「マリーゴールド」イベントで三津谷亮が号泣、末満健一「出会いが何よりの財産」
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ミュージカル「マリーゴールド」DVD発売記念イベントより。左から末満健一、壮一帆、田村芽実。
ミュージカル「マリーゴールド」のDVD発売記念イベントが、12月9日に東京都内で開催された。ステージナタリーでは、約800人のファンが参加した同イベントの模様をレポートする。
来年2019年に10周年を迎える「TRUMP」シリーズは、永遠の命を持つ原初の吸血種“トランプ”の伝説を題材とした末満健一のライフワーク的作品。同シリーズ10周年のアニバーサリー企画第1弾として8月から9月に東京、大阪で上演された「ミュージカル『マリーゴールド』TRUMPシリーズ10th ANNIVERSARY」(以下、「マリーゴールド」)では、血と命を巡る母娘の愛の物語が繰り広げられた。
DVD発売記念イベントには作・演出を手がけた末満に加え、キャストからアナベル役の壮一帆、ガーベラ役の田村芽実、エリカ役の愛加あゆ、ソフィ役の三津谷亮が参加。MCは末満が「家が近所で、飲み友達」だと言う鬼頭真也が担当した。イベントの冒頭、鬼頭が「マリーゴールド」の概要を説明する際に「ミュージカル『LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-』(以下、「リリウム」)に登場した“母親殺しのマリーゴールド”にスポットを当てた作品ですが……」と進行表を読み上げると、末満は「“母親殺しのマリーゴールド”!? そんな異名が!」と驚いて見せ、会場を沸かせた。
「TRUMP」シリーズに初参加となった壮は「シリーズの人気の高さ、ファンの方々の熱さ、スタッフの皆様の熱量に圧倒されました」と感想を述べる。同シリーズには「リリウム」「グランギニョル」に続き3作目の出演となった田村が「末満さんが思い描く、独特な世界観を汲み取って表現することを一番に考えました」と真摯に語ると、末満は「全部、外向きの発言だよね?」とツッコみ、田村は「違います!(笑)」と笑いながら異を唱えた。「グランギニョル」に続いて出演の愛加は「今回も気合いを入れて稽古に臨んだのですが、末満さんの世界は繊細なので、それを追求していくのは大変で、でも楽しくて、とても充実した夏でした」と回想。D-BOYS(当時はD2)による「Dステ12th『TRUMP』」の“TRUTHバージョン”でウル役、“REVERSEバージョン”でソフィ役を演じた三津谷は「5年ぶりにソフィとして帰ってこられたことがうれしかったです」と感慨深げに語った。
本イベントでは、DVDに収録された本編の映像を大きなスクリーンで上映しながら、登壇者がトークする“「マリーゴールド」本編映像<一気呵成の>生コメンタリー”を実施。「暴走していきます!」と意気込んだ三津谷が「今日のために特典のメイキング映像しか観てこなかったので、本編は初めて観ます。生コメンタリーなので無音になる瞬間があるかもしれませんが、そこも含めて楽しんでいただけたら!」と来場者に投げかけると、末満は「先に言い訳してるの?(笑)」と三津谷に視線を送り、会場を笑いで包んだ。
本編の上映が始まると、登壇者から多彩な裏話が飛び出す。神々しい光の中から壮演じるアナベルがゆっくりと登場する映像が流れると、愛加は「美しい……!」とため息を漏らし、鬼頭は「これは壮さんご自身が発光してるんですか?」と冗談交じりに質問。「照明さんのおかげです!(笑)」ときっぱり答えた壮の姿を見て、末満は「壮さんはシルエットが綺麗なので、後ろから照らしがいがある。“照らしがい女優”です!」と太鼓判を押した。
