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音楽の力で客席と舞台がひとつになる 劇団四季『クレイジー・フォー・ユー』出演 萩原隆匡×町真理子インタビュー

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劇団四季『クレイジー・フォー・ユー』公開舞台稽古より 撮影:岩村美佳

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4月25日よりKAAT神奈川芸術劇場<ホール>で上演中の劇団四季『クレイジー・フォー・ユー』(以降、CFY)。1930年代のアメリカを舞台にした、まさに王道の“ボーイ・ミーツ・ガール”で始まるラブストーリー……と簡単には言いきれない。なぜならふたりが出会った町は寂れたネバダ州デッドロック、“ガール”ポリーは荒廃した劇場の娘、そして“ボーイ”ボビーはその劇場を差し押さえに来た銀行の御曹司なのだから。ふたりのすれ違いコメディに加えて、劇場や町の人々が活気を取り戻していく復興の物語でもあるこの舞台。珠玉のガーシュウィン・ナンバー、そしてダイナミックなダンスの数々で、ミュージカルの楽しさを堪能させてくれる作品だ。

ボビー・チャイルドは萩原隆匡と斎藤洋一郎、ポリー・ベーカーは町真理子と相原萌のダブルキャスト。歌、ダンス、芝居と高いレベルを求められる本作で、何を感じているのか。稽古も佳境を迎えていたある日、萩原隆匡・町真理子が語ってくれた。

ボビーとして、ポリーとしてのリアルを求めて

萩原は、2015年の公演に続いて2度目の『CFY』ボビー役。「前回は本当に難しくて、苦労したんです。今思えば、(ボビーがなりすました大プロデューサー)ザングラーとして説得力をもたせなきゃ、とか外側からのアプローチをすごく気にしていたんですよ。以前からボビーを演じている先輩がマンツーマンで教えてくださって、どうにか演じましたけど。でもボビーはザングラーになりきることをエンジョイしているので、そこにフォーカスを当てればそんなに難しいことはなかったのかもしれない。だから今回はボビーを見習って、推進力で前に向かっていこうという感じ」と前回を振り返りつつ、意欲を語る。「ボビーって、本当に魅力的。すごく明るいけど、演じるうえでは単純に外側を明るくしただけでは何かが違う。『チャイルド』という名前そのままに、子どものように素直に『何がなんでもやる』という前向きさ、推進力があって、本当にうらやましいし『こんな風に生きられたら』とも思います。でもそれを力任せに表現するのではなく、ひたすら純真に自分がやりたいことを実行に移せる人間であることを大事にしたい」のだとか。

そんな萩原のボビーを、町は「ダンスも歌も芝居も萩さん(萩原)にしかできない、洒落てる感じがあるんですよね。力が抜けているところもあれば、締めるところは締めて、緩急が巧み。すごいです。今日は第2幕の通し稽古だったんですけど、萩さんのボビーが踊って歌う「Nice Work If You Can Get It」、すごく感動したんです。ポリーへのボビーの全力の愛が感じられて本当にかっこよくて。このシーンは、ぜひ皆さんに注目していただきたいです」と絶賛。先輩へのリスペクトをうかがわせた。ちなみに萩原自身も、このシーンは「振付も曲も天才」とする。

町自身は、ポリー役には迷いがあったという。「出番のボリュームや比重の重さがここまで大きい役は初めてなので、とにかく最初はプレッシャーを感じていました。そこから少しずつ稽古を重ねて、スタッフの方たちに『等身大でいいよ』『そのままの町でいいよ』っていう言葉をもらって、ポリーの男勝りだったり強かったりする部分をそのまま出すんじゃなくて、自分の思う、自分がそうしたいポリーがあれば、無理に演じようって意識しなくていい。そう思えて安心材料になりました。それから、だんだん稽古も楽しくなってきたんです」とはいうものの、そんな町を「最初から素晴らしかったですよ。町さんは本当に素敵な女優さんで、醸し出す雰囲気が良いし、実力もある」と萩原は太鼓判を押す。

