ホラーを語るリレー連載「今宵も悪夢を」 第38夜 選者 / 磯村勇斗「ゾンビーワールドへようこそ」

ホラーやゾンビをこよなく愛する著名人らにお薦め作品を紹介してもらうリレー連載「今宵も悪夢を」。集まった案内人たちは身の毛もよだつ恐怖、忍び寄るスリル、しびれるほどの刺激がちりばめられたホラー世界へ読者を誘っていく。

第38夜は磯村勇斗がツッコミどころ満載の「ゾンビーワールドへようこそ」を紹介。「ハッピー・デス・デイ」シリーズのクリストファー・ランドンが仕掛けるサバイバル×青春コメディの魅力を、お気に入りの場面をピックアップしながらつづった。なお、今回は面白シーンのネタバレがあるのでご注意を。

文 / 磯村勇斗（コラム）、田尻和花（作品紹介）

ボーイスカウト3人組が繰り広げる“人生最悪で最高の青春”

「ゾンビーワールドへようこそ」は2015年にアメリカで公開されたゾンビ・コメディ映画。この作品の魅力は「そんなことある!?」とツッコミを入れたくなる程の面白いシーンが満載であるところ。監督は、クリストファー・B・ランドン。「パラノーマル・アクティビティ」「ハッピー・デス・デイ」シリーズなどを手掛けているだけあって、ハッと驚かすシーンはピカイチだ。
簡単に作品を説明すると、冴えないボーイスカウト3人組、ベン、カーター、オーギーがゾンビの大群と死闘を繰り広げるサバイバル要素と、高校生らしい思春期のエッチなコメディ要素を織り交ぜた至高のB級ゾンビ映画である。簡略し過ぎたが、これだけである程度想像ができるだろう。しかし、この作品のゾンビシーンは想像の斜め上を行く。これが冒頭で言っていた「そんなことある!?」とツッコミを入れたくなるようなシーンがいくつもあるということだ。少しだけ紹介すると、（以下ネタバレ注意）まずこの世界のゾンビは、過去の記憶を持っているタイプであること。その上で、ボーイスカウトの3人が道中「ブリトニー・スピアーズ」のTシャツを着たゾンビと出会（くわ）す。そこで一番冴えないオギーがブリトニーの曲を歌い出す。するとゾンビも楽しそうに合唱するではないか。「いやそんなことあるかい！」と笑ってしまう。他のメンバーも一緒に歌いあたたかい時間が流れるのだが…。更に、ボーイスカウトの3人が家の2階から脱出するシーンで、逃げ遅れたベンが窓からギリギリ落ちそうになるのだが間一髪ベンが握ったのは、ゾンビの男性器。ゴムのように伸びるゾンビの男性器。ゾンビもどことなく痛がっているではないか。「いやそんなことあるかい！」と笑ってしまう。ゾンビに痛覚あるのかと。結局ちぎれてしまうのですが…。これは観てる側も痛かったです。そんな話ではなく、これ以外にも思わず笑ってしまうユーモアたっぷりの「そんなことある!?」シーンが盛り沢山です。
物語自体はシンプルだが、冴えないボーイスカウトの成長と高校生らしいエッチな発想や、年上のお姉さんに惹かれていく男の子達がとても愛おしくなるゾンビ映画。きっとボーイスカウト3人組にとっては人生最悪で最高の青春になるのだろう。僕は「ゾンビーワールドへようこそ」と高校生の時に出会いたかった。

磯村勇斗（イソムラハヤト）

1992年9月11日生まれ、静岡県出身。特撮ドラマ「仮面ライダーゴースト」のアラン / 仮面ライダーネクロム役、連続ドラマ小説「ひよっこ」でヒロインの夫となる役を演じ脚光を浴びる。近年の主な出演作に映画「今日から俺は!!劇場版」「ヤクザと家族 The Family」「東京リベンジャーズ」「劇場版 きのう何食べた？」、大河ドラマ「青天を衝け」など。待機作の「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-」が4月21日、「最後まで行く」が5月19日、「波紋」が5月26日に封切られる。

「ゾンビーワールドへようこそ」（2015年製作）

クラブで女の子と遊びたくて仕方がない、ボーイスカウトの高校生ベン、カーター、オギー。3人はキャンプを抜け出してパーティーへ行く途中、ゾンビ化した住人たちの襲撃を受ける。間一髪のところをウェイトレスに助けられ、ボーイスカウトで身に付けた技で状況を打破しようとしていく。
ボーイスカウト3人組をタイ・シェリダン、ローガン・ミラー、ジョーイ・モーガンが演じ、サラ・デュモン、パトリック・シュワルツェネッガー、デヴィッド・ケックナー、クロリス・リーチマン、ハルストン・セージもキャストに名を連ねた。監督はクリストファー・ランドンが務めている。

「ゾンビーワールドへようこそ」Blu-ray / DVD販売中

税込価格：Blu-ray 2075円 / DVD 1572円
発売元：NBCユニバーサル・エンターテイメント
※上記は2023年3月時点の情報

※「ゾンビーワールドへようこそ」はR18+指定作品