序盤でキャスト全員が歌唱するナンバー「マリーゴールド序曲~愛しき者に祈りを~」について、愛加が映像を観つつ、「一緒に歌いたくなっちゃう」と言うと、末満がサビの部分を「マーリー……ゴールドー……」と歌い始める。それを見ていた三津谷は「いや、あんたが歌うんかい!(笑)」とテンポよくツッコみ、息のあったやり取りを披露。壮が、自身が演じるアナベルの娘であるガーベラ役を務めた田村について「めいめい(田村)は熱量がすごくて、そこに負けないよう意識しました」と述べると、田村は「壮さんは“菩薩”です」と目を細めながら言葉を返す。鬼頭はすかさずガーベラの役柄になぞらえ「“母”を“殺す”と書いて“母殺(ぼさつ)”ですか?」と切り込むと、壮から「うまい!」と称賛を浴び、田村は「“母殺”……なんか怖い。何色の血が流れてるんでしょう……」とコメントした。
物語に複雑な伏線が張り巡らされているのも、「TRUMP」シリーズの魅力の1つ。三津谷が「末満さんは出演者にも“騙し”を入れていて、こっちから聞かないとわからない設定が隠されていたりします」と明かすと、末満「大阪公演に入ってから三津谷にだけ伝えたことがあったよね」、三津谷「それは墓場まで持っていきましょう!」と秘密めいた2人の間のやり取りが交わされる。三津谷は末満からとある裏設定を聞いた際、「衝撃のあまり、末満さんって人間じゃない!と思って。“緑の血が流れてる人”は、ここまでの発想力があるんだな、と怖くなりました(笑)」と冗談交じりに述懐。ここまで顔色ひとつ変えずに三津谷の言葉を聞いていた末満は「俺は人だよ!(笑)」と茶目っ気たっぷりに反論しながらも、悲劇を描いた「マリーゴールド」の物語の結末について「(脚本を)書き終わったとき、我ながら『ひどい話だなあ』ってボソっと呟いてしまいました」とエピソードを述べた。
トークはイベントに登壇していないキャストのことにもおよぶ。ウル役を演じた土屋神葉について末満は「神葉くん、DVD買ってくれたらしいね」、三津谷は「もしかしたら抽選で当たってこの会場にいるかもしれないですね(笑)」と場内を見渡す。コリウス役の東啓介について愛加は「とんちゃん(東)の胸ぐらをつかむシーンで、背が高すぎて胸ぐらの位置がわからなかったんですよ!」と打ち明け、続く三津谷は、ベンジャミン役の宮川浩について「いつも周りを見てくださって、稽古が終わったあと『みんなでご飯行こう』と声をかけてくださった」と、その人柄を語った。さらにヘンルーダ役の吉野圭吾について末満は「歌うときの説得力がすごくて、改めて『おお、ミュージカルだ!』って思ったんです」と絶賛。これに壮も賛同し、「圭吾さんの歌は感情が伝わってくる」と敬意を表した。
和田俊輔が手がけた本作の楽曲について、“変拍子好き”を公言する末満は「役者の皆さんは変拍子が多いので大変な思いをされてましたね」と思い返す。宝塚歌劇雪組でトップ男役を務めた壮は、共にトップコンビを担った愛加との思い出に触れ、「宝塚時代、私は“主メロ”しか歌ったことがなくて、当時は愛加さんがハモりをやってくれていました。今回は愛加さんが主メロで、私がハモるナンバーもあって大変でしたね」と振り返った。田村は「最低限やらなくてはいけない技術的なことと、役の感情との狭間で苦しみました」と苦戦したポイントを話す。また末満は、壮、東、愛加、吉野が向き合って力強く熱唱する場面について「『醸しながら!』とか『そこ、“愛のミルフィーユ”で!』みたいに、自分でも何言ってんだろう?というようなおかしな演出をしてましたね(笑)」と稽古を懐かしんだ。
愛加は壮と対面して歌うシーンについて「(宝塚時代は)壮さんとは舞台上で恋愛をする関係性でしか演じたことがなく、女性同士の役は新鮮でした」と話し、壮は「あゆっち(愛加)の顔を見て、『あ、この表情知ってる』と思いながらも、ふと自分を見たらスカートを履いていて。舞台上であゆっちと相対したときに自分の性別が違うことに戸惑い、脳内でノッキングが起こりました(笑)」と男性役と女性役の感覚の違いを述べる。加えて壮は「(劇中で)男性にかばわれるのが人生初だったので、稽古場で“ムヒムヒ”してました(笑)」と照れ笑いを浮かべた。
「泣き虫に定評のあるみっちゃん」と自らを称した三津谷は、本番中も感動の涙を堪えていたことを明かす。末満はD2版「TRUMP」の稽古時を思い出し、「三津谷のことをよく知らなかった頃、『TRUMP』の稽古中に三津谷が号泣し始めて、この芝居はこんなに役者を感動させる作品なのか!と思ったけど、あとで三津谷が普段からよく泣くやつだと知りました(笑)」と笑みをこぼした。
