劇団民藝の奈良岡朋子が肺炎のため93歳で死去
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奈良岡朋子
劇団民藝代表であり俳優の奈良岡朋子が3月23日に肺炎のため東京都内の病院で死去した。93歳だった。
奈良岡は1929年12月1日、東京都生まれ。洋画家の奈良岡正夫を父に持ち、1948年に劇団民藝の前身となる民衆芸術劇場に入団。劇団民藝の創立公演に研究生として参加し、「かもめ」ではニーナ役を演じた。2000年からは大滝秀治と劇団民藝の共同代表、2012年10月からは1人で代表を務めた。
出演作は枚挙にいとまがなく、近年の出演作に「八月の鯨」「バウンティフルへの旅」「根岸庵律女」「二人だけの芝居―クレアとフェリース―」「『仕事クラブ』の女優たち」など。劇団民藝+無名塾公演 「ドライビング・ミス・デイジー」では第60回記念芸術祭賞大賞、「ドライビング・ミス・デイジー」と「火山灰地」の演技で第47回毎日芸術賞、第5回朝日舞台芸術賞を受賞した。2016年には第23回読売演劇大賞芸術栄誉賞に輝く。晩年には2013年初演の一人語りの舞台「黒い雨-八月六日広島にて、矢須子-」で全国各地を巡演。最期の舞台は昨年2月、「二人だけの芝居―クレアとフェリース―」でも共演した岡本健一との朗読劇「『ラヴ・レターズ』LOVE LETTERS~31st Season Anniversary Special~」となった。
劇団民藝は奈良岡のコメントを発表。奈良岡は「新たな旅が始まりました。旅好きの私のことです、未知の世界への旅立ちは何やら心が弾みます」「これが別れではないですよ。いつかはまたお会いできますからね」という言葉を残した。
葬儀は近親者のみですでに執り行われ、喪主を奈良岡のめいである劇団民藝の演出家・丹野郁弓が務めた。なお、故人の遺志により、お別れの会などは行われない。また、4月5日まで、劇団民藝の公式YouTubeチャンネルにて、昨年製作されたドキュメンタリー「ある女優・奈良岡朋子」が公開される。
奈良岡朋子コメント
新たな旅が始まりました。旅好きの私のことです、未知の世界への旅立ちは何やら心が弾みます。
向こうへ着いたらすぐに宇野さんを訪ねます。もう一度あの厳しい演出を受けたいと長い間願ってきました。でもね、宇野さん、私はあなたよりずっと長く生きて経験を積んできましたからね、昔のデコじゃないですよ。「デコ、お前ちっとましになったな」と言われたくてこれまで頑張ってきたんですから。腕が鳴ります。杉村先生とももう一度同じ舞台を踏みたかった。どんな役でもいいからご一緒したい。ワクワクします。
両親に挨拶するのは二、三本舞台をやって少し落ち着いてからにします。それからは裕ちゃんや和枝さんと思いっきり遊びます。
これが別れではないですよ。いつかはまたお会いできますからね。
それでは一足お先に失礼します。皆さまはどうぞごゆっくり……
(註)宇野さん:宇野重吉、デコ:奈良岡の愛称、杉村先生:文学座の杉村春子さん、裕ちゃん:石原裕次郎さん、和枝さん:美空ひばりさん