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【対談企画②】never young beach×森山直太朗「最終的に自分たちが帰る場所って、なんでもない時間だったりすると思う」

音楽

インタビュー

ぴあ

左から)森山直太朗、安部勇磨(never young beach)

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ハナレグミ、森山直太朗、くるりといった3組のアーティストをゲストに迎えたツーマンツアーを東名阪で行うnever young beach。ツアーの開催に先駆けて、ネバヤンのフロントマン・安部勇磨と対バン相手の対談を3回連続でお届けする。第2弾のゲストは森山直太朗。取材場所である森山のスタジオを訪れた安部は、そこかしこに置かれたヴィンテージギターに大興奮。そしてふたりはしばしギター談議に。スタジオの呼び鈴が鳴り、昼食の出前が届いたところで、和やかな雰囲気の中、対談はスタートした。

森山 最初はハンバーガーとかサンドイッチがいいかなって思ったんだよ。フツーだったら絶対そっちのほうがいいの。

安部 はい(笑)。

森山 でも今日は、安部くんがスタジオに来てくれるっていうから、この町のソウルフード、朝日屋のお蕎麦を食べてもらいたいと思って。

安部 ありがとうございます。お蕎麦いただきます!

森山 ここの店屋物、美味しいんだよ。作業するときいつも出前を取ってる。

──インタビュー前も、和気あいあいと話していましたが、おふたりはこれまでにも何度かお会いしてるんですか?

森山 今日で4回目とか? じっくり話すのは初めてかもね。

安部 そうですね。いつもは大人数でワイワイ話すことが多いです。

──そもそもの出会いは?

森山 ヅミくん(ハナレグミの永積崇)が紹介してくれたんです。ヅミくんって可愛いくて、自分の誕生日にパーティを開いて自分で歌うんですよ(笑)。そこで安部くんを紹介されて。

安部 「……君がネバヤンか」って(笑)。

森山 GACKTさんみたいな感じでね(笑)。

安部 そう! そのとき直太朗さん、一昔前のスターみたいな佇まいで、それこそキアヌ・リーヴスみたいなサングラスかけていて、思ってたイメージと全然違うんですよ。この人、めちゃくちゃ面白いなーと思って。

森山 ああいう賑やかな場にいると自分を保つのが難しいじゃん(笑)。周りを見たらスターばっかりだから、これ、ずっとふざけていたほうが面白いなと思って。だからそのへんに置いてあったサングラスをかけて、まったく違うキャラクターを演じてたの。ああいう胡散臭い人、パーティとかにいそうじゃん。

安部 超面白かったです。その後、僕がリクエストしたら「夏の終わり」を弾き語りで歌ってくれて。とにかく凄かったんです。ギャップが凄くて(笑) 直太朗さんにどんどん惹かれました。

森山 話してるうちに安部くんが学校の後輩だということもわかって、それも僕にとっては大きかった。小中高のエスカレーター校なんですけど、初等部に通ってたというのが重要なんですよ。

安部 今思えば変わった学校でしたね。すごく自由な校風で。

森山 先生をあだ名で呼んじゃうノリがあって。シオドンとか。

安部 懐かしい!

森山 幼少期の人格形成って教育によるところが大きいじゃないですか。そこで自由に伸び伸び育った結果、ミュージシャンになってしまったという。社会に出て少し苦労する典型という(笑)。

安部 はははは。

──安部くんが最初に森山直太朗さんを知ったのは?

安部 先ほど話題に挙がった僕の小学校では、卒業式に直太朗さんの「さくら」を合唱するんですよ。それで、この曲を作った人は学校の卒業生らしいということを知って。直太朗さんはサッカー部のOBなんですけど、サッカー部の顧問の先生に「森山直太朗のこと教えてたの!?」とか聞いたりして(笑)。12歳くらいのときですね。

森山 そのとき、もう音楽には目覚めていたの?

