私と音楽 第31回 宮崎美子が語るBABYMETAL
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宮崎美子
各界の著名人に愛してやまないアーティストについて話を聞く本連載。第31回となる今回はテレビ、ラジオで活躍し、近年ではInstagramやYouTubeでも人気を集める女優・宮崎美子が登場する。2020年に芸能生活40周年を迎え、2021年に歌手デビュー40周年を記念したアルバム「スティル・メロウ ~40thアニバーサリー・アーカイブス」を発表するなど多岐にわたって活躍している宮崎は、BABYMETALの大ファン。この記事では、宮崎がBABYMETALに惹かれた理由や、ライブに足を運ぶようになったきっかけ、そしてBABYMETALが繰り広げる壮大なコンサートの魅力について語ってもらった。
取材・文・撮影 / 田中和宏
この先の展開が気になって仕方ない
いきなりですけど、“3人目のメンバー”ってどうなるんでしょうね? 4月1日と2日のライブ(神奈川・ぴあアリーナMMで行われる「BABYMETAL BEGINS - THE OTHER ONE」)で新しい動きがあるんですかね? 3人目が“YOSHI-METAL”じゃないことはわかってますけど(笑)。
というのも、1月の幕張メッセでの復活ライブ(参照:BABYMETALが大歓声の中で復活!分身?クリスタル棺桶?衝撃展開で新世界へ)を観に行かせていただいて、それはそれはすごかったんですよ。最後にクリスタルの棺桶が3つ出てきたと思ったら、「あなた誰なの?」って感じで、3人目のメンバーと思われる人物がそこにいて。本当に続きが気になって仕方ないんです。特にあの日のライブでは、「ド・キ・ド・キ☆モーニング」でBABYMETALの分身みたいな3人組がいきなり出てきましたし、今後の展開が気になる仕掛けがたくさんあって、びっくりしました。私はモッシュピットの後ろ側のエリアでパイプ椅子に座って観てたんですけど、ステージが特殊(会場の左右にステージがあり、その両ステージをつなぐ花道、花道を移動する2つの円形ステージが用意された)で、広い空間を使い切るような構成なのも斬新でしたね。ライブ会場には年齢層高めな方から若い人や外国人のグループまで来ていましたけど、いろんな人たちが混ざり合いながら、フロアでグルグル走り回ってて、みんな本当に楽しそうでした。大人がルールを守って、全力で楽しんでる光景も素敵だし、平和を感じる瞬間でもありました。
かわいいだけじゃなくてカッコいい
そんなBABYMETALですけど、私は最初、WOWOWのライブ映像で彼女たちの存在を知りました。具体的にいつだったのかは思い出せないんですけど。そのあと、2016年に東京ドーム公演(2016年9月開催「BABYMETAL WORLD TOUR 2016 LEGEND -METAL RESISTANCE- RED NIGHT & BLACK NIGHT」)で初めて生のBABYMETALを観ました。あんなに広い会場で、あんなにちっちゃい子……と言っちゃいますけど、当時16~18歳くらいの子たちが全力で歌って踊って。BABYMETALのライブは世界観ももちろんすごいですけど、あの雰囲気を生み出せるのはメンバーの実力あってこそですよね。それにしてもSU-METAL(Vo, Dance)さんの歌声はすごい! 初めて聴いたとき、雷に打たれるような衝撃でした。先日のライブでも以前より歌声が伸びやかなように感じましたし、表情もぐっと大人っぽくなってるし。BABYMETALはかわいいだけじゃなくて、カッコいいんです。
映像で彼女たちの存在を知ったとき、私の目にはとても不思議に映ったんですよね。あんなにかわいい女の子たちが、白塗りの神バンドを率いて歌い踊っている。「これはいったいなんなんだ」と。SU-METALさんがとても伸びやかな歌声を聴かせている両脇でMOAMETAL(Dance, Scream)さんとYUIMETAL(Dance, Scream / 2018年に離脱)さんがありえないぐらいの運動量でダンスをしたり、お人形さんみたいにかわいく跳ねたりするところ、どこをとっても本当に素敵で。
BABYMETALって彼女たちの声とは別に、メタルのデス声が入ってる曲もありますよね。私はその叫び声も好きなんです。彼女たちはきれいな歌声ですけど、そのアンバランスな感じがとてもよかった。最近はあまり前に出てきてないかもしれませんけど、神バンドがガーッとステージの前方に出てくるのもすごく興奮しました。藤岡幹大(神バンドのギタリストとして活躍 / 2018年1月に死去)さんとは、BABYMETALが「ミュージックステーション」に出演したとき、スタジオが近かったのでご挨拶したことがあるんです。私なんて完全な部外者なのにニッコリと笑顔で対応してくださって。そんなこともあったので、突然の出来事はとても残念でした。
