坂口健太郎×齋藤飛鳥に聞く「“誰かの想い”が見られるなら、誰の想いが見たい?」
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インタビュー
左から齋藤飛鳥、坂口健太郎 撮影:映美
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すべて見るカメラの前に立って、クールにポーズを決める。でもふとしたきっかけで、突然坂口さんが何やらツボに入ったらしく、笑いが止まらない状態に。つられて、齋藤さんも笑いはじめて、何度ポーズを変えても、5秒と持たずに笑いのツボがスイッチオン。
そんな仲の良い兄妹のような様子を見せてくれた坂口健太郎さんと齋藤飛鳥さん。4月14日(金) 公開の映画『サイド バイ サイド 隣にいる人』では、元恋人という複雑な関係を演じている。
坂口さん演じる、目の前に存在しない“誰かの想い”が見える青年・未山。齋藤さん演じる、“ある事件”がきっかけで突然姿を消した元恋人の莉子。2人の間に何があったのか。その過去が紐解かれたとき、物語は思いがけぬ方向へと進んでいく――。
劇中ではシリアスな場面の多い2人だが、インタビューが始まれば、7歳年上の坂口さんに齋藤さんが切れ味鋭くツッコむなど、終始リラックスした雰囲気。2人の飾らないトークを存分に楽しんでほしい。
坂口さんは、つかめるようでつかめない空気感を持っている
――今回共演してみて、お互いの芝居について感じたことをぜひお聞きしたいです。じゃあ、まず坂口さん、どうですか。
坂口 (そっとジェスチャーで、齋藤にパスする)
齋藤 (パスされたものをジェスチャーで坂口に戻す)
坂口 あはは。じゃあ僕から行きます(笑)。今回の莉子ちゃんという役はあんまり喋る役ではなくて、表情や目線だけで伝えなきゃいけない場面がたくさんがあるんですけど。未山として相対していると、ただ黙っているだけで画を占められる力をすごく感じて。そこは彼女の強みであり魅力だなと思いました。
齋藤 (恐縮して)え。なんか、すごい褒めてくれてる感じですよね?
坂口 はい(笑)。ただそこに立ってるだけで画が成立するっていうのはなかなか稀有なことで、つくろうと思ってできるものじゃない。一体莉子ちゃんは何を考えてんだろうって観ている人たちが気になる魅力みたいなものを、飛鳥ちゃん自身がもともと持ってるものも駆使しながら感じさせてくれた。素敵でしたね。
齋藤 褒められました(照)。ちょっとした表情の動きで感情の動きを見せることが莉子ちゃんの課題で。どうやるんだろうってずっとわからないまま手探りで演じていたので、すごくいいように捉えてくださってありがたいです。
――齋藤さんから見て、坂口さんのお芝居はいかがでしたか。
齋藤 そもそも私がこの作品をやってみようと思ったのも、坂口さんが主演をやられると聞いたから、というのが理由の一つだったんですね。
坂口 (おどけたように、はっとした顔をする)
齋藤 こんな感じで、坂口さんってちょっと変わっているというか、つかめるようでつかめない空気感を持っている方。よくこの作品について語るときに、坂口さんは「余白のある作品です」という言葉を使われるんですけど、私からすると坂口さんこそ「余白のある人」だなと思います。
坂口 (楽しそうに)へえ、そうですか。
齋藤 お芝居の難しいことは私にはまったくわからないので、坂口さんのここの技術がすごかったというお話ができないのがもどかしいですけど、坂口さんの存在だけでひとつの作品をつくってしまうぐらい引き込むものがあって。お芝居のことがわからない私でも、空気を支配するものを持ってるなって感じるときがありました。
坂口 覇気だね(笑)。
齋藤 (即答で)そこまでは言ってないです(笑)。そういうものをまとってるのがすごいなと、今回一緒にお芝居をさせていただいて感じました。
汗だくで遊んでる僕を、飛鳥ちゃんは微笑みながら見てた(笑)
――今回、子役の磯村アメリさんが美々役として出演されています。子どもとの接し方を通して見えたお互いの意外な一面を聞かせていただけますか。
坂口 飛鳥ちゃんは一歩引いてニコニコ見てたっていう印象がある。
齋藤 そうですね。
坂口 僕はたくさん一緒に遊んで走り回ったりしてました。「美々、元気だなあ…」って少し圧倒される瞬間はありました。で、そのさまを飛鳥ちゃんが木陰で優しい微笑みをたたえながら見てるっていう。
齋藤 見てました(笑)。
坂口 美々が、飛鳥ちゃんに「こうこうこうなんだよ」って話しかけに行っても、飛鳥ちゃんは「そうなんだ…」っていう感じで。
齋藤 話題を広げない(笑)。
坂口 広げないよね(笑)。まあ、でも思えば、それが役割分担だったのかなと。(市川)実日子さんはすごい美々と仲良くしていたけど、そこはやっぱり母娘という設定もあるし、そういう現場での関係性って芝居に反映されるものだと思うしね。逆に飛鳥ちゃんがめちゃくちゃ仲良くなっちゃうと、莉子ちゃんと美々として考えたらどうなんだろうみたいところもあるから、それはそれで意外と綺麗な形だったのかなと思います。で、その中で、俺はひたすら走り回ってた(笑)。
齋藤 汗だくで(笑)。坂口さんが遊んでる姿を遠くから動画で撮りました。
坂口 本当に?
