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窪田正孝 『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』主人公・渡守ソウシは子供たちの声を聞こうとする人

ステージ

インタビュー

ぴあ

窪田正孝 撮影:源賀津己

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1995年に放映を開始したテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』は「社会現象」と呼ばれたほどの大きな反響を巻き起こし、のちに製作された新旧劇場版も含めて世界的なムーブメントとなった。そして2023年、舞台版として新たな物語が始動する。主人公・渡守ソウシを演じるのは窪田正孝。渡守と特務機関メンシュに所属する人々、そしてエヴァンゲリオンに搭乗し使徒と戦う少年少女たちは、どのように関わり合っていくのか。原案・構成・演出・振付を務めるシディ・ラルビ・シェルカウイの下、窪田ら出演者たち、そして国内外から結集したクリエイター陣は『エヴァンゲリオン』という物語をステージ上でどのように表現するのか。稽古の真っただ中である窪田に話を聞くと、この挑戦を「すごく面白い」と語り、微笑んだ。

世界へのメッセージを込めた物語を

――稽古を通して、渡守ソウシという役柄をどのように捉え、創りあげていますか?

彼は名前の通り、世代的にバトンを“渡す”人で、それは第一に担わなければいけない役割だと思います。この作品は子どもたちが主役だと思うので、彼らがもっと際立つように、話の軸にもっと色をつけたい。キャラクターについて、「こうです」って説明するのはなかなか難しいですね。言葉で説明しすぎてもつまらなくなってしまいそうだから、想像力に委ねる部分は大きいです。

――子どもたち、つまりエヴァンゲリオンのパイロットである叶トウマ、羽純ナヲ、光条・ヒナタ・ラファイエット、秋津希エリですね。彼らが「際立つように」とは、例えばどういうことでしょう。

ソウシは子どもたちの前に教師として現れ、彼らの声、彼らの思いを聞こうとする人なんです。

――作中で、そういうセリフもありますね。

子どもの声って、言葉に力がないからどうしても後回しにされがちじゃないですか。この作品に登場する子どもたちは14歳ですけど、まだ言葉を話せないくらいの子供たちは泣くことでしか自分の気持ちを伝えられない。どうして泣いているのか、どういう感情でその顔をしているのか、大人はたぶん言葉にしないとわからないし。でもソウシはそういうところまで含めて、ちゃんと人の声を聞ける人だとイメージしています。

――子どもたちのメッセージを受け取る人なんですね。

ラルビはそういう子どもたちの訴え、それも世界的な問題に繋がる内容が『エヴァンゲリオン』には描かれていると語っているんです。僕も日本のアニメやその他多くの作品も、たぶんそういうメッセージが込められていると思うし、本当にすごいなと思います。だからこそ世界ですごく評価されているんでしょうね。実際、ラルビもそこにフォーカスしているわけだから。

――世界に通じるメッセージ性をもった作品であり、人物像だということですか。

どれだけ歴史を乗り越えても、人間の愚かさや戦争はなくならない。自分自身、この世界で生きているっていうだけで、何かを食べなきゃいけないし、ゴミを出すし、何らかの形で地球に害を与えているじゃないですか。地球という故郷、限りある資源を次世代にバトンとして渡していかなくてはならないし、争いのない調和のとれた世界を繋いでいきたい。ソウシはそういう強い意志を持っていて、他の人には自分のような思いをしてほしくないとも思っているんです。

――非常に大きく、重いものを背負った人物像ですね。彼と同世代である特務機関メンシュの霧生イオリや桜井エツコ、上の世代である叶サネユキ総司令との関係については、どう感じていますか。

皆、彼の人生の中でとても大きな存在だろうと認識しています。(エツコ役の宮下)今日子さんと自分の実年齢の開きを考えると同年齢という設定には違和感もありますけど、この舞台ではそういう外面的・物質的なものがどんどん剥ぎ取られていって、別のところで戦っているような感覚があります。プロジェクションマッピングとかいろいろな視覚的効果としてデジタルな表現も使っていますけど、あくまで体現して動くのは人間。その人間の肉体や動きによる表現が、どこまで人の左脳(言語・理論)ではなく右脳(非言語・感性)にアクセスできるか。そういう作品になってほしいという願望があります。

海外のクリエイターとの製作を通して

――製作発表の時、窪田さんは「どれだけ身体を使って表現できるのかということに挑んでいる」といった内容のコメントをなさっていました。現状として、窪田さんはどのような表現を求められていますか。

台本のプロットはできているけれども、まだ最後まで完成していない段階です。だから、結末についてまだ詳しいことはわかりません。でもそこにもっていくためには、まだピースが足りないところが結構あるんです。ラルビの描きたいところと日本側のギャップというか、日本と海外とでは製作の体制もかなり違うと感じています。

――もう少し詳しく聞かせていただけますか?

