“hideが遺したもの”とは何だったのか 愛とリスペクト溢れる『SONGS』放送内容から考察
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2018年12月8日、NHK総合にて『「SONGS」hideが遺(のこ)したもの』が放送された。
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ピンクの髪に、全身黄緑の服で、赤いハートがたくさん並んだ黄色いギターを弾く。X JAPANのライブで演奏するhideの姿から番組は始まった。
X JAPANのギタリストであり、ソロアーティストとしても独自の世界を築き上げていたhide。彼が33歳でこの世を旅立ってから、今年で20年になる。4月には『hide 20th memorial SUPER LIVE「SPIRITS」』が開催された。今もなお、多くの人に彼が愛され続けているのは何故なのか。番組では、吉井和哉、生駒里奈、MIYAVIの3名がhideの魅力を語った。
吉井和哉は、生前のhideに才能を高く評価されていた。吉井によると、hideは「ロックをいかに一般的なものにするか」に力を注いでいたという。詩は洋楽に影響を受け、韻を踏んだり、メロディに反発する言葉は選ばないというこだわりが感じられた。そして、歌のトーンには人間性が表れており、「自分の歌に酔ってない感じが最高にカッコイイ」と賞賛。過激なルックスと相反する謙虚さも、hideの魅力だと語った。
生駒里奈は、以前よりhideのファンであることを公言しており、2018年5月には、hideのドキュメンタリー映画『HURRY GO ROUND』の舞台挨拶にも登壇した。生駒はhideを「圧倒的なカリスマ力があるアイコン」と表現。ファッションについても「めちゃくちゃおしゃれ」「今のおしゃれの流れにも通じるものがたくさんあった」と述べ、「DICE」のMVではhideが神様に見えたという。hideのことをリアルタイムでは知らない世代のコメントだからこそ、より一層の説得力があったように思えたのは筆者だけではないだろう。
一方MIYAVIは、hideに影響を受けて育った世代だ。特に影響を受けたのは、作品やステージを作る姿勢、遊び心を忘れないスタイルであったという。また、常に世界に向けて発信することや、音楽以外の形で社会へ貢献することもhideに倣っているそう。MIYAVIはhideの生き様に影響を受けたのだ。そして、このスピリッツを次の世代へ受け継いでいくことが自身の世代の責任と感じている。
番組では、hideが『ポップジャム』に出演した当時の映像も放送された。「ROCKET DIVE」「Beauty & Stupid」「Hi-Ho」……不思議なほどにどの楽曲も、今聴いても色褪せていない。きっと、hideのことを知らない人に「これは先日収録されたばかりの映像だよ」と紹介しても信じてもらえるのではないかというほどに。ハイビジョン画質に改良されていたこともあるが、それよりもやはり、hideの発する音楽やビジュアル、パフォーマンスが、その時代の流行に左右されず、かつ誰にも真似できない、唯一無二のものであることが最大の理由だろう。
終盤には、MIYAVIとhideが「ピンクスパイダー」でコラボレーションを果たした。演奏は、2018年6月にリリースされた『hide TRIBUTE IMPULSE』に収録されたバージョンがベースとなっており、MIYAVIとhideが交互に歌う形で披露された。煉瓦の壁に囲まれた狭い路地のようなセットは「ピンクスパイダー」のMVを彷彿とさせ、MIYAVIの手前には、「ピンクスパイダー」発売当時の1998年を思わせる形のコンピューターのモニターがいくつも無造作に積まれていた。hideの姿はモニターのほか、MIYAVIの頭上、背後の壁にプロジェクションマッピングで映し出された。20年の時を超えた、まさに奇跡のコラボレーションと言えるだろう。
演奏が終了すると、煙草を吸うhideの写真と「12/13 hide 54th Birthday」の文字が表示され、番組は終了した。hideへの愛やリスペクトが溢れる30分間だった。
この番組を通し、“hideが遺したもの”とは何だったのかと考えると、日本の、いや、世界の音楽業界のみならず、社会全体にとっても代え難い“希望”だったのだと思う。仮に今彼が生きていたら、何を思い、どんな作品を世に送り出していたのだろうか。そう考えると、改めて、急逝が悔やまれてならない。しかしそれゆえ、これからも彼は愛され続けるのだろう。(白乃神奈)