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“みんなのタカちゃん”は第2のヒロイン!? 岸井ゆきの、『まんぷく』でハート撃ち抜く

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 朝ドラ『まんぷく』(NHK)にて、ヒロイン・福子(安藤サクラ)の姪である香田タカを好演中の岸井ゆきの。まもなくデビューから10周年を迎えるが、彼女のことをまだはっきりと認識していなかった方も少なからずいるのではないだろうか。しかし、本作『まんぷく』にて朝ドラ初出演を果たした岸井は、その存在感の大きさを強く知らしめている。

 岸井が本作で演じるタカは、福子の姉夫婦である、克子(松下奈緒)と忠彦(要潤)の4人の子どもたちの長女だ。彼女は萬平(長谷川博己)が経営する「たちばな塩業」(現在の社名は「たちばな栄養食品」)を週末だけ手伝い、その従業員である“塩軍団”の男衆を健気に逞しく支えている。

参考:タカちゃんに想いを寄せる塩軍団俳優たち

 ところで、実年齢26歳の岸井が演じているタカは、なんとまだ14歳。30代でも高校生役を演じる者たちはそれなりにいるが、14歳とまでいくと話はまた別だ。演じ手によってはやはり無理があるだろう。それを岸井はなんの違和感もなく、実にあっさりと体現してみせている。本作で彼女を認識した方の多くが、この事実に驚いているのではないだろうか。もちろん、彼女が小柄なスタイルであることや(公称身長:148.5cm)、幼く見える顔立ちは、タカというキャラクターの造形に大きく影響しているだろう。しかしそれ以上に、ぱっと花開くような柔和な笑顔や、幼さを残した声の演技には、彼女の女優としてのキャリアに裏打ちされたものが感じられる。

 実際に岸井は『連続テレビ小説 まんぷく Part1』(NHK出版)にて、「『タカは明るくていいわ』というようなセリフがあるので、タカの明るさや若さを、少し声を高くして表現し、年齢を重ねたら地声に戻して変化をつけようと思っています」と語っている。岸井自身、もともとの声が低いというわけではないが、たしかにいつもの彼女の声より、気持ち高く感じる。この微妙なさじ加減は実に難しいところで、笑顔と同様に、朝一番からの彼女の可憐な声は、萬平率いる男衆の中に花を咲かせているのだ。彼らにとって癒しの存在であることも大いに頷ける。テレビの前の私たちにとってもまたそうなのではないだろうか。

 ところで今後気になるのは、瀬戸康史演じる神部との恋の行く末だ。“みんなのタカちゃん”に対して抜け駆けをする神部に怒り心頭の“塩軍団”の面々をよそに、ふたりは健全で親密な時間を重ねてきた。進駐軍にその仲を引き裂かれそうになろうとも、その想いはより一層強まるばかりだった。これには娘を溺愛するタカの父・忠彦も、彼女の想いを認めざるを得ないようだ。本作において彼女は、まさに第2のヒロインである。さて、ここから面白くなってくるのが、タカの年齢の重ね方だろう。やがてはタカの年齢が岸井の実年齢に追いつくこととなるのだ。

 これまでに岸井は、年相応の等身大の女性も多く演じてきている。今年の公開作は『ここは退屈迎えに来て』だけだが、昨年は『おじいちゃん、死んじゃったって。』、一昨年は『太陽を掴め』で、そんな姿を見せているのだ。これらの経験は、本作でのタカの成長にあわせて垣間見えてくることとなるのだろう。そして2019年には、岸井が20代後半の女性に扮し、ある男性に対する一方通行の恋心を演じた主演作『愛がなんだ』の公開を控えている。ときに見せる恋にときめく少女のような表情や、ドキリとさせる大人な女性の表情に、誰もが驚かされるのはずだ。彼女の魅力が詰め込まれている注目作だが、先んじて、その一端を『まんぷく』にて見られることとなるのではないだろうか。

 少女から大人の女性まで演じられる稀有な女優・岸井ゆきの。演じるタカの、幼い顔から艷やかな表情まで、その変化が見逃せない。

(折田侑駿)