そして、町によるとポリーは「自分に素直だし、初めての恋を知ってだんだん可愛い面も出てくる。デッドロックの人たちに対する時と恋しいザングラーの前とでは、ギャップというか、それまで見せたことのない一面が見えてきたら素敵」だという。

萩原は言う。「自分と役が無理なく手をつないで、自分の内からシンプルなものが出る状態を目指したい。いかに、観ている方がリアルに『こういう人たちがいて、こういう人たちがこういうことするから、こういう展開になってるんだ』と引き込まれて、舞台上も客席も、劇場全体がひとつになる。それが理想なんですよね」。いかにリアルに、舞台上でその役として生きているか。それが大事なのかもしれない。

劇場でしか味わえない悦びを共に

ガーシュウィンの音楽に満ちあふれている『CFY』。例えばボビーとポリーが出会う場面の「Shall We Dance?」は製作陣の思い入れの深いナンバーだという。萩原は「ボビー役の大先輩が言うには、この曲こそが『CFY』だそうです。本当に純粋な恋から生まれている話だから、その始まりが確かなものじゃないと、その後のすべてが嘘になってしまう。最初はポリーが嫌がっているところから、ふたりのかけ合いが始まっていって、ダンスで恋心というかふたりの心情が表現されている。ミュージカルだから数分のダンスですけど、ストーリー上ではこの場面が終わった時点で朝になっている。そのくらい、ふたりにとっては忘れられない特別な経験だっていうことが凝縮されているんです。この曲ありきでそういう展開を創ったっていうことが、本当に神がかっていると思います。演じるこちらとしては、一生懸命がんばっていくしかありません」

第1幕前半をこの曲が彩り、その後の展開を経てポリーには「Someone To Watch Over Me」という聴かせどころがある。町は、率直にこの曲は「難しい」と打ち明けた。「ただ歌うだけだとすごく楽しいけれど、物語の流れとしては他の人には見せたことのない、ポリーの心の内が徐々にほどけていくように解放されていく。そんな柔らかさを表現できたらいいなと思うんですけど、なかなか……」と、試行錯誤を重ねている様子をうかがわせた。

そして、『CFY』という作品そのものの魅力をこう語る。「この作品を『嫌い』って思う人はいないんじゃないですか? 悪い人がいなくて、最後はいろいろなカップルが生まれて。私はラブストーリーが大好きなので、キャラクターそれぞれの恋模様に注目してもらいたいと思いますね」

一方、萩原は第1幕のラストを飾る「I Got Rhythm」に感動するという。「キャストそれぞれが持っている感性が、音楽と歌詞(言葉)に響いて生まれる空間。音楽の持っている力でみんなの気持ちが本当にひとつになる、大好きなナンバーです。ぜひ劇場で一緒に体感して、一緒にあの空気を作ってほしい。話を知らなくても、観に来てもらえば楽しめますから。生でだからこそ味わえる楽しみがあります」。

キャストと観客、全体がひとつになる。それはまさに、劇場だからこそ体感できる悦びだろう。町は「皆さん一度は聞いたことがある曲があると思うので、それを生で聴いてもらえたら。私たちもエネルギーを精一杯放出するので、この作品のハッピーなオーラを受け取って、ぜひ明るく笑顔で帰っていただきたいと思います」と話す。

そして萩原は「前もってチケットを取って、『明日劇場に行くんだ』と楽しみにして。観終わったらご飯を食べたりしながら『楽しかったな』って、帰りも余韻に浸る。そんな、劇場で過ごす“特別な1日”を味わってほしい。きっと『面白い』とか『つまらなかった』とか、いろいろな感想があるでしょう。でも、とりあえず劇場に来て何かを感じてほしいんです。そのために、僕たちは厳しい稽古を重ねてお客様を裏切らないようにがんばっています」と、熱く締めくくった。

取材・文:金井まゆみ 撮影:岩村美佳

<公演情報>
劇団四季『クレイジー・フォー・ユー』

2023年4月25日(火)~2023年7月22日(土)
会場:神奈川・KAAT神奈川芸術劇場<ホール>
横浜公演終了後、2023年8月26日(土)より全国ツアー公演あり

チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2341551

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