齋藤 一生懸命遊んでて、すごいなって。
――何の遊びだったんですか。
齋藤 そのときはかくれんぼでした。未山くんと詩織さんが隠れているのを、美々ちゃんが探してるっていう。
――美々ちゃんは見つけられていましたか。
坂口 見つけてなかったね(笑)。
齋藤 見つける気もなかったと思う(笑)。
坂口 途中で「あれ? かくれんぼしてるんじゃなかったの?」ってなるんですよ。やっぱり子どもだから、好奇心の向きが急に変わる(笑)。でも、彼女の、お芝居なのかどうかわからない、普段の彼女の延長線上みたいな感じをうまく映像にすくうことができたのは、そういう現場の空気もあったんじゃないかなと思う。監督も、美々に対してはあえて演出はつけず、台詞も撮影当日に渡すというアプローチをしていて。それが美々ののびのびとした雰囲気を生んだところはあった気がします。
――ちなみに齋藤さんはお子さんの扱いは得意な方ですか。
齋藤 ……どうしたらいいかわからないです(笑)。
坂口 そんな感じもしなかったけどなあ。飛鳥ちゃんは普通にしてたって感じに見えたけど。
齋藤 後半になってくるとだんだん美々ちゃんも未山くんとも詩織さんとも遊び切って、あとは莉子しかいないってなるんですね。で、すごい勢いで「莉子たああん」って叫ばれたんですけど、ずっと私は「こっち来たら言ってね」ってマネージャーの陰に隠れてました(笑)。
世界を思い通りにできる能力がほしいです
――では、ここからは映画にちなんだ質問をしていくので、直感でパパパパンッとお答えください。映画の未山のように“誰かの想い”を見ることができます。誰の想いを見たいですか。
坂口 なるほど。
齋藤 うわあ、どうしよう。
坂口 それちょっと難しいな。(齋藤に)ほら、パパパパンッて答えなきゃ。
齋藤 え〜、難しい(と、考える)。
坂口 どうだろうな。でも、俺、怖いかも、見ちゃうのが。それ、答えとしてアリですか?
――ナシです。
坂口 ナシか~(と、お手上げする)。
齋藤 どうしよう、逃げられない。
坂口 あ、思いついた。俺、甥っ子を見ます。
齋藤 え。なんかズルい。
坂口 子どもって何考えてるかわかんないじゃない?
齋藤 わかんない。
坂口 でしょ? で、今はまだ保育園児なんだけど、純粋だから見ても怖くないし。
齋藤 なるほど。
坂口 きっと心の中もキラキラしてそうだから、仮に想いを見ても、そんなこと考えてたんだと思わなくてすみそう。
齋藤 確かに。え~、私は誰だろう。誰かいるかなあ。
坂口 (助け舟を出すように)……俺でもいいよ?
齋藤 (あっさりと)あ、確かに。俺でいいか。
坂口 今、「拾った」みたいな感じだったね(笑)。
齋藤 でも、坂口さんって私が今まで出会った人の中にいない人種だったんです。
坂口 いない人種っていうのが大事です。
齋藤 だから、興味はあります。
坂口 どうする? すっごいドス黒いことを考えていたら?
齋藤 あ〜。その方が辻褄が合うというか。黒いところがあった方がしっくり来ますね。そういうところ見てみたいです(笑)。
――では、“誰かの想い”を見るというような、不思議な能力が手に入るなら何がいいですか。
坂口 なんでも思い通りになる能力がいいです。
齋藤 ちょっとざっくりすぎません?(笑)
――何を思い通りにしたいですか。
坂口 世界を。世界を思い通りにしたいですね(と、悪そうに目を剥く)。
齋藤 目がバキバキなんですけど(笑)。
坂口 あはは。もし(『アラジン』の)ジーニーに3つお願いをするとしたら、ジーニーレベルの力を使えるようにしてほしいというのが1つ目。で、2つ目は、ジーニーのお願いを無限にしてもらう。
齋藤 そういうズルいこと言う子どもいますよね(笑)。
坂口 じゃあ、飛鳥ちゃんはどんな能力がほしいですか。
齋藤 私は胃袋の大きさを自由自在にしたいです。すっごいおいしいからいっぱい食べたいときと、今お腹は空いてほしくないときがあるじゃないですか。だから自由自在にしたい。
坂口 つまり胃袋を思い通りにしたいってこと?