安部 僕には兄貴がふたりいるんですけど、上の兄貴が直太朗さんと同じくらいの世代でミッシェルガンエレファントとかエレファントカシマシをよく聴いてて。次男はザ・ストロークスとか海外のバンドが好きだったんで、兄貴たちが聴いてる音楽をなんとなく真似して聴いてる感じでした。特にザ・ストロークスとか2000年代のガレージリバイバル周辺のバンドには影響を受けましたね。

森山 兄弟の影響って大きいよね。僕には5歳上の姉貴がいたから、小4くらいですごくいろんな音楽を聴いていたの。ブルーハーツ、エレカシ、スピッツ、Theピーズ、カステラとか。当時はバンドブームだったから、そういう音楽を一緒に聴いてた。

安部 僕が中学生の頃、BUMP OF CHICKENとかASIAN KUNG-FU GENERATIONみたいなロックバンドがどんどん出てきたんですけど、そんな中にあって、直太朗さんの「さくら」はピアノと歌だけの超シンプルなサウンドで、めちゃくちゃビックリしたんです。それまではバンドでガーッてやる音楽がカッコいいと思ってたんですけど、こんなやり方があるんだって。子供ながらに歌詞の言葉遣いもちょっと違うんじゃないか?と思ったり。

森山 ピアノと歌だけだったのは単純に予算がなかっただけで。

安部 えっ、そうなんですか!? 本当は予算があったらドラムを入れようとか思ってたんですか?

森山 もっと違う大編成になっていたと思う。でもそれが逆によかったのかなって思う。ミュージックビデオも白ホリの前に立って、ピアニストの倉田(信雄)さんの演奏に合わせて歌うっていうシンプルな内容で。フィルムカメラで撮影したんだよね。当時はデジタルに移り変わりつつある時期だったから、予算がなくてフィルムは1回しか回せませんって言われて。

安部 めっちゃ思い出しました。MVの直太朗さんの恰好がよすぎて真似してました。グレーのスウェットの袖からピンクのシャツがちょっと出てるのがカッコいいなって(笑)。

直太朗 ごめん、あれはスタイリストさんの部屋着(笑)。

安部 そうなんですか(笑)!

森山 全然狙ってないっていうか、あれはスタイリストの北澤(momo寿志)さんの私物なの。予算がないから自分の服を持ってきてくれて。あの頃の作品には不自由さから生まれた“青さ”みたいなものがあるのかもしれないね。

安部 直太朗さんって学生時代にバンドとかやってたんですか?

森山 バンドは組んだことない。

安部 やりたいとも思わなかったんですか?

直太朗 それなんだよね(笑)。さっきも話したけど、俺、バンドブーム直撃世代で。姉貴の周りにバンドマンの人たちもたくさんいたんだけど、なんか怖かった(笑)。

安部 今よりも全然バンドマンが怖そうですよね。

森山 そう。あとバンド内の人間関係とかも面倒くさそうだし。だったらひとりのほうが楽かなと思って。

安部 自分のタイミングで動けるし。

森山 そう。そっちを取った感じ。安部くんは音楽をいつぐらいに始めたの?

安部 ずっとやりたいなとは思っていたんですけど、本格的に始めたのは高校を卒業してからで。高校までは絵を描く学校に通ってて、美術大学とかそっちのほうに進もうと思っていたんですけど、いろいろあって、やっぱり音楽をやりたいということになって。

森山 今のメンバーとは、どうやって知り合ったの?

安部 23歳のときにTwitterで募集しました。先にライブが決まっちゃって、メンバーを決めないといけなくて、どうしようもなかったので。ちょうどTwitterが出始めた頃だったんです。「初めまして」ってところからスタートしました。

森山 Twitterで募集したんだ! 凄いね。

安部 直太朗さんってデビューした頃から歌声が素敵じゃないですか。歌い始めるにあたって練習とかしたんですか?

森山 最初は物真似だよね。玉置浩二さんや友部正人さん、ボブ・ディランとかニールヤングの歌を聴いて自分の中で響きを踏襲していった。あと自分の場合は、どっちかっていうと音楽的なアプローチよりも発声を大事にしたかな。僕はもともと舞台でお芝居とかしたかったの。

安部 そうなんですね!

