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片岡仁左衛門「悔いのない年でありたいと思います」 玉三郎と18年ぶりの『与話情浮名横櫛』

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片岡仁左衛門

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いよいよ4月2日(日) に開幕する歌舞伎座「鳳凰祭四月大歌舞伎」の夜の部で上演される『与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)』。2022年6月、歌舞伎座「六月大歌舞伎」第三部での上演予定が延期となり、待望の上演となる本作で、実に18年ぶりに坂東玉三郎と共に「与三郎」と「お富」という配役で挑む片岡仁左衛門に話を聞いた。

『与話情浮名横櫛』は「お富与三郎(おとみよさぶろう)」「切られ与三(きられよさ)」などの通称で知られる世話物の代表的演目のひとつ。江戸の大店・伊豆屋の若旦那与三郎と、木更津の顔役・赤間源左衛門の妾で元深川芸者のお富が出会い、ひと目惚れをする。ふたりはやがて深い仲となるが、源左衛門に関係を知られたため、与三郎は顔も身体も斬りつけられ瀕死の重傷を負い海に投げ込まれる。源左衛門から逃げたお富も海に身を投げるが……。

全てを上演すると九幕十八場の長い芝居だが、現在では「見染(木更津海岸見染)の場」と「源氏店(げんじだな)の場」のみ上演されることが多い。今回はあまり上演されない「赤間別荘の場」も上演される。その意図を「『歌舞伎ってわからない』『わからないから観ないんです』という方が多いんです。だからこそ、そういう方にも『あ、わかると面白いな』と思っていただけるようにしたい。『見染』から『源氏店』を休憩時間を挟んで続けて上演すると、初めて観た方は急に別の狂言が始まったのかと思われてしまうことがある。『赤間別荘』をやることでストーリーをわかっていただけるように」と語る。「歌舞伎は“娯楽”ですから、『始まる前に勉強』をしていただく必要はない。楽しみにきていただきたいですね」

「見染の場」では海岸で出会い、互いに一目ぼれをしたふたりが、「源氏店の場」になるとお富は江戸の商人・和泉屋多左衛門に囲われて暮らしており、傷を負った与三郎は落ちぶれ強請(ゆす)りたかりをして日を送る身の上になっている。確かに別の話が始まったと思われてもおかしくない。「赤間別荘の場」は密会するお富と与三郎が赤間源左衛門一行に見つかり、与三郎は「三十四箇所の刀傷」をつけられる。この場面が入ることで初見でも物語に入りやすくなる。ただ、演じる側としては、この「赤間別荘」は決まり事がなく「本当に気の合う者同士でないとできない」という難しさがあるようで、「(玉三郎とは)『ここでこうするから、こうしよう』というやり取りがなくてもお互い自然に芝居のキャッチボールができる。役の気持ちで自然とやれば、向こうもそれを受けて役の気持ちで出てくれる」と信頼をにじませ、今回の玉三郎との与三郎とお富に一層期待が高まる。

「鳳凰祭四月大歌舞伎」夜の部『与話情浮名横櫛』特別ポスター

仁左衛門が与三郎を演じるのは1982(昭和57)年3月の歌舞伎座公演で初役で勤めて以来、今回が12度目となるが、再演するたびに過去の映像を観返しては反省点を探して演じているという。記者からの「これまで納得した与三郎はできたのか?」という問いには「振り返ってみてこれは後世に残っていいというものはない」と断言する。物語の後半は傷を負い、暗い影を背負う与三郎の役の気持ちと、役者をカッコよく見せて観客に喜んでもらわなければいけないという江戸歌舞伎の役割とのバランスの難しさも語りつつ、「この芝居に関しては、深いことは考えずにお客さまに気持ちよく観ていただける明るいお芝居として作り上げなければいけない」と話す。

最後に新年度にあたり、改めて2023年の意気込みを聞いてみた。「平和な年にしたいですね。早く世の中がもとの雰囲気になれば。大きく言えば世界的にね、本当にみんなが明るい気持ちでいられる年になれば」とはにかみながらも「ただ、自分としては、役者生命がいつ終わるかわかりませんからね。悔いのない年でありたいと思います」と思わぬ真摯な言葉にこちらの背筋が伸びた。

歌舞伎座「鳳凰祭四月大歌舞伎」は4月2日(日)、東京・歌舞伎座にて開幕。上演は27日(木) まで。

衣裳:スーツ (DORMEUIL)/シャツ  チーフ(麻布テーラー)/その他、スタイリスト私物

問合せ先 ドーメル青山店 TEL03-3470-0251/麻布テーラー TEL03-3401-5788

<公演情報>
歌舞伎座新開場十周年記念
「鳳凰祭四月大歌舞伎」

2023年4月2日(日)~27日(木)

昼の部『新・陰陽師』11:00~
夜の部『与話情浮名横櫛』『連獅子』16:00~
【休演】10日(月)、17日(月)

終演予定時間:昼の部 14:45頃/夜の部 19:25頃
※終演予定時間は変更になる可能性があります

会場:東京・歌舞伎座

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