯に表現するものであり、見ていて気持ちのいい存在感だ。
●高木一夫(中村大輝)
中村大輝演じる高木一夫は、塩づくり組に溜まった鬱憤を象徴するキャラクターだ。ダネイホン組が萬平に贔屓される姿をよく思わず、不満を溜めていく。高木は兄貴肌で仲間からの信頼も厚いが、少々我が強いという一面とその頼りがいのある性格が、鬱憤を抱えた塩づくり組の結束を高めてしまったとも言える。進駐軍にたちばな塩業の社員が連行されることになったきっかけを生み出したのも高木だ。しかし高木は進駐軍に手榴弾の在処について問われた際、いち早く挙手し正直に話す姿には、彼の根底にある仲間を大切に思う気持ちが垣間見えた。
中村は連続テレビ小説に数多く出演している。1999年度下半期に放送された『あすか』では、あすかの幼馴染役として登場し、そのほか『ちりとてちん』(2007年度下半期)や『カーネーション』(2011年度下半期)、『ごちそうさん』(2013年度下半期)など名脇役として安定した存在感を発している。中村自身の役者としての経験が、高木という兄貴肌のキャラクター像にうまくマッチしており、進駐軍に連行されるきっかけを作ってしまった高木の姿に深みを感じる。
●佐久間春男(川並淳一)
たちばな塩業で最年長の社員の佐久間春男。塩づくり組とダネイホン組の不和の中心人物ではないものの、数秒のシーンで垣間見える最年長らしい落ち着いたキャラクター像と気さくな人柄が印象的だ。たちばな塩業にお手伝いにやってくるタカ(岸井ゆきの)の送り迎えを担当している佐久間。送り迎えのシーンのたび、神部とタカの仲睦まじい雰囲気が挿入されるのだが、佐久間はそれをからかう訳でも羨む訳でもない。タカが助手席に乗り込むと気さくに話しかけるも、その役割は送り迎えに徹している。タカに恋心を抱く“塩軍団”のメンバーとは違い、どこか大人の余裕を感じさせる姿が印象に残った。
川並は公式インタビューで「役者として飢えている状態と役柄が合い、本当にたちばな塩業に救われました!」と話している。とはいえ、川並自身の“役者として飢えている状態”を演技にのせているわけではないところに、川並という役者の魅力を感じる。佐久間を演じることに真摯だからこそ、ちょっとしたシーンだけでも彼のキャラクターが頭に残るのだろう。
今回ピックアップしたキャラクターだけでなく、“塩軍団”1人ひとりに人生ドラマが感じられるのが『まんぷく』の魅力である。数多くのキャラクターを“その他大勢”にすることなく、1人ひとりの背景を役者陣が丁寧に演じているからこそ、巻き起こる波乱の展開とその人間模様によりいっそうワクワクするのではないだろうか。(片山香帆)