齋藤 一緒にしないでください(笑)。
吉幾三をかけながら、お父さんの存在を感じています(笑)
――未山と莉子は、やがて詩織・美々母娘と一緒に過ごすようになります。お2人の人と暮らすときのマイルールを教えてください。
坂口 僕、基本的に他の人がすることに対しては何でも大丈夫なんですよ。でも、自分がしてることを注意されると嫌なタイプ。いいじゃんと思っちゃう。
齋藤 なるほど。
坂口 どう? なんかある?
齋藤 え~。人と住み……たくない?(笑)
坂口 まあ1人が一番自由っちゃ自由ですもんね。
齋藤 時々来てほしいですね。
――時々来たときは、友達がベッドに座ったり、お菓子をこぼしても平気ですか。
齋藤 時々なら我慢します。
坂口 そこは大丈夫なんだ。
齋藤 人によりますけど。
坂口 確かにね。あと、こぼすお菓子にもよるね(笑)。
――では最後に、未山はずっと自分のそばにいるんだと感じられる不思議なキャラクターです。そんなふうに、お2人にとって、たとえ遠くにいても、会えなくても、ずっとそばにいてくれると感じる人は誰ですか。
坂口 僕は結構浮かぶ人が多いかもしれないですね。家族もそうだし、姉ちゃんだったり、甥っ子もそうだし、マネージャーさんだったり、仕事の人も。そんなふうにそばにいてくれると感じる人って何があるからなんだろうって思ったんですけど、たぶん必要とすることなんだろうなって。自分自身が必要としているのもそうだし、きっと相手も自分のことを必要としてくれている。2人で一緒の空間にいても、琴線が交わらない瞬間しかなかったら、それってそばにいるとは言わない気がして。一瞬でも琴線にふれる瞬間を持てる人のことを、そばにいるって感じるんじゃないかな。そして、そう思える人が増えれば増えるほど、僕の人生は豊かになるとは思うし、僕という人間も分厚くなっていく。そんな感じがするなあ。
齋藤 そんなふうにお互いが必要とし合える相手ってなかなかできないですよね。だからこそ貴重なんだと思うし。
坂口 僕は人と心の距離を埋めていく上で大事にしていることがあって。それが、理解はできないけど共感はできるという感覚で。他人のことを完全に理解するのって難しいと思うんですよね。それは役も一緒で。僕がもし未山のことを100%理解したとしたら、ちょっとしたエゴにもなってた気もするし。でも、共感はしていたいと思うんです。頭は追いつかなくても、心は寄り添っていたい。理解はできなくても共感してみることで、琴線が交わる瞬間を生むことはできるんじゃないかなと思う。
――齋藤さんのいつもそばにいると感じられる人は誰ですか。
齋藤 一番はやっぱり家族ですね。離れて暮らしてはいるけれど、常に心のどこかにいて。やっとこの年になって親孝行とかちゃんと考えられるようになりました。
坂口 家族の存在を感じる瞬間って、どういうとき?
齋藤 グループにいるときからずっと私が誰かに評価されたり、人前で何かをなし遂げたりすると、人一倍喜んでくれたのが家族なので。そういう温かさを感じるたびに、そばにいるなって思います。あと、母がお花が好きでよく実家に飾っていたんですけど、部屋にお花を飾ったりすると母親の存在を感じますし。ひとりでいるときに、なんとなく父の好きな曲をかけてみたときとかも、そこにいるような気持ちになりますね。
坂口 へえ。お父さんはどんな曲が好きなんですか。
齋藤 恥ずかしいな(照)。うちの父はゴリゴリの昭和の人なんです。だから、めちゃくちゃ古い感じの曲が多くて。普通に吉幾三さんとか実家にいたときからお父さんがよくかけて聴いていたので、今でもちょっと聴いたりします(笑)。
取材・文:横川良明 撮影:映美
<作品情報>
『サイド バイ サイド 隣にいる人』
4月14日(金) より、TOHOシネマズ 日比谷ほか 全国ロードショー
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