「デトロイト・メタル・シティ」の影響
もともとメタル好きだったかと言うと、決してそういうわけでもなくて。「デトロイト・メタル・シティ」(2008年公開)という映画で、私は松山ケンイチさん演じるクラウザーさんのお母さんを演じていたんです。Kissのメンバー(ジーン・シモンズ)が出ていたこともあるし、その映画でヘヴィメタルとかハードロックに触れる機会があって、それを機に「デス声が好きだな」って気付いて。だからと言って、ほかにメタルバンドの音楽を聴くかというと、そういうわけでもないので、本当にライブまで観に行きたいという衝動に駆られたのは、BABYMETALが初めてでした。
それまで聴いてきた音楽が何かと言ったら、大瀧詠一さんとか松任谷由実さんとか、私が20代の頃に流行っていたようなポップスですね。ちなみに松田聖子さんは同期にあたります。当時はロックも流行ってましたけど、ロックミュージシャンで唯一好きだったのは矢沢永吉さんです。武道館ライブでタオルを投げたこともあります(笑)。
「NO RAIN, NO RAINBOW」で思い出す景色
BABYMETALで最初にハマった曲は「ギミチョコ!!」です。曲も振付もかわいいから。激しい音なのにやってることはアイドルという、本当にこれまで見たことのないものでした。
熊本地震が起きた2016年4月、よく覚えていることがあるんです。地震のあと、博多から熊本に行く電車がつながった日にちょうど乗ってたんです。それでね、移動しているときに「NO RAIN, NO RAINBOW」を聴いていて。今もこの曲を聴くと、あのとき車窓から見た風景を思い出しますね。いいバラードだなって、しみじみ思います。
「紅月-アカツキ-」も大好きなんですが、楽屋でよく聴いてたのは「META!メタ太郎」ですね(笑)。ついつい口ずさみたくなるし、これから本番というときに「がんばるぞ!」って気持ちになるんです。
これからもBABYMETALに思いを馳せて
今日はTシャツを2枚持ってきました。2021年に日本武道館で10日間にわたってライブが開催された際のものです(「10 BABYMETAL BUDOKAN」)。このとき、大変だったんですよ。栃木県佐野市で「日本沈没」というドラマの現場があって、大掛かりなロケだったの。それが終わって間に合うかどうかギリギリで。タクシーと電車を乗り継いでなんとか間に合ったのでよかったんですけど、そんなことも思い出します。
私は「紅月」が好きとテレビでも言いましたけど、先日の幕張メッセ公演で一番感動したのは「Road of Resistance」でした。旗を持って、ドンッと構えるところに「あー、これだよこれ!」ってジンときました。やっぱりコロナ禍の影響もあるし、休止からの復活ライブだったこともあって、とても感動しました。
彼女たちはどんなモチベーションを持って、10代からBABYMETALとしての日々を駆け抜けてきたんでしょうね。コロナ禍の中でもきっと準備をし続けてきたからこそ、常に進化したステージを見せてくれていますし。そもそもBABYMETALはさくら学院の子たちの“部活”だったでしょう? 「重音部」に選ばれるというハードルも、当時はそう高いものではなかったんじゃないかな。だからきっと、「もしかしたら私だったかもしれない」って子が、ほかにもいたかもしれない。でもあのメンバーが選ばれて、今に至っていて。彼女たちにとって大きく人生が分かれた瞬間は、重音部に選ばれたところですよね。けれどその分、背負ってきたものも大きいだろうから、本当に大変だと思います。これからどんな活躍を見せてくれるのか、ファンとして楽しみです。モッシュには挑戦できないかもしれないけど(笑)、またライブにも足を運びたいですね。
宮崎美子(ミヤザキヨシコ)
1958年12月11日生まれ、熊本県出身。1980年に「週刊朝日」の「篠山紀信があなたを撮ります・キャンパスの春」という企画に応募し、モデルとして表紙に掲載される。同年にミノルタ「X-7」のテレビCMに出演して話題に。同年10月にTBSドラマ「元気です!」で主演を務め本格デビュー。近年ではテレビ番組で博識ぶりを発揮し、“クイズの女王”と称される。2020年に芸能活動40周年、2021年に歌手デビュー40周年を迎えた。近年はInstagram、YouTubeでも発信を行っている。