森山 だからお芝居で台詞を発声する先に今の歌唱スタイルがあったんだよ。

安部 最初は音楽じゃなくて、お芝居の道を目指していたんですね。

森山 そう。バイトも渋谷のシアターコクーンでチケットのもぎりとかやってた。2年くらいやってたね。

安部 歌と演技、どっちもできるって凄いですね。でも歌と演技って、やることが、ある意味、真逆だと思うんですよ。音楽って0を1にするみたいな作業ですけど、演技ってもともとある役に自分の中にある何かを重ねていく作業というか。

森山 だから曲を作って歌うことって、僕にとってはマッチポンプというか自作自演的な行為なんだよね。自分で脚本を書いて自分で舞台に立ってみたいな。「夏の終わり」なんて、まさにそういう曲で。あれは女性を主人公に置いた曲だから。自分の中で女形を演じる気分というか。狭い世界の話ですけど(笑)。

安部 凄く面白いです。

──森山さんは、どういうきっかけでネバヤンを知ったんですか?

森山 スペシャで「明るい未来」のミュージックビデオを観て、気になるバンドだなと思ったんです。ポップなんだけど、どこかに影があるサウンドで。安部くんの純朴な歌声も凄くいいなと思った。アナログな質感なんだけど空間を感じるし、なんか久しぶりに日本語のロックを聴いている感じがしたんですよ。歌詞で七五調を多用していて、ロックと現代詩が絡み合ってるような印象もあって。ただ音大や芸大出てます、みたいな感じじゃないんですよね。もっと、こう、部室感というか。

安部 ははは。そうですね(笑)。

森山 ほとばしるモラトリアムっていうかね(笑)。なんでみんな砂浜走ってるんだろう、楽しそうだなみたいな。僕はスペシャを観るのが好きなんですけど、色んなバンドのMVが流れる中で、「明るい未来」のあの感じにグッときたんですよ。

──若いバンドが数多いる中で気になる存在になったわけですね。

森山 そうですね。僕、「本場の人が見たら、どう思うんだろう?」ってよく考えるんですよ。ロックって欧米由来のものなので、向こうの人が聴いたら一体どう感じるのかな?って。日本人っていろんな文化に染まっているから、アイデンティティを音楽の中で語るのは、無粋なことだと思うんです。でもそんな中で、どこに意地を持って音楽を作るかが僕は大事だなと思っていて。そういう意味で言うと、ネバヤンって、すごく日本っぽさを感じるバンドだと思うんです。サウンドから漂うノスタルジーみたいなものもそうだし、安部くんが書く歌詞もそうだし。

──欧米の借りものじゃない感じというか。

森山 そうそう。すごくオリジナリティを感じる。特にあの縦書きが似合いそうな日本語の歌詞ですよね。言葉のチョイスセンスも含めて。

──歌詞の言葉選びに関して、安部くんの中ではどのくらい意識的なんですか?

安部 言葉選びに関してはかなり意識するほうですね。曲がどんなに良くても、歌詞がダメだと納得いく作品にならないので。ただ僕の場合、「この言葉を使いたい」というよりも「この言葉は使わないようにしよう」ということのほうが多いかもしれないです。僕は直太朗さんや永積さんの歌詞に影響を受けているので、「おふたりだったらこういう言葉は選ばないよな」とか、そういう基準が自分の中にあるんですよ。あとは自分が歌ったときに嘘くさくない言葉を選ぶようにしています。

森山 七五調は?

安部 それは全然意識してないですね。

森山 そうなんだ。でも意識してたらできないか。

安部 今、直太朗さんに言われて、確かにそうかもって。

森山 ネバヤンの歌詞は七七七調もあって、響きが気持ちいいんですよ。

──森山さんも歌詞を書くうえで言葉のリズムを大切にされていますよね。

森山 そこは凄く大事ですね。詩で完結するんだったらリズムを意識する必要はないんですけど、音楽に乗せて言葉を歌うわけですから。メロディに乗ることで、言葉だけでは伝わらない景色が広がっていったり、言葉が聞き手にとっての私事になっていく。音楽を聴くことって、みんなで絵を眺めてるような感覚に近いのかなと思うんです。そこから何を感じるかは、それぞれの自由だし。さっき安部くんがもともと絵を描く道を志していたと言ってましたけど、自分の中で合点が行ったんですよ。

──というと?

