唐沢寿明、政界を操る謎めいた“フィクサー”に。「“経験”の積み重ねが役に活かせている」
映画
インタビュー
唐沢寿明 撮影:川野結李歌
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すべて見るWOWOWが完全オリジナル脚本で3Seasonにおよぶ一大プロジェクトとして始動させた新ドラマ『連続ドラマW フィクサー Season1』の放送・配信がいよいよ4月23日よりスタートする。世の中を裏で操る黒幕の存在に焦点を当てた本作の主演を務めるのは、WOWOWのドラマには初出演となる唐沢寿明。「大人としてやるべき作品に出会った」と本作への手応えと思い入れを口にする。
「実際に世の中の裏にいるかもしれないですよね」
“フィクサー”という、謎めいた存在について、唐沢はそう笑う。次期総理の座を巡る権力争いとその裏で暗躍するフィクサーの存在を描く本作。唐沢の代表作『白い巨塔』をはじめ、数々のヒットドラマを手がけてきた井上由美子の手によるオリジナルのストーリーについて、唐沢は「とにかく脚本が面白かった」とその質の高さを絶賛する。タイトルにある“フィクサー”という謎めいた存在のイメージ、そして、ポスタービジュアルなどからもクセの強そうな主人公像が伝わってくるが、唐沢が魅力を感じたのは、自身が演じる主人公・設楽拳一についてではない。
「自分の役は、表に出てはいけない究極の“裏方”。むしろ、この作品は設楽によって動かされる他の登場人物たちを見るドラマだと思います。設楽が何かするのを見るというより、それによって周りの者たちがどう動くのか――?」
唐沢が例として挙げたのが、要潤が演じる設楽の秘書兼運転手を務める丸岡。こちらも謎めいた男で、過去についてはあまり語られないが、設楽に恩義を感じているようで、影のように設楽に付き従う。
「(丸岡は)ほとんどセリフはないんだけど、ものすごい存在感がある。それは、井上さんがそこにいる意味をちゃんと描いているから。主人公を書くっていうのは、言ってしまえばそんなに難しいことじゃないんです。むしろ、周りの人を書き込むというのは、バランスを見ながらその人物なりの決着をつけていかなくてはいけないので難しいし、脚本家としての本当の才能が必要だと思います。やっぱり(主人公だけでなく)周りの役がちゃんと描かれてなくちゃ面白くない。“主役”と“それ以外”というつくりは、もう(ドラマの構造として)無理だしやめた方がいいと思います」
一方、設楽については「分かりやすい“悪”という感じではないですし、どんな人物なのか、(脚本を読んだ段階では)よく分からない」とも。第1話の冒頭、設楽が刑務所を出所するところから物語は始まるが、彼がどんな罪で服役していたのか? そして、再び設楽が政界に近づいていく理由についても謎のままである。
「なにかやりたいことがあるんだろうし、最終的にどうなったら、それが解決されるのか分からないけど、単なる復讐劇などではなく、きっと何かがあると思う」と今後の展開への期待を口にする。
主役をやるような人間になるなんて
夢にも思っていなかった
この6月で還暦を迎える。若い頃、特撮シリーズのスーツアクターを務めていたことはよく知られた話だ。「まさか当時は、主役をやるような人間になるなんて夢にも思っていなかった。人生分からないもんだなって思います」と笑う。
その後、90年代にはドラマ『愛という名のもとに』などトレンディドラマで一世を風靡した。
「あれも運良くだけど、今でいうイケメン枠みたいなアイドル俳優のようなもの。もちろん、自分なりに精一杯やったけど、そのイメージを脱却するというのは大変でした。その後、孫悟空(※ドラマ『西遊記』1994年)をやったら、みんなにびっくりされて、事務所に“イメージが違う”って電話や手紙がたくさん来ました(笑)。でも、そのときに思ったのは、人気のある時期に冒険して、新しいことにチャレンジした方がいいなってこと。仮に失敗しても落ち幅が少なくて済むだろうって。そこから、いろんなことに挑戦できました」
井上由美子脚本の『白い巨塔』で野心あふれる主人公の医師・財前を演じたのがまさに20年前、40歳になった2003年のこと。「あの作品で随分、変わりましたね」と自身にとっても転機になったと振り返る。
「30代の頃は60歳になる自分のことなんてイメージできていなかったです。忙しくて、ひとつひとつの仕事をこなすので精一杯でした。40歳になってようやく“あ、自分ももう40代になったのか”と思って、気づいたら50代になって……」
インタビューを通じて、唐沢の口から度々発せられたのが“経験”という言葉。
「やっぱり、俳優に必要なことって人生経験だと思います。スーツアクターの仕事も、それしかないからやっていたけど、そこで得たものは今でも活きていると思うし、これまでやってきたこと全てが自分の中にあります。年齢を重ねることって別に怖いことじゃないし、楽しいと思います。まだまだ、これからもいろんな人と交流を深めていろんな経験をしたいですね」
渋みの加わったカッコよさをこれからも見せてほしい。
取材・文:黒豆直樹
撮影:川野結李歌
ヘアメイク:松原美穂(Nestation)
スタイリング:勝見宜人(Koa Hole inc.)
<作品情報>
『連続ドラマW フィクサー Season1』
4月23日(日) 初回放送&配信スタート(全5話)
放送:毎週日曜午後10:00[第1話無料放送]【WOWOWプライム】【WOWOW4K】
配信:各月の初回放送終了後、同月放送分を一挙配信 [無料トライアル実施中]【WOWOWオンデマンド】
脚本:井上由美子
企画・プロデュース:青木泰憲
監督:西浦正記
音楽:得田真裕
プロデューサー:村松亜樹 髙田良平 黒沢淳
アシスタントプロデューサー:廣瀬眞子
制作協力:リオネス 製作著作:WOWOW
出演:
唐沢寿明
藤木直人 町田啓太 小泉孝太郎 要潤 吉川愛 斉藤由貴 駿河太郎
/西田敏行(特別出演)/永島敏行 富田靖子 陣内孝則 内田有紀 小林薫
ぴあアプリでは唐沢寿明のアプリ限定カットをご覧いただけます。ぴあアプリをダウンロードすると、この記事内に掲載されています。
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