本編映像の中盤、三津谷が思い入れのあるシーンで涙腺をゆるませ始めると、愛加が「みっちゃん、泣いてます!」と報告。田村は「今? 嘘でしょ?」と三津谷に注目する。4本目のペットボトルをテーブルに置いていた三津谷に末満が「水、飲みすぎなんだよ!」と指摘すると、しばしの沈黙ののち三津谷は「D2版『TRUMP』もサンシャイン劇場でやっていたので、当時と心情がかぶる瞬間がありました」と胸中を吐露。さらに大粒の涙をこぼしながら、スクリーンに映った自身に対して、「(泣きそうなのに)ギリギリ我慢できているから褒めてあげたいです!」と発言して会場を和ませる。ここで三津谷の席にボックスティッシュが届けられ、三津谷はステージの端で静かに涙を拭った。
「『リリウム』でも『マリーゴールド』でも叫ぶシーンがあった」と言う田村が「『リリウム』のときに声が出なくなったことがフラッシュバックして、今回の稽古中に叫べなくなって号泣してしまったんです。『もし本番でも叫べなかったらどうしましょう?』と末満さんに相談したら、『そうしたら、叫ばなくていいような演出にするから安心していいよ』って言ってくださって」と感慨深げに語ると、客席から温かい拍手が送られる。これに対して末満は「いいこと言うね!」と返し、三津谷は田村に「それ本当に末満さんだった!?」と尋ねて観客を笑わせた。
本編の上映を終え、それぞれが挨拶。三津谷は「まさかこんなに涙するとは思ってなかった(笑)。公演は夏でしたが、まだ記憶が全然色あせてなくて、5年前のD2版『TRUMP』も昨日のことのように思い出します。『マリーゴールド』から知った方も、過去作品を振り返ってシリーズを追いかけていただけたら」、愛加は「今日初めて本編映像を観たのですが、皆さんとお話ししながら観られて楽しかったです」、田村は「末満さんは、私が楽屋とかステージ袖を走り回っていたわんぱくな時代から育ててくださった方。思い入れが深いシリーズにまた参加できてうれしかったです」、壮は「やはり指針となったのは末満さん。稽古場では末満さんの思い描く世界観をめいめいが体現してくれて、私もそれに触れながら『TRUMP』シリーズの一員として作品を立派にしなければという思いでやってきました。悲劇的な作品ではありますが、カンパニーの仲がとてもよかったので、その温かさは皆様に伝わるんじゃないかなと思います。出演できたことを誇りに、今後の女優人生につなげていきたいと思います」とそれぞれが熱い思いを口にした。
幼少期から阪急宝塚線の沿線に住み、タカラジェンヌを目の当たりにしてきたと言う末満は、「雲の上の存在だと思っていた宝塚出身の女優さんたちが、小劇場からスタートした『TRUMP』シリーズの造語である“繭期”という言葉を発していることに謎の感慨がありました」と噛みしめるように語り、最後に「壮さんはじめ、さまざまな人との出会いが何よりの財産。三津谷、めいめい、あゆっちとまた一緒にできたこと、飲み友達の鬼頭くんがこうやって司会をやってくれたこと……いろいろなことに対して感謝の心を忘れずにいたいですね。そして『TRUMP』シリーズが10周年を迎えられるのはファンの皆様のおかげです。これからもよろしくお願いします」と言葉に力を込めながら挨拶し、イベントを締めくくった。
イベントのラストでは「TRUMP」シリーズ最新作「COCOON 月の翳り星ひとつ」より、「月の翳り」編、「星ひとつ」編の2作が5・6月に東京と大阪で上演されることがスクリーン上で発表され、来場者からは悲鳴にも似たどよめきと盛大な拍手が巻き起こった。「月の翳り」編ではアンジェリコとラファエロを主軸とした物語が、一方「星ひとつ」編ではウルがたどり着く慟哭の結末が描かれる。「COCOON 月の翳り星ひとつ」および2019年春に上演が予定されている「SPECTER」のチケットの最速先行販売は、12月15日よりニコニコチャンネル「末満健一の幽機交流領域」にて行われる。
「COCOON 月の翳り星ひとつ」
2019年5・6月
東京、大阪で上演予定。
作・演出:末満健一