森山 安部くんが書く歌詞って主観的なんだけど、どこか俯瞰の視点が入ってるような気がするんです。全体を眺める別の視点っていうのかな。それってある意味、絵描き的な発想ですよね。全体をデザインする構成力とも言えるし。絵を描く人って主観だけじゃ描けないから。そのバランス感覚が曲作りに反映されているのかなと思って。

安部 はー、めちゃくちゃ面白いですね。自分ではまったく意識したことがなかったんで。初めて言われました。

森山 しかもそういう人ってアレンジ能力にも長けてますし。安部くんは編曲もやってるの?

安部 そうですね。アレンジも大まかなイメージを僕が考えて、メンバーに共有しています。それを形にする作業も最近は楽しくて。

森山 編曲も歌詞作りも最後のほうの詰めの作業が面白いんだよね。盆栽みたいに細かくハサミを入れながら全体的なフォルムを微調整していく感じで。「この言葉は自分っぽいけど、でも絶対にこっちの言葉のほうがモテるよなー」みたいなさ(笑)。

安部 そういうせめぎ合い、ありますよね(笑)。

森山 もしくは、あえてダサい言葉選ぶような(笑)。

安部 ここの語尾は「よ」で合ってるのか?とか、「だ」で強く言い切っちゃったほうがいいんじゃないかとか。そういうところにこだわっちゃいます。

森山 ちなみに僕は迷ったときは、圧倒的に少数派を選ぶね。

安部 そうなんですね!

森山 歌詞のワンフレーズを選ぶときは、100人全員が共感しそうな言葉よりも、100人のうちの何人かに「ああ!」って深く刺さるような言葉を選ぶようにしてる。まあ迷わないのが一番いいんだけどね。

安部 そうですね。迷っちゃうとどんどん。

直太朗 凡庸なものになるしね(笑)。

安部 歌詞に関して言うと、中3くらいのときに聴いた、森山さんの「生きてることが辛いなら」が自分の中ですごく大きくて。一部の人たちは「なんでこんなことを歌うんだ」みたいに言ってたみたいですけど、僕はまったくそんなこと思わなくて、あの曲を聴いて心が軽くなったんです。生々しい部分も含めて、なんて綺麗な表現なんだろうと思って。あと「生きとし生ける物へ」のライブ動画を観てよく泣いてます(笑)。

森山 そうなんだ(笑)。ありがとう。

安部 年代によって直太朗さんの歌が力強かったり優しかったり。優しいけど決して間延びしてない、どこか緊張感のある優しさで。「生きとし生ける物へ」を作ったとき、直太朗さんは僕より若かったわけで、どうやってあの領域までいってるんだろう? どういう人生だったんだろう?って勝手に考えると楽しいんですよね。自分の中に沸き上がる感情を直太朗さんはどうやってアウトプットできるんだろうって。

森山 言葉は違うかもしれないけど、意外と隙間産業だよ。

安部 隙間産業ですか?

森山 うん。自分の中にある疑いの気持ちとか、ズルい部分だったり、こういうことを歌ってる人はまだいないんじゃないか?みたいな、そういう気持ちでひたすら曲を作ってきた感じ。僕と御徒町凧が作ってきた歌には本当に色んなタイプがあるんだけど、その中で多くの人に評価してもらったのが、「生きてることが辛いなら」や「生きとし生ける物へ」だったりするわけで。実はその1曲の陰で、犬も食わないような曲がたくさん生まれてるんだよ(笑)。

安部 直太朗さんも、そうやって試行錯誤を繰り返してきたんですね。僕は曲作りで結構悩むタイプなんですけど、悩んだり行き詰まったりしたとき、直太朗さんはどうしてますか?