日本はまず役者が先頭に立ち、メディアでいろいろなことを聞かれて、答えていく。でも海外の場合は、役者が関わるようになるよりも何年も前から脚本や美術のスタッフなどが携わり、作品の深層心理というか、根本的なものを創っている。メイキングを創る場合でも、日本ではたいてい役者にフォーカスするけれど、海外ではスタッフの製作プロセスを追う。日本でももちろんそれぞれの部署へのリスペクトはあるけれど、どこかプロセスよりも結果を求めるところがあるんじゃないかと感じています。

製作発表会見より、前列左から)原案・構成・演出・振付を手がけるシディ・ラルビ・シェルカウイ、出演の石橋静河、窪田正孝、田中哲司、後列左から)村田寛奈、宮下今日子、板垣瑞生、永田崇人、坂ノ上茜

面白いのは、海外では演出家としての領域と脚本家としての領域がきっちり分かれているみたいで。だから、演出家であるラルビは「僕には(脚本は)書けない、でもこういうことがやりたい」と何時間もかけて、すごい熱量で伝え続けるんですよ。彼がそうやって語っている言葉(英語)を翻訳して日本語にするだけでも、時間がかかる。それに、日本語は細かいニュアンスを伝える言葉がたくさんありますよね。そういうニュアンスを汲みとることも、すごく難しくて。翻訳の方も丁寧にやってくださっているけど、文章全体を通してみると、日本ではない、大陸の空気感をまとっているような感じになっている。そういう、良い意味での違和感があります。

――海外のクリエイターと一緒に創作活動をするうえでの、面白い部分でもあり難しい部分でもありそうですね。

今回出演しているダンサーの方たちの中には、ラルビが以前手がけた『プルートゥPLUTO』(2015、18年)(原作:『PLUTO』浦沢直樹×手塚治虫 長崎尚志プロデュース 監修/手塚眞 協力/手塚プロダクション)にも関わっていた方がたくさんいらっしゃるんです。だから、その時はどういうふうにやっていたのか、いろいろお話を聞いたりして。『エヴァンゲリオン』をオリジナルストーリーで描くとなると、どうしてもできること、できないこと、いろいろ挑戦しながら進めなくてはならない。どこまで精度を上げていけるかは、カンパニーの皆次第ではありますね。

ダンサーたちの存在に救われる居心地の良い稽古場

――稽古場自体の雰囲気であるとか、キャスト同士のコミュニケーションなどについてはどう感じていますか。

必要最低限の気遣いはもちろんあるけれど、それ以外の壁はなくて、和気あいあいとしています。俳優だけだとまた違う雰囲気だったのかもしれないけど、ダンサーさんたちの存在が大きくて。彼らは表現という世界では同じ場所にいるけど、アクセスの仕方が全然違うんですよ。それがすごく面白くて、彼らのアプローチに刺激を受けるというか、すごく興味があります。役者同士だと、稽古の中でぶつかる壁はどこか、どうしても似てくるんですよ。このシーンの芝居がうまくいかない、このシーンのマインドができあがらない、とか。でもダンサーの方たちは僕たちがそういうことで悩んでいる側で、それとは関係なく、すごく楽しそうに、「この動きはもっとこうしよう」とか話しながら進めている。それに救われるんです。もちろん、その逆もあるだろうし。それが、すごく居心地が良い。

――大雑把にくくれば皆さん “表現者”ではあっても、バックグラウンドはまったく違う。それが良いんでしょうかね。

話していると、面白いです。この舞台に関わるまでのいきさつも人によって全然違うし、ダンサーとしてご飯を食べている人もいれば、ヨガの教室を開いている人がいたり、いろいろなバックグラウンドの方がいる。台詞劇にはこれまで関わってこなかった人もいて、その人にとっては今回初めてふれることもいろいろあるし。それを共有することも楽しいですね。

――これまで経験された舞台の稽古で感じるものとは、全然違うようですね。

もちろん台本があってのことではあるけれど、ラルビという演出家が関わるとここまで表現が変わるのかって驚かされます。常に変わり続けているので、今は「どれだけやっても完成しないんじゃないか」と思うくらい。もしかしたら、この舞台が本当の意味で完成するのは千秋楽なのかもしれません。

――常に変化し続けていく、とても挑戦的で刺激的な舞台になりそうですね。締めくくりとして、この舞台の見どころをお伝えください。

普段見慣れたものとはまったく違う、僕たちのリーダーであるラルビから生まれてくるお芝居へのアプローチは、ご覧になる方にとってすごく新鮮ではないかと思います。その中に含まれている現代的な問題も、どのように伝わるのか。ぜひ感覚で観てほしい作品ですし、気軽な気持ちで劇場に来ていただけたら嬉しいです。

新たなエヴァンゲリオンによる物語の幕開けは、5月6日(土) より。

COCOON PRODUCTION 2023『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』リハーサル映像


取材・文:金井まゆみ 撮影:源賀津己

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『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』チケット情報
https://w.pia.jp/t/evangelion2023/