森山 僕も同じく悩むほうなんだけど、悩んでいる中にもサイクルがあって、スッと風穴が空いたときに、その悩みが曲になったりする場合があるでしょ。

安部 あります、あります。

森山 結局そういうことなのかなって思う。それが最近だんだんわかってきた。

安部 本当そうですね。

森山 逆に悩まなかったらどうなるんだろうね?

安部 悩まないと怖いですよね。そんな自分を信じられないっていうか。

森山 疑っていないと?

安部 自分のヤラしい部分は自分が一番よく知ってるので。そこから逃げるのはズルいんじゃないか?とか、よく思うんですけど。

森山 でも、そういう葛藤はみんなあるんじゃない?

安部 直太朗さんの中にもありますか?

森山 当然。自分の中のズルい部分にある程度折り合いをつけて、もうひとりの自分にテヘペロってすることもたまにある(笑)。ときにはそういう感じでもいいと思うよ。

安部 なるほどー。

森山 詞と曲は一緒なの?

安部 ちょっと前までは曲が出来たらそのあとに詞を書いていたんですけど、考えすぎるとつまらなくなるし、自分の中の鮮度が落ちるなと思って、最近は「せーの」で曲を合わせたときに、適当に歌った言葉を元にすることが増えています。

森山 じゃあ、どちらかというと曲が先?

安部 曲が先行するようになりました。フワッと感覚的に出てきた言葉は、メロディと言葉のニュアンスが合っていたら、そのまま活かそうみたい感じになってますね。あまりヒネったり、こねくり回してもよくならないということが感覚的にわかってきたので。直太朗さんはギターで曲を作るんですか?

森山 僕はギターのコードを7つくらいしか知らないんで、ギターで曲を作ると同じような感じになっていっちゃう(笑)。だから適当なハナモゲラ語の鼻歌で作ってる。そうすると、割と自由度と鮮度の高いものができる。

安部 鼻歌の段階でアレンジやリズムのイメージは浮かんでいるんですか? ちょっと跳ねてる感じだなとか。

森山 そうだね。ベタだけどね、僕のアイデアは。

安部 それをメンバーの皆さんに共有してやってみようってなるんですね。「さもありなん」とか、どうやってアレンジしたんだろうって思いました。

直太朗 ね(笑)。あれはすごく稀有なパターンで。4つのコードを繰り返す展開なんだけど、僕が家でルーパーの練習をしてたら、そこにたまたま遊びに来ていたギタリストの田中庸介くんがディレイとかを使って合わせてくれて、その場に居合わせた僕の奥さんがオルガンをフワーッて弾いたら曲の骨格が出来ちゃった。

安部 へえ。

森山 それをレコーディングで再現したんだけど、ああいう曲って揺らぎが大事だからクリックを使わずに自由なノリで演奏して。だからテレビとかで再現するのがめちゃめちゃ大変だったけど(笑)。遊びの中で生まれた曲だね。

安部 あのラフさというか感覚的な感じって、計算してできないものだろうなと思ったんですよ。

森山 すごくバンド的な作り方だったよ。「この音いいね!」みたいな。

安部 鮮度のいい音がどんどん入って来て。一番素敵な作り方ですね。

森山 日常との境がないほうがよくわからないものできるよね。偶然が引き起こす面白さみたいな。

安部 偶然を起こすために何か用意していることとかありますか? 偶然ってどこまで自分で起こせるんだろうって最近よく思うんです。

森山 でもネバヤンというバンド自体、偶然の産物じゃない? TwitterのDMでメンバー募集するなんて、すごい選び方じゃん。俺だったら怖いよ(笑)。

安部 確かに、今考えると怖いですね(笑)。

森山 交際0日で結婚みたいなことでしょ?

安部 言われてみたら確かに(笑)。

森山 結婚してから、方向性を考えよう、みたいなことでしょ?

安部 そうですね(笑)。そこから約9年間一緒にやって来て、ある程度お互いのプレーがわかってきたところで、偶然がもたらしてくれるものの凄さや面白さを改めて見直してる感じです。

森山 長い間ずっと一緒にやってるメンバーだと、どうしてもある程度、計算できちゃう部分があるからね。それは僕も一緒。計算できるからこそ楽なときもあるんだけど、そういう現場からは自分の想像を超えるようなものは生まれてこないわけで。だから僕の場合は、なるべく本題に入らないようにしてる。

安部 あー!

森山 ずっとダラダラ無駄話をしたり。そういうことに耐えうるメンバーを選んでる。だから商業的なスタジオミュージシャンの人だと、ちょっと大変だと思う。「で、いつ始まるんですか?」って(笑)。どれだけ無駄な時間を過ごせたかっていう気高さみたいなところがメンバーの共通意識になるっていうか。

安部 わかります。

森山 意外と、無駄な時間の中にこそ面白さを生み出す何かがあるような気がするんだよね。「あのとき、あの場所で食べたうどん、超マズかったですよね」とか、音のニュアンスを伝えるとき、そういう共通感覚があると楽なんだよね。意識的に奇跡を起こすのは無理だけど、そういう余白を共有できるか否かは大きい。

安部 「なるべく本題に入らない」って、めちゃくちゃいい方法ですね。

森山 ネジリ鉢巻撒いて、「よし、やるぞ!」ってやって、いいものが作れるんだったら、いくらでもそうするけど、そういうことではないじゃん? 弛緩した意識の先にあるものを表現するのが僕らの仕事だから。

安部 音楽には、“場”の空気感みたいなものも絶対反映されますからね。

森山 だから悩ましいのは、リハのいい雰囲気を、いかにライブで再現できるかということなの。当たり前なんだけどね。ステージに照明が当てられて、目の前にお客さんがいるわけだから。

──非日常的な空間ですよね。

森山 そう。その非日常的な空間をいかに日常に近づけていくか。最終的に自分たちが帰る場所っていうのは、こういうなんでもない時間だったりすると思うんです。

安部 本当にそうですよね。永積さんや森山さんとお会いするときはいつも、なんでもない時間が流れている感じがして、それがとにかく楽しいんです。その空気感をお客さんとも共有したくて、今回のツーマンライブにお声をかけさせてもらったんです。

──対バンのオファーが来たときは、いかがでしたか?

森山 もちろんうれしかったです。その反面、安部くんから凄いメッセージを受け取った気もして。「お前やれんのか?」みたいな(笑)。

安部 いやいや、そんなことないですよ(笑)!

森山 「やれんのか?」っていうのはアレですけど、僕はハナレグミやくるりとは、少し離れた惑星の住人なので(笑)。でも、なんとなくの共通項はあると思うんだよね。

安部 おこがましい言い方になっちゃいますけど、お三方は自分と同じ源流を持つミュージシャンだと勝手ながら思っていて。そんな先輩方とご一緒させてもらえるのは僕らにとって凄く意義深いことだと思うんです。早くも、めちゃくちゃ緊張してますけど(笑)。

森山 しかも今回ライブハウスでしょ? ライブハウスで演奏すること自体、僕は久々なんだよね。

安部 デビューした頃からホールですか?

森山 いやいや、そんなことはない(笑)。デビュー前は、西荻のワッツや吉祥寺の曼陀羅とか小さなライブハウスでやってたよ。そういう意味でも、今回は凄く新鮮な気持ちでライブに臨めると思う。フォークシンガーとして、ネバヤンファンの皆さんに楽しんでもらえるようなライブができたらいいな。

安部 よろしくお願いします!

Text:望月哲(音楽ナタリー) Photo:山川 哲矢

<ライブ情報>
never young beach TOUR 2023 “春歌舞”

4月17日(月) Zepp Nagoya
出演:never young beach / ハナレグミ

4月26日(水) Zepp Haneda
出演:never young beach / 森山直太朗

4月28日(金) Zepp Namba
出演:never young beach / くるり

チケット情報はこちら:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2341860

関連リンク

never young beach オフィシャルサイト:
https://neveryoungbeach.jp/

森山直太朗 オフィシャルサイト:
https://